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特集1 お客様事例/特集2 社員事例

特集1
デジタルサービスの会社としての価値創造
お客様の“はたらく”の変革に貢献

リコーグループは、強みである顧客基盤や顧客接点、自社IPを活かし、はたらく人の創造力の発揮を支えるデジタルサービスを提供しています。成長領域であるプロセスオートメーションやワークプレイスエクスペリエンスにおける導入事例、ESG活動への高い評価が導入の決め手となった事例、独自のAI技術を活用したお客様との価値共創の取り組みをご紹介します。

CASE 1 購買業務のデジタル化を「DocuWare」で実現:
法令対応に加え、DXによる業務効率化や働き方改革を加速

エム・エム ブリッジ株式会社

匠の技術をもつ橋梁建設のプロ集団

橋梁事業をはじめとする鋼構造製品の総合エンジニアリング会社であるエム・エム ブリッジ株式会社。そのルーツは1868年に日本初の鉄の橋「くろがね橋」を建設した長崎製鉄所に遡り、本州四国連絡橋、横浜ベイブリッジ、東京ゲートブリッジなど、名だたる長大橋をはじめとして、数多くの橋梁や鋼構造物の設計から、製作、架設に至るまで一貫して手がけています。

エム・エム ブリッジ株式会社が手掛けた橋梁の写真

POINT

継続的なプロセス改善による生産性向上

法令対応を機に購買業務のデジタル化を推進

柔軟な働き方への対応

お客様の課題

建設業界では、従事者の高齢化や担い手不足などに起因した生産性向上や働き方改革、技術伝承といった課題を抱えています。さらに、電子帳簿保存法の改正により、2024年1月からはすべての電子取引データの保存が義務化されました。エム・エム ブリッジにおいても、見積書、発注書、請求書、納品書などのデジタル化対応が急務となっていました。

導入ソリューションと効果

コンテンツ活用&業務効率化サービス「DocuWare」を2023年10月に導入。これにより、増加する法令対応の負担を軽減しつつ、購買業務における見積取得から発注・請求処理までのワークフロー、および証憑類の保存を電子化しました。導入時に注意したのは実際に業務を担う工場や全国各地の現場に混乱が生じないようにすること。どれだけ優れたシステムであってもそれを使うのは人です。そこで、既存のワークフローや数十ある帳票の大幅な変更を避け、現場に負担をかけることなくデジタル化を進めました。「DocuWare」は基幹システムとの連携が可能で、二重入力の削減や処理ミスの低減にもつながっています。また、従来は現場から書類を郵送していたため月末に処理が集中しがちでしたが、随時処理することが可能になり、懸念された法令対応の追加作業を抑制しつつ、業務負担の軽減や処理の円滑化につながりました。ペーパーレス化による紙帳票の削減も年間約5万枚に及んでいます。DXの範囲は社内業務にとどまらず、取引先への注文書の発行業務にも拡大。2024年12月には請求管理クラウドサービスを導入し、注文書などの電子配布を実現。郵送に関わる業務削減にもつながりました。こうした購買業務におけるデジタル化により、場所にとらわれない柔軟な働き方が可能になりました。現在は、AI技術を活用してデータを自動抽出するインテリジェントキャプチャー機能との連携による、帳票仕分けや項目入力の自動抽出など、さらなる業務の円滑化・高度化の検討も進めています。

VOICE

電子帳簿保存法対応をきっかけに、購買業務のデジタル化が迫られるなか、リコーのシステムを導入しました。決め手となったのは現状のワークフローを変えずに電子化・システム化の提案をしてくれたこと。加えて、検討時におけるテスト導入の希望への快い対応のほか、導入後も購買業務のDX加速に向けた継続的な改善提案をしていただいています。こうして常に我々に寄り添い、伴走してもらえることで安心してサポートをお任せすることができています。法令順守はもちろん、生産性向上や働き方改革の実現などで着実にDXの成果が表れており、公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会から「第18回 JIIMAベストプラクティス賞優秀賞」を受賞するなど、対外的な評価もいただくことができました。

左)資材部 部長:菱木孝浩 様
中)技術部 DX推進G 主席:長尾英知 様
右)資材部:佐藤智尋 様

CASE 2 お客様の本社移転プロジェクトを遂行:
社員の創造力を高める革新的なワークプレイスを実現

GIUFFRÈ FRANCIS LEFEBVRE(ジュフレ・フランシス・ルフェーブル)

イタリアを代表する法律関連出版社

法律、税務、金融に関する定期刊行物の印刷・配布を行っている出版社。ミラノに本社を置き、欧州に8つの子会社を展開。2,400人以上の社員を擁しています。1万冊以上の出版物に加え、法律専門家向けに専門的なソフトウエア、研修、eラーニングサービスを提供しています。

ジュフレ・フランシス・ルフェーブルが入居する、ミラノのオフィスビル『Monte Rosa 91』

POINT

オフィス勤務者とリモート勤務者間のシームレスなコラボレーション

最先端のワークプレイスで社員の生産性を向上

複数部門を巻き込んだプロジェクトの遂行

お客様の課題

ジュフレ・フランシス・ルフェーブルは本社移転を機に、社員が生き生きと活躍できる新たな働き方の導入を検討していました。同社が目指したのは、従来のオフィスにとらわれず、さまざまな場所で働く社員同士が円滑にコミュニケーションやコラボレーションできるハイブリッドワーク環境を整えること。これにより、社員の柔軟な働き方を支援するとともに、モチベーションの向上や創造力の発揮を促し、より高い生産性やエンゲージメント向上を図ることを目指していました。

導入ソリューションと効果

ジュフレ・フランシス・ルフェーブルは、本社移転プロジェクトをオフィスプリンティング関連で取引のあったリコーイタリアに依頼。リコーイタリアは、ジュフレ・フランシス・ルフェーブル社内のIT、施設管理、人事などの部門はもちろん、改修工事を担当した建築家やデザイナーなどの外部パートナーとも連携してプロジェクトを遂行しました。新オフィスには、ビデオ会議機器を備えた2-3人用の小規模会議室から、チームでのコラボレーションを促進する中規模会議室、ハイブリッドワークに対応した大規模な研修室まで、用途に応じた14 の会議室を設置しました。また、社内外のイベントに活用できる大規模ホールも新設されました。これらの設備は、クラウド型の予約管理サービス「RICOH Spaces」により、スマートフォンから簡単に予約が可能。来訪者のゲスト管理機能も備えており、受付でのチェックイン手続きの効率化と来訪者の利便性向上を実現しました。これらのソリューションの導入により、オフィス勤務者とリモート勤務者の間で、シームレスなコラボレーションが可能となり、生産性向上に加え、社員の創造力を引き出すことに寄与しました。

VOICE

社員にとって非常に使いやすく、社員エクスペリエンスを向上させる職場環境を整えたい。そしてそれを社員自身が実感できるようにしたいと考えていました。リコーイタリアのプロフェッショナルによる仕事ぶりと、当社のニーズに合わせて迅速にサポートしてくださる対応力には非常に満足しています。働き方は常に進化しています。私たちはその変化に柔軟に対応していかなければなりません。その点からも、今後もリコーとの連携を継続していきたいと考えています。

ジュフレ・フランシス・ルフェーブルのロゴ

Carlotta Uttini
Demand Manager

CASE 3 環境性能の高い複合機を一括導入:
お客様のサステナビリティ推進に貢献

KVK(Kamer van Koophandel オランダ商工会議所)

ビジネスの発展を支えるオランダの公的機関

KVK(オランダ商工会議所)は、企業の設立や運営支援、商業登記の管理を担う公的機関です。すべての企業はKVKへの登録が義務付けられており、起業支援、法的助言、情報提供などを通じて、オランダのビジネス環境の発展を支えています。

POINT

120台の複合機を適切かつ効率的に一元管理

省エネ性能が高く、強固なセキュリティ機能を備えた複合機の一括提供

リコーオランダによる社会貢献活動がサプライヤー選定の加点要素に

お客様の課題

KVKは、公共機関が物品・サービス・工事などを調達する際の法的枠組みであるAW 2012(公共調達法)に則り、複合機およびプリンターの供給ならびに関連サービスに関する契約締結のため、入札を通じてサプライヤーを選定しました。選定にあたりKVKが重視したのは、柔軟性が高く、サステナブルで使いやすい複合機およびプリンターの提供に加え、効率よく機器の最適化を実現できること。さらに、単に印刷ニーズを満たすだけでなく、サステナブルな調達方針の推進や印刷インフラの最適化について助言・支援が可能なサプライヤーとの持続的なパートナーシップを目指していました。

導入ソリューションと効果

今回リコーが提供した印刷ソリューションは、「RICOH IM C4510A」と「RICOH IM 460」の複合機120台に加え、プリント管理ソフトウェア「RICOH Streamline NX V3」、時間や場所を問わない印刷を可能にする「RICOH myPrint」、そしてアプリケーション管理ツールで構成されています。複合機は環境性能に優れた最新モデルです。エネルギー効率の高さ(TEC値)、長寿命、機器や部品の再利用性、環境に配慮した製造プロセス、ライフサイクル全体における再生利用の可能性などに加え、両機種に搭載された「RICOH Always Current Technology」により、ファームウエアを常に最新にアップデートできるため、長期にわたるセキュリティ対策が可能です。これらの環境性能を含めた提案がKVKから高く評価されました。

さらに、機器の環境性能だけでなく、地域の障がい者就労支援センターと連携し、オランダの販売会社で専任チームを受け入れるという、就労雇用創出支援の取り組みも加点要素として評価されました。

VOICE

当所では、特定の形式や仕様での印刷が必要な文書や関連する業務が膨大にあります。そのため、PoC(概念実証)の期間が長くかかりましたが、リコーオランダにきめ細かに導入サポートいただき、新しい印刷環境への移行がスムーズに進みました。そのおかげで所員もすぐに問題なく印刷を始めることができました。

KVKのロゴ

Jurandi Mari
Product Owner Modern Workplace

AI技術の活用による新たな価値提供

生成AIの出現でDXは新たなフェーズに入りました。
AIの可能性への期待が大きく高まるなか、さまざまな業務での活用が加速しています。
リコーは独自のAI技術開発や社内実践を通じて蓄積したノウハウを組み合わせ、お客様のDXを支援しています。

独自のAI技術により、お客様の“はたらく”を変革

リコーは1980年代から、得意とする画像認識技術や自然言語処理技術を活かしてAI開発に取り組んできました。2023年3月に独自の大規模言語モデル(LLM)を開発。2024年10月および2025年7月には経済産業省による国内生成AI開発力強化に向けたプロジェクト「GENIAC*」にも連続して採択され、図表を含むドキュメントの読み取りに対応したマルチモーダル大規模言語モデル(LMM)を開発しています。

日本には業歴100年以上の長寿企業が世界で最も多くあり、属人化されたノウハウが多様な形式の文書として蓄積されています。AIを業務で活用するには、業界や企業ごとの独自データを学習させる必要がありますが、日本の文書は、図や表組・画像などが組み込まれた複雑な形式が多く、従来のAIでは学習が困難でした。リコーは、こうした文書の読み取りに対応したLMMを開発・提供することで、日本企業の競争力向上に貢献しています。

AI導入における課題の1つがセキュリティです。金融機関や医療機関では、クラウド上に個人情報などの機微な情報をアップロードできないことが多いため、リコーは、オンプレミスで利用可能なLLMを開発・提供。AIへの指示に用いるコマンドや自然言語プロンプトを含むすべての情報を社内ネットワーク上で処理できるため、安心して利用できます。さらにリコーグループでは、「AIの民主化(市民開発)」を推進。現場の担当者がノーコードツールを活用して自らAIアプリケーションを開発し、業務改善のユースケースを創出。これをもとに、お客様への業務改善提案に活かしています。

  • 経済産業省の国内生成AI開発力強化プロジェクト
事例❶

損害保険ジャパン株式会社(損保ジャパン)では、代理店、営業店、本社間における保険の引受・規定に関わる照会対応の効率化と利便性の向上が課題となっていました。

リコーは、GENIACに採択されたLMM開発の一環として、損保ジャパンの保険業務に特化したプライベートLMMを共同開発。社内に蓄積された膨大な規定や、複雑な図表を含むマニュアル、Q&Aデータなどを学習させた結果、他のモデルと比較しても高い読解精度を示すことが確認できました。今後このモデルは、同社がすでに全社展開している、社内外からの照会内容に対して最適な回答案を自動生成するシステムへ適用される予定です。

事例❷

日本赤十字社那須赤十字病院は、リコー製LLMを導入し、入院患者の退院時に他の医療機関やケア施設と情報を共有するための「退院サマリー」の作成業務を大幅に効率化しました。退院サマリーは入院中のさまざまな情報を参照しながら主治医が作成するもので、医師の長時間労働が社会課題となるなかで、特に負担の大きな業務の1つとされていました。リコー製LLMは、700億パラメータという大規模モデルでありながら、省リソース設計によりオンプレミス環境での運用が可能です。これにより、機密性の高い患者情報を安全に取り扱いながら、AIを活用できます。また、AIアプリケーションの開発ツールや教育プログラムもあわせて提供することで、医療現場におけるAI活用の促進を支援しています。

日本赤十字社那須赤十字病院の写真

特集2
一人ひとりが変革の主役となる
変革を推進する社員の力

デジタルサービスの会社への変革を実現するため非常に重要となるのが人的資本です。リコーグループでは、「自律」「成長」「“はたらく”に歓びを」を3つの柱として、人的資本強化に取り組んでいます。社員一人ひとりが自主性・自律性を発揮し、顧客価値の創造につなげることで、個人の成長と事業の成長の同時実現を目指しています。特集2では、それぞれの現場で自律的に挑戦し、生き生きと活躍する社員をご紹介します。

CASE 1 現状に満足しない新たな挑戦で、
自身と会社に変革をもたらす

Albert Sarria Zahonero

Ricoh España S.L.U. Hyper-Automation Digital Factory
Project Manager

2010年にリコースペインに入社し、印刷ソフトウエアの技術サポート業務に携わる。 その後、リコーヨーロッパが運営する人材育成プログラム*への参加を経て、現在は社内外の業務プロセス効率化プロジェクト「Hyper-Automation Digital Factory」のプロジェクトマネジメントに従事。

  • 人材育成プログラム:デジタル・サービスアカデミー「SCALAプログラム」

学び続ける意志が変革を加速させる

私はリコースペインで15年以上にわたり働いてきました。キャリアのスタートは印刷ソフトウエアの技術サポートでしたが、現在は、「Hyper-Automation Digital Factory」のプロジェクトマネジメントを担っています。このプロジェクトはデジタル技術を駆使して業務を自動化し、部門横断的にビジネスプロセスを変革することを目的としています。自社の業務を効率化し、その成果をお客様への価値提供につなげることが私の役割です。

以前の業務には満足していましたし、マネージャーとして安定した立場にありました。しかし、「このままでいいのか」という思いが芽生え、より広い視野と高度なスキルを身につけたいと、「SCALAプログラム」に参加しました。

このプログラムでは、英国・ドイツ・イタリアなど、ヨーロッパ各国の同僚とチームを組み、実践的な学びを得ることができました。文化の違いを理解し、柔軟なコミュニケーション力を養うとともに、Microsoft Azure* FundamentalsやDocuWareなどの資格を取得し、業務プロセスの自動化設計に関するスキルも向上しました。もともとはプリンティングソリューションに注力していましたが、このプログラムを通して新しいデジタル技術やツールに関する知識を習得し、現在の業務に活かしています。転記や確認などの繰り返し作業を減らし、人が本来注力すべき創造的な業務に集中できる環境を整えることで、お客様に大きな成果をもたらすことができ、私自身もお客様に喜んでいただいていることにやりがいを感じています。また、新しいスキルや技術を取り入れることで、従来とは異なるアプローチで業務改善が可能であることを実感しています。

もちろん、日常業務と学習の両立は容易ではなく、時間的な制約や調整の難しさもありました。それでもこのプログラムは、私自身にとっても会社にとっても非常に有意義であると実感しています。

AIなどの技術革新が加速度的に進む今、変化に対応するためには「学び続けること」が不可欠です。私たちの役割は、お客様のDXを支援すること。その実現のために、まずは私たち自身が進化し続けることがリコーグループの未来を創る原動力になると信じています。

  • Microsoft、Azureは、米国およびその他の国におけるMicrosoft Corporationの登録商標です。
デジタル人材の育成を加速(リコーヨーロッパ)

デジタル・サービスアカデミーは、変化の激しいビジネス環境において成功するために必要となるデジタル技術を身につけ、将来を見据えた能力を育成することを目的とした、リコーヨーロッパの人材育成プログラムです。能力開発とビジネス戦略を両立することで、リコーヨーロッパ全体のデジタル変革をサポートしています。教育内容は、DXを支援するために必要となるAIなどのデジタル技術やサイバーセキュリティの知識、プロジェクトマネジメントのスキルなど多岐にわたり、全事業分野における人材強化と組織の競争力向上につながっています。

CASE 2 未来の業務改善の種を蒔き
リコーならではの新しい価値を創出

櫻井 陽一

株式会社リコー デジタル戦略部 プロセス・IT・データ統括 DX企画室
イノベーション推進グループ グループリーダー

2010年に入社。プリンターのシステム設計に携わり、商用印刷市場向けの「RICOH Pro C5110S/C5100S」「同SG 5200」などを開発。その後、3Dプリンターの研究開発を経験し、2020年からはデジタル技術を活用した社内業務改善のプロセスづくりに従事。

チャレンジを尊重する社風が新たな領域への一歩を後押し

私はこれまでプリンターのシステム設計や3Dプリンターの研究開発など、主にハードウエアの開発に携わってきました。入社から10年が経ち「商品を作ってお客様に届けるまでの一連のプロセスは経験できた」と感じ始めていた時、プロセスDX*推進部門の社内公募を見つけました。ゼロから新しいプロジェクトを立ち上げたいと思い立って手を挙げたんです。

  • プロセスDX:デジタル技術を使った業務プロセス変革

DXを推進するという新たな領域へと踏み出すにあたっては、デジタル人材を目指し自律的に学ぶためのプラットフォームである「リコーデジタルアカデミー」が大いに役立ちました。リコーデジタルアカデミーはオンラインで多様なジャンルの専門知識が学べるプラットフォームです。ここで学び、データサイエンスやビジネスアナリシスなどの資格を取得しました。また、さまざまな業務課題を解決するためのアプリケーション開発のアイデアを競う社内のアイディアソンにも参加し、業務改善アプリの開発などを経験しました。もともと未知のことを学ぶのが好きなので、新しい領域の仕事に対する不安はほとんどなかったですね。そもそもリコーには社員の自律性を尊重し、新たな挑戦を後押ししてくれる社風があります。そのおかげで入社時には想像もしていなかった領域の仕事に関わることができていると感じています。

異動後は、「プロセスDX」を推進してきました。なかでもAIを活用した経理業務改善プロジェクトは、プロセスDXの成功事例の1つとして外部メディアにも取り上げていただきました。経理担当者の日々の業務を可視化させるところからスタートしたのですが、業務全体の約15%は社員からの問い合わせ対応に時間を要しているということがわかりました。そこで、問い合わせそのものをAIが可能な限り対応してくれるシステムを構築し、結果として年間で約9,500時間を創出することができました。

現在は、顕在化している課題に対してではなく、未来の業務改善の「種」となるようなノウハウの蓄積に取り組んでいます。例えば、ユーザーの指示に基づいて自律的にタスクを実行して課題を解決する「AIエージェント」に関する検証もその1つです。これからの未来、AIエージェントが私たちの業務に導入された場合、社員の働き方はどう変わっていくのか——。その検証結果を踏まえて自分たちの業務に実装していこうとしているんです。

このような社内実践で得られたノウハウがリコーの強みとなり、それを積極的にお客様に提供することが、リコーならではデジタルサービスだと考えています。お客様にお困りごとがあれば、何でも相談していただける会社でありたい。そのためにもAIという技術的なビッグトレンドを活用して、新しい価値の創出に貢献していきたいです。

デジタルアカデミーで高度なデジタル技術の習得をサポート(国内リコーグループ)

国内で展開している「リコーデジタルアカデミー」はデジタルサービスを創出・加速させるデジタル人材を育成するための学びのプラットフォームです。多彩なジャンルのオンライン講座を豊富に用意しており、さまざまな社内外の研修やeラーニング、ワークショップと組み合わせてデジタルスキルの向上を図ることができます。「社内デジタル革命 アイディアソン」は2020年に開始された社内DX推進施策の1つで、現場の課題に対して参加者がアイデアをもち寄り、デジタル技術を活用して改善を図っていく社内実践の取り組みです。

CASE 3 お客様に寄り添うことで真に価値ある
ソリューションが提供できる

Nicole Blohm

Ricoh USA, Inc. Digital Services & Delivery
Portfolio Strategy & Product Management Vice President

リコーUSAに20年以上在籍し、マーケティング、営業、商品戦略、経営管理など多岐にわたる要職を歴任。現在は、北米におけるデジタルサービスの戦略全体を担い、事業ポートフォリオ戦略やプロダクトマネジメントを推進。変化するお客様のニーズに柔軟に対応しながら革新的で拡張性のあるソリューションの提供に尽力している。

「お客様の立場に立つこと」─その姿勢が、価値あるソリューションを生み出す

私の役割は、リコーUSAの持続的な成長と収益性向上を実現させるために、革新性、市場ニーズ、そして業績のバランスを取りながら、事業ポートフォリオ戦略やプロダクトマネジメントを適切に遂行するための投資判断を行うことです。商品ライフサイクルの管理、市場との適合性評価、戦略的な優先順位付けを通じて、売上の拡大と投資対効果の最大化を図り、変化の激しい市場の中でリコーの競争力を維持していきます。

私は、技術の進歩や役割の変化に合わせて、現状に満足することなく、学びを続けています。市場調査や研修などを通じてスキルを磨いているほか、お客様との会話から多くの学びを得ています。

同時に、チーム全員で戦略の方向性を共有し、共通の目的に向かって協働できるようにすることを重視しています。これらは、長期的にお客様に優れたサービスを提供し続けるために不可欠だと考えています。

近年では、業務の効率化と新たな価値創出の両立を目指し、AIの活用にも力を入れています。反復的で重要度の低い作業を自動化することで、私たちが創造力を発揮できる領域に集中できる環境を整え、お客様への提供価値につなげています。AIの導入には学びと試行錯誤が伴いますが、すべての社員が効率を高めるために取り組むことで、より大きな成果が生まれると信じています。AIは急速に変化する環境のスピードをさらに加速させていますが、私たちは変化についていくために、この数年間で市場へのアプローチを改善してきました。

現在は、探索活動の初期段階からお客様の声を取り入れ、市場動向を丹念に調査し、実際の利用者に直接話を聞くことで、「このサービスはお客様の課題を解決することができるのか」「課題を解決することでお客様のビジネスにどういった影響を与えることができるのか」といった本質的な問いに向き合っています。こうしたお客様からのインプットは、私たちの戦略を決める上で極めて重要な要素となっています。

私が仕事をするうえで大切にしているのは、共感の力です。お客様の立場に立ち、何にお困りなのか、何に価値を感じているのかを理解すること。話すよりも、まず聞くことを重視し、相手の思いや行動の背景にある動機を正しく捉えるよう努めています。こうした姿勢が、心に届く提案へとつながっていきます。そして、どんな立場の方にとっても、それぞれの働く環境において使いやすいサービスの提供を目指しています。

私の原動力は、「働くことを通じて、誰かに良い影響をもたらしたい」という想いです。共感を土台に、柔軟に対応し、常に学び続ける──その積み重ねが、本当に意味のあるソリューションを生み出すと信じています。

社員の自律的な学習を後押し(リコーUSA)

リコーUSAでは、社員が自律的に新たな知識や技術を学ぶことを奨励しており、個人やチームでの学習についてさまざまなサポートを行っています。特にAIをはじめとするデジタル技術は進化が激しく、常に知識や技術のアップデートが必要になります。ビジネス全般にまつわる知識のほか、データ分析、ワークフロー自動化といったDX関連の研修プログラムを知識レベルに応じて社員が選択できる仕組みになっています。

CASE 4 サステナビリティの取り組みがお客様との信頼関係と事業成長を育む

髙橋 摩衣

リコージャパン株式会社
経営企画本部
ESGセンター ESG推進部
サステナビリティ推進グループリーダー

2010年に入社し、首都圏の中堅・大手のお客様に各種ソリューションやシステムを提案する営業担当として活躍。2020年にSDGsキーパーソンに登録し、現在は自身の希望で異動し、リコージャパン全体のSDGs/ESGの推進を担当。

松延 史朗

リコージャパン株式会社
滋賀支社 滋賀第一営業部
湖南LAグループリーダー

2000年に入社以来24年間、京都支社に営業担当として勤務。2020年にSDGsキーパーソンに登録。現在、滋賀支社営業部LAグループリーダーとして社内/社外においてSDGs/ESGの推進活動を行っている。

「SDGsキーパーソン」はどのような活動を行っているのでしょう?

髙橋:私が所属するESG推進部門でSDGsキーパーソン制度を運営しています。この制度は、社内外問わずSDGsの取り組みを推進することを目的に2018年にスタートしました。立ち上げ当初は約90人でしたが、現在のメンバーは約640人にのぼります。自組織内にSDGsを定着させることはもちろんですが、お客様や地域の課題を理解してどのような価値提供ができるのかを考え活動しています。

松延:私もSDGsキーパーソンの一人です。当初は受け身だったメンバーも積極的に取り組み、各部門で活動が活性化してきたと感じています。SDGsという言葉が浸透してきたという社会背景もあり、SDGsキーパーソンで得た知識やノウハウを通じて、お客様に貢献したいと考える営業担当者も増えてきました。

SDGsキーパーソンの活動にはどのような特徴がありますか?

髙橋:ユニークなのはSDGsキーパーソンに登録された方による社内コミュニティの存在です。そこでは毎日のように情報交換が行われていて、いいところはお互いに取り入れるというサイクルが生まれているんです。お客様と共に、持続可能な社会づくりにどう取り組むか、社会課題の解決にどう結び付けるかをそれぞれが模索するなか、いつでも気軽に相談し合える場所があるというのは大きいです。コミュニティという場なので、みんなフラットな関係性で意見交換ができています。

松延:このコミュニティは、日々の活動に大変役立っていますし、全国に同じ志をもった仲間がいることを実感できて心強く感じています。

髙橋:SDGs/ESGに対する社員の意識は非常に高いと感じています。これはそれぞれの現場での取り組みの積み重ねによるものと思います。自分たちの事業と社会課題解決がどうつながっていくのかを伝えるためのワークショップを開催したり、My SDGs宣言と題し各自の目標を貼り出すといったさまざまな取り組みを、SDGsキーパーソンが主体的に行っています。本社がトップダウンで情報発信するのも大切ですが、それだけではなかなか自分ごと化できないと感じています。でも、この取り組みは、社員が自発的に発案し楽しみながら形にしていくので、全国にあるリコージャパン各社に広がりました。

具体的な業務にはどのように活かされているのでしょうか?

松延:以前、小規模事業者の営業を担当していたんですが、ある日、大手を担当する部署に異動になったんです。それまでと違い、訪問前にアポイントをとり、応接室に通されて商談をするのですが、当初は何を話せばよいかわかりませんでした(笑)。でもSDGsに関する知識があれば、新人であれ大会社の社長であれ、SDGsの17のゴールは同じなので共通言語になるんですよね。

髙橋:今の部署に異動する前は首都圏の営業担当だったんですが、東京の市場は競合他社がたくさんいる激戦区。そんな中でリコーを選んでいただくためには、商品の魅力だけでなく、SDGsや環境経営のこと、リコーが目指す姿やビジョンを伝えることが信頼につながると感じていました。自ら異動を希望したのは、そうした経験をもとにSDGsキーパーソンの取り組みをもっと広げたいという想いがあったからなんです。

松延:今は提案内容が適切かどうかという点だけでなく、企業姿勢や会社への信頼などが選定時の要件の1つとしてますます重要になってきていると感じています。だからこそ、リコーグループのサステナビリティの取り組みをお伝えして、「付き合うに値する会社だ」と思っていただけることが非常に重要だと感じています。それまでは「売る」「買う」という関係だったのが、社会課題を解決するという同じ目的をもったパートナーであり伴走者に変わっていく。そういう提案活動ができるようになったのは大きいですね。

お客様からの反応はいかがですか?

松延:お客様から「新入社員向けのSDGs研修をやってほしい」というご要望があり、講師に若手の営業担当者を起用したんです。研修後に「営業さんがこれだけSDGsのことを理解されているんですね。社内の浸透度の高さを感じました」というお褒めの言葉をいただき、感激しました。

髙橋:「SDGs/ESGに取り組むにはどうしたらいいのか」と悩んでいる企業はたくさんあります。とある企業もトップダウンでSDGsに取り組むことになって、何をどうすればよいのかと悩まれていたので、SDGsキーパーソンが伴走してご支援したんです。それをきっかけに信頼関係を築くことができ、リコーの商品を率先して選んでいただけるようにもなりました。さらにそのお客様は、自社のSDGsの取り組みを社内外に発信できるようになり、地域や業界内でSDGs推進企業として認知されるまでになりました。私たちの活動が、お客様のさらにその先まで波及していると知ってうれしかったですね。

松延:これからの時代は価格競争で生き残っていくのではなく、価格ではない部分での価値をどれだけ提供できるかがカギになりますよね。むしろ「価格だけの比較なら、うちは遠慮させていただきます。持続可能な社会づくりが実現できるパートナーとしての比較をしてください。」といった流れにしていきたいです。

髙橋:持続可能な社会の実現に向けた取り組みがビジネスにつながり業績に貢献した事例をリコージャパン内に水平展開していくことにも力を入れています。

松延:リコージャパンの営業担当者は全国で約7,800人いるんですよ。日本全国に同じマインドをもった仲間がたくさんいて、それぞれがお客様や地域の課題に寄り添い、伴走している。こういう仲間をさらに増やしていきたいですよね。

髙橋:お客様のSDGs/ESGの取り組みをサポートすることで、企業が元気になりますよね。企業が元気になるとその地域も、ひいては日本全体が元気になっていく。この取り組みを通じて、そういうポジティブなサイクルを生み出し、地域から日本、そして世界に広げていきたいですね。

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