人材育成

方針/基本的な考え方

デジタルサービスの会社への移行、社内カンパニー制度の導入など、リコーは大きな変革期を迎えています。それに伴い、社員一人ひとりがリコーグループの基本理念である「リコーウェイ」を指針とし、自分で考え、自分で動く「自律型人材」へ成長していくことが不可欠です。リコーでは、多様な研修、多角的な人事評価制度、充実したキャリア支援制度などを通して、社員一人ひとりの仕事自律・キャリア自律、変化に強い個人と組織や多様性を活かす企業風土の醸成を推し進めています。

社員の能力開発に関する基本方針

社員の能力開発にあたっては、自己啓発を基本とし、一人ひとりが世の中に通用する専門性を身につけるための支援を行うこととし、以下のとおり、「リコーグループ育成方針」を定める。

全ての社員が持てる能力を最大限高めることのできる育成の機会を提供する。
自らリコーウェイを実践しながら、卓越した業績をあげ、模範となるリーダーを養成する。
グローバル市場で事業貢献することのできる経営幹部、及び、事業・技術のプロフェッショナルを育てる。
(リコーグループスタンダード リコーグループ人材マネジメント規定標準 第7条より引用 ※2020.04.01更新)

リコーグループ育成方針の3つの柱の"1,自立2,成長3,はたらくを歓びに"を説明した図

推進体制/システム

研修体系

リコーグループでは、社員の自律的な学びの促進や、経営戦略に沿った人材を育成するために、下記2点をポイントにして人材育成体系を整えています。

  • 「目的別研修」と「階層別研修」で構成し、社員一人ひとりが役職、職種に合わせて自分に必要な研修プログラムを受講できる(以下研修体系図参照)
  • 「リコーウェイ」、「顧客満足」 など、リコーグループ従業員として身につけるべき価値観や、リコーがデジタルサービスの会社に成長する過程で必要な「デジタル人材育成」に関するプログラムを、役職、職種に関係なく全従業員が定期的に受講する

リコーグループ研修体系図

研修体系図

目的別研修

マネージャーケイパビリティ向上や、グローバルエグゼクティプ選抜教育など外部教育機関とともにリコーリーダシップに沿ったオリジナルの研修プログラムを設定しています。 また、新任マネジャー/エキスパートには、着任と同時期に基本的な知識・スキルを取得するプログラムを提供することで、着任時より確実なケイパビリティ向上を図っています。

デジタル人材育成

2022年に社員一人ひとりがデジタル人材を目指し自律的に学ぶ「リコーデジタルアカデミー」を開校しました。これは、リコーグループ全社員のデジタルスキルの底上げに加え、デジタルサービスの創出・加速に貢献する専門的な能⼒向上を目的とした、スキルアップにも対応したカリキュラムとなっています。 デジタル人材の中でもビジネスプロデューサー、ビジネスデザイナー、クラウドアーキテクト、データサイエンティスト、情報セキュリティ人材を重点強化スキル人材として設定し、21次中経において国内で「リコーデジタルスキル レベル2以上の人数」を4,000人に拡充することを目標にしています。

人事評価制度

リコーグループでは、経営指標として業績目標とESG(環境・社会・ガバナンス)目標の達成を同時に目指しています。これらの指標は、従業員の日々の活動・成果に結びついています。人事評価制度においては社員の成果や能力に応じた適切な処遇や人材配分を行い、社員個人の成長と組織成果の向上を図るため、目標管理型人事評価制度を導入しています。
全正社員は専門的な能力開発のために、半年の評価サイクルのなかで、期初に目標を設定し、日々の業務を通して目標を達成していき、期末に自身の成果を振り返り評価を受けるという一連のプロセスを踏みます。社員が目標を達成し成長できるよう、この評価プロセスのなかで上司は適宜部下へ仕事に対するフィードバックやアドバイスを行います。
また、社員一人ひとりがさらなる成長とより高い成果をだすことを促すために、日常的(頻回)なコミュニケーションによるフィードバックを推奨しています。
全社員の期末評価は、社員の成果と会社が社員に求める期待行動成果の二軸による相対評価で判定します。評価結果は賞与などの報酬に反映される仕組みとなっています。 更に、360度フィードバックをマネジメントポジションに就いている社員を対象に実施し、多面的に評価を行う取り組みも採用しています。

従業員の長期インセンティブ

リコーでは社員の中長期的な育成を支える仕組みとして、以下の長期インセンティブ制度を提供しています。

1. 退職金制度

リコーでは、社員のより豊かな老後の生活を支援することを目的に、確定給付型年金制度及び確定拠出型年金制度を活用した退職給付制度を整備しています。この制度は在職時の役割・成果に応じて付与ポイントが決定される仕組みとなっており、社員一人一人の貢献を公平に評価する成果主義を採用しています。

2. 持株会

リコー持株会は、社員の財産形成の一助として、給与・賞与から控除した拠出金でリコーの株式を購入する制度です。加入は希望制であり、会社からの奨励金として拠出金の15%が支給されます。これにより、社員は長期的な資産形成を目指すことができます。

キャリア支援制度

リコーグループでは、社員が自身のキャリア形成を会社頼みにしてしまわないよう、「社員本人が自らのキャリアオーナーである」という考え方の元で、社員のキャリア形成支援を進めています。
上司との目標面談や業務のフィードバック並びに、以下のようなキャリア支援制度を活用することで、社員は自律的にキャリアプランを形成し、自部署での更なる活躍、スキルの向上、希望する他部署への異動などを実現していきます。

キャリアデザイン研修

リコーグループでは、社員が年齢に関わらず自らのキャリア課題に合ったプログラムを受けられるよう、年代別ではなく課題・目的別のキャリアデザイン研修を行っています。また、社員が気軽にキャリアデザインの考え方に触れられるよう、全社員が視聴可能なe-learningプログラムも配信しています。

社内公募・社内副業制度

社員が自律的にキャリア形成し、キャリアプラン実現のために努力する風土を醸成するために、株式会社リコーでは「社内公募」および「社内副業」という制度を導入しています。「社内公募」は人材を探している部門の募集に対し、社員が自らの意思で応募することにより異動を実現する制度です。「社内副業」は社員が勤務時間の一部を使い、社内のやってみたい仕事、テーマ、活動などへ本業と並行してチャレンジできる仕組みです。これらの制度によって、社員のチャレンジ意欲を後押しし、イキイキと活躍するための機会を提供しています。また、部門を超えた人材の流動化や貢献領域の拡大にも繋がるため、社員と会社の双方の成長にも寄与しています。

  • 「社内公募」および「社内副業」は株式会社リコーのみの取り組みです。

人材育成に関する実績

従業員の能力開発にあてられた時間と費用の実績

対象範囲 単位 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
総研修時間 グループ計
(データカバー率100%)
万時間 - - 340.1 410.5
従業員1人当たりの平均研修時間 グループ計
(データカバー率100%)
時間 19.3 38.0 25.6 31.2
従業員1人当たりの平均研修日数*1 グループ計
(データカバー率100%)
2.6 5.1 3.4 4.2
従業員1人当たりの平均研修費用 グループ計
(データカバー率100%)
83,751 90,712 91,943 95,594
  • ※1
    従業員1人当たりの平均研修時間を、東京本社の標準就業時間7.5時間で除した数値を記載

取り組み

マネジメント・リーダーシップ研修

日本国内のリコーグループでは、新任のマネージャーやエキスパートに対し、マネジメントベーシック研修を実施し、着任後1か月以内に必要な知識とスキルの取得を促進しています。
継続した組織目標の達成に向け、任された組織の持てる力を最大限に発揮することを目指し、 実務力アップのために経理や企業情報の適切な開示、経営管理の基本やCSの基本的な知識を学び、 社員にとって心理的安全な職場環境とするために、人事労務管理研修を実施し、過重労働の未然防止に向けた日常管理や、メンタルヘルス教育を実施しスキル教育とあわせてより実践的な内容の教育を実施しています。 また、メンバーの自律的な成長を支援するために、マネジメントや1on1ミーティングの教育も実施することで、マネージャーとしての基本的な知識やスキル取得を確実なものとします。
マネジメントベーシックで基本的な知識・スキルを取得した後、マネージャー全員に対し、マネジメントカレッジにて、マネージャーの役割、面談スキル(1on1)、業績評価・評価フィードバックの面談の仕方、より強い組織を作り成果を創出するために、心理的安全性や個々人の強みを活かすマネジメントスキルを学ぶことで、部下との信頼関係を深め、部下の動機付けと成長支援をより促進することで、マネジメント変革と組織力の向上を目指しています。デザイン思考・アジャイルも学び、職場で実践することでメンバー全体を底上げし、生産性の高い職場実現につなげていきます。また社員エクスペリエンスを”はたらくに歓び”につなげるために、継続的にDEIの研修受講や啓発活動に参加しています。

取り組み効果と実績

2023年度は国内グループ会社従業員のうち7%に当たる約2200人がマネジメントカレッジに参加し、プログラムを終了しています。これらの取り組みの結果、2023年度の国内の360度フィードバックの他者評価結果において、部下へのエンパワーメントが1%、育成力が0.5%、基本姿勢が1%向上しています。また、エンゲージメント調査結果を見ても、「完全にエンゲージしている」と回答する率が前年比で3ポイント上昇しています。マネージャーのスキル向上が、社員の満足度向上へと着実に結びついていることが伺えます。

プロセスDX人材育成

デジタル技術とデータを活用して定型的かつ効率的に業務プロセスを改革できる「型」を定義し、型に基づき改革を実践する「プロセスDX」にリコーグループ全体で取り組んでいます。プロセスDXの実践で必要となるスキルを身に付けることができる、プロセスDX人材育成のプログラムを展開しています。
このプログラムは、4つのレベルで認定するよう設計しており、各レベルの認定者はスキルごとに可視化されています。2024年3月時点、国内リコーグループで基本レベルの教育が完了した従業員は約16,500人、プロセス変革に貢献した実績がある従業員は約1,200人です。
社員一人一人が自律的にこのプログラムを活用することで自身の業務の生産性向上だけでなく業務に対するモチベーション向上も図っています。

取り組み効果と実績

これまでにプロセスDXを実践した成果として約1,300,000時間/年(年間約720人分の労働時間に相当)を創出しており、成長領域へリソースをシフトしています。2022年度からは、社内でのプロセスDX実践の経験・ノウハウをベースにお客様の課題をお客様と共に解決するサービスを提供しており、これまでに多くの実績をあげてきました。2024年3月時点で国内従業員の53%(販売会社除く99%)に当たる約16,500人がこのプログラムに参加し、基本レベルの教育を完了しています。

新入社員研修

厚生労働省の調査によると、新入社員のうち31.5%が3年以内に離職するというデータもあります。(2022年10月時点)リコーグループでは新入社員が自信を持って職務に従事し、リコーの企業理念である“リコーウェイ”を体現し、イキイキと活躍し定着できるよう、内定期間と入社後の両方でトレーニングを行っています。
内定期間にはe-learningを用いてビジネスパーソンとして身につけるべき「ビジネスマナー」および、仕事の進め方の基礎となる「ロジカルシンキング」を学習します。
入社後の新入社員研修では、「自律的に考え行動する姿勢」「仕事の相手やお客様の立場に立つ姿勢」の醸成に重きをおき、より実践的なトレーニングを通じて、現場で活躍するためのスキルと自信を培います。2023年度においては、国内リコーグループの全新入社員644名に対して、新入社員研修を実施しました。(実施率:100%)
また、株式会社リコーにおいては、新入社員向けのフォロー研修を始めとし、入社3年までは年次ごとに想定される課題をテーマとした研修を実施することで、成長を支援しています。
これらの効果として入社3年時点の定着率は90%以上を維持しており、20歳台のエンゲージメントサーベイ結果は「完全にエンゲージメントしている」割合が25%と、全体平均の17%に対して高い水準となっています。

  • 具体的な研修内容・日程は配属先の会社によって異なります。

オンラインで研修を受ける新入社員

社員の学位・認証取得サポート制度

リコーグループでは自律型人材の育成に向けて社員の学びを支援する仕組みを構築しています。
たとえば、プロジェクトマネジメントの資格であるPMP®の受験に必要な学習時間として算入できる研修など、社員のビジネススキル向上やグローバル対応力強化を目的とした研修を年間通じて行っています。
また、株式会社リコーでは全正社員※を対象として、国内外の大学院、MBA、MOT等のビジネス資格取得を目的とした留学のために長期の休暇を取得できる「スキルアップ支援特別長期休暇制度」も運用しており、社員の学び直しを支援しています。

  • パートタイム・契約社員、また、1年以内に退職することが明らかな者を除く

タレントマネジメントと社内ポストのマッチング

株式会社リコーでは、社員が自身のスキル、経歴、チャレンジしてみたい業務、趣味や関心などを人材データベースへ登録する仕組みを推し進めています。集めた社内人材データを一元的に可視化・分析することで、社内にどのような人材がいるのかを把握し、人事戦略へ活用していきます。具体的な活用方法として、社員のスキルや経歴を活かした社内ジョブオファー、個人の強みを一層伸ばすトレーニング支援、お互いのスキルや経歴をきっかけとした社員同士のコミュニケーション促進などを行っています。また、上述の社内公募・副業制度との連携により、社員が挑戦してみたい業務と社内ポストのマッチングにも活かされています。

産官学連携の取り組み

株式会社リコーでは政府研究開発プロジェクトへの参画や大学などの研究機関と包括連携を結ぶことにより、産学連携活動を強化し自社の技術を社会へ還元するとともに研究成果を技術開発社員の学びへ生かす取り組みも実施しています。こうしたパートナーシップに基づく、共同研修プログラムの開発により、社員の学びが深められています。
たとえば、東京工業大学とはリコー次世代デジタルプリンティング技術共同研究講座を2019年より開始。
次世代デジタルプリンティング技術の核となる要素技術に特化した基礎研究を実施し、高速で高解像度の作像技術に繋げるインクジェット技術にフォーカスした研究活動を実施しています。
また株式会社リコーは官民連携にも積極的に取り組んでおり、希望する社員を定期的にグループ外の公的機関へ出向させています。社内にはない業務を経験し官庁の方々と交流することで、知見・見識の幅が大きく広がり、貴重なキャリアアップの機会となっています。

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