Change Country/Area リコーグループ企業・IRサイト

お役立ちコラム ノーコードツールとは?市民開発で進む「AIアプリ内製化」が組織にもたらす変革と未来

2026年2月6日
  • AI
  • DX
ノーコードツールが求められる理由や活用を成功させるポイントを解説

ノーコードツールとは、プログラミングの知識がなくても直感的かつ視覚的な操作によってアプリや業務システム、Webサイトなどを開発・制作できるツールのことです。

近年、DXの文脈においてノーコードツールやそれらを使った「市民開発」への注目度が高まっています。本記事では、ノーコードツールの基本的な仕組みやローコードツールとの違いを整理したうえで、企業にノーコードツールが求められている理由やノーコードAI開発ツールの活用を成功させるポイントを解説します。

この記事で分かること

  • ノーコードツールは非エンジニアでも業務アプリやAIアプリを内製できる開発基盤であり、「市民開発」を実現するのに有効
  • エンジニア不足や業務の高度化を背景に、ノーコードツールによる開発は世界的に不可逆な潮流となっている
  • 生成AIとノーコードツールの融合により、現場主導で自社専用AIボットや業務自動化を実現できる時代が到来している
  • リコーの事例が示すように、ノーコードAIツールの活用を成功させる鍵は社内の文化醸成とガバナンスを両立させた導入設計にある

ノーコードツールとは?仕組み・特徴・ローコードツールとの違いを解説

「ノーコード」とは文字通り、コード(プログラミング言語)を一切書かない開発手法のことで、その開発を実現するソフトウェアやプラットフォームを一般的に「ノーコードツール」と呼びます。ドラッグ&ドロップなどの直感的かつ視覚的な操作によって業務アプリやWebサイトなどを開発・制作できるため、専門知識がなくても利用できる点が最大のメリットです。

はじめに、ノーコードツールの基本的な特徴や仕組み、ローコードツールとの違いなどを押さえておきましょう。

ノーコードツールの特徴と仕組み

ノーコードツールでは、あらかじめ明確にした要件(何を実現したいのか)に沿って、画面上でマウスを操作しながらボタンやテキストボックスなどのパーツを配置します。多くのノーコードツールではAPI連携や自動処理などのテンプレートが用意されており、ゼロから複雑な設定を構築する必要がありません。

そのため、Excel(エクセル)や既存の業務システムを操作する延長線上の感覚で、申請フローのシステムや業務アプリ、簡易的な社内ツールなどを短期間かつ低コストで構築できます。

ノーコードツールとローコードツールの違い

ノーコードツールと混同されやすいものに、「ローコードツール」があります。コードを一切書かずに画面操作のみで開発できるノーコードツールに対し、ローコードツールは必要に応じてコードを書くことを前提としており、主にエンジニアやIT部門向けという位置づけです。

項目 ノーコードツール ローコードツール
コーディング作業 コードを一切書かない 必要に応じてコードを書く
対象ユーザー 業務部門・非エンジニア職種 IT部門・エンジニア職種
導入目的 現場主導でのシステム開発 IT部門の生産性向上
カスタマイズ性 高くない 高い

ノーコードツールとローコードツールは、「ユーザーに要求される技術レベル」に明確な違いがあります。ツールの選定にあたっては、「どこまでを現場に任せ、どこからIT部門が担うのか」という設計思想が重要な判断軸になるでしょう。

生成AIと組み合わせたノーコード活用の広がり

近年では、生成AIと組み合わせたノーコード活用が広がっています。従来のノーコードツールが業務アプリを作るためのものだったのに対し、ノーコードAI開発ツールでは以下のようなことが可能になります。

  • LLMを組み込んだ自社専用AIボットの構築
  • 社内データを活用した問い合わせ対応AI
  • 業務を自動で判断・実行するAIエージェントの作成

これらをAIやアプリ開発の専門知識なしで実装できるのは、大きな転換点と言えるでしょう。これは単なる「開発作業の効率化」ではなく、開発の主導権そのものがIT部門から現場へと分散することを意味します。

なぜノーコードツールは世界的に広がっているのか?

ノーコード開発は一時的なトレンドではなく、世界的に見ても不可逆な流れとして急速に普及しています。背景にあるのは単なる技術進化ではなく、企業を取り巻く環境そのものの変化。以下では、市場動向や開発体制の変化を踏まえながら、なぜ今「ノーコードツール」が求められているのかを整理します。

アプリ開発の主役が「非エンジニア」にも広がる時代

米国のIT調査会社であるGartner社は、今後開発される多くの業務アプリがローコード/ノーコードといった技術を活用して作られるようになると予測しています(出典:別ウィンドウで開くGartner社 2021年11月発表)。その背景にあるのは、アプリ開発の需要そのものが爆発的に増えている一方で、従来型のエンジニアリング体制だけではその需要を支えきれなくなっているという構造的な課題です。

業務のデジタル化が進むほど、「この業務のこの部分を自動化したい」「このフローをシステム化したい」といった、小さな開発ニーズが現場では次々と生まれます。こうした需要に対し、すべてをIT部門や外部ベンダーに依存するモデルはスピードやコストの面で「現実的」とは言えなくなりつつあります。このギャップを埋める手段として、ノーコードツールが急速に支持を集めているのです。

「IT部門やSIerが作る」の前提が変わり始めている

これまでの業務システムは、「業務部門が要件を出し、IT部門やSIerが作る」という分業構造が前提でした。しかしこのモデルでは要件定義や開発、システム改修に多くの時間を要するため、市場の変化やそれに伴う業務内容の変化に追いつけないという構造的な問題があります。

ノーコードツールの普及が進んだ今、業務を最も理解している現場が主体となって最適な業務環境を作り、改善を重ねていく流れが広がっています。こうした、IT部門のガバナンスのもとで業務部門(ITの専門家ではない現場)が開発に関与するアプローチを「市民開発」と呼びます。

SaaSでは埋まらない「ラストワンマイル」の補完

多くの企業がSaaSと呼ばれるクラウドサービスを導入していますが、実際の業務を見てみると、以下のようにSaaSだけでは完全にカバーしきれない部分が必ず残ります。

  • 部署ごとに微妙に異なる申請・承認のルール
  • 特定の顧客・商流に依存した業務プロセス
  • Excelやメールで何とか回している隙間業務

これらの企業あるいは部署固有の業務フローや細かな運用ルールはパッケージ化しづらく、人手や属人化に頼り続けることになります。ノーコードツールは、こうした「ラストワンマイル」(最終工程)を現場主導で効率化・最適化するための現実的な手段と言えるのです。

なぜ今、企業にノーコードツールが求められるのか?

ノーコードツールの普及は、技術トレンドや開発効率化の文脈だけで語れるものではありません。人材、コスト、スピード、セキュリティといった企業経営そのものに直結する課題に対する現実的な解決策として、重要性が高まっているからです。

エンジニア採用に頼らない選択肢となる

採用競争の激化や人件費の高騰により、優秀なエンジニアの確保は年々難しくなっています。その一方で業務改善やデジタル化のニーズは増え続けており、このギャップを埋める現実的な選択肢となるのが「既存社員をデジタル人材へと転換すること」です。

ノーコードツールは非エンジニアでも扱えるため、エンジニア採用の成果に依存せず、開発リソースを拡張できる手段として注目されています。

リスキリングの実践の場となる

多くの企業がリスキリング(学び直し)の重要性を認識している一方で、社員に対して「何をどのように学ばせるか」に悩んでいる実情もあります。

この点、ノーコードツールは学んだことをすぐに業務で試せる実践の場として、非常に相性が良い存在です。座学としてのIT研修ではなく、自身が関わる業務を題材に自らアプリケーションを作り、運用の中で改善していくというサイクルを回せるため、単なるツール習得にとどまらず、業務課題を構造的に捉えて改善する力が組織全体に蓄積されていきます。

スピードとコストの両面で競争力が高まる

従来のシステム開発では、要件定義からリリースまでに膨大な時間とコストがかかることが珍しくありません。さらにその間に業務要件が変わって追加のコストが発生したり、開発期間がさらに長期化したりするケースもあります。

ノーコードツールを活用すれば、開発期間の大幅な短縮と、外注費・開発コストの削減を両立できます。意思決定から実装までのリードタイムを短縮できれば機会損失も避けられるため、市場における競争力が高まります。

シャドーITのリスク低減にも寄与する

現場のデジタル活用が進むほど問題になりやすいのが、「シャドーIT」のリスクです。個人や部署単位で無秩序にツールやサービスが使われ始めると、情報漏洩やガバナンス崩壊のリスクが高まってしまいます。

だからこそ重要なのが、会社として公式に利用を認めたノーコードプラットフォームやサンドボックス環境(プログラムを安全にテストできる隔離された環境)を提供することです。ノーコードツールは統制と自由を両立させるための基盤としても、企業にとって欠かせない存在になりつつあります。

企業がノーコードAI開発ツールを導入する際のポイントは?

ノーコードAI開発ツールは誰でも使えるからこそ、導入時の設計を誤ると混乱やリスクを招く恐れがあります。そこで、企業への導入を前提とした場合に押さえておくべき重要なポイントと、実際にノーコードAI開発ツールを全社展開しているリコーの事例を紹介します。

企業利用に耐え得るセキュリティとガバナンス

ノーコードAI開発ツールの導入において、まず確認すべきなのがセキュリティとガバナンスです。個人利用レベルのAIツールとは異なり、企業では次のような要件が求められます。

  • SSO(シングルサインオン)への対応
  • 入力データや学習データの適切な制御
  • 社内データの取り扱いルールを反映できる設計

非エンジニアでも挫折しないUI/UX設計

もう一つの重要なポイントが、UI/UXの分かりやすさです。ノーコードAI開発ツールは現場主導での活用が前提となるため、操作が難しければすぐに使われなくなってしまいます。

こうした観点から、近年注目されているのが「Dify」に代表されるノーコードAIプラットフォームです。「Dify」はLLM(Large Language Model)を活用したAIアプリ開発をノーコードで行えるだけでなく、業務部門でも扱いやすいUI設計と企業利用を想定した管理機能を兼ね備えています。

【事例】リコーが実践する全社AI市民開発

リコーでは、プロセスDXの一環としてノーコード生成AI開発ツール「Dify」を活用し、「現場主体のAI市民開発」を推進しています。特徴的なのは、ツール導入にとどまらず「使われ続ける文化づくり」と「安心して挑戦できるガバナンス」を両立させている点です。

まず、AI市民開発を担う人材を「自ら業務課題を発見し、AIで解決策を企画・実行できるデジタル人材」と再定義し、育成プログラムを整備。次に、「Dify」の勉強会を起点に部門横断のコミュニティを形成し、成功事例やノウハウの共有を促しました。

一方で、情シス部門やDX部門がセキュリティ基準と明確なガイドラインを整備し、現場が自由に試せる安全なサンドボックス環境も提供。この攻めと守りのバランスにより、現在では約4,000人の社員が「Dify」を活用し、自らの業務課題に対してAIアプリを開発するまでに成長しました。現場で生まれたAIアプリは社内利用にとどまらず、顧客向けに提供されるソリューションとして活用されるケースも出てきています。

ノーコードツールが切り拓くAIアプリ内製化の未来

今日においてノーコードツールは単に開発を効率化するための手段ではなく、現場が主体となって業務改善や価値創出を進めるための基盤となるソリューションになっています。

リコーの事例が示すように、正しい文化づくりとルール設計があればノーコードAI開発ツールは組織全体の創造性を大きく引き出し、DXを推進してくれます。まずは身近な業務から、ノーコードツールを活用した「小さなAIアプリ内製化」に取り組んでみてはいかがでしょうか。

ノーコードAI開発ツール「Dify」の特徴やツールを活用した社内実践の詳細は、以下の記事でご覧いただけます。

森戸 裕一(もりと・ゆういち)

一般社団法人日本デジタルトランスフォーメーション推進協会・代表理事。一般社団法人ノーコード推進協会・副代表理事。ナレッジネットワーク株式会社代表取締役。戦略的人材育成や戦略的企業情報化戦略、DX、働き方改革、地域ビジネスなどを専門領域とし、総務省地域情報化アドバイザーとしても活動している。

PAGE TOP