お役立ちコラム 「RPA」の仕組みや導入のメリット・デメリット、導入時の注意点をチェック!

2025年4月14日
  • DX
「RPA」と「AI」の違いや必要な事前準備について解説

深刻化する人手不足の解消や生産性の維持・向上を目的として、パソコン内で定型的な業務を自動化する「RPA」というツールが注目されています。しかし、従来のソフトウェアやシステムとの違いやRPAの特徴が分かりにくく、AIと混同してしまうケースも少なくありません。

本記事では、RPAの仕組みや特徴に加え、導入することで企業にどのようなメリットがあるのか、導入や運用における注意点なども分かりやすく解説します。

「RPA(Robotic Process Automation)」とは?

RPAとは「Robotic Process Automation」の頭文字を取った言葉で、コンピュータ上で動くソフトウェア型のロボットのことです。RPAには機械学習をはじめとしたさまざまな認知技術が応用されており、従来人間が行っていた定型的な作業を自動化することで、業務プロセスの効率化を実現できます。

RPAの身近なユースケース

RPAによって自動化が可能な定型的な作業には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。以下、代表的なユースケース(活用事例)をいくつかご紹介します。

データ入力・転記作業

請求書などに記載された金額や品目、顧客情報などを一元管理するには、「担当者が情報を読み取ってシステムに入力する」という作業が必要でした。RPAを活用すれば異なるアプリケーションやシステム間のデータ入力も可能であり、ExcelやWord、PDFなどのデータファイルから必要な情報を抽出し、システムに自動的に入力することができるようになります。

レポート作成

売上データや在庫データなどをもとに、あらかじめ指定された定型のフォーマットに沿って自動でレポートを作成することも可能です。従来はExcelなどにデータを転記し、表やグラフを作成する手間がありましたが、RPAを活用すればこのような作業負担を軽減し、経営判断に必要な情報をスピーディに共有できます。

経理業務

経理業務でRPAを活用すれば、他のシステムから会計データをエクスポートし、会計システムへのインポートを自動化したり、勘定科目の仕訳を自動化したりすることもできます。また、従業員が入力した経費精算データの中には誤った仕訳が入力されていることもあり、従来は経理担当者がダブルチェックおよび修正をしなければなりませんでしたが、これらの作業負担もRPAによって軽減・解消することが可能です。

カスタマーサポート

カスタマーサポートの現場では、顧客からのよくある質問に自動で回答する仕組みを整えることでサポート対応を効率化することも可能です。これによって担当者の肉体的・精神的負担を軽減するとともに、スタッフは慎重かつ個別の判断が求められるイレギュラーな問い合わせへの対応に集中できるようになります。

RPAとAIの違い

「自動化」を理解する際に、RPAと混同されやすいのがAIです。両者はどのような違いがあるのか簡単に解説します。

AI(人工知能)とは、機械学習やディープラーニング(深層学習)といった技術を活用し、膨大なデータから一定のパターンを学習して予測や推論を行う仕組みのことです。たとえば、メールに記載された文章の内容や表現の仕方に応じて顧客の感情を分析することもでき、それに応じて最適な返信文や対応の方法を提案することもできます。将来的にAIエージェント(特定のタスクを実行する自律型インテリジェントシステム)が普及すれば、あらゆる業務を推測しながらタスクをこなしてくれる世界が訪れるかもしれません。

一方のRPAは冒頭で説明した通り、あらかじめ決められたルールに基づいて定型的な作業を自動化するソフトウェアのことです。たとえばメール対応では、「申込書などの受領確認のため、同一の本文が記載されたフォーマットのメールを送付する」といった作業に対応できます。

このように、AIは非定型的な業務や個別の判断が必要な作業にも対応できるのに対し、RPAは主に定型的な業務に特化しているという点が大きな違いです。しかし、現在はAIが「頭脳(考える)」でありRPAは「手足(行動する)」といったポジションですが、今後はAIエージェントの普及によってAIとRPAが融合してくる可能性もあるでしょう。

人工知能(AI)については以下の記事でも詳しく説明しています。

RPAを導入するメリット・デメリット

RPAを導入することで、企業はどういったメリットが得られるのでしょうか。また、反対にデメリットとして考えられることも押さえておきましょう。

ビジネス面にもたらす4つのメリット

RPAを導入する主なメリットは以下の4点です。

生産性向上

これまで従業員が行ってきた定型的なルーチンワークは、RPAに任せることができます。これにより、新たな製品やサービスの開発、営業提案といったよりコアな業務に人的リソースを集中させられるでしょう。また、現在の業務プロセスにムダや非効率な部分がないかを検討・改善するなど、高度な業務に向き合う時間を増やすことも可能です。結果として社内全体の生産性が向上し、競争力の強化につながっていきます。

労働環境の改善

定型業務を人手に頼っている場合、繁忙期などで受注量や問い合わせの数が増えるとリソースが不足し、残業や休日出勤が増えてしまうかもしれません。RPAによってこうした業務を自動化できれば、受注量が一時的に増えても従業員の負担が急増することは減るため、労働環境の改善につながるでしょう。

また、従来通りの生産性を維持できれば業務関連コストの削減にもなり、その分を待遇改善の原資に回せば従業員満足度が高まる可能性もあります。

ヒューマンエラーの削減

単純なルーチンワークであったとしても、手作業である以上、ヒューマンエラーを完全になくすことはできません。RPAではコンピュータによる機械的処理を繰り返すため、ヒューマンエラーのような単純なミスを排除でき、作業品質を向上できます。特に、高い正確性が求められる経理業務やデータ分析などで効果が高く、作業品質の安定により企業としての信頼性も向上します。

テレワーク・DXの促進

RPAはクラウドやネットワークを通じて実行可能なため、場所を問わず業務を遂行できます。そのためリモートワークとの相性も良く、多様な働き方を推進できるほか、業務のデジタル化やデジタルトランスフォーメーション(DX)の第一歩としても有効です。

事前に考慮しておきたい3つのデメリット

RPAの導入に際して考えられるデメリットは以下の3点です。

システム障害やブラックボックス化により業務が停止するリスク

運用している業務の中身や内容が社員に共有されていないと、業務そのものがブラックボックス化する恐れがあります。その結果、RPAに業務を依存しすぎるあまり、システムに障害や不具合が発生した場合に業務が完全に停止するリスクも考えられるでしょう。システムの復旧には時間がかかることも多いため、万が一の事態に備えて「RPAを介さない場合の業務フローの確立」など、バックアップ体制も整備しておかなければなりません。

システムの仕様変更による誤作動のリスク

使用しているソフトウェアやシステムがアップデートされた場合、仕様の変更に伴ってRPAが正常に動作しなくなる恐れがあります。システムのアップデートがあるたびにRPAの設定を変更する手間やコストが発生するため、柔軟性を持たせた設計が求められます。

野良ロボット化

RPAを管理していた担当者が異動や退職によっていなくなると、適切な管理がされないまま稼働を続ける「野良ロボット」が増える可能性もあります。その結果、どのロボットがどの業務を担っているのかという業務全体の管理・把握が困難になり、一からロボットの整理や構築をし直す手間が生じることもないとは言えません。

RPA導入時の注意点

RPAの導入効果を最大化するためには、いくつかある注意すべきポイントを把握しておかなければなりません。以下は、導入検討時に確認しておきましょう。

向いている業務・向いていない業務を理解する

先述の通り、RPAは単純で定型的な作業の自動化・効率化を得意としています。反対に、複雑な判断が必要な業務や、非定型的・不定期で発生する作業、都度対応が必要なタスクには向いていません。これらの業務に無理にRPAを適用しようとすると、運用負荷が増えたり、エラーのリスクが高まったりする恐れがあります。

作業を明確に言語化する必要がある

RPAを効果的に運用するには、対象業務を詳細に分析し、各作業を明確に言語化してルール化する必要があります。たとえば、「ウィンドウを閉じる」という曖昧な表現ではなく、「メールボックスを閉じる」や「ブラウザを閉じる」といった明確な指示が必要です。この工程を省略すると、ロボットが正確に動作しなかったり期待する結果が得られなかったりすることがあるため、十分な準備が不可欠です。

運用ルールを策定しておく

ロボットの稼働状況を監視し、メンテナンスを行うための運用ルールを整備することも、RPAを安定して運用するためには重要です。特に、ロボットの設定変更や障害発生時にはトラブルが発生しやすいため、それぞれのケースを想定した対応フローをルール化・マニュアル化しておくことで、トラブルの影響を最小限に抑えられるでしょう。

また、ブラックボックス化によって何の作業を行っているRPAなのか分からなくなるケースも想定されるため、RPAを適切に管理するための体制も整備しておく必要があります。

用途に応じて最適なツールを選択する

RPAツールにはさまざまな種類があり、特徴も異なります。単純作業に適した無料のRPAツールから、AIと組み合わせた高度な処理が可能なツールまで用途は多岐にわたるほか、サポートの内容や体制も製品によって異なります。

導入する業務の内容や導入規模、投資対効果、RPAを運用・管理する担当者のスキルに応じて、複数のツールを比較しながら検討してみましょう。

リコーはRPAを活用し業務プロセス改革を進めています

さまざまなICT機器やデジタルツールの活用に目を向けている企業は増えていますが、少子高齢化に伴い人手不足は深刻化しており、生産性の維持が困難な現場も少なくありません。限られた人員の中で生産性の維持・向上を図るには、これまで人手に頼ってきた定型的な業務を自動化し、より付加価値の高い業務に人的リソースを集中させることが重要な鍵となります。

リコーは、全社員参加型の「プロセスDX」に取り組み、業務の可視化・最適化・デジタル化を段階的に進めています。現場主体で改革を実践できる環境や人材育成制度を整え、4200人以上の開発者を育成し、社内で3500件を超えるアプリが稼働するなどの成果をあげています。(2024年9月までの実績)2023年からは、こうした社内実践の知見を活かし、顧客企業向けにプロセスDXの伴走支援サービスを開始しました。業務改善だけでなく、社員や顧客がやりがいを感じられる“はたらく歓び”の実現を目指し、取り組みを広げています。RPAやAIを活用したい、生産性向上や競争力強化を図っていきたいとお考えの方は、リコーの取り組みを詳しく紹介した以下の記事もぜひご覧ください。

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本間 卓哉(ほんま・たくや)

株式会社IT経営ワークスの代表取締役で、一般社団法人IT顧問化協会の代表理事。企業向けに適切なITツールの選定から導入支援、デジタルマーケティング支援までを担うITの総合専門機関として、「IT顧問サービス」を主軸に、数多くの企業で業務効率化と業績アップを実現。主な著書に『売上が上がるバックオフィス最適化マップ』『売上が上がるフロントオフィスの設計図』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。