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リコーのAI 生成AIは効率化のツールから“頼れる相棒”へ、機能強化で進化を続けるRICOHデジタルバディ

2025年10月28日
  • AI

※所属・役職はすべて記事公開時点のものです。

効率化やアイディア創出等のシーンで活用が進むAI。業務でAIを使いこなすことが、企業の競争力獲得におけるカギとなる。リコーが取り組んできたAI開発が形になったサービスのひとつが「RICOHデジタルバディ」だ。今回、RICOHデジタルバディについて、製品の企画開発を担当する、株式会社リコー AIサービス事業本部 AI事業開発センターの小林理恵氏と山脇卓氏に、活用シーンや活用メリットについて話してもらった。

サマリー

  1. RICOHデジタルバディは、社内情報を活用して業務に即した回答を生成するAIサービス
  2. AIエージェント機能の追加を予定しており、自律的に情報を探索・判断する"実行型"への進化を目指す
  3. 使いやすさを高め、活用の幅を広げる機能強化で、人とAIが協業し創造力を発揮する未来を描く

読了時間

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社内情報の検索を組み合わせることで業務に合った回答を生成

「RICOHデジタルバディ」は2024年、「生成AIが仕事の相棒のように働く」というコンセプトでリリースされたAIサービス。規定やマニュアルなどの社内情報も読み込んだ生成AIが、ユーザーの質問に対して端的に情報を提供し、業務をサポートする。その特徴を、RICOHデジタルバディの企画開発を手がける小林理恵氏はこう話す。

株式会社リコー AIサービス事業本部 AI事業開発センター
小林 理恵氏

「生成AIにチャットで問いかけるだけで、業務の実態に即した回答を返すため、社内ナレッジの共有や、属人化しがちな情報活用の適正化に広くご活用いただいています。またRICOHデジタルバディは、社内問い合わせ業務との相性も良いです。通常、問い合わせ対応のチャットボットは質問と回答を作成する必要がありますが、RICOHデジタルバディは、回答の元となる作業手順書やマニュアルを登録するだけでAIが回答を生成するため、問い合わせ業務を大幅に効率化できます。さらに、過去の事例や技術レポートなどを登録しておくことで、類似事例に含まれる社内ナレッジの探索・活用もスムーズになり、情報探索にかかる工数を大幅に削減できます」(小林氏)。

社内ナレッジを活用し、業務に即した提案や課題解決を支援するRICOHデジタルバディの画面イメージ

そうしたRICOHデジタルバディの回答の精度や利便性を実現するのが、RAG(検索拡張生成)だ。RAGとは、LLM(大規模言語モデル)と自組織の情報の検索結果を組み合わせることで回答の精度を高める技術。「業務に即した回答を得るには、一般に公開されていない社内情報の活用が欠かせません。RAGによって社内情報を組み合わせた回答生成が可能になるので、社内情報をあらかじめAIに学習させる手間やコストも不要。このような導入のしやすさも、ビジネスシーンで活用いただけている理由です」(小林氏)。

RAGからAIエージェントへ —進化を続けるRICOHデジタルバディ

そして今、RICOHデジタルバディにAIエージェントの機能を備えた形にバージョンアップする計画が動いている。AIエージェントとは、指示に対してアウトプットするだけでなく、自律的にタスクを行い人の課題解決をサポートするAIだ。

現在開発中の新機能は、単なる検索を超え、複数の情報源を横断的に参照しながら、内容の整合性や業務への適合性を多角的に検証する機能。"実行型エージェント"として、業務に即した判断や意思決定支援までを担えるように進化する予定だ。

従来のRAGは一問一答で、ユーザーが正しく質問をする必要があった。しかし、業務の現場では、「どこに情報があるか」「そもそも何を聞けばよいか」が曖昧なケースも多い。新機能では、こうした課題に応えるため、再探索と検証を繰り返し、実務に寄り添った判断を後押しできるようになる見込みだ。AIエージェント機能の企画を手がける山脇卓氏は、新機能の特徴をこう話す。

「目的に向かって自律的に探索・提案を行うナビゲーション力が特徴です。現場の迷いを減らし、次の一手を示す、頼れる"相棒"を目指しています。現在はテストを行いながら機能を磨き込んでおり、来春には皆様にご提供できるよう準備中です」(山脇氏)。

  • 現在開発中につき、仕様や提供時期は変更される可能性があります。

株式会社リコー AIサービス事業本部 AI事業開発センター
山脇 卓氏

安心して使える品質と開発スピードの両立に苦戦

AI活用が広がる一方で、「導入しても思うように使いこなせない」という課題も少なくない。そこで、AIエージェントを含むRICOHデジタルバディの開発では、誰もが扱いやすい操作性の高さを重視している。「AI初心者から、さらに活用を深めたい方まで幅広く使っていただけるのが、RICOHデジタルバディの強みです」(山脇氏)。

スピード命のAI開発において、リコーとしても働く人を支える新機能をいち早く届ける必要がある中、「お客様に安心して使っていただける品質にもこだわっている」と小林氏は話す。「AIの技術開発は急速に進んでいて、法整備も後追いという状況。社内の情報資産を扱うわけですから、お客様はセキュリティも懸念されています。ものづくりに長く従事してきたリコーがリリースするAIサービスだからこそ、お客様に安心して使っていただくため、法務や品質保証など多くの部門と連携しながら、必要な機能と品質の確保に注力しています」(小林氏)。

とはいえ、スピーディに開発を進めたい思いと社内プロセスの狭間で葛藤することもあるという。「社内第1号の事例を作ることも多く、大変ではありますが、今の仕事がリコーグループ全体のAI活用につながっていくはずですので、各部署と助け合い、チームとして成長しながら開発を進めています」(小林氏)。

AIとともに働く未来に生まれる新しい"はたらく歓び"

長らく開発畑で働いてきた山脇氏にとって、人とのコミュニケーションが重要な今の仕事が刺激的だという。「AI開発に携わるまでは、部署内など限られた人と関わるのみで、お客様との距離も遠いと感じていました。今は、リコーグループの営業部門やお客様と話をする機会が増えて、いろいろな困り事や仕事のスタイルを知ることができ、視野が広がりましたね」と山脇氏。AIサービスに対する顧客の期待も肌で感じるため、これまでのキャリアで味わったことのない、働く楽しさを見出しているという。

小林氏は、顧客と接する中で、まだAIを活用しきれていない人が多いことを実感している。「AI技術と実用の間にはまだ、かなりのギャップがあると実感します。だからこそ、私たちの仕事を通じて、誰もがバディに話しかけるだけでAIのメリットを享受できる、そんな環境を作っていきたいですね」(小林氏)。製品やAI活用支援を通じて、顧客に「これならもっと使っていきたい」という言葉をもらった時、「この仕事をしていて良かったという気持ちや、“はたらく歓び”を実感します」と小林氏は付け加える。

RICOHデジタルバディは、当初の目的である「単純業務を自動化することで、人が創造的な仕事に従事する環境を作る」という段階の次のステップへと進みつつある。小林氏は、「AIエージェント機能によって、生成AIが、単なる仕事の効率化のツールではなく、人の思考をサポートする頼れる相棒として働くという活用のあり方が具体化されてきた」と手応えを感じる。

「AIと一緒に働くことで、新しい形の"はたらく歓び"を生み出せる」と小林氏は期待する。山脇氏も、「仕事の仲間にAIが加わることで、人と人との接点も増えて、コミュニケーションがより活性化する」と見込んでいる。RICOHデジタルバディは、人とAIが協力して創造的に働く、そんな未来像を実現していく。

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