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「ペーパーレス化」でDXの第一歩を踏み出そう!進め方のポイントと注意点を解説

「働き方改革」や「DX」といったキーワードが注目されている昨今、これらを実現するために避けて通れない取り組みといえるのが「ペーパーレス化」です。ペーパーレス化はその名の通り「紙ベースの業務を見直し、電子化に移行すること」を意味しますが、ITやデジタルに関するノウハウがない企業の場合、どのようにペーパーレス化を行えばいいのか不安に感じることもあるでしょう。

本記事では、ペーパーレス化を推進するメリットや具体的なポイントなどを詳しくご紹介します。業務プロセスのデジタル化を推し進めたい経営者の方、管理職の方、DX推進担当の方は、ぜひ最後までお読みください。

目次

ペーパーレス化(紙の電子化)とは

ペーパーレス化とは、紙によって運用されてきたアナログ的な業務を電子化し、物理的な書類のやり取りを必要としない「デジタルに対応した業務プロセスや業務フロー」へシフトするための一連の取り組みを指す言葉です。実はこのペーパーレス化の推進は10年以上も前から言われてきましたが、なかなか多くの企業が実現できていなかったという背景があります。しかし 近年では大企業だけでなく、中小企業においてもペーパーレス化が進んでいます。

ではなぜ、これほどまでに企業からペーパーレス化が注目されるようになったのか。取り組むメリットと併せて解説します。

ペーパーレス化が注目されている背景と理由

多くの企業が紙の電子化に取り組むようになった背景には、以下のような理由が挙げられます。

DXの推進

特に大きな理由として挙げられるのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に取り組む企業が増えたことです。DXの一環として見積書や契約書、請求書、各種申請書類などの作成・管理をデジタル化する企業が増えてきたことで、その取引先企業も触発されてペーパーレス化を実行する流れになってきたと考えられます。

電子帳簿保存法の施行

国税関係の帳簿や証憑(しょうひょう)などを電子データとして保存することを認める法律として1998年に施行され、これまでに何度か法改正が行われてきた「電子帳簿保存法」。以前は電子帳簿保存やスキャナ保存について高いハードルが設けられていましたが、2022年1月の法改正では税務署長による事前承認制度の廃止、スキャナ保存におけるタイムスタンプ要件の緩和などの変更があり、ハードルが低くなったことから書類の電子化を推進する企業が増えました。

多様な働き方への対応

「働き方改革」の推進やコロナ禍を契機に働き方が多様化し、テレワーク(リモートワーク)の需要が増えたことも、ペーパーレス化が注目される大きな要因となりました。オフィスへの出社を前提とした環境であれば、紙をベースとした業務でも問題はなかったかもしれません。しかし、テレワークでは物理的な書類のやり取りや管理・保管が困難になることから、ペーパーレス化の必要性が増しました。

環境保護意識の高まり

地球温暖化を防ぐために、さまざまな国や地域の企業に対して世界規模でCO2排出量の削減が求められています。企業の社会的責任を果たすため、あるいは「ESG投資(※)」における企業価値向上を図るため、地球環境の保護に積極的に取り組む企業が増えており、オフィスにおいては「紙の使用量を減らすこと」が身近な取り組みとして注目されるようになりました。

※環境(Environment)や社会(Social)に配慮した事業を行い、適切な企業統治(Governance)が取れている会社に投資しようという考え方

企業がペーパーレス化を推進するメリット

紙の電子化を進めることで、企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか。

コストの削減

毎日のように大量の書類を印刷していると、コピー用紙やトナーなどの消耗品にかかるコストが増大します。また、印刷した書類のファイリングや整理、破棄に手間がかかるほか、書類の保管スペースも確保しておかなければなりません。しかし、大量の紙を電子化できれば、書類の印刷や保管にかかるコストが大幅に削減され、経営効率の改善が期待できます。

業務効率化

従来のような紙をベースとした業務プロセスのままでは効率化が難しいほか、ヒューマンエラーも発生しやすいため生産性が低下してしまいます。紙を電子化することで物理的な書類のやり取りを省略でき、遠隔でのコミュニケーションが可能になるなど、検索や共有もしやすくなるため業務効率の改善が期待できます。

書類の盗難・紛失・改ざんのリスク軽減

物理的な書類は盗難や紛失のリスクが伴うほか、第三者によって情報が不正に改ざんされる危険もあります。デジタル化することができれば、暗号化によって機密情報を保護し、アクセス権を付与することで外部への情報漏えいを防ぐこともできます。

ペーパーレス化の対象となる主な書類・資料・文書

ペーパーレス化の対象となる書類・資料・文書には以下のようなものがあります。

  • 経理・会計書類(総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、棚卸表、請求書、領収書など)
  • 契約書・同意書
  • 申請書・報告書
  • 議事録
  • マニュアル・レポート類
  • パンフレット・カタログ・チラシ類
  • スケジュール・工程表
  • 名刺

上記のうち、経理・会計書類はタイムスタンプの付与や検索要件の確保といった「電子帳簿保存法のルール」に則って保存する必要があります。

ペーパーレス化の現状と課題

どの程度の企業が紙の電子化に取り組んでいるのかといった現状を解説するとともに、ペーパーレス化にあたって起こりがちな問題をご紹介します。

ペーパーレス化の実施状況

総務省が2020年に行った「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究」のアンケート結果によると、DXの取り組みとして約6割の企業が「社内業務のペーパーレス化」に取り組んでいることが判明しました。社内業務のDX化・デジタル化の中でもペーパーレス化の割合はもっとも高く、多くの企業が取り組んでいることがうかがえます。

ペーパーレス化で生じがちな4つの問題

一方で、ペーパーレス化がなかなか成功に結びつかないという企業も少なくありません。どのような問題が生じることが多いのか、代表的な例をいくつか見ていきましょう。

電子化に向けたイメージができない

例えば、ペーパーレス化の対象となる書類に「稟議書」があります。紙の場合は回覧形式で、一般的に「上長などが確認・捺印して次の承認者に渡す」といった流れで稟議は進んでいきますが、電子化するとなった場合、「どのように回覧すればいいのか」というフロー変更のイメージが持てないためにペーパーレス化が進まないというケースも珍しくありません。

他にも、重要書類の中には法的な保管義務があるものが多いほか、機密性の高い書類については万全な情報セキュリティ下での管理も求められるため、その対策を検討していく必要性も出てきます。

導入時や維持に必要なコストが発生する

ペーパーレス化にあたっては、システムの導入に際して高額な初期費用がかかったり、維持するためのランニングコストが問題になったりすることがあります。例えば、スキャナやOCRソフト、ストレージなどの準備には高額な初期投資が必要な場合も出てきます 。また、電子化された書類データをクラウドストレージや共有フォルダで保管する際には、管理費用やセキュリティ対策費用も発生します。

さらに、これらを適切に利用するための社員向け研修や、システムのメンテナンス費用なども考慮しなければなりません。十分な投資対効果が得られるか、長期的なコスト削減効果なども見据えて計画を立てることが求められます。

社員がなかなか協力してくれない

ペーパーレス化に移行するということは、現場に浸透している既存の業務プロセスや業務フローが変更されることを意味します。特に、長年にわたって紙ベースでの業務に慣れてきた社員にとっては、新たな業務フローに慣れなければならないことから強い抵抗感やストレス、不安があるかもしれません。積極的に協力してくれない社員・部署なども少なくはないでしょう。

経営層や管理職、DXのプロジェクトリーダーは、ペーパーレス化に取り組む目的やメリット、具体的な効果を丁寧に説明し、社員の理解と協力を得る必要があります。また、スムーズにペーパーレス化を実現するには、社員向けの研修やサポート体制の整備を行い、現場の意見を反映しながらシステムの導入を進めることも大切です。

電子帳簿保存法の理解が進まない

会計書類のペーパーレス化を進めるためには、電子帳簿保存法に対する十分な理解が必要です。この法律は電子データでの保存が認められる帳簿や会計書類についてのルールを定めたものであり、企業はルールを遵守しなければなりません。

しかし、法的要件や運用の詳細について社員や管理者が十分に理解していない場合、誤った方法でペーパーレス化が行われ、注意指導や 処罰の対象となる可能性も。こうしたトラブルを防ぐためには、電子帳簿保存法に関する社員教育を徹底するのはもちろん、専門家のアドバイスを受けることも重要です。

ペーパーレス化に効果的なツールと活用のポイント

ペーパーレス化を実現するためには、さまざまなデジタルツール(DXツール)の活用が不可欠です。具体的にどういったツールが役立つのか、それによってどのような効果が得られるのかを解説します。

グループウェア

グループウェアとは、スケジュールやタスクの管理、業務に必要な資料の共有、社内掲示板といった複数の機能がパッケージ化されたグループ専用のコミュニケーションツールです。

グループウェアを導入することで、紙ベースであった会議資料や連絡メモなどを電子化できるだけなく、社内での情報共有がスピーディーかつ効率的に行えます。また、事前の資料共有によって会議時間が短縮されれば、会議における意思決定のスピードも向上。書類や資料の保管場所もクラウド上に集約され、検索や閲覧が容易になることから業務効率の改善にもつながるでしょう。

CRM

CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客情報や商談内容、契約情報、過去の問い合わせ内容などを記録・管理するツールのことです。

CRMを導入することで、膨大な顧客情報をシステム上で一元管理することが可能。書類を探す手間なく過去の商談状況や見積もり金額、問い合わせ内容なども瞬時に検索できるため、効率的な営業活動に役立てられます。

電子契約システム

電子契約システムは、主にPDFなどの電子データとして契約書を作成し、印鑑・署名の代わりに電子署名やタイムスタンプを付与するシステムです。

従来の紙ベースの契約書では、印刷や郵送、保管に手間やコストを要しましたが、電子契約システムを導入することでこれらのプロセスが大幅に簡略化されます。また、契約書の内容はシステム上で確認・管理でき、編集履歴が残る仕組みから不正や改ざんのリスクが抑えられるため、ガバナンスの強化にもつながります。

クラウド勤怠管理システム

従来の紙のタイムカードに代わって、PCやスマートフォンなどの端末上で勤怠の打刻を行えるのがクラウド勤怠管理システムです。

タイムカードは集計に時間がかかるうえ、データの転記ミスが生じるケースもあります。しかし、クラウド勤怠管理システムを導入することにより、リアルタイムに勤怠情報を確認・管理できるため、集計作業もなくなり効率化を実現できます。また、クラウド型のためテレワークやフレックスといった働き方にも柔軟に対応できるようになります。

企業のペーパーレス化を支援する「RICOH kintone plus」

DXに取り組む企業が増えている一方で、特にITやデジタルのノウハウがない企業にとっては「何から取り組んでいけばいいかよく分からない」というケースも珍しくないでしょう。そのような場合は、身近な業務から少しずつデジタル化してみることがおすすめです。

例えば、グループウェアを導入して社内通達のデジタル化を図る、クラウド上に共有フォルダを作成してナレッジやドキュメントを一元管理する、といった方法があります。また、経費申請や勤怠申請、社内稟議申請などをオンラインシステムへ移行することもペーパーレス化につながります。

リコーでは、これらの機能が集約されたクラウド型業務アプリケーションツール「RICOH kintone plus」を提供しており、ツールの活用を通してさまざまな企業のペーパーレス化を支援しています。「RICOH kintone plus」はkintoneの基本機能をそのままに、リコーだからこそ提供できる「あったらいいな」という便利な機能を標準搭載したツールです。

リコー複合機との連携機能により、資料や書類の電子化もスムーズ。FAXで受信した文書も印刷することなく、クラウド上へダイレクトに電子データとして保存・登録できます。業務プロセスのデジタル化やDXの推進を検討している企業様は、お気軽にご相談ください。

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監修者

本間 卓哉(ほんま・たくや)

株式会社IT経営ワークスの代表取締役で、一般社団法人IT顧問化協会の代表理事。企業向けに適切なITツールの選定から導入支援、デジタルマーケティング支援までを担うITの総合専門機関として、「IT顧問サービス」を主軸に、数多くの企業で業務効率化と業績アップを実現。主な著書に『売上が上がるバックオフィス最適化マップ』『売上が上がるフロントオフィスの設計図』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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