入佐 孝宏
リコーデジタルサービス
ビジネスユニット プレジデント
ハイブリッドワークが定着する一方で、オフィスへの回帰を促す動きも進んでいます。こうしたニーズの変化を背景に、時間や場所を問わない柔軟な働き方を支えるオフィスサービスの需要が拡大しています。私たちは、お客様への提供価値を拡大するために、業務プロセスの自動化・最適化によりタスクを減らすプロセスオートメーション(PA)と、創造力を発揮できる環境づくりを支援するワークプレイスエクスペリエンス(WE)を成長領域と定め、経営資源を投下してきました。また、社内実践で培ったAI活用ノウハウをもとに価値提案を強化し、GENIACにも採択されたマルチモーダル大規模言語モデル(LMM)の本格的な開発を進めています。オフィスプリンティング事業のハードウエア収益が減速し、営業利益は前年を下回りましたが、オフィスサービス事業におけるストック収益は前年度比14%の成長を達成し、新たな収益基盤の構築が着実に進みました。さらに、構造改革にも取り組み、収益性の改善を図りました。
多様化するお客様のニーズに対応するため、PAとWEの成長加速が必要です。買収を通じて事業の強みを拡充し、パートナーシップの強化を進めることで、付加価値の高い均質なサービスをグローバルに提供します。また、2024年4月に買収したnatif.aiの先進的な技術のさらなる活用により、お客様のさまざまなワークフローの自動化・高度化に寄与します。さらに、大規模言語モデル(LLM)に加え、図や表、グラフなどにも対応するマルチモーダル大規模言語モデル(LMM)を活用したデジタルクローンやAIエージェントを提供することで、バックオフィスから営業部門の生産性向上までAIによる価値提供の幅を広げていきます。オフィスプリンティング事業の顧客基盤およびノンハードウエアの収益力を維持しつつ、オフィスサービス事業におけるストックビジネスの成長を加速します。また、ROICの向上に向けて、KPIで取り組みを管理し、施策のアップデートを継続します。
| 主要KPIと 2025年度目標 |
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オフィスプリンティング事業を通じて築いたグローバル顧客基盤と、グローバルな販売・サポート体制による顧客接点を強みに、ワークプレイスサービスプロバイダーとして世界中のお客様に均質なサービスを提供しています。また、2024年12月にはガートナーの「Magic Quadrant™ for Document Management」に掲載され、ドキュメントマネジメントの世界的企業として選出されています。
オフィスにおける印刷需要の減少傾向を背景に、オフィスプリンティング事業でのストック収益の縮小リスクが顕在化しています。加えて、国際的な経済情勢の不確実性と関税・貿易政策の変更が、今後の事業活動に影響を及ぼすリスクがあります。一方で、働き方の多様化や企業のDX推進に伴い、オフィスサービスの需要拡大が見込まれています。業務プロセスの自動化やAI活用のニーズの高まりに対応し、お客様のDXを支援するサービスを提供していきます。
人手不足や高齢化といった社会課題への対応として、企業における業務の効率化や自動化に対するニーズが一層高まっています。こうしたお客様への付加価値提案を強化し、オフィスサービス事業の売上高が前年度比で14%成長しました。なかでも、スクラムシリーズは、特定の業種や業務向けの課題解決シナリオを中堅・中小企業のお客様と共に創り出し、付加価値の高いソリューションを効率的に提供しており、売上高は前年度比で30%伸長しました。さらに、戦略的に重点商材を展開したことが、ストック収益の成長にもつながりました。
継続的に収益を生み出すストック収益基盤をさらに強化するために、PC入替需要を活かした案件創出と自社サービス・サポートの付帯率の向上や、パートナーと連携したサービスソリューションを拡大します。また、デジタルサービスとワークプレイスデザインの両輪で生産性の高いワークスタイルを提案するRICOH Smart Huddleの展開を強化します。AI領域では、自社技術に一層磨きをかけ、幅広いお客様の課題に応えていくことで、“AIのリコー”としてのブランド確立を目指します。
関税政策に対する不透明感が続いており、市場の安定性や事業環境の先行きに対する懸念が広がっています。ビジネスプロセスサービスは、業務の効率化と価格戦略の最適化により収益性の改善を実現しました。アプリケーションサービスは、オフィスプリンティング事業のハードウエア販売拡大に伴い、自社製ドキュメント管理ソフトを中心とするソリューション提案によりビジネスが拡大しています。また、大規模な構造改革を通じ、業務効率化と収益性の強化を図りました。
オフィスサービス事業は、事業のポートフォリオの見直しによる売上成長と収益性向上に取り組みます。WEはCeneroとのシナジーを強化し、既存顧客への提案強化による成長拡大を目指します。
オフィスプリンティング事業は、最適な商品・販売戦略と顧客ターゲティングの徹底により収益を維持し、パートナーと連携しながら複合機の販売拡大を図ります。また、関税対応として市場環境に柔軟に対応しながら戦略的な価格調整も展開していきます。
物価上昇は安定しつつあるものの、一部地域では経済活動が鈍化しており、WE領域における商談の長期化が発生しています。一方で、ITサービス領域全体(ITインフラ・ITサービス)が伸長し、ストック収益の成長に貢献しました。また、業務プロセスのデジタル化・自動化の需要の高まりにより、DocuWareのクラウドサービスがPAにおけるストック収益の拡大を牽引しました。
オフィスサービス事業における買収会社とのシナジーを活かし、既存の顧客への新たな付加価値提供を通じて、ストック収益を向上させます。2025年1月にサービス提供を開始した「RICOH Global Security Operation Center」を活用することで、サイバー脅威に対するマネージドセキュリティサービスの展開を拡大します。加えて、オフィスプリンティング事業では、提供商品の見直しを実施しストック収益維持に取り組みます。また、事業ポートフォリオの見直しや組織の最適化による生産性向上を引き続き進めます。
| 2024年度 | 合計 | 地域別 | ||||||
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| 売上高 | 前年同期比 | 日本 | 前年同期比 | 米州 | 前年同期比 | 欧州 | 前年同期比 | |
| ITサービス | ||||||||
| ITインフラ*1 | 3,184 | +9%(+7%) | 2,114 | 14% | 105 | +29%(+22%) | 879 | -4%(-8%) |
| ITサービス*2 | 2,140 | +13%(+11%) | 1,195 | 15% | 139 | -8%(-13%) | 757 | +15%(+10%) |
| プロセスオートメーション | ||||||||
| アプリケーションサービス*3 | 1,787 | +12%(+10%) | 1,101 | 12% | 245 | +10%(+4%) | 383 | +16%(+11%) |
| ビジネスプロセスサービス*4 | 1,361 | +4%(-1%) | 44 | 2% | 1,042 | +5%(-1%) | 245 | -2%(-6%) |
| ワークプレイスエクスペリエンス*5 | 769 | +7%(+3%) | 212 | 8% | 200 | +20%(+14%) | 305 | -3%(-7%) |
中田 克典
リコーデジタルプロダクツ
ビジネスユニット プレジデント
ペーパーレス化の進展により、プリンティング需要は減少傾向にある中で、業務のデジタル化や情報管理の高度化に伴い、デジタルサービスへのニーズは拡大しています。2024年度は、前年度に実施した複合機の生産調整の影響から脱し、生産・販売体制の正常化により稼働率が向上することで、コストダウンが順調に進展しました。また、2024年7月には、リコーと東芝テックとの合弁でエトリア株式会社を組成し、オフィス向け複合機などの開発・生産機能の統合を通じて事業基盤を強化することで、増収増益に寄与しました。製品面では、お客様の生産性向上・DXを支援する複合機・プリンターを中心に、デジタルサービスの成長に寄与するエッジデバイス群を強化しました。
地政学リスクや各国の関税政策などによる世界経済の不透明な状況を受け、引き続きサプライチェーンへの大きな影響が予想されます。プリンティング事業では、エトリア組成後のシナジー効果を活かして他社との協業を深め、リコーブランド外への販売も強化していくことで業界のリーダーポジションを盤石なものにしていきます。生産面では、レジリエントなモノづくり体制を構築し地政学リスクに備えながら、一層の生産・開発のコストダウンを図ります。また、循環型社会の実現に向けて、「LC変換」*1戦略を柱としたモノづくり体制構築に取り組みます。PFUのDI事業*2では、収益構造の変革とストック収益の創出に取り組みます。産業用コンピューター事業では、リコーPFUコンピューティングを設立し、商品ラインアップの拡充や新規領域の成長を加速しています。また、これらの取り組みをKPIで管理し、施策のアップデートを継続することで、ROICの向上につなげていきます。主要KPIは以下のとおりです。
| 主要KPIと 2025年度目標 |
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A3カラー複合機で世界No.1の生産台数を担うエトリアや、世界シェアNo.1のスキャナーをもつPFUなどを中心に、お客様の“はたらく”の変革をサポートするさまざまなデバイスを開発・生産しています。産業用コンピューター領域では、国内シェアNo.1企業*として日本の産業界の成長に貢献しています。
地政学や大規模災害などのリスクによる工場の製造や製品供給への影響を極小化するため、複合機の主力機種を複数拠点で生産し、部品調達先を分散化する体制を築いています。働き方の多様化に伴うプリンティング需要の減少に対しては、エトリアでのシナジーの最大化など、最適な生産・開発体制の構築による収益力強化を進めています。さらに、環境法規制強化やESG要求の高まりに対して、競合他社に先んじた循環型ビジネスモデルの構築を進めています。
リコーと東芝テックは、両社が培ってきた高度な技術力と豊富な経験を融合し、オフィス向け複合機などの画像機器や関連消耗品の開発・生産を担う新たな会社として、エトリア株式会社を2024年7月に組成しました。リコーの関連会社9社と東芝テックの関連会社6社の計15社を傘下に迎え、運営基盤整備と人材・企業文化の融合を着実に進めることで、グループの一体感を高めるとともに、安定した事業運営を実現しています。組成後は、エンジン開発、部品・材料の共同購買、生産拠点の相互活用により、競争力の高い製品を効率的・安定的に供給しています。
プリンティング事業では、2025年2月、株式会社PFU(2022年グループ参入)のスキャナー技術を活用したA3カラー複合機「RICOH IM C6010SD/C4510SD/C3010SD」を発売。多様な紙種やサイズの原稿を高速かつ高精度で読み取ることが可能となり、オフィス業務の効率化とデジタル化を支援する中核機器として高い評価をいただいています。さらに、2025年5月には、東芝テックのエンジン技術を活用したA3モノクロ複合機を市場投入し、製品ラインアップの拡充を図るなど、統合によるシナジー効果を発揮しています。
Auto-ID事業*では、複合機の技術を応用した新たなラベルプリンタを市場投入しました。スキャナーなど多様なデバイスとの接続性を備え、高い拡張性と機能性を実現し、現場の業務効率化とDXを支援しています。
2025年10月には沖電気工業株式会社がエトリアに参画予定です。同社のLEDプリントヘッド技術や生産拠点を活用することで、開発力と生産体制を一層強化します。今後は、リコー・東芝テック・沖電気工業の3社がもつ技術力と販売チャネルを最大限に活かし、高付加価値製品の提供を加速するとともに、持続的な事業成長と企業価値の向上を目指します。
製品を使用後に廃棄する従来の「リニアエコノミー」(直線型経済)から、資源を循環させる「サーキュラーエコノミー」(循環型経済)への変換(LC変換)を推進します。製品の性能・信頼性・コストに加え、「サーキュラーエコノミー」を新たな競争軸と位置付けています。
この実現に向け、モノづくりの全工程で3つの変革に取り組んでいます。第一に、設計・生産段階で「循環型を意識したモノづくり」への転換。第二に、再生機の高品質化と価値再定義による「再生ビジネスの強化」。第三に、使用後製品の回収・再資源化による「循環型エコシステムの構築」です。こうした取り組みの結果、2025年1月には再使用部品の選別・再生・検査を効率化する新技術を導入した再生複合機「RICOH IM C4500F CE/C3000F CE」を発売しました。循環型モノづくりの先駆的企業として業界を牽引し、賛同するパートナーを広げていきます。
2025年4月、リコーインダストリアルソリューションズ株式会社と株式会社PFUの産業用コンピューター事業を統合し、リコーPFUコンピューティング株式会社を設立しました。両社は長年にわたり当該分野で実績を築き、国内製造業の発展を支えてきました。
この狙いは、エッジコンピューティングやAI、IoTといった先端技術の進展に伴い、高度化・多様化する市場ニーズに対応することです。両社が培ってきた高品質・高性能を実現する設計力と、国内工場の相互活用による柔軟な生産体制の構築を通し、柔軟な生産体制を実現し、より迅速かつ多様な顧客ニーズに応えることが可能になりました。
国内シェアNo.1を誇る組込みコンピューター事業やフォント事業に加え、成長が期待されるエッジデバイスやエッジソリューション分野にも注力し、事業のさらなる拡大を図ります。
宮尾 康士
リコーグラフィック
コミュニケーションズ
ビジネスユニット プレジデント
商用印刷市場においては、デジタル化やペーパーレス化が進むなかで小ロットでの発注が増加し、より多様化する印刷物に対し複雑化する作業工程への対応が求められています。また、印刷現場における人手不足から、オペレーションの効率化に対する要望が高まっています。2024年度はドイツのデュッセルドルフで開催された世界最大規模の国際印刷・メディア産業展「drupa2024」に出展し、世界中のさまざまな商用・産業印刷のお客様から100件以上の受注をいただきました。その納入や新製品の拡販などによりプロダクションプリンターの販売が欧米中心に増加し、ノンハードウエアも堅調に成長しました。また、産業印刷事業ではサイングラフィック用途の需要の増加を背景にインクジェットヘッドの販売が増加し、リコーグラフィックコミュニケーションズ全体として売上、営業利益ともに2桁成長しました。
印刷関連事業はアナログからデジタルへの転換期を迎えており、お客様のさまざまなデジタル印刷ニーズに応える製品とソリューションの提供が求められています。商用デジタル印刷でトップブランドの地位を確立するため、主力トナー機の先進国でのシェア拡大と新興国での成長、また、高速インクジェット新製品「RICOH Pro VC80000」や「RICOH Pro Z75」の販売拡大により、ノンハードウエアの収益の積み上げを図ります。さらに、インクジェットヘッド事業の成長を加速します。営業担当者とサービスエンジニアがお客様と緊密に連携することで、基幹部品としての高い付加価値を提供していきます。また、インクジェットヘッド単品の提供だけでなく技術サポート・ツールなども含めた付加価値の高いソリューションを提供することで、主要市場としてマーケットが拡大している中国および他地域への販売拡大を目指します。また、これらの取り組みをKPIで管理し、施策のアップデートを継続することで、ROICの向上につなげていきます。主要KPIは以下のとおりです。
| 主要KPIと 2025年度目標 |
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カラーカットシートプリンターと高速インクジェットプリンターの双方でグローバルリーダーのポジションにあり、顧客接点力を活かした高付加価値 ソリューションを提供しています。インクジェットヘッドは、ピエゾヘッドシェアのトップ3*に位置付けられています。特にサイングラフィック用途においてグローバルで高いシェアをもつほか、テキスタイル、ラベル、パッケージとさまざまな用途のインクジェットヘッドも提供しています。
デジタルメディアの普及による紙媒体の減少や原材料、物流費、人件費の高騰による印刷会社の収益性悪化と投資意欲の減少がリスクとなっています。一方で自動化、省人化、プロセス可視化などのお客様の経営課題の解決に向けてデジタル印刷への移行が加速していること、環境意識の高まりと法規制の強化により環境負荷の少ない印刷システムの需要が拡大していることを好機ととらえており、お客様のニーズに合わせたソリューションを提供していきます。
GainHow Printingは台湾に本社を置くアジア最大級の商用印刷会社であり、伝統的なオフセット印刷機による高品質・大量印刷を武器に、長年にわたり多様な業界にサービスを提供してきました。一方で、印刷業界全体が変革期にあるなか、GainHow Printingは従来のオフセット印刷が抱える高コスト・色のばらつき・柔軟性不足・環境負荷などの課題を認識し、それらを解決する手段としてデジタル印刷への完全移行を戦略の柱としています。その一環として、オンデマンド生産モデルの導入や自動化・ワークフロー最適化を図り、多品種少量印刷や個別対応のニーズに対して柔軟に応える体制を構築しています。リコーはこのアナログからデジタルへの変革をGainHow Printingの戦略的パートナーとして協業し、支えています。高速連続用紙インクジェット・プリンティング・システム「RICOH Pro VC70000」4台の導入により、大量フルカラー印刷においてオフセット並みの画像品質を実現し、訴求力の高いドキュメントの作成を可能にしています。さらに、B2サイズ対応の枚葉インクジェット・プリンティング・システム「RICOH Pro Z75」も導入することで、GainHow Printingが提供する商品ラインナップを強化し、お客様の多様化する印刷ニーズへの対応と生産性向上に寄与しています。加えて、リコーの高度なカラーマネジメントツールの採用により機種を問わず、色の一貫性を確保しました。こうしたデジタル印刷への移行は、廃棄物やエネルギー削減による環境負荷低減にもつながっています。
BOYINは、中国を中心に拡大するテキスタイル市場において事業を展開する産業用印刷機メーカーで、テキスタイル印刷機の開発、製造、販売、保守を手がけています。従来のアナログ印刷工法では、水の大量使用による環境負荷や複雑な工程、長いリードタイムによる生産性やコスト面での課題を抱えています。リコーはBOYINにインクジェットヘッドを提供することで、高画質、高生産性、高耐久性、そして高度な自動化を実現するデジタルテキスタイル印刷機の開発を支援しています。また、インクジェットヘッドの提供にとどまらず、BOYINでのプリンターのコンセプト検証から量産体制の立ち上げ、市場での安定稼働を支援することで強固な信頼関係を構築してきました。特に、多数のインクジェットヘッドを搭載するプリンターの開発と量産体制立ち上げは技術的に高度な取り組みであり、リコーはインク評価や波形チューニングなどの導入サポートを通して、BOYINでの早期量産化と市場展開に貢献しました。リコーは今後も多様なニーズに応える柔軟な開発とサポート力、そしてお客様に寄り添ったソリューションの提供を通じて、お客様の提供する商品・サービスの付加価値向上に貢献していきます。
欧州地域における産業印刷事業を担う新会社Ricoh Printing Solutions Europe Limited.(本社:英国)を設立し、2025年4月から事業活動を開始しました。リコーグラフィックコミュニケーションズビジネスユニットの直轄組織となるRicoh Printing Solutions Europeは、欧州地域における産業用インクジェットヘッドやテキスタイル印刷機などの販売、エンジニアリングサポート、インク評価などの機能を集約し、お客様への一貫した専門的なサポートを実現します。また、産業印刷のコア技術であるインクジェット技術の知見を高め、本社研究開発部門、他地域拠点との連携により、新たなインクジェットの価値をお客様に提供していきます。
塩川 恵一
リコーインダストリアル
ソリューションズ
ビジネスユニット プレジデント
| 主な事業・機能と 製品・サービス |
1.サーマルメディア事業:製造・流通・物流・医療の現場で使われるバーコードラベル用の感熱紙、熱転写リボン、および機能性包材市場のラベルレスサーマルの製造・販売 |
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サーマルメディア市場は世界的な人口増加に伴う消費財の増加により、堅調に成長しています。欧州で市況停滞と価格競争激化により販売が伸び悩みましたが、低価格品の開発と生産効率改善により、収益力が回復し、全体の売上高は微増となりました。国内では環境負荷低減に貢献する剥離紙の無いサーマルラベルなど、社会課題解決型製品の販売を伸ばしました。また、メディアに直接印字が可能なラベルレスサーマルは、商品の視認性や作業工程の簡素化などの顧客価値が評価され、大手コンビニエンスストアのトップシールを中心に導入が進みました。産業プロダクツ事業では、お客様のモノづくり現場の生産効率向上に寄与する自動化設備において、拡販に加え、原価低減や設計プロセス変革により、収益力強化に注力しました。オプティカル事業については事業ポートフォリオマネジメントの一環として事業を譲渡しました。
技術の強みを活かしたデジタルサービスビジネスをグローバル市場に展開すること、また、DXを活用したプロセス改善により、高効率な経営体質を確立します。基盤および成長分野では、大手顧客向けのデジタルサービスビジネスの展開加速により、事業成長を果たします。また、パイプライン案件を確実な成果につなげること、および医療業界などの新規ロイヤルカスタマ―拡大に注力します。さらに、製造現場でのDX活用により、モノづくりプロセス改善を進めます。新規分野では、ラベルレスサーマルの市場拡大などの機能性包材ビジネスを確立し、グローバル市場での成長を目指します。また、リコー独自のインクジェット技術を活用し、車両塗装工程の変革による脱炭素化など、社会課題解決型新規ビジネスの立ち上げに注力します。
サーマルメディア事業では、独自の材料や塗工技術とグローバルな生産・販売体制を活かし、物流・流通・医療業向けサーマルペーパー・熱転写リボンで世界トップシェアを獲得しています。また、メディアに直接印字するラベルレスサーマルを食品パッケージ業界に展開し、省資源化に貢献しています。産業プロダクツ事業では、画像処理や自動化、検査技術など、製造業で培った強みを活かし、生産現場を効率化する製品やソリューションを提供しています。
世界的な人口増加に伴う消費財の増加により、サーマルメディア市場は堅調に成長しているものの、コモディティ化の進行や米国関税政策などのリスクにより、収益性に影響が出る可能性があります。一方、世界的な環境規制の強化による環境負荷低減・SDGs対応製品・サービスのニーズや、外観検査品質の安定化やトレーサビリティの重要性の高まりをチャンスととらえ、事業展開を拡大していきます。
小林 一則
リコーフューチャーズ
ビジネスユニット プレジデント
| 主な事業・機能と 製品・サービス |
1. Smart Vision(SV)事業:360度データを活用した業務特化型ソリューションの提供 |
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日本における労働人口の減少に伴う生産性向上や業務のデジタル化ニーズの拡大、脱炭素・循環型社会の実現や健康寿命の延伸への期待を、事業拡大の好機ととらえています。経済産業省が推進する産業界のDX、蓄電池製造基盤の確立/次世代電池の実用化、バイオ医薬品の開発・製造拠点の整備・増強に対応し、事業展開を進めました。SV事業では、建設業向けビジネスの強化と収益性向上を目的に、大手住宅メーカー様へのサービス提供や、建設プロジェクト管理を展開するクラウドサービス会社様との協業を開始しました。また、国家プロジェクト採択を契機に、BM事業は⽣産ライン拡充を進め受託拡⼤につなげました。一方で、事業ポートフォリオマネジメントの一環として、成⻑事業への経営資源集中を図る戦略のもと、環境素材PLAiR事業を終息させました。
成長領域の選定はすでに完了しているものの、収益化に向けたスピードと投資効率の両立が依然として課題です。成長を狙う領域では投資対象および投資額の上限を明確にし、早期収益化を図ります。さらに、積極的なパートナー開拓により、自社単独では実現できない顧客価値の創出を目指します。SV事業では多様な現場のデジタル化を支援する「RICOH360 ビジネスパッケージ」の提供を開始。360度カメラとクラウドサービスを組み合わせたRICOH360の建設・不動産分野での実績を軸に他業種での展開を進め、新規顧客の獲得と事業成長を実現します。BM事業では、リコーの技術力を評価いただいた製薬企業やアカデミアからの治験薬案件をさらに獲得し、新たな革新的医薬品の創出を支援することで、事業拡大を進めます。IJ電池事業は、パートナーと連携し、電池材料の印刷製造技術の実⽤化検証を加速。本格事業展開に向け、重要技術を確実に獲得します。
360度データを活用した現場のDXのニーズ拡大に対しては、戦略的パートナーと連携し、新たな市場におけるユースケースを開発・展開します。国内創薬力強化のニーズの高まりに対しては、完全子会社のエリクサジェン・サイエンティフィック社と社内の技術を融合し、創薬支援や治験薬製造基盤の整備を進めます。拡大する蓄電池市場には、環境負荷と材料コストの低減を目指して、リコーのIJ技術による革新的なデジタル製造プロセスと、オープンイノベーションを通じて、電池製造に新たな価値を提供します。
建設・設備管理業界を中心に、業務のDXと業務効率化を支援するソリューションです。リコーが培ってきた画像処理や光学技術などの強みを活かし、リコー製360度カメラとクラウドサービスを組み合わせることで、現場情報の記録・共有・管理を一元化。現場の可視化と意思決定の迅速化を実現します。カメラのサポートや導入支援も含まれ、運用にかかる時間と対応コストを大幅に削減します。360度コンテンツに特化した本ソリューションはリコー独自のもので、現場作業の負担軽減と本部の運用効率化を両立し、新たな価値の創出に貢献します。