※所属・役職はすべて記事公開時点のものです。
デジタルサービスの会社への変革を実現するために非常に重要となるのが人的資本です。リコーグループでは、「自律」「成長」「"はたらく"に歓びを」を3つの柱として、人的資本強化に取り組んでいます。社員一人ひとりが自主性・自律性を発揮し、顧客価値の創造につなげることで、個人の成長と事業の成長の同時実現を目指しています。今回はリコージャパン エンタープライズ事業本部 インダストリー事業部 事業部長の綱島徹義氏に、AIエバンジェリストとしての学びや実践、そしてお客様への価値提供のあり方について話を聞きました。
1991年に新卒でリコーに入社して以来、30年以上にわたり営業現場の最前線でお客様の業務改善に従事してきました。現在は、東京に本社を構える大手製造業のお客様を担当する事業責任者を務めています。私たちはデジタルツールを活用し、お客様のDX支援や業務改善のための様々な提案を行っているのですが、ここ数年は毎日のようにお客様との会話の中でAIが話題にのぼっています。
そうですね。これからはあらゆるところにAIが当たり前のように組み込まれて活用されるようになり、「AIを使う人はAIを使わない人にとって代わる」とも言われています。私自身もAIを理解しないと今後仕事を続けていくことが難しくなっていく…そんな危機感もありました。そんな折に社内で「AIエバンジェリスト」という制度がスタートすることを知り、「知識やスキルが学べる絶好のチャンスではないか」と考え真っ先に手を挙げました。
私自身がAIを学ぶことで、営業部門の課題となっていた膨大な営業メンバーの付帯業務を、デジタルツールを使って削減し、お客様への提案活動にもっと時間を割けるようにしたいと考えていました。また、事業責任者である私が率先して取り組むことで、メンバー全体の意識を高められればという想いもあったのですが、その甲斐あってか140名ほどの事業部のメンバーのうち40名ほどが「AIエバンジェリスト」育成プログラムに参加してくれました。
綱島 徹義(つなしま てつよし)
リコージャパン株式会社 エンタープライズ事業本部 インダストリー事業部
事業部長
「AIエバンジェリスト」とは、AIを業務で活用するための社内実践の推進と、AIのスペシャリストとしてお客様への業務改善提案を担うことを目的にスタートした育成制度です。AIエバンジェリストの育成プログラムでは、eラーニングによるAIの基本的な知識やトレンドの学習はもちろんですが、リコーのAI開発の方向性などについての講義を受けることもできます。そこで培った知識を活かしてG(ジェネラリスト)検定※などの外部資格を取得することも推奨されています。
さらに、それぞれの講義の終了後にはアンケートがあり、そこで自分の理解度を把握できる仕掛けもありました。AIをどのように活用すれば自身の業務効率化や生産性向上が行えるかを考えてテーマ出しし、具体的な業務改善を検討するといった実践的なプログラムも用意されており、そのどれもが学びのある内容でした。そうして規定されている要件を満たした社員だけが「AIエバンジェリスト」として認められます。
AIエバンジェリスト認定者のみに贈られるネックストラップ
これまで、お客様のトップ層の方々や新規のお客様に訪問させていただく準備として、公開情報であるお客様の統合報告書などを営業メンバー自身が読み込んで、お客様の経営課題や事業課題に対する仮説の課題解決案を作成していました。
しかしこの作業は非常に時間がかかるものでした。そこでAIを使ってお客様の課題を自動的に抽出し、リコーがもつソリューションアセット情報をかけあわせて、仮説の課題解決の提案資料を自動生成できるようにしました。このテーマを推進するにあたっては、様々な関連部門から支援を受けましたが、その甲斐もあって、作業時間をおよそ75%削減することができました。
私たちはAIに限らずデジタルツールを活用した業務改善を行っていますが、AIは仕事の進め方、働き方、そしてビジネスの在り方を根本から変えていくとともに、企業が生き残っていくための生命線にもなると考えています。一方でAIはどこでどう使ったら価値を生むのか、実際の業務にどう適用するかが難しいといった点が課題でもあるので、自分たちで積極的に社内実践していくことが非常に大切だと思っています。
お客様の業務改善をご支援することが私たちの仕事ですが、お客様が抱える真の課題を引き出すために、まずは私たちが実践していることをお伝えするようにしています。具体的にAIなどのデジタルツールを業務改善でどのように活用しているのかをお伝えするとお客様との距離感がグッと縮まりますし、社内実践をするなかで失敗したエピソードをお話しすることもお客様にとっては価値になるかと思います。また、自社のソリューションや商品開発にまでつながることもあります。
私自身は事業責任者ですので、一つ一つの業務をAIで効率化するということより、今後も組織全体でAIを活用していくためのスキームづくりに力を入れていくつもりです。
リコーは1977年に「機械にできることは機械に任せ、人はより創造的な仕事をするべきだ」という想いで「OA(オフィス・オートメーション)」を提唱しました。現在においても、その想いは脈々と引き継がれています。デジタルの力を用いてお客様の創造力の発揮を支え、お客様の"はたらく歓び"の実現に寄り添っていきたいと思っています。その一つの方法としてAI導入の実践事例をより多く創出し、お客様の課題解決につなげていきたいと思います。