長久 良子
CHRO
21次中経において、人的資本戦略を通じてお客様と社員の「“はたらく”に歓びを」実現するため、「自律:社員の潜在能力発揮を促す」「成長:個人の成長と事業の成長を同軸にする」「“はたらく”に歓びを:社員エクスペリエンスを“はたらく歓び”につなげる」の3つを柱に掲げています。リコーグループでは、社員一人ひとりの多様な価値観、経験、文化的背景を尊重し、多様性を組織の力に変えていくことが事業成長のカギであると考えています。生産性を高め、社員が働きながら成長を実感できる環境をつくることが重要であり、21次中経最終年度にあたる今年度は、基本方針として「グローバルでの事業成長に必要な人的資本の最大化」を掲げました。具体的には次の3点を注力ポイントとして取り組みます。
| 1 | 自律カルチャーの醸成 | リコー式ジョブ型人事制度をさらに進化させ、グローバルリーダーの資質を定義し、それに基づく人材の育成を進めること |
|---|---|---|
| 2 | 次世代タレントの育成と登用 | 急激に変化する環境に対応し、新たな未来を創出できる次世代タレントの育成を進めること |
| 3 | グローバルビジネスの成長に寄与する人事施策の推進 | 次期経営計画に向けて、ビジネスの成長に直結する人事施策を検討し、新しい制度を導入すること |
社員の自律・成長を促す施策実行と並行して、組織としての現在地を理解し、将来を見据えた人事戦略を策定、ビジネスに貢献する人材開発の環境を構築していきます。成長の機会として、自ら積極的にチャレンジする社員がこれまで以上に増えることを期待しています。社員と会社がWin-Winの関係を築くことによって、社員は速いペースで成長し、リコーが目指す方向性を実現することにもつながります。
お客様のニーズが多様化し、技術の進化が急激に進んでいるなか、社員一人ひとりが自主的に考え、行動することが必要不可欠です。社員の多様性を尊重し、自主性・自律性を発揮できる環境を整えることで、より多くの顧客価値の創造につなげ、デジタルサービスの会社への変革を推進します。これは社員にとっての自律的なキャリア形成にもつながります。社員自身がどうなりたいのか、どうなるべきかを考え、なりたいキャリアを実現するために自発的に行動が起こせる環境づくりを会社としても提供していきます。
社員一人ひとりが今までのキャリアを振り返り、自発的にキャリアを描けるよう2023年度にキャリアシート・IDPを導入し作成を促しています。2025年3月末時点で国内リコーグループの社員のうち、キャリアシートは82%、IDPは80%が作成後更新し、自律的なキャリア開発の土台が形成されつつあります。
社員一人ひとりの潜在能力を引き出すため、マネージャー自身が「管理型」から「支援型」へと変化することが重要です。このため、マネージャー向け研修としてマネジメントカレッジを展開しています。2024年度は国内リコーグループにおけるマネージャーの95%が受講し、意識変革に取り組みました。
2022年度、国内リコーグループにリコー式ジョブ型人事制度を導入。社内公募を活性化させ、自身で立てたキャリア計画に沿ったキャリア形成ができる環境を整えています。特に30代初級管理職比率は、2025年4月1日時点では11.4%となっており、制度導入前の2022年3月に比べ、約5倍となっています。
また、実力に応じたポジションへ登用する制度に合わせて、役職定年制度を廃止し、年齢にかかわらず意欲の高い社員が活躍できる環境としています。
2025年度KPIである「IDPに基づく異動率60%以上」の達成に向け、今後これらの施策に基づく社員の自律形成の実践状況を調査する計画です。
変革を加速させるためには、ビジネスをリードする人材の育成が重要です。リコーグループでは全社横断的に将来のリーダー候補の選定やアセスメントの実施などを進め、次世代のリーダーシップパイプラインを構築しています。また、デジタル人材の育成は、デジタルサービスの会社への変革において最も加速させるべき課題の1つであり、リスキリング、アップスキリングおよびクロススキリングを含め、さまざまな施策を展開しています。デジタル人材育成のためには、自律的なキャリア支援や学習環境の整備を進めるのと同時に、ビジネスニーズからの育成計画も策定することで、社員と会社の双方の視点からデジタル人材の育成と再配置の加速を進めています。
顧客接点で価値を創造し、事業成長を加速する「デジタル人材」(「デジタル技術とデータを使いこなし、デジタルサービスを創出・加速させる人材」と独自に定義)の育成・強化を経営戦略の柱に掲げるとともに、21次中経における全社のESG目標の1つとしてもコミットしています。
本プログラムによるデジタル人材としてのリスキリングにより、成熟領域から、成長領域であるデジタルサービス分野に人材シフトを進めています。特色はリスキリング完了後の活躍の場(異動先)を確保した上で教育を進めることにあり、組織と受講者本人の適性マッチングや従事する業務を事前に理解することで、受講者のモチベーション向上につなげています。
プログラム前後にスキルアセスメントを実施し、就業時間内に100%の工数をかけて4~12か月間のプログラム(eラーニング・講座・OJT含む)を受講後に、事前に確保した活躍の場へ異動します。対象は、IT人材、AI人材、SE人材、プロセスDX人材の4つの人材で、初年度となる2024年度に94人がプログラムを修了しました。
経済産業省とIPAが定める「デジタルスキル標準(DSS)」を参考にし、ビジネスアーキテクト、ソフトウェアエンジニア、データサイエンティスト、サイバーセキュリティの4つの重点育成人材を定めています。
特にビジネスアーキテクトに対しては、eラーニングやワークショップに加え、RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE TOKYO(RICOH BIL TOKYO)、TRIBUSなどでの実践の機会(OJT)を提供しています。また、AWS*1やMicrosoft Azure*2、統計検定、IPAのビジネス・IT系資格など外部資格の取得支援にも力を入れ、毎年更新しています。
4つの重点育成人材の育成目標は21次中経中に達成するESG目標としても定めており、2025年度までの目標人数合計4,000人に対して、2025年1月末時点での累計実績は合計4,658人となりました。
「リコーデジタルアカデミー」は、社員一人ひとりがデジタル人材を目指し自律的に学ぶためのプラットフォームとして2022年4月に開校されました。
国内リコーグループ全社員のデジタルスキルの底上げを図る「デジタルリテラシー」と、重点育成人材の分野で選出された社員の専門的な能⼒向上を目的とする「アップスキリング」の二層構造のカリキュラムとなっており、2024年度までに約1万6,000⼈が受講しています。
デジタルサービスを創出・加速するデジタル人材に加え、商品・サービスを支えるモノづくりに関わる人材を対象とした、技術者コミュニティ「リコーグループ技術専門委員会」を2022年度から設置しています。延べ約6,000人の技術者が分野ごとに登録し、グループ横断で、社内外との交流・技術者教育の推進を行っています。
2025年度からはIT技術分野の活動を「デジタルサービス技術専門部会」とリニューアルし、AI活用・プロダクト開発・プラットフォームエンジニアリングなどを中心に、他の技術分野との融合・シナジーを目指した活動を実施しています。
デジタル技術とデータの利活用でプロセスを変革して、生産性向上を図るプロセスDX活動を実践しています。現状のプロセスを可視化して課題を抽出するスキル、課題をデジタルツールやデータの利活用で解決できるスキルが必要であり、これらのスキル獲得に向けたプロセスDX人材育成のプログラムを展開しています。プロセスDX人材の認定制度については、スキルのレベルに応じて4つのステージ(ブロンズ/シルバー/ゴールド/プラチナ)を設定し、知識の習得や実践による経験・実績・成果などの基準を満たすことで各ステージの認定を受ける仕組みとしています。初級者向けブロンズステージでは、国内リコーグループ社員全員が基礎的なスキルに加え、実務においてプロセスDXを実践するための考え方・方法を理解できていることを目指しています。さらに、プロセスDXを実践し生産性向上を実現できるレベルをシルバーステージとして認定しており、この取得率をESG目標に掲げています。
「デジタル研修履修率」に関しては、価値創造モデルにおける戦略要素の1つである、「プロセスDXと高い生産性」に焦点を当て、全社員認定取得を目指しています。2024年度では98%の社員が、ブロンズ認定を完了しました。
リコーグループの変革の主人公は全社員です。イノベーションは、多様な人材が個々の能力を活かし協働することで創出されます。その実現に向けて、多様性を尊重し、生き生きと働ける環境を整えるとともに、社員エンゲージメントを高めるための取り組みを進めています。
多様な人材が活躍できる職場環境を構築するために、DEIの推進を進めています。あらゆる多様性や価値観を互いに受け入れ、グローバルの社員が1つのチームとして働く決意を表す「グローバル DEIステートメント」を22言語、明確な行動規範として「グローバル DEI ポリシー」を17言語で定めています。個々人の多様性を認め、すべての人が敬意をもって尊重される環境で働けるよう取り組みを推進していきます。D&Iを一歩進め、「エクイティ(Equity:公平性)」という概念を加え、DEIとして一層取り組みを強化しており、エクイティの概念におけるトップからのメッセージの展開や国際女性デー(IWD)に合わせたグローバル全社でのイベントを実施しています。
2017年度から全社で「働き方変革」に取り組み、職種や仕事内容に合わせて、社員一人ひとりが自律的に時間と場所を選べる働きやすい環境づくりから、意識·風土の変革による「働きがい」の向上に至るまで、さまざまなチャレンジを続けています。
国内グループ全社員を対象に毎年実施している「ワークライフ·マネジメント意識調査」では、仕事のみならず生活全般の充実度や満足度を調査しています。2024年度の調査では回答者の半数以上が「仕事と生活の両方が充実している」と回答し、生産性に関しても約9割の社員が「前年と比較して自身の生産性が維持もしくは向上している」と回答しています。
ハイブリッドワーク:職種や仕事内容に合わせて、場所にとらわれることのない働き方を実現しつつも、必要に応じてオフィスでコミュニケーションもとれる形をとっており、新しい働き方を率先して実施しています。
副業:勤務時間の20%以内で社内の新しい仕事にチャレンジできる「社内副業」と、就業時間外に社外で働ける「社外副業」の制度を設けており、多様な働き方やキャリア形成を促進しています。
TRIBUS(トライバス):社内外起業家とスタートアップを支援する事業共創プログラム。チャレンジする文化の醸成や、イノベーションの創出を促進する取り組みとして根付いています。
育児・介護と仕事の両立支援:リコーでは、育児・介護休業法施行前の1990年から休業や短時間勤務の制度を導入してきました。社員のニーズや社会環境の変化に応じて随時見直しながら、制度を利用しやすい職場環境づくりを進めています。男性の育児参加促進もその1つで、2019年度以降の育児休業取得率は90%以上となっています。育児参加をきっかけに男性自身の意識が変わり、職場全体の働き方にも変化が表れています。
管理職向けには、360度評価*項目への「ダイバーシティマネジメント」の追加や、休業者がスムーズに職場復帰し早期に活躍できる環境づくりのためのコミュニケーションガイドラインの策定により「支援するマネージャー」への意識・行動変容を促す施策を展開しています。このような取り組みを通じ、ほぼすべての女性社員が育児休業を取得して職場に復帰しています。
年に一度グローバル社員意識調査を実施し、その結果をもとに、各組織での具体的な改善策の検討と実施を行います。その結果、ESG目標と役員報酬の評価項目に設定している社員エンゲージメントスコアは上昇傾向にあります。
リコーウェイ・バリューアワード:リコーウェイの価値観を体現する取り組みの表彰[年1回]
2024年度の大賞は、リコーオーストラリアでの「お客様における働き方改革と業務効率向上事例」でした。この活動は、専門性をもったメンバーが地域を限定することなくグローバルチーム一丸となり、リコーのデジタルサービスを活用することでお客様の課題解決に取り組んだものです。特に「TEAMWORK」「ETHICS AND INTEGRITY」「CUSTOMER-CENTRIC」を通じて三愛精神を体現し、結果、お客様からも「信頼できるパートナー」として高く評価されました。
グローバルタウンホールミーティング:ライブ配信形式で、CEO・役員が登壇し、国内外の社員からの疑問・質問に回答しています。社員と経営の相互コミュニケーションを活性化する目的で実施。ライブ配信後、アーカイブ動画をグローバル全社員に公開し、戦略への理解・共感を深め、社員の士気向上につなげています。
CEOと社員とのラウンドテーブル:社員の質問に直接CEOが答える機会としてラウンドテーブルを実施。その様子を記事化し、国内全社員へ展開しています。さらに、CEOをはじめ役員が出張する際に、現地社員とさまざまな形式(タウンホールや座談会など)でのコミュニケーションを実施しています。
CEOと社員とのラウンドテーブルの様子
野水 泰之
CTO
デジタルサービスの会社としてリコーが目指すのは、ワークプレイスの未来構築と、働く人々の知識創造に貢献することです。働き方や働く場所が多様化するなかで、リコー独自のテクノロジーを用いて、人ならではの創造力の発揮を支えていきます。そこで必要なのは、お客様視点に立った「体感価値」です。研究や開発を行う我々自身も含め、どう“感じたか”という「体感」が重要であり、それにより、DXはより深化します。
2024年度より、CTOとして技術・知財戦略と、デジタル戦略を統括しています。お客様の体感価値創出に向け、冒頭の3つのポイントにおいて取り組みを推進しています。
| ポイント | 取り組み |
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| 1 |
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企業価値向上プロジェクトの一環として、2025年度のR&D投資は800億円台に洗練させる計画です。未来を切り拓くテクノロジーへの投資機会とするため、MOT*視点を取り入れた取り組みも強化しています。全社的な事業変革とデジタルサービスの展開に向けては、21次中経で策定した全社技術戦略の強化を推進。従来の組織単位による費用配分を技術視点で見直し、注力するR&D領域に重点的に投資します。中心となるのは以下の2つです。
❶リコーグループの事業面での強みを活かせるワークプレイス領域にて、新たな技術により価値創出が可能な領域(ドキュメント・ワークフローを扱う領域など)
❷リコーグループが保有する技術を活かし、競争優位性を発揮しながら新たなお客様に対して価値提供が可能な領域(インクジェットヘッドをコアとした領域など)
また、2025年4月、米国・シリコンバレーにおいて、新規投資対象となる技術の探索に特化したグローバルR&D拠点「Research and Development Americas」を稼働させました。
これらを実行するために、費用や進捗を含む全社的な管理体制を整備し、ガバナンスの確保を進めています。その一環として、マーケットイン型/オープンイノベーション型の価値創造プロセスへの転換を推進。マーケットとの対話を重視しながら、R&Dテーマの設定、仮説検証、関係部門との連携を強化することで、テーマの新陳代謝を促進しています。さらに、先進的なリサーチ基盤の構築と生成AIを活用したリサーチDXの推進により、情報の効率的・効果的な収集・分析・活用を実現。これらを通じて、狙いとする市場と将来の重点技術の特定を図っています。
知的財産は技術開発の重要な成果の1つであり、全社技術戦略と連動して強化しています。CTO主催の技術経営会議で技術有識者と共に知的財産戦略を討議し、短期的な技術開発の成果だけでなく、中長期的な全社技術戦略に基づく知的財産創出にも取り組んでいます。
デジタルサービス領域では、お客様接点での知的財産創出も重要です。知的財産部門はお客様接点部門との連携を強化し、ビジネスの上流から下流までの全工程で必要となる知的財産を構想・権利化しています。こうした取り組みは2025年度にデジタルサービス領域の特許出願比率60%超を目指すESG目標に基づくもので、この目標はリコー版ROICツリー採用しており、全社一丸となって推進しています。
注力するR&D領域や、全社のデジタル戦略の実現に必要な技術に加え、お客様の新たな「体感価値」を実現する知的財産創出を強化します。さらに、デジタルサービスの会社に適した知的財産ポートフォリオ整備を通じて事業成長に貢献していきます。
デジタルサービスの開発や活用に際し、差別、偏見、格差の助長といった意図しない人権侵害のリスクや、外部からの攻撃によるシステムへの深刻な影響など、従来は想定されていなかった新たな社会的リスクが顕在化しています。リコーグループは、これらの課題の重要性を深く認識し、利用者起点で世界に安心と信頼の製品・サービスをお届けするため、開発・社会実装・運用も内在するELSI(倫理・法・社会的課題)の抑制に努めています。
2023年度には、AIや映像デバイスなどの先端技術を活用したデジタルサービスについて、研究から運用に至るまでを対象とした「技術倫理憲章」を制定しました。大阪大学社会技術共創研究センター(ELSIセンター)と共創研究を2022年度から開始し、研究・商品開発プロセスにリスクベースドマネジメントの手法としてテクノロジーアセスメント(TA)を開発、2024年度に本格導入しています。加えて、社員を対象とした「生成AI利用ガイドライン」の策定、技術倫理啓発プログラムの提供、定期的なシンポジウムの開催も行っています。
企業理念に基づいた倫理的配慮に責任をもって取り組むことが社会に対して果たすべき責務であると考え、AIの開発・提供、グループ内の利活用においては、機能面の安全性に加え、心理的・倫理的側面を含むリスクを制御するための技術マネジメントの開発と推進に取り組んでいます。これらの活動により、AIを含むデジタルサービスに内在するリスクの評価と対策を実践し、倫理的リスクの抑制に努めています。
「倫理審査委員会」を設置
(外部有識者を含む第三者組織)
研究活動から
技術開発活動へ展開
デジタル戦略で目指すのは、①既存ビジネスの深化、②社内プロセスDXによる生産性向上や業務高度化、③顧客起点の新たな価値創出の3つです。これらを実現するために下図の4つの主要戦略を推進し、ワークプレイスサービスプロバイダーとしてのお客様への価値提供を全社で一層拡大していきます。
RSIはデジタルサービスの開発・運用に必要な基本機能と高い拡張性を備えた、グローバルでのビジネス創出を促進するクラウドの共通基盤です。商品開発の効率化とコスト削減を実現し、イノベーション創出を可能にします。2025年度は、リコーグループがグローバルで提供するアプリケーションやサービスをつなぐ中核プラットフォームとしての進化を加速させます。
具体的には、生成AI技術のグローバル展開、顧客接点データの収集・分析基盤の整備、サービスデリバリーの高度化に取り組んでいます。その一例として、ノーコードAI開発ツールの活用があります。リコー独自の価値に加え、社内実践を通じて得た知見やテンプレートを活用することで、社内外のデータをシームレスに連携させ、お客様に迅速かつ高付加価値なAIソリューションを提供するプラットフォームの構築を進めています。
加えて、ワークプレイスのデータをデジタルツイン技術で仮想空間上に再現・可視化し、データ分析やAIによる予測、レポート生成や業務のサイロ化の解消などを通じてオフィスや現場も含めたワークプレイス全体の生産性向上にも貢献します。
プロセス・IT・データの三位一体によるオペレーショナルエクセレンスの実現に向け、社内業務プロセス全体を対象に、デジタル技術とデータの利活用により業務を改革する「型」を定義し、その型に基づいて業務改革を実践する「プロセスDX」を推進しています。あわせて、こうした実践に必要なスキルを習得する人材育成にも取り組んでいます。
プロセス領域では、プロセスマイニングを活用して業務プロセスを可視化し、その結果に基づく分析・改善に向け、2022年2月に全株式を取得したAxon IvyのBPMS*2ツール「Axon Ivy」を活用するなど手法の高度化を進めています。また、社内のITシステム構築でも、プロセスDXの型に沿った可視化/最適化により、構築期間の短縮や品質向上を目指しています。
IT領域では、基幹プロセスの刷新でSaaSを導入しつつ、SaaSの標準機能では対応できないプロセスは前述のAxonIvyとAIを組み合わせ、専門部隊で内製開発に取り組んでいます。さらに、ノーコード、ローコードのAI開発ツールを現場の社員自らが使いこなせるようにする「AIの民主化」のために、AIガバナンスの強化や教育、実践支援にも力を入れています。
データ領域では、迅速かつ正確な意思決定やビジネス成長、業務プロセス改革に活かせるよう、データの収集や管理を統合的に行うデータ統合基盤やデータカタログの整備、データ利活用支援を進めています。また、AI・データ利活用に伴うリスク低減に向けて、全社データガバナンス委員会を2025年度に設置し、ガバナンスを強化しています。
働く人をデジタル技術で支援するサービスの創出に取り組んでいます。なかでもデジタルツイン技術基盤では、画像処理やAIを用いた現実空間の再現・分析技術の開発に注力しています。
現場の画像や位置情報をもとに点検記録や作業履歴をリアルタイムで可視化し、独自のビューアーで一元管理することで、現場の知見の蓄積・活用を支援します。さらに、デジタルツイン上で計画と実績の差分を検出・診断することで施工進捗の自動管理を可能にするシステムを開発し、一部施設での検証を始めています。
また、働く人の行動や状況をデジタル上に再現し、個人に最適化された支援やワークフローの改善にも取り組んでいます。例えば、個人の特性に応じた研修プログラムを自動生成し、対話力を強化するAIトレーニングソリューションの開発を進めています。加えて、オープンイノベーションにより、知的生産性の最大化を目指したデータ駆動型ソリューションの開発と社会実装を進めています。
こうした取り組みにおいてカギとなるのは、業種特有のデータです。信頼関係に基づいて収集・分析し、得られたインサイトを継続的に活用することで、深い業務理解と先回りの提案を可能にし、顧客体験の持続的向上とサービスの価値の最大化を図ります。
お客様の業務変革をEnd to Endで支え、デジタルサービスにおけるすべての顧客接点で価値を体感いただけるよう、CXデザインの強化に取り組んでいます。
その一環として、プロジェクトマネージャーを中心にデザイン思考の実践を支援するプログラムを開始。お客様の本質的な課題とインサイトに基づき、望ましい体験を描き仮説検証を繰り返すことで、バリューチェーン全体での体感価値向上を目指しています。