業務プロセスの効率化は、世界中の企業に共通する課題。煩雑な手作業や紙書類の非効率が、多くの人を悩ませている。複合機やデジタルサービスを展開してきたリコーは、ドキュメント管理や業務プロセスを効率化するソリューションを幅広く提供。そのひとつが、プロセスオートメーションの新しいグローバルサービス基盤「RICOH Intelligent Automation」だ。このサービスが仕事をどう変えるのか、企画・開発を担当するデジタルサービス事業本部 プロセスオートメーション事業センター PA商品企画室 室長 齋藤樹里氏と、同室 Ashish Patel氏、 AIソリューション企画グループ 古川詩織氏に話を聞いた。
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RICOH Intelligent Automationは、紙やデータの文書の取り込みからワークフロー運用、データ活用までの全プロセスを自動化。リコーの複合機のほか、PFUやnatif.ai、DocuWareなど、近年リコーグループに加わった企業の製品や技術活用、パートナー様との連携を通じて、業務プロセスの「オーケストレーション」を実現するサービスだ。その特徴について、AIソリューション企画グループの古川氏はこう話す。
デジタルサービス事業本部 プロセスオートメーション事業センター PA商品企画室 AIソリューション企画グループ
古川 詩織氏
「情報の入り口から検索・活用までの一連の流れを"End to End"で自動化します。スキャンした文書やデータをOCR(光学文字認識機能)で読み取り、文書を分類。ワークフローに載せて運用や活用につなげます。ノーコードでのワークフロー構築や、他の基幹システムや文書管理システムとの連携も可能です。お客様に合った仕組みを構築できるため、現在の運用をできるだけ変えずにDXに取り組みたいお客様にもお勧めできます」(古川氏)
開発プロジェクトが始動したのは、1年前の2024年春。そのきっかけは、リコーグループに、高度なインテリジェントキャプチャー(AIを活用した画像認識/OCR)技術を有するドイツのスタートアップ企業・natif.ai社が加わったことだと、同室・室長の齋藤氏は話す。
デジタルサービス事業本部 プロセスオートメーション事業センター PA商品企画室 室長
齋藤 樹里氏
「リコーが重点領域として掲げるプロセスオートメーション事業の強化に向けて、2024年4月、natif.ai社がリコーファミリーに加わり、サービスの具現化がスピードアップしました。リコーのIDPサービス基盤と、natif.aiの高度なAIエンジン、外部の先進的なクラウド技術を組み合わせるることでリコーユニークなグローバルサービス展開を確実なものにするために、当時、リコーUSAでも事業の企画・検討がすすんでいたこともあり、それに携わるキーマンであるAshishが、日本への逆駐在という形で私のチームに入ってくれて、さらに検討が進みました」(齋藤氏)
natif.aiのインテリジェントキャプチャー技術の精度は高く、あらゆる言語・種類の帳票や、手書き文書も正確に読み取る。活用を進めるほどに学習が進み、顧客のビジネスや業務に合ったより正確な判断ができるようになっていく。その機能を支えるのが、グローバルにオフィスサービスを展開してきたリコーならではの強みだ。
「リコーは、文書が通過する複合機と周辺ソリューションを有しているため、世界のビジネスの現場で使用されてきた大量のデータをAIの学習に活用できます。また、私たちは1980年代から独自にAI開発を進めていますし、natif.aiのAIは、お客様自身に成り代わった認識や判断ができるAIを活用したIDP技術に強みを持ちます。更にグローバルでの顧客接点があるからこそのリアルなデータ基盤を活かし、業務に根差した精度の高いAIを短時間で実現できるのが、リコーの最大の優位性です」(齋藤氏)。
インテリジェントキャプチャーに加えて、ユーザーのアシスト機能にもAIが活用されている。AIエージェントが、ツールの使い方や処理の期限のアラート等のサポートを行う。古川氏は、「文書の振り分けや、転記作業の軽減によって業務が効率化します。文書をさまざまな方法で管理しているお客様や、システムの併用による非効率を抱えているお客様は、特にRICOH Intelligent Automationのメリットを感じていただけると思います」と話す。
企画の立ち上げから、スピード感を持って進めてきた本プロジェクト。しかし、技術開発のスピードが速いAIを採用した製品ならではの苦悩もあったと、齋藤氏は振り返る。
「natif.ai社が仲間に加わり、RICOH Intelligent Automationに必要な技術が揃った頃、世界はすでに第4次AIブームと呼ばれるタイミング。できるだけ早くお客様にサービスをお届けしたいという焦りがある中で、海外の拠点やリコーグループ内関連部門との調整をスムーズに進めることが課題でした」(齋藤氏)
しかし、「価値あるサービスだからこそ、時間が限られる中でもチームビルディングやコミュニケーションを重視した」と齋藤氏。主要メンバーは、長く製品企画に携わる齋藤氏と、営業出身の古川氏、リコーUSAで銀行や保険会社のビジネスコンサルタントを務めてきたAshish氏、そしてリコーUSAで長年にわたって技術・ビジネスの両面でIDPの経験が豊富なMitchell氏の4人。多様な背景を持つメンバーだからこそ、チームの信頼関係を築くことを意識したという。
Ashish氏も、「グローバルなソリューションを作る上では、リコーの世界の各拠点との連携が大切。最大の課題は、時差をふまえて、各地とのコミュニケーションの時間を確保することでした」と語る。「本プロジェクトの重要課題のひとつは、リコーの各地域で長年培われてきた技術や、マーケティング手法などの強みや資産を統合すること。それらをサービスに採用するための調整やグローバル基準への標準化が必要でした」(Ashish氏)。各拠点の積極的な協力と、齋藤氏を中心に醸成したチームワークによって、「日本のチームや各拠点と良好なコミュニケーションがとれている」とAshish氏は言う。
デジタルサービス事業本部 プロセスオートメーション事業センター PA商品企画室
Ashish Paritosh Patel氏
古川氏も「いろいろなバックグラウンドを持つメンバーの知見を活かしながら、価値観や習慣の違いから生じる認識の齟齬を解消できるよう連携をとっています」と話す。自身の営業職時代に、顧客の働き方や日頃の業務のお困りごとに接してきた経験も、企画の仕事に活きているという。
RICOH Intelligent Automationは2025年秋から、一部地域でパイロット導入を開始。順次日本も含む世界各地でのリリースに向けて準備を進めている。本サービスは企業での活用が進むほどAIの精度が上がっていくため、取り扱う文書量が少なく自社内でのAI学習が進みづらい中小企業でも、今後、活用が見込まれている。AI活用やワークフロー構築が難しい顧客には、リコーが文書の取り込みや帳票設計を代行するBPS(ビジネスプロセスサービス)も提供する予定だ。
齋藤氏は、RICOH Intelligent Automationの価値について、「煩雑なタスクを減らすことで、お客様が創造的でワクワクする仕事に向き合う時間を増やせる」と語る。
「それが、この仕事をやってよかったという思いや、はたらく歓びにつながると思います。私自身、長い製品企画のキャリアの中でも、まだこうして新しい製品企画に取り組めることに歓びを感じますね。未就学児を含む2人の子どもを育てながら仕事をしているので、仕事の質は自分の最重要テーマでもあります。いかに効率的に高品質なサービスを作れるか、その環境を考え続けることもやりがいのひとつです」(齋藤氏)
「お客様が、新しいことやよりクリエイティブな仕事に挑戦できる時間を増やしたい」と話す古川氏も、チャレンジングな日々が自分のはたらく歓びにつながっていると言う。「入社当初から、将来は商品企画やグローバルなプロジェクトに携わりたいと希望していたこともあり、グローバル製品の企画に挑戦できることがとても楽しいです。日本のチームや各地域のメンバーと話し合いながら、世界中のお客様のニーズに寄り添った製品を形にしていけることに、歓びを感じています」(古川氏)。
RICOH Intelligent Automationというグローバル製品を市場に届けられる充実感が、自身のはたらく歓びにつながっているとAshish氏。「リコーグループの力を結集して世界中の顧客の課題を解決するソリューションを生み出せるという、ユニークな機会を得られたことに感謝しています」と語る。
「単純な業務の自動化によって、顧客の新たな業務の習得やキャリアアップの機会が生まれ、日々の仕事がさらにクリエイティブになっていくでしょう」とAshish氏は言う。RICOH Intelligent Automationは、こうした働く人の歓びを生み出す好循環を、世界中に広げていくはずだ。