お役立ちコラム
2024.10.24
ビジネスではさまざまな場面で「可視化」「見える化」という言葉が用いられます。この「可視化」や「見える化」は、特に業務効率化や生産性向上を図る取り組みにおいて重要なプロセスのひとつです。しかし、その意味を正しく理解できていなかったり、誤った認識を持っていたりする方もいるのではないでしょうか。
本記事では、ビジネスシーンにおける「可視化(見える化)」とはどういった意味を指すのか、そしてなぜそのプロセスが業務改善において重要なのかを解説します。
目次
ビジネスにおける「可視化(見える化)」とは、本来目に見えないものを視覚的に表し、いつでも確認できる状態にすることを指す言葉です。ではなぜ、業務において可視化することが重要なのでしょうか。その目的や重要性、身近な事例などを見ていきましょう。
可視化の主な目的は、複雑な業務内容や進捗状況などを「把握できる状態」にすることです。例えば、業務プロセスを可視化できていないと、業務がどの程度進んでいるのかを客観的に把握することが難しく、どの工程がボトルネックになっているのかを特定することもできません。業務改善や生産性向上を図る対策を考えるうえでも、可視化は不可欠なプロセスと言えるのです。
また、さまざまな情報を可視化することで関係者全員が状況を同じレベルで理解できるようになります。誤解や認識の齟齬(食い違い)が減るためコミュニケーションコストが減り、より迅速に意思決定を行えるようになるでしょう。
可視化の具体的なアクションとして挙げられるものには、以下のような事例があります。
日々の業務を振り返ってみると、上記の事例のようにさまざまな場面で可視化が役立てられていることが分かります。自身が関係する業務において「可視化されていないせいで困っているもの」がないか探してみるのもよいでしょう。可視化できていない業務は、属人的になっているケースが多々あります。
可視化と似た意味の言葉に「見える化」があります。ビジネスの場面では同じような意味として用いられることが多くありますが、特定の業種や企業によっては、「気づきにくい事象や状況を強制的に知らせ、いつでも見える状態にしておく」という意味で「見える化」という表現を使うこともあるようです。
例えば上記の場合、生産ラインの稼働状況をリアルタイムで表示しておき、異常が発生した際にアラートを発出するような仕組みの構築は「見える化」に該当します。
日々の業務を可視化することで、どういったメリットが期待できるのでしょうか。また、反対にデメリットとして懸念されることはあるのでしょうか。
期待されるメリットとしては、主に以下の4点が挙げられます。
業務を可視化することで、全体の業務の流れや進捗状況を一目で把握できるようになり、無駄な作業や工数増加のボトルネックとなっている部分が理解しやすくなります。一連のプロセスでどの部分が無駄になっているのかを把握できれば、その工程を省いたり、自動化したり、別の手法に改善したりすることで業務を効率化できるでしょう。
業務の可視化によって、それまで気づけなかった課題や問題を早期に発見できる可能性があります。例えば業務プロセスの中に二重チェックなど一部重複する作業があった場合、可視化によってそれが見えてくることもあるでしょう。また、反対に工程の一部が漏れていたせいで業務プロセスに不備があった場合も、問題が深刻化する前に必要な業務改善対策を講じることができます。
業務内容が可視化されないままブラックボックスの状態にあると、それまで担当していた従業員が退職・休職に至った場合に業務が立ち行かなくなるリスクがあります。業務が可視化され、作業の流れや責任者、ツールの使い方などを確認できる状態にあれば、特定の従業員が不在になってもスムーズに業務を引き継ぐことができ、安定した業務遂行が可能になります。
チームや部署内のメンバー一人ひとりの状況やパフォーマンスを把握する点でも、業務の可視化は役立ちます。ダッシュボードや進捗管理ツールを活用することで、誰がどのタスクを担当しているのか、どのくらい進捗しているのかをリアルタイムで確認できます。それにより、管理者やリーダーはメンバーへの割り振りを調整したり、必要に応じてほかのチームに応援を要請したりすることもできるでしょう。
業務を可視化することで懸念されるデメリットは以下の2点です。
業務の可視化にあたっては、業務プロセスを明確に定義し、誰が担当になったとしても作業品質を維持できるよう標準化することが求められます。しかしそれによって柔軟な対応が難しくなる懸念も生じます。顧客や取引先から個別の要望があった際、それがマニュアル化されていない内容であると判断が難しく、対応が遅れてクレームに発展する可能性もないとは言えません。判断できない要件が出てきた際の相談先をあらかじめ明確にしておくことも大切です。
可視化を徹底すると、データや数値といった表面的な事実に注目しがちになり、本質的な問題を見逃してしまう可能性があります。プロジェクトの進捗状況や営業実績ばかりに気を取られてしまうと、業務上の品質課題や部下のモチベーションなど、数字では測りにくい要素を軽視したり見逃したりする恐れもあるでしょう。
そのため、可視化されたデータや数値といった定量的な情報ばかりではなく、顧客や現場から寄せられてくる声などの定性的な情報もバランスよく採り入れることが求められます。
業務可視化はどのような手順で進めていくべきでしょうか。また、可視化の取り組みを成功させるポイントや注意点についてもご紹介します。
業務の可視化を進める際の基本的な手順は以下の通りです。
はじめに、現状の業務内容をすべて洗い出します。部署やチーム内の業務内容を細かく分解し、どのような作業がどの順序で進行しているかを整理しながらまとめていきます。
ここで重要なのは、業務の流れを正確に理解し、各プロセスの目的や成果物を明確にすること。業務内容・業務フローを正しく記載できなければ、どこに無駄があるのか、どのプロセスがボトルネックになっているのかを把握できません。そのため、業務内容の洗い出しは業務可視化の中でも特に重要なステップと言えます。
さらに、標準的なプロセスを洗い出すとともに、イレギュラーとなるケースの把握をしておくこともポイントです。
次に、洗い出した業務内容から無駄や非効率が発生している箇所を見つけ出し、改善点を特定していきます。この段階では、業務の質や効率を向上させるため、現場の声を反映しながら簡略化や自動化などの改善策を立てることが重要です。
例えば、一連の業務プロセスに何らかの過不足があった場合、その理由や目的などを確認しながら一つずつ見直していきます。まずは、現場で困っていること、あるいはなぜそういうフローだったのかを確認しましょう。現場へのヒアリングが十分でないと本来必要な業務プロセスまで変更してしまい、品質の低下を招く恐れがあります。
業務内容と改善点を洗い出したら、それらを関係者全体に共有します。具体的には、業務のフローチャートと改善策の一覧を作成し周知するなどの方法が挙げられます。関係者全員に同じ情報を共有することで、ベクトルを合わせて業務改善を進められるようになるでしょう。
業務可視化をその先の業務改善につなげるには、以下のポイントに注意しながら取り組むことが大切です。
業務可視化においてもっとも重要なのは、目的を明確にすることです。目的が不明確な状態でプロジェクトを組んでも、途中で方向性を見失い、期待通りの効果が出ない可能性が高いでしょう。
このように、何のために可視化を行うのか、可視化によって何を達成したいのかをはっきりさせることが大切です。
管理職やリーダーは大まかな業務内容を把握していても、現場で行われている細かな作業までは把握できていないケースが少なくありません。業務の可視化を円滑に進めていくためには従業員全員の協力が不可欠であり、そのためにも目的を共有し、説明しながら理解や協力を得る必要があるのです。
業務プロセスには大きな作業から小さな作業までさまざまなものがあり、可視化する際にはこれらを一つずつ分解していく必要があります。しかし、この際に分解の粒度が粗すぎると重要なプロセスが見落とされるリスクがあります。特に複雑な業務プロセスの場合、細かい業務までしっかりと分解したうえで詳細な業務フローを作成することが求められます。
これにより改善すべき具体的なポイントが明確になり、効果的な改善策を立てやすくなります。
可視化によって業務改善のポイントや対策が決まったら、即座に実行に移すことも大切です。計画段階において慎重になりすぎると、結果として何も変わらないままになってしまいます。また、自動化に向けた取り組みなど時間を要するものはプロジェクト化し、スケジュールを明確にして検証を踏まえながら改善を推進していきましょう。まずは小さな改善から実行し、少しずつ成果を積み重ねてプロジェクトとしての成功体験を増やしていくことが、ゴール(大きな改善)への近道となるでしょう。
業務プロセス以外にも、営業実績や顧客情報、プロジェクト管理など、ビジネスでは可視化(見える化)すべき情報がたくさんあります。社内のあらゆる業務を可視化すれば生産性の向上や課題の早期発見につながりますが、業務可視化にはプロジェクトマネジメントの経験やツールに関する知見など、専門的なスキルも必要です。
そこで、「業務可視化を推進した経験がない」「ツールの選定・活用に関する知識もない」といった方におすすめしたいのが、クラウド型業務アプリケーションツール「RICOH kintone plus」です。
「RICOH kintone plus」はkintoneの基本機能はそのままに、リコーだからこそ提供できる「あったらいいな」という便利な機能を標準搭載しています。マニュアル管理やタスク管理、営業案件管理、プロジェクト管理などの多様な業務アプリケーションを追加でき、外部サービスや基幹システムとの連携も可能。専門知識がなくても、データベースやグラフとして情報を可視化できます。また、リコー複合機との連携機能も標準搭載されており、例えばFAXで受信した書類を印刷することなくデータのまま保存したり、データを集計して表やグラフとして可視化したりすることも容易です。
業務プロセスはもちろん、社内のさまざまなデータや情報を効率的に見える化し、業務改善や生産性向上を実現したいとお考えの企業様はお気軽にご相談ください。
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監修者
本間 卓哉(ほんま・たくや)
株式会社IT経営ワークスの代表取締役で、一般社団法人IT顧問化協会の代表理事。企業向けに適切なITツールの選定から導入支援、デジタルマーケティング支援までを担うITの総合専門機関として、「IT顧問サービス」を主軸に、数多くの企業で業務効率化と業績アップを実現。主な著書に『売上が上がるバックオフィス最適化マップ』『売上が上がるフロントオフィスの設計図』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。