お役立ちコラム
2024.8.27
人工知能(AI)の発展は目覚ましく、近年ではさまざまなビジネス領域やデジタルサービスにおいて導入・実用化が相次いでいます。ただし、現時点における人工知能は決して万能なものではないため、AIをうまく活用するにはAIに入力するデータの収集や準備などが必要になります。そのため、ビジネス活用を考えるにあたっては基本的な仕組みや特徴を理解しておくことが重要です。
本記事では、「そもそも人工知能とは何なのか」の基本を簡単におさらいするとともに、「AIを活用したデジタルサービスの導入によってどういった経営課題が解決できるのか」について具体例を交えながら詳しく解説します。
昨今のビジネスシーンでは、業務効率化や生産性向上などを期待して人工知能(AI)を活用する企業が増えています。人工知能とは「AI(Artificial Intelligence)」のことで、一般的には「人間が話す言語を認識したり、人の知覚や能力を再現したり、さまざまな情報をもとにした推論や問題解決を検証・実行したり、といったことを可能にする機械的な仕組みあるいはその技術」と表現できます。
「言語を認識できる」と聞くと、古くからアニメや映画などに登場してきた人間型ロボットをイメージする方も多いかもしれませんが、このような人工知能は「汎用的人工知能(AGI)」と呼ばれ、実現するには今日のAIよりもさらに一歩進んだ技術が必要です。2024年現在において汎用的人工知能(AGI)は実現に至っておらず、多くのAI研究者にとって大きなテーマとなっています。
そのため、「人工知能は万能である」というのは現時点では大きな誤解であると言えます。あらゆる問題を解決できるほどの能力・性能は備わっていないことから、目的や用途に応じて適切に人工知能を活用しなければなりません。なお、AIに関する基本的な内容は以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひこちらもご覧ください。
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人工知能(AI)をビジネスの分野で有効活用するには、AIの基本的な仕組みを把握したうえで「どういった特徴があるのか」を正しく理解しておくことが重要です。
人工知能が知識を習得するプロセスは、私たち人間が言葉を覚えたりさまざまな経験を積みながら物事を覚えていったりする流れに似ています。これを実現しているのが、「機械学習」と「ディープラーニング(深層学習)」とよばれる手法です。
たとえば、オープンAIの一種である「ChatGPT」には多くのユーザーから寄せられた質問とその回答が学習データとして蓄積されています。この学習データが増えるほどディープラーニングによって人工知能の精度は高まり、複雑な文法や高度な質問にも対応できるようになります。
先に触れたとおり現在の人工知能は決して万能な存在とは言えないものの、特定の領域においては人間を超えるほどの能力を発揮できるケースもあります。どういった得意分野があり、ビジネスにどう活かしていけるのかを見ていきましょう。
人工知能は「ChatGPT」のような自然言語処理だけでなく、画像解析も得意としています。そのため、医療分野においてはCT画像やX線画像の診断にも有用です。ガンの治療においては専門医であっても初期の腫瘍を見逃すことがありますが、人工知能による画像診断を技術活用すればそうしたリスクの低減につながり、ガンを早期発見できる可能性が高まります。
自動運転技術の本格的な実用化に向けても、人工知能は不可欠な存在です。カメラで撮影された映像をもとに道路標識や車線、歩行者、対向車などを人工知能が正確に認識することで、人間のような見落としや運転ミス、危険運転などもなくなり、「事故のない交通社会」が実現できると期待されています。
最近では、「生成AI」のビジネス活用も注目されています。生成AI(ジェネレーティブAI)とはAIの一種で、機械学習やディープラーニングの手法を使って文章、画像、映像、音声、音楽といったさまざまなデジタルコンテンツを自動で生成できるAIのことです。「認識」「再現」「検証」などにとどまらず、大量のデータをもとに多様なコンテンツを創出できる点が大きな違いです。
代表的な生成AIには、以下のようなものがあります。
定型的な業務や膨大な事務作業におけるさまざまな現場課題・経営課題に対して、人工知能(AI)の技術を応用したデジタルサービスのニーズも高まっています。このようなデジタルサービスを導入・活用することで、企業はどういったメリットが期待できるのでしょうか。
デジタルサービスを導入することで事務作業の自動化やさまざまな業務プロセスの最適化・省力化を実現し、結果として従業員の生産性(パフォーマンス)向上が期待できます。
たとえば、AIを搭載したチャットボットは人間のオペレーターのような自然なコミュニケーションが可能であるため、パスワードのリセットや請求料金の確認など、問い合わせ(お客様相談)の多い内容への対応を自動化することも可能です。定型的な業務を自動化することにより、従業員はより高難度の対応やコア業務へ注力できるでしょう。
業務効率化におる生産性の向上は多くの企業が取り組むべき重要課題であり、人工知能を活用したデジタルサービスの導入以外にもさまざまな方法があります。以下の記事では企業が業務効率化に取り組む目的やアイデアの事例を詳しく解説しているため、こちらもご覧ください。
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現在の日本ではさまざまな業種において人手不足が深刻化していますが、AIを活用したデジタルサービスは24時間・365日稼働し続けられるため、労働力不足の解消に有効な手段となり得ます。
たとえば、アナログ対応の場合は取引先や顧客の数が増えるほど見積書や請求書の作成にかかる負荷は増大するもの。RPAなどのデジタルサービスを活用すれば、メールの記載内容に応じて宛先や金額を自動的に入力・作成することも可能になるため、業務にかかる負荷を大幅に削減できます。限られた人員で業務が遂行できるようになることから、人手不足の解消にもつながります。
人工知能の技術を活用したデジタルサービスならヒューマンエラーが発生する心配がなく、作業の正確性が向上します。
手書きで記載された申込書の内容をデータベースに入力する業務を例にとると、熟練のオペレーターであっても入力ミスや誤変換などをしてしまうことはあります。しかし、AI-OCR(※)に対応したデジタルサービスを活用すれば、このようなミスを最小限に抑えられます。
※OCR(Optical Character Recognition)とは、画像データのテキスト部分を抽出して文字データに変換する光学文字認識技術のこと。AI-OCRはAIが搭載されたOCRのことで、ディープラーニングによって精度の高い処理が可能になっている
従来のOCRは識字率が低いものが多く、たびたび修正の手間がかかっていましたが、AIを搭載したOCRが登場したことで識字率が大幅に向上しました。
AIは膨大な量のデータを迅速かつ正確に分析し、予測モデルを構築する能力に優れています。これにより、たとえば過去の購買データや市場動向などをもとに、「顧客がどのような商品・サービスを求めているか」を正確に予測することも可能です。
このような仕組みを応用した需要予測システムを構築できれば、在庫管理の最適化によって売り切れや過剰在庫を防止したり、時期に応じてマーケティングキャンペーンの効果を最大化したりすることも期待できるでしょう。
AIに対応したデジタルサービスには、運用次第で発生コストを大幅に削減できる可能性があります。カスタマーサポート部門においては問い合わせの量が増えるたびにオペレーターを増員する必要がありましたが、チャットボットを導入することで対応人員を減らすことが可能です。これにより、人件費の増大を抑えられるでしょう。
また、RPAやAI-OCRといった各種デジタルサービスの導入によって作業の手戻りや修正が減れば、そこにかかる時間や経費などのムダも解消できる可能性があります。
人工知能(AI)のビジネス活用というと、それだけで「ハードルが高い」と感じてしまうかもしれません。DXを推進する部署や総務、各種事業部などの管理者の方の中には、「会社からはDX化を求められているけど、何から始めればいいか分からない」「自社でAI活用できる業務には何があるの?」と悩んでいる方も少なくないでしょう。
リコーではそれぞれの場面における業務課題を深く理解し、最適なAIソリューションの開発・提供を通して質の高い支援を行っています。特に画像認識・解析、自然言語処理、音声・振動認識といったオリジナルのセンシング技術を使ったデータの取得や構造化データ分析に注力。AI活用によってこれまで気づけていなかった潜在的な課題の抽出から検証・改善まで一貫して行い、提供できるビジネス価値の最大化に努めています。
身近な業務からDXを実行したい方、AIのビジネス活用を検討している方は、お気軽にお問い合わせください。
リコーはデジタルサービスではたらく人の創造力を支え、ワークプレイスを変えるサービスを提供します。
監修者
森 雅俊(もり・まさとし)
東京大学 博士(工学)。現在は埼玉学園大学経済経営学部で教授を務めるかたわら、企業の業務効率化に対する支援を行っている。約10年間にわたってAI活用による業務効率化を研究しており、2023年にはこれまでの研究から『「生成AIによる活用による業務改革」-ChatGPTやBardを活用した業務効率化-』を上梓。