本記事は、日経BPの許可により日経ビジネス電子版2025年9月29日 ~2025年10月28日に掲載した広告を転載したものです。
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オフィスオートメーションの提唱から半世紀にわたり「はたらく」に寄り添ってきたリコーが今、重点領域として掲げるのが「プロセスオートメーション(PA)」だ。業務効率化の先にあるのは、創造的な時間の創出と、人がワクワクできる仕事の再設計。その実現には、AIを最大限に活用できる整ったデータ環境と、現場の実情を的確に把握することが欠かせないという。PA事業を率いる株式会社リコー リコーデジタルサービスBU デジタルサービス事業本部 髙松太郎氏にリコーの進化と未来について聞いた。
「我々のコアバリューは、働くことに歓びをもたらすことです。人が行う仕事には、あまり付加価値を生まないマニュアル的な作業がまだまだ多くあります。そこに費やす時間を減らして、創造的な仕事に集中できるようにする。それがプロセスオートメーション(PA)のミッションです」
そう髙松氏が語るように、PAとは単なる自動化ではない。例えば、仕事時間のうち50%を単純作業に使っているとすれば、それを10%にできれば、空いた40%を戦略立案や意思決定、クリエイティブな業務に充てられる。
「人がやらなくてもよいことは、デジタルやAIに任せる」――その考え方は、リコーが1977年にオフィスオートメーション(OA)を提唱したときから一貫している。当時はPCもネットワークもない時代。リコーは複合機の販売が事業の中核だったが、今ではAIやクラウドといった先進技術を活用し、業務プロセス全体を再設計・再構築する支援へと事業の主軸をシフトさせている。
株式会社リコー リコーデジタルサービスビジネスユニット デジタルサービス事業本部 事業本部長 兼 プロセスオートメーション事業センター所長
髙松 太郎氏
生成AIやChatGPTに象徴されるAI活用への期待が高まる中で、多くの企業が「PoC(概念実証)止まり」に陥っている。その主な原因は、企業内の情報資産の多くが、AIが活用できるような構造化されたデータとして整備されていないことにある。
例えば、スキャンされた紙の書類や、PDFファイル、メール本文、手書きメモなど、項目名やデータ形式が決まっていない情報は「非構造化データ」と呼ばれ、AIにとっては処理が難しい。こうしたデータが社内に膨大に存在し、AI導入の大きな障壁となっている。
「非構造化データが多すぎて、AIが学習できない。それが多くの現場の実情です」
そう語る髙松氏によれば、AI導入そのものよりも前段階としてのデータ整備こそが最大のハードルだという。だからこそリコーでは、AI導入を推進するだけでなく、AIが正しく機能するための環境=データの前処理・構造化という入口の整備にも同時に取り組んでいる。この2つのアプローチによって、単なるPoCで終わらせない現場改革を支援できるのだ。
その中核となる取り組みが「IDP(インテリジェント・ドキュメント・プロセッシング)」だ。請求書や契約書、申込書など多種多様な帳票から自動的に情報を抽出し、活用可能なデータに変換する仕組みを提供する。実際にIDPを必要としている現場は、驚くほど多い。しかもそれは、大企業の高度な業務プロセスだけではない。むしろ、Excelや紙帳票での管理が当たり前に残っている中堅・中小企業のほうが、IDPの恩恵をより実感しやすいと髙松氏はいう。
「例えば請求書は、今でも多くのお客様が紙やPDFでやり取りしています。帳票の形式もバラバラで、専用ソフトに手で打ち直しているケースも珍しくありません。こういった現場でこそ、IDPが価値を発揮できるんです」
リコーが提供するプロセスオートメーション
各アセットを連携したワークフローのデジタル化により、
ドキュメントとデジタルプロセスの両面からDX推進をサポートする
リコーは、この分野の強化に向けて、国内外の企業を次々と買収してきた。2022年9月には医療機関や貿易機関、金融機関などの手書き書類のスキャン技術に強みを持つスキャナー大手のPFUを買収。2024年4月に買収したドイツのNatif.ai社は、IDP技術に強みを持ち、レイアウトが定まっていない非定型帳票からでも高精度に情報を抽出できるのが特徴だ。従来の光学式文字読み取り装置(OCR)では、あらかじめレイアウトが決まった帳票しか読み取れなかったが、Natif.aiのAIは帳票の構造を自動で理解し、形式を問わず意味のある情報を見つけ出すことができる。この技術により、HRや医療、地方自治体など、多様な帳票が存在する業種にも対応できるようになった。
さらに、Natif.aiのAI OCR技術と2019年に買収したドイツDocuWare社が提供するコンテンツマネジメントのソリューションを組み合わせることで、請求書や注文書などの紙帳票を自動で読み取り、請回収業務のワークフローを回して、クラウド上でデータの一元管理・データの会計システムなどへの連携を行うソリューションも整えている。いずれも、業務現場の“紙”からの脱却を加速させる強力なツールだ。
また、現在リコーでは大手顧客向けに新たなソリューションとして「RICOH Intelligent Automation(仮称)」の開発も進行中だ。Natif.aiのエンジンに加え、Microsoft Azureなどの先進的なクラウド技術を組み合わせることで、多言語・多拠点での業務運用を前提とした大企業向け高付加価値IDPの実現を目指している。
IDPの展開に加えてリコーではお客様の業務プロセスをデジタル化・自動化するソリューションの展開も進めている。サイボウズ社と提携して展開する「RICOH kintone plus」では、ノーコードによる業務アプリ構築と帳票処理の自動化を推進。「Excel管理を脱したいが大企業向け業務管理システムまでは不要」という中堅・中小企業の“ちょうどよいDX”ニーズに応えている。
「RICOH kintone plusを選ばれる企業は、CRMや業務管理をExcelでやっていた方々です。紙や表計算では情報共有が難しいけど、大企業向けのツールは高額で過剰すぎる。そこにフィットするソリューションなんです」
そして、大手企業に対しては、2022年に買収したスイスのAxon Ivy社のプラットフォームを活用し、複雑な業務プロセスを自動化するアプリケーションをローコードで構築。複数の業務システムを横断的に連携させる「プロセスのオーケストレーション」を実現している。
「エッジデバイス、IDP、ワークフロー・プロセスオーケストレーション・コンテンツマネジメントSW、それからAIを連携させることで、お客様の組織全体の業務そのものを変革できる可能性を持っています」
リコーのPA領域の強みは、技術や製品だけではない。「まずは自分たちが使ってみる」という社内実践の徹底が、説得力と顧客価値の源泉になっている。例えば、RDS(リコーデジタルサービスビジネスユニット)では、全社員の業務を可視化し、業務時間の20%削減という大胆な目標を掲げたGGプロジェクトを推進。全社員が「自分が日々どんな業務にどれだけ時間を使っているか」を洗い出し、AIを活用したチャットボットの導入や不要な会議の削減など、実際の業務改善が進んでいる。
「30人が参加していた会議を10人にできないか」「問い合わせ対応をAIチャットボットに代替できないか」――そんな問いを一つひとつ検証し、RPAやIDP、生成AIなどを組み合わせて自分たちの業務を変えていった。現在は平均で業務の13~14%を削減しており、目標の20%に向けた取り組みを継続中だという。
また、全社横断では「プロセスDX」と呼ばれる変革プログラムを推進中だ。2017年からRPA導入を皮切りに、購買や人事、経理などのバックオフィス業務の標準化・自動化を図っており、最近ではAxon Ivyを用いた購買業務のプロセス統合にも着手している。海外でも同様の動きがあり、例えばリコーヨーロッパでは、25の販社に点在するHRプロセスを標準化し、Axon Ivyを基盤に、給与・勤怠・採用・タレントマネジメントなど異なるシステムをまたいで一つのプロセスとしてつなぎ合わせる仕組みを構築した。この時の取り組みでは、社内の人事担当者自らが主導し、プロジェクトが完了した後も営業案件に同行して、リアルな実体験を顧客に共有している。このような社内実践は、単なる内向きな改善にとどまらない。こうした実践の積み重ねが、リコーのPAに生きたナレッジをもたらし、単なる製品提案ではなく顧客企業に合った変革の道筋を描ける存在として信頼を生んでいる。
例えば中堅・中小企業に対しては、過去の成功事例をもとにした業務改善のモデルパターンを用意し、そこから顧客の実情に合わせて柔軟に調整する形で展開している。あらかじめ一定の方向性が見えているため、低コストかつ短期間で導入が可能となり、現場のリソースに不安がある企業にとっても取り組みやすい形になっている。
一方で、大手企業に対してはあらかじめ用意されたテンプレートを適用するのではなく、リコー自身の実践やノウハウをたたき台にしながら、各社固有の業務プロセスに合わせて一緒に再設計していく「共創型」のアプローチをとっている。品川に設立した『RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE TOKYO』に、DXに興味のある企業の経営陣を招いて、お客様の経営課題・DX課題についての議論をし、共創していく活動を推進している。
「プロセスオートメーションは、単なる速く・安くする話ではありません。人と業務の関係を見直し、より人間らしい仕事を取り戻すこと。それが本質だと考えています。だからこそ、お客様と一緒に考えながら進める姿勢が大切なんです」と髙松氏は語る。
リコーが目指すのは、現場の実情に深く根差した、実践的なソリューションの導入支援だ。単なるツールの提供ではなく、全国に展開する営業・カスタマーエンジニアネットワークに加え、世界250以上の拠点を持つグローバル体制を活かし、顧客の業務プロセスを理解しながら、共に改善を進める「寄り添う姿勢」がリコーの強みである。少子高齢化が進む今、人にしかできない仕事にもっと時間を使える社会をどう実現するかが問われている。限られた人員で価値を最大化するには、ルーチン業務はAIをはじめとしたテクノロジーに任せ、人間の創造力を最大限に引き出す環境づくりが不可欠だ。
「AIに指示すれば、自動で業務が回る。人が関与するのは例外的な判断だけ。そういう世界を、一つひとつ実現していきたいんです。一人ひとりがはたらく歓びを感じられる社会になれば、きっと日本の力も上がっていく。私たちはその後押しをしたいと思っています」
リコーはこれからも、現場の気づきや変化を取り込みながら、誰もが創造力を発揮できる“はたらく”の未来を探求していく。