特別対談 チャレンジする人、応援する人 「やってみよう!」から始まる新たな一歩で広がる可能性

2025年2月21日
  • “はたらく”に歓びを

※所属・役職はすべて記事公開時点のものです。

リコーグループは、デジタルサービスの会社への変革を加速しています。その中で、事業成長の原動力となるのは、社員一人ひとりの思考と行動です。会社の方向性に合わせて自身のキャリアを設計し、必要なスキルを積極的に身に付けようと挑戦する「自律型人材」が今、求められています。本記事では、新しい事業創造の挑戦の場である「TRIBUS(トライバス)」にさまざまな立場で携わり、挑戦を支援しながら自らも挑戦を続ける3名の社員に、「自分らしい」「リコーらしい」挑戦について語ってもらいました。

自らのキャリアを考え、踏み出した一歩で広がった可能性

——皆さんの転機となった、新しいことへの挑戦のきっかけは何だったのでしょうか。

野村:現在、TRIBUS推進室長として、リコーグループ社員やスタートアップ企業の事業創造の挑戦の場を運営し支援しています。入社後10年間は営業職として新規開拓を担当し、お客様と少しずつ関係を築きながら、人との関わりや事業の広がりに面白さを感じていました。その後、リコージャパンの経営企画部門に異動し、販売会社の新規事業における戦略立案に携わる中で、戦略を「描く」だけでなく、自分で実行したいという想いが強まりました。ちょうどその頃、新規事業への誘いがあり、40歳という節目を目前にした30代後半で「もっと手応えや歓びを得られる立場で挑戦したい」と感じたことが転機となりました。

灰谷:私も、30代後半に10年後の自分を想像したことがひとつのきっかけでしたね。ITエンジニアとして新卒でリコーに入社してから、大規模なシステム統合やIT戦略の策定などさまざまな経験を重ねてきました。でも、その先のキャリアを改めて考えたとき、このまま同じ業務を続けるだけでいいのかな、と少し不安になったんです。あるとき、社内外で新規事業に挑戦する人たちの姿がキラキラ輝いて見えて、純粋に「かっこいい!」と感じ、関心を持ちました。そこから見よう見まねで、課外活動として新規事業の提案活動を始めました。よその事業部長に飛び込み提案したり、プロトタイプを制作してグローバル役員会議の場で事業プランを提案したりしたこともありましたね。そうした中で手応えを感じて、新規事業開発部門への異動希望を出しました。TRIBUSへの挑戦は1回目こそ採択には至りませんでしたが、諦めずに2度目の挑戦で採択を勝ち取りました。

楽しいことと失敗は表裏一体、プロセスを楽しむ好奇心が大事

株式会社ブライトヴォックス 代表取締役 CEO
灰谷 公良さん

生澤:お二人の話にとても共感しました。私は現在、TRIBUSの事務局として活動していますが、新卒でリコーに入社後、役員秘書や業績管理、マーケティングやプロセス改革の業務などを経て、現在のリコーデジタルプロダクツBUで複合機などの商品企画を担当していました。業務上さまざまな部署と関わる立場ではありましたが、既存事業の企画ということもあり、プロセスが定められた業務も多いため、新しいことをゼロから考える場面は少なく、リコーの中でも限られた領域しか知らないことに気付きました。

転機になったのは、30歳で取得した育児休暇でした。ビジネスパーソンとして伸び盛りの時期に、1年半も職場を離れることには不安もありましたが、自分のキャリアを見つめ直す貴重な機会になりました。新卒からずっとリコーにいて、同じ部署に長く在籍しているとそれ以外のことを知らな過ぎて、その先にあるキャリアが自分にとって納得のいくものなのか、分からなくなってしまったんです。「絶対これをやりたい」という強い想いがある方ではなかったので、先々のキャリアを考えるためにも、「何か他の新しいことを知りながら確かめてみたい」と思うようになりました。職場復帰のタイミングで、スタートアップ企業の伴走支援を行うTRIBUSのカタリストを社内副業で募集しているのを知り、「新しいことから刺激をもらうチャンスだ」と思って挑戦することにしました。

自分の選んだ道を正解に導く 好奇心でプロセスを楽しむ

——実際に挑戦してみるとご苦労もあったかと思います。それでも挑戦し続ける、その源泉はどこにあるのでしょうか。

野村:私は「自分が選んだことが最終的には正解になる」と信じています。短期的には失敗に見えることでも、振り返ると成功の礎となることもあります。とにかく一歩踏み出してみないと分からないことも多いので、まずはやってみることを大切にしていますね。一歩踏み出してみると仲間が集まり、自分一人だけでは実現できないことでも、チームとして成果を最大化することもできます。もちろん、自分の選択を正解にするための努力も怠りません。

灰谷:走りながらしか分からないことがありますよね。挑戦する中で、さらにやる気が出てきたり、考えが洗練されてきたりすることも。

生澤:ある意味「勢い」は必要ですよね。考え過ぎても決断できなくなってしまう。広く情報を見ようとすると、何となくピンとくるものが目に入るようになる感覚もあります。最終的には、自分の判断を正解だと思えるところまでやり切ることが大切ですね。

野村:挑戦のプロセスそのものを楽しむことが、結果につながると思います。新しいことを成し遂げるには、さまざまなアプローチがあって、正解を出す方式は何通りもあるんです。目標に向かう無数の道筋を模索できることが挑戦の面白さだと感じています。

目標に向かう無数の道筋を模索できることが挑戦の面白さ

リコー 未来デザインセンター TRIBUS推進室 室長
野村 敏宏さん

灰谷:まさに、プロセスを楽しむ好奇心が大事。それがないと続かないし、モチベーションを維持することが難しいというのもあります。何か新しいことに取り組んでいるときに、「本当に面白いものができた」と思える瞬間や、それを見たお客様に目を輝かせて喜んでもらえたとき、「なんて楽しいんだ!」と感じます。もちろん、うまくいかないことや苦労の連続でもあるのですが、楽しいことと失敗は常に表裏一体の関係なんだと思います。

生澤:正直なところ、私もTRIBUSのカタリストとしてスタートアップ企業とリコー社内の橋渡しをしていたとき、何度も大きな壁にぶつかりました。新規事業に対しては、「本当に必要な活動なのか?」「何のためにやっているのか?」と、商品企画の業務では問われることのなかった、事業としての存在意義そのものを問われる場面が多々ありました。一方、スタートアップ企業の方からは迅速な対応が求められ、短い期間で協力先を見つけることに苦労したことを覚えています。

それでも、「やらなければよかった」と思ったことはありません。スタートアップ企業の方々の意思決定などのスピード感、何よりも「今は小さくても、ゆくゆくは絶対に社会を変えてやるぞ!」という彼らの熱意を感じられたことは、非常に刺激的で貴重な経験になりました。

一人ひとりが自分らしく輝ける 多様な挑戦を支えるリコーグループの風土

——皆さんの挑戦を後押しする、リコーグループならではの環境はありますか?

野村:リコーの山下会長をはじめとする経営陣の積極的な後押しが、大きな励みになっています。面白いのは、TRIBUSでは挑戦する本人だけでなく、彼らを送り出す上司も賞賛の対象となること。また、副業の推進やシニア社員の活躍など、一人ひとりに合わせた働き方を実現できるのもリコーグループの強みだと思います。こうした環境があるからこそ、安心して新しいことに挑戦できていると思います。

また、TRIBUSには約1,500人が参加するコミュニティがあり、新しい取り組みについて気軽に相談し合えます。リコーグループには多様な才能を持った人がたくさんいて、自由につながり合えることが、新たな挑戦を実現する原動力になっていますね。

生澤:さまざまな人と自由に議論を交わせるのは大きな強みですよね。私もリコーデジタルプロダクツBUに長く在籍していましたが、所属する組織の枠を超えて視野を広げることもできましたし、いろいろな方と関わる中で、リコーグループには「挑戦を積極的に支援してくれる人」が多いと実感しました。カタリストは毎年公募しますが、100人近い応募があることに驚いています。まさに、挑戦する人を応援するリコーグループの文化だと思いますし、今後も大事にしていきたいですね。

灰谷:挑戦を歓迎する文化は昔からありますよね。やりたいことを応援してくれる方が多く、私も会社を立ち上げる際に、人事や法務・経理のプロフェッショナルたちにサポートいただいたおかげで、2週間という驚くべきスピードで起業準備を進めることができました。リコーグループには本当にさまざまなスキルを持った方がいて、恵まれた環境と仲間に支えられていると感じます。

挑戦したことそのものが、自らの成長となる

——挑戦を通じて、ご自身の中で変化したことや新たな発見があったと思います。挑戦から得られた学びについて教えてください。

灰谷:起業という形で挑戦してみて、最も大きな学びは「経営判断」の重みです。どんなに小さな決定でも、自分が100%責任を負う立場になったことで、意思決定の本質を実感しました。たとえば、技術開発に投資するか、人材を採用するか、海外展開のタイミングをどうするかなど、すべての判断に会社の未来が懸かっています。その中で、スピーディーかつ柔軟に動く力が自然と身に付いてきました。さらに、起業後は企画・営業サービス・開発だけでなくバックオフィス業務まで、あらゆる業務を自分たちで担う必要があります。これまで専門部署にお願いしていた業務の本質を、自分たちで理解し実行することで、会社経営の全体像が見えてきました。この経験は、どんな立場になっても必ず活きてくると感じています。

野村:新規事業では、企画から生産、販売、サービスまで、あらゆる場面で判断が求められるため、物事を俯瞰して判断する力とスピード感が養われますよね。私自身も、以前は「市場が小さいのでは」「既存事業に影響を与えすぎるのでは」と、新たな挑戦を躊躇することが多かったのですが、今では「まずやってみよう」という前向きな姿勢に変わりました。昨年亡くなられた桜井正光さんがリコーの社長だったときに提唱した「ファイヤー文化」(仮説に基づき、まずは行動してみる)が根付いているのかもしれません。

また、メンバー一人ひとりの個性や強みを活かすことの大切さも学びました。多様な視点があるからこそ、より良いアイデアが生まれます。「この人はこう考えるから、ここは任せよう」と判断できるようになり、チーム全体の力を引き出せるようになったと感じています。

生澤:挑戦することで、自分の本当の強みに気付けることもあります。私は、人と関わること、人を応援することに純粋な歓びを感じることに気付きました。スタートアップ企業の皆さんと一緒に走る中で、彼らの事業への熱い想いや、一つひとつの課題に真摯に向き合う姿勢に心を動かされました。そのような方々をサポートできることが、私にとって大きなやりがいとなっています。

自ら事業を立ち上げることだけが挑戦ではない。人を応援し、その成長を支えることにも大きな価値があると実感しています。むしろ、それが私らしい挑戦の形なのだと気付けたことは、とても大きな収穫でした。

挑戦する人を応援し、その成長を支えることにも大きな価値がある

リコー 未来デザインセンター TRIBUS推進室
生澤 希さん

一人ひとりの挑戦がイノベーションを創出する 最初の一歩を踏み出してみよう

——最後に、新しいことへの挑戦を考えている方へメッセージをお願いします。

灰谷:私が新規事業部門に移ろうと決意したのは30代後半でした。「この歳から新しいことを始めて大丈夫だろうか」と不安はありましたが、実際にやってみると、その経験はすべて自分の糧となりました。失敗も数多くありましたが、それが次の成長につながっていったんです。

今、リコーグループは「デジタルサービスへの変革」を掲げ大きく変わろうとしています。その中で、ジョブチェンジや新しいスキルの習得など、予想外の変化を求められることもあるかもしれません。でも、それも新たな挑戦のチャンスだと捉えてほしい。自分の想像以上の可能性が必ず見えてくるはずです。大切なのは、「この挑戦が誰かの役に立つかもしれない」「社会をより良くできるかもしれない」という想いを持ち続けること。その想いがあれば、どんな困難も必ず乗り越えられるはずです。

生澤:私はもともと新しいことは得意ではなく、そういうタイプの人間だと決め付けているところがありました。でも、それはとてももったいない思い込みでしたね。あまり深く考え過ぎず、目の前に現れたチャンスに少しだけ足を踏み入れてみる。その気持ちの軽さも大切だと思います。

TRIBUSにいるとさまざまな挑戦を目にします。事業提案をする人もいれば、それを支援する側の人もいる。短期でチャレンジする人もいれば、じっくりと腰を据える人もいる。それぞれの形で、新しい発見や成長があるんです。だからこそ、まだやりたいことが見つかっていない人にも、ぜひ周りの人と関わりながら、自分なりの可能性を探ってほしいと思います。

野村:皆さん一人ひとりには、自身が思っている以上の可能性があります。「自分には強みがない」と思っている方でも、本人が気付いていないだけで「人の気持ちに寄り添える」「細かいところまで物事を冷静に見られる」など、素晴らしい特徴を持っているんですよね。会社の中でも、社会の中でも、必ずその人にしかできない役割があるはずです。

多くの方と関わってきましたが、最初は不安そうでも、新しい環境で輝き出す瞬間を何度も見てきました。そして、その方々がまた次の挑戦者の背中を押してくれる。事業としての成果を追求する過程で人が成長し、その人がまた新たな挑戦者を育てていく。この好循環を、もっともっと生み出していきたいですね。一人ひとりが、会社や社会に対して貢献できることはまだまだあるはず。ぜひ恐れずに挑戦の一歩を踏み出してみてほしいです。

野村 敏宏さん

リコー 未来デザインセンター
TRIBUS推進室 室長

入社後、新規開拓を担当する営業職に従事。販売会社の経営企画部門で中期経営計画策定、構造改革推進を担当後、インクジェット技術を用いた新規事業の立ち上げに携わる。2019年、インクジェット技術によるアートの展開でTRIBUSにエントリーし、1期生として活動。現在はTRIBUS推進室長として、さまざまな挑戦者に寄り添い、支援を行う。

中央

生澤 希さん

リコー 未来デザインセンター
TRIBUS推進室

リコーデジタルプロダクツ ビジネスユニットに所属し、複合機などの商品企画を担当していた2020年に、スタートアップ企業の伴走支援を行う「カタリスト」として副業でTRIBUSに参画。2022年からはTRIBUS事務局のメンバーとして活動。

灰谷 公良さん

株式会社ブライトヴォックス
代表取締役 CEO

リコーに入社してITエンジニアとして活躍した後、システム統合のプロジェクトマネージャー、IT戦略部門の組織職、経営企画部門を経て、自らの希望で新規事業開発部門に異動し事業テーマのリーダーを担当。2020年にTRIBUSで提案したテーマが採択され、2022年に出向起業の形で株式会社ブライトヴォックスを立ち上げ、立体投影装置「brightvox(ブライトヴォックス)」の企画・開発・製造の事業を展開する会社の代表を務める。

  • 出向起業:リコーに籍を置いて事業を立ち上げ、出向という形態で経営者として新会社で働くスタイルのこと

灰谷さんが代表を務める

株式会社ブライトヴォックスが展開する「brightvox(ブライトヴォックス)」とは

グラスレスで立体映像を楽しむことができる映像システムなど、新しい映像表現手法を提供。体験施設・商業施設・各種イベントなどの、リアルの場のにぎわいづくりを支援する。同社のホログラフィックサイネージ「brightvox 3D」は、経済産業省、総務省、東京都などが主導する複数のプロジェクトに採択され、多くのイベントでの稼働実績を経て、2025年大阪・関西万博のパビリオン「いのちの遊び場 クラゲ館」の空間演出に採用された。

PAGE TOP