お役立ちコラム
2024.4.26
現場の生産性を向上し経営効率を高めるために、業務効率化は多くの企業に共通する「重要性が高い課題」と言えます。しかし、「具体的な進め方がわからない」「有効なアイデアが思い浮かばない」といった理由で苦労している企業も少なくないでしょう。
この記事では、「業務効率化はどうやって進めればいいのか」というテーマに沿って、取り組み方の一例や役に立つアイデアを紹介します。業務効率化を推進したい経営者の方、管理職の方、DX推進の担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。
はじめに、「業務効率化とは何なのか」という定義を紹介するとともに、事例を交えながら「ビジネス上のどのような課題を解決できるのか」を具体的に解説します。
業務効率化とは、ひとことで言えば「業務におけるムリ(無理)・ムダ(無駄)・ムラを解消すること」です。企業は限られた人員とコスト、時間のなかで創出し得る利益を最大化しなければなりません。その意味で、業務効率化は企業が取り組むべき重要な課題のひとつと言えます。
近年では業種や会社規模などを問わず、多くの企業で業務効率化が求められるようになりました。それはなぜでしょうか。先に紹介したように「限られたリソースを有効活用し利益を最大化する」という大きな目的はありますが、それ以外にも社会全体の大きな変化が影響しています。
日本は現在、少子高齢化にともない深刻な人手不足に直面しています。これは業種や職種を問わず多くの企業に影響を与えており、「求人募集をかけても候補者が集まらない」というケースも珍しくなくなってきました。
働き手の数が減り続ける中で、これまでと同様の業務プロセスや業務フローを踏襲していても、生産性を維持・向上するのは困難です。そこで、業務の進め方を根本的に見直すことを目的として業務効率化に取り組むケースが多くあります。
少子高齢化にともなう労働人口減少や過重労働が社会問題化したことを受け、多くの企業で「働き方改革」の流れが加速しました。正確な勤怠管理の実施や人員管理の見直しによって、これまで常態化していた長時間労働に改善が見られるようになった企業も増えています。
また、コロナ禍の影響でワークスタイルやワークライフバランスに対する考え方も大きく変化しました。リモートワーク(テレワーク)、時差出勤、ワーケーションといった多様な働き方に対応するには、新しいツールの活用や社内インフラの刷新、業務フローの変更などが欠かせないため、業務効率化とセットで取り組みやすいという点もあるでしょう。
企業が業務効率化を実践することによって、具体的にどういったメリットが期待されるのでしょうか。
日々の業務をあらためて振り返ってみると、非効率的な作業や業務プロセスは意外に少なくありません。
たとえば、営業部内で顧客や取引先ごとの情報を共有せず個別に管理している状態だったとします。こういったケースでは、すでにほかの担当者が商談を進めているにもかかわらず、同じ相手にアポイントを取ってしまうなどの不手際も生じるでしょう。こうした非効率な仕事の積み重ねによって作業量が増え、毎日のように残業が発生し、従業員にムリを強いてしまう――というケースは多いものです。
上記のような問題を解消するには、営業管理システム(CRM/SFA)を導入し、顧客や取引先ごとの情報を部署内で一元管理するといった方法も考えられます。業務効率化に取り組むことで、現在の業務プロセス改善や業務フロー見直しを図るきっかけとなり、長時間労働の解消につながることもあります。
非効率的な業務によって慢性的に長時間労働が続くと、多くの人件費がムダになってしまいます。「多くの時間=多額のコスト」を要するということは、自社の利益を圧迫し、経営効率の低下を招く原因にもなりかねません。
自社の売上や利益を向上させるために、事業領域を広げたり新規事業に着手したりする方法も考えられます。しかし、人的な余裕がなく日々の業務をこなすだけで精一杯の状態では、新たな事業に挑戦することも難しいでしょう。その結果、自社の持続的な成長も見込めなくなってしまいます。
業務効率化の取り組みは、限られたリソースのなかで利益を最大化することにもつながります。また、業務プロセスを見直したことで人的リソースに余裕が生まれ、事業規模の拡大や新たな事業領域に挑戦できるチャンスを得られる可能性もあります。
業務フローが確立されていない、あるいは業務そのものが属人化していることが原因で、作業品質やプロダクト品質にムラが生じているというケースもあります。「業務マニュアルが用意されておらず、特定の従業員しか業務内容を把握していない」という職場も多いのではないでしょうか。
業務効率化に取り組むことにより、担当者が変わっても安定したパフォーマンスで作業を遂行できるようになり、品質のムラを解消できる可能性が高まります。
業務効率化によって「ムリ・ムダ・ムラ」が解消されると、従業員のモチベーション向上にもつながっていきます。
たとえばリモートワーク制度を導入したり、残業時間が減ったりすれば、ワークライフバランスが向上して「働きやすい職場」と感じる従業員が増えるでしょう。また、限られたリソースの中で利益を最大化できれば、その分を従業員へ還元することで、求められる「賃金アップ」の実現にもつながっていきます。
さらに、ムダを排除して効率性を重視した業務プロセスや業務フローを確立することで属人化を解消できれば、ムラのない作業品質を維持できるようになり「仕事のやりがい」が高まるかもしれません。従業員にとって働きやすい職場環境が構築されることはやりがいや働きがいにつながり、さらなる生産性向上も期待できるでしょう。
「できるだけ長くこの会社で働き続けたい」と考える従業員が増えれば人材定着化を図れるほか、就職活動や転職活動を行っている候補者からも「あの会社に入社したい」と認識されるため採用力強化にもつながっていくでしょう。
業務効率化はDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進という観点からも欠かせない取り組みです。DXの定義は、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して顧客や社会のニーズを基に製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争優位性を確立すること」。その一歩となる、業務効率化のアイデア事例をご紹介します。
現在行っている業務内容をリスト化した上で、会社の業務内容と業務システムの「全体像」を“見える化”することが重要です。そうしないと「部分最適化」だけで終わってしまうでしょう。その中で、「対策が必要な業務」と「そうでない業務」を切り分けます。大切なのは、あらゆる業務の棚卸しを行うこと。例えば「報告書の作成(どんな内容や作り方か)」はもちろん、「報告書の印刷・ファイリング」を行っている場合にはこれらの手順・方法も含めて細かくピックアップします。
そして、変革によるインパクトが大きい業務の中で優先順位を付けながら、対策を検討していきます。
業務内容を細かくピックアップするだけでなく、フロー図などを作成して「どのような流れで業務を行っているのか」を整理することも業務効率化につながります。たとえば、上記の「報告書の作成」では「作成→課長へ報告→部長へ報告→報告書データの格納→報告書の印刷→ファイリング」といったように、流れに沿って図式化すると分かりやすいでしょう。
この中で、報告書をデータとして保存する場合には「報告書の印刷・ファイリングは不要なのではないか」「一覧で確認できる管理表を作成すべきか」といった課題も見えてくるはずです。
業務が属人化していたり、担当者によって業務品質にムラが生じたりしている場合は、業務マニュアルを作成または整理することも検討してみましょう。
業務マニュアルの作成にあたっては、誰が見ても内容を把握でき、マニュアルを見ながら操作すれば業務を最後まで遂行できるレベルまで分かりやすく記載することが大切です。また、最近では動画としてマニュアル化するケースも増えています。他部署・多職種の同僚や入社して間もない従業員が見ても、理解できる内容だと望ましいでしょう。
業務に必要な情報、あるいは専門的なノウハウや知見などを集約し、データベース化することも有効です。
営業部であれば顧客情報や取引先情報をデータベース化し、それぞれの商談の進捗を更新しておくことで二重のアポ取りや失注直後に営業をかけるといった連携ミスのリスクも解消されます。また、情報をデジタル化しておくことで、業務に必要な情報を探すための時間や手間も削減できるはずです。
リモートワーク(テレワーク)などの働き方が多様化する中で、「従業員同士のコミュニケーションが減ってしまった」という企業も少なくないでしょう。従業員同士がほとんどオフィスで顔を合わせない場合、うまく連携がとれないことへの懸念もあります。
コミュニケーションに課題や不安がある場合は、メールや電話以外にビジネスチャットツールやビデオ会議システムなどの導入がおすすめです。コミュニケーションツールが多様化している世の中なので、企業としての標準ツールを定めておくことも重要です。こうしたコミュニケーションツールはリモートワークの生産性を維持・向上するのに有効で、業務効率化にも貢献してくれます。
RPA(Robotic Process Automation)とは、コンピューター上で行われる定型的な作業(反復業務)を人に代わって実行してくれるアプリケーションのこと。データ入力、各種資料の作成、リマインドメールの作成、受発注管理などは、定型的な業務の代表例と言えます。限られた人員で業務効率化を実現するには、こうした業務をオートメーション化し、より生産性の高い業務にリソースを集中させることも大切です。
RPAシステムを導入することで、メーラーやブラウザ、社内基幹システムなど複数のアプリケーションにまたがる操作も自動化でき、大幅な業務プロセス改善や業務効率化につながります。
業務効率化の第一歩は現在の業務内容を整理し、ムダな業務や非効率な業務を排除していくことです。その上で、ITツールの導入と活用も重要なカギとなるでしょう。ITツールの導入は、単なるコストではなく「投資」です。この投資がどれだけ業務効率化を実現し、かけなくてよいリソースを削減できるのか、投資対効果を図ってみることもおすすめします。
リコーグループの販売会社であるリコージャパンでは、販売から保守までトータルで寄り添う伴走型のサポートでお客様の「デジタル化」を支援しています。中でも、業務効率化に有用なのが、クラウド型の業務改善プラットフォーム「RICOH kintone plus」です。「RICOH kintone plus」を使えばリコーが展開するさまざまな商品・サービスと連携でき、顧客・案件の管理、蓄積データの分析・活用、複合機と連携したクラウドサービスの活用など、業務高度化やさらなる自動化の実現が可能です。
「RICOH kintone plus」とリコー目指す"はたらく"の未来像について、以下の記事でも紹介しているのでぜひご参考にしてみてください。
リコー×サイボウズのタッグが生んだ業務改善クラウドサービスが描く"はたらく"の未来像|RICOH
監修者
本間 卓哉(ほんま・たくや)
株式会社IT経営ワークスの代表取締役で、一般社団法人IT顧問化協会の代表理事。企業向けに適切なITツールの選定から導入支援、デジタルマーケティング支援までを担うITの総合専門機関として、「IT顧問サービス」を主軸に、数多くの企業で業務効率化と業績アップを実現。主な著書に『売上が上がるバックオフィス最適化マップ』『売上が上がるフロントオフィスの設計図』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。