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価値創造プロセス

中期経営戦略と企業価値向上プロジェクト進捗

第19次・20次中期経営計画の振り返り

第19次中期経営計画(2017-2019年度)

「リコー再起動」を掲げ、コスト構造改革、業務プロセス改革、事業の選別を断行し、オフィスサービス事業を成長軌道に乗せた。

危機対応、変革加速の一年(2020年度)

コロナ禍において、“ いつでも、どこでも働ける ” 環境整備が急務に。リモートワークやそれに伴うクラウドサービスのニーズ拡大に対応し、アフターコロナを見据えた変革を加速した。

第20次中期経営計画(2021-2022年度)

コロナ影響など、環境変化に柔軟かつ迅速に対策を講じたものの、事業成長の面では目標未達。一方、社内カンパニー制やジョブ型人事制度の導入、事業ポートフォリオマネジメントの強化、デジタル人材の育成など、経営基盤の強化を図り、OAメーカーからデジタルサービスの会社への変革を確実に進めた。

中期展望

2023年4⽉からの3カ年計画である第21次中期経営戦略では、使命と目指す姿である「“はたらく”に歓びを」の実現に向けて、中長期目標として「はたらく人の創造力を支え、ワークプレイスを変えるサービスを提供するデジタルサービスの会社」となることを目指しています。

第21次中期経営戦略

中長期目標を達成するべく、「1.地域戦略の強化とグループ経営の進化」「2.現場・社会の領域における収益の柱を構築」「3.グローバル人材の活躍」という3つの基本方針を掲げ、取り組みを推進しています。

2025年度財務見通し:売上高 2兆5,600億円、営業利益 800億円、ROE5.4%

  • 2025年5月14日発表時点

注力領域

プロセスオートメーション

業務プロセスの最適化を通じ、単純作業を減らし生産性の向上を実現するとともに、AI・データの活用により新たな価値を提供し、お客様の創造力の発揮を支援

ワークプレイスエクスペリエンス

場所にとらわれない円滑なコミュニケーション環境の構築、質の高いコラボレーションを可能とする最適な働く空間を提供。これによりお客様の創造力の発揮を支援

ITサービス

ワークプレイスの基盤となる情報通信・セキュリティ・データ管理の環境を構築

リコーグループの強み

顧客基盤

世界140万社のお客様との信頼関係
業種業務の深い知識

顧客接点

グローバルで均質なサービスを提供する能力
コンサルティング

自社IP

独自のハードウエアとソフトウエア

企業価値向上プロジェクトの進捗

目指す姿の実現に向けて2023年4月から企業価値向上プロジェクトに取り組んでいます。株主・投資家・アナリストの皆様との対話や資本市場の視点からの分析を通じて、リコーグループが取り組むべき課題を多角的に検討してきました。低PBRの最大の要因は収益性の低さにあり、デジタルサービスの会社として成長を遂げるためには、各事業に適した収益構造の確立が不可欠です。この認識のもと、現在抜本的な収益構造の変革を推進しています。

具体的には、①本社改革 ②事業の「選択と集中」の加速 ③オフィスプリンティング事業の構造改革 ④オフィスサービス利益成長の加速 の4つの領域で収益構造の変革に取り組んでいます。

プロジェクトの効果額と見通し(2025年5月14日発表時点)

プロジェクトは順調に進捗しており、2024年度は当初想定を上回る約200億円の効果額となりました(費⽤は当初想定を30億円ほど下回る297億円)。2024年度と2025年度の累計で合計520億円の効果創出を目指しています。

2025年度までの想定効果額(2023年度比)
2025年度までの想定効果額(2023年度比)

オフィスサービス利益成長のKPIと進捗

オフィスサービスの利益成長を測るため、「顧客数」「オフィスサービス導入率」「ストック売上成長率」の3つのKPIを設定しています。オフィスサービスのストック売上の積み上げは収益性向上に直結する重要な指標だと認識しています。従来のオフィスプリンティングのお客様のみならず、新規のお客様も増加しています。結果、2024年度のストック売上成長率は為替影響を除き、前年度比で10%成長しています。(為替影響込みでは+14%)

KPI(指標) 説明 2023年度実績 2024年度実績
顧客数 リコーグループのグローバルでの全顧客数 140万社
オフィスサービス導入率 上記顧客におけるオフィスサービスの導入割合 35% 36%
ストック売上成長率 オフィスサービスのストック売上成長率(前年度比、為替影響除く) +10% +10%

はたらく人の生み出す力(創造力)の発揮を支えるデジタルサービスの会社へ

リコーグループは、強みである顧客基盤と顧客接点、自社IPを活かし、「ワークプレイスサービスプロバイダー」として、お客様に寄り添いながら継続的に価値を創造し、提供します。

変わりゆく“はたらく”に寄り添い、はたらく人の創造力の発揮を支える「デジタルサービスの会社」への変革に向けて、事業成長とESGに同軸で取り組み、企業価値を向上させていきます。

リコーグループの価値創造プロセスの全体像を示した図。全体はリコーウェイの使命「“はたらく”に歓びを」と、持続可能な社会を目指す「Three Ps Balance(Prosperity, People, Planet)」の実現につながる循環型プロセスを表している。左から「主要経営資本(財務・製造・知的・人的・社会関係・自然)」をインプットとして投入し、中央のビジネスモデルで「顧客基盤」「顧客接点」「自社IP」の3つの強みを活かして事業を展開。世界各地域で顧客ニーズに応じたソリューションを提供。右側ではアウトプットとして製品・サービスを創出し、アウトカムとして財務・将来財務の価値や環境・社会への成果を示す。

図はPDFで拡大してご覧いただけます

マテリアリティに対する取り組みとESG目標

リコーグループでは、目指すべき持続可能な社会の姿「Three Ps Balance」の実現に向けて、中期経営戦略単位でマテリアリティを特定しています。21次中経では、7つのマテリアリティに対して、戦略的意義を明確にした上で、評価指標として16のESG目標(将来財務目標)を設定しています。

7つのマテリアリティに紐づく16のESG目標と実績

21次中経におけるESG目標の進捗は以下のとおりです。2025年度目標に対してはおおむね順調に進捗していますが、[1]顧客からの評価、[15]エンゲージメントスコア、[16]女性管理職比率については遅れが発生しており、課題への対応を進めていきます。

事業を通じた社会課題解決
マテリアリティ 戦略的意義 2030年目標 21次中経ESG目標
(2025年度末)
実績
2023年度 2024年度
“はたらく”の変革 人とデジタルの力で、はたらく人やはたらく場をつなぎ、お客様の“はたらく”を変革するデジタルサービスを提供し、生産性向上・価値創造を支援する 価値を提供するすべての顧客の“はたらく”の変革に貢献 [1]顧客からの評価*1 29%  日本 26.3%
 北米 39.3%
中南米 64.8%*2
 欧州 24.5%
 APAC 17.4%
 日本 26.8%
 北米 38.6%
中南米 45.5%*2
 欧州 28.2%
 APAC 30.8%
地域・社会の発展 技術×顧客接点力で、地域・社会システムの維持発展、効率化に貢献し、価値提供領域を拡大する 3,000万人の生活基盤向上に貢献*3 [2]生活基盤向上貢献人数 2,350万人 1,794万人 2,235万人
脱炭素社会の実現 バリューチェーン全体の脱炭素化に取り組み、カーボンニュートラルへの貢献を通じたビジネス機会を創出する GHG*4スコープ1、2の63%削減およびスコープ3の40%削減
使用電力の再生可能エネルギー比率50%
[3]GHGスコープ1、2 削減率(2015年比) 50% 47.4%*5 59.1%
[4]GHGスコープ3削減率(2015年比) 35% 38.1%*5 46.8%
[5]使用電力の再生可能エネルギー比率 40% 31.0%*5 43.2%
[6]削減貢献量 1,400千t 1,059千t 1,448千t
循環型社会の実現 自社および顧客のサーキュラーエコノミー型ビジネスモデル構築によりビジネス機会を創出する バリューチェーン全体の資源有効活用と製品の新規資源使用率 60%以下 [7]製品の新規資源使用率 80%以下 78.9% 78.3%
  • *1
    デジタルサービスの会社として、課題解決や企業価値向上につながる価値を提供し続けるパートナーとしてご評価いただけた顧客の割合
  • *2
    中南米はソリューション顧客を対象にした調査
  • *3
    教育、医療、自治体向けなど、地域社会の発展に貢献するサービスの提供により、恩恵を受ける住民や利用者数
  • *4
    GHG(Green House Gas):温室効果ガス
  • *5
    組織体制の変更、一部地域のデータ精度向上に伴い、過去の数値を改訂
経営基盤の強化
マテリアリティ 戦略的意義 21次中経ESG目標
(2025年度末)
実績
2023年度 2024年度
責任あるビジネスプロセスの構築 サプライチェーン全体を俯瞰してビジネスプロセスのESGリスク最小化を図り、ステークホルダーの信頼を獲得する [8] CHRBスコア*6 ICTセクタートップ セルフアセスメント実施完了。目標に対して55%の進捗率 セルフアセスメント再実施。目標に対して90%の進捗率
[9]NIST SP 800-171準拠自社基盤事業環境カバー率 80%以上 保護すべき情報の特定およびアセスメント実施中 保護すべき情報の特定と計画策定完了。一部対策完了
[10]低コンプライアンスリスクグループ企業比率 80%以上 高リスク組織に対してパルスサーベイ実施完了 高リスク組織において改善策を策定。一部実施完了
オープンイノベーションの強化 社会課題解決型の事業を迅速に生み出すために、自前主義を脱却し新たな価値創出プロセスへの転換を図る [11]共同研究・開発契約のウェイト 25% 23.0% 22.7%
[12]デジタルサービス特許出願比率*7 60% 54.7% 64.6%
多様な人材の活躍 多様な人材がポテンシャルを発揮できる企業文化を育み、変化に強い社員・会社へと変革する [13]リコーデジタルスキルレベル2以上の人数(国内) 4,000人 2,855人 4,658人
[14]プロセスDXシルバーステージ認定者育成率*8 40% 21.1% 34.2%
[15]エンゲージメントスコア*9 グローバル:3.91
日本:3.69
北米:4.18
中南米:4.14
欧州:4.01
APAC:4.15
グローバル:3.79
日本:3.57
北米:4.00
中南米:3.90
欧州:3.92
APAC:4.03
グローバル:3.84
日本:3.61
北米:4.00
中南米:3.95
欧州:3.90
APAC:4.20
[16]女性管理職比率 グローバル:20%
日本:10%
グローバル:16.5%
日本:7.7%
グローバル:17.2%
日本: 8.4%
  • *6
    CHRB(Corporate Human Rights Benchmark)スコア:機関投資家とNGOが設立した人権関連の国際イニシアチブ。5セクター(農産物、アパレル、採掘、ICT、自動車)のグローバル企業から選定して評価(最新のベンチマークは約250社を選定)
  • *7
    特許出願数に占めるデジタルサービス貢献事業に関する特許出願数の割合
  • *8
    プロセスDXの型に基づいたプロセス改善実績のある人材の育成率(母数は各ビジネスユニットの育成対象組織総人員数)
  • *9
    Gallup社のQ12Meanスコア(高い組織パフォーマンスを予見するための12要素に対する評価スコア)を採用

マテリアリティの特定および改定プロセス

ステークホルダーの皆様の視点や各種ガイドラインを参照しながら、3年ごとの中期経営戦略単位でStep1からStep4のプロセスでマテリアリティを特定しています。改定においてはCEOを委員長としたESG委員会にて審議し、財務目標とともに取締役会で承認した上で開⽰しています。

Step1 課題の抽出

中期経営戦略の検討にあたり、気候変動や人権への対応要請など、環境・社会動向の変化に伴う自社の事業活動へのリスクおよびビジネス機会を評価。加えて、自社の事業活動が環境や社会に与える影響も評価し、対処すべき課題を抽出

Step2 課題の優先順位付け

抽出した課題に対して、SDGs Compass*1やGRIスタンダード*2、ダブルマテリアリティの考え方など国際的なガイドラインを踏まえ、経営理念、経営戦略・事業戦略、外部ステークホルダーからの意見、リスクマネジメントシステムに沿った重点経営リスクなどの優先順位を付ける。これをもとに、マテリアリティおよびESG目標の素案を作成

Step3 経営の意思決定

CEOを委員長とし、全社内取締役、執行役員で構成されるESG委員会にてマテリアリティおよびESG目標を審議・決定し、中期経営戦略の財務目標とともに、取締役会にて承認の上、開⽰

Step4 目標の設定・実績開⽰

ESG目標に対する年度ごとの実績は、ESG委員会で経営と確認の上、毎年開⽰

  • *1
    SDGs Compass:企業がSDGsを経営戦略と整合させ、SDGsへの貢献を測定し管理していくための指針
  • *2
    GRIスタンダード:経済・環境・社会に対する影響を組織が開示するための国際的なサステナビリティ報告基準

事業を通じた社会課題解決の強化

社会課題解決に貢献する事業とその貢献⾦額を明確化し、2025年度までの売上高目標を設定しました。今後もESGと事業成長の同軸化の取り組みを加速させていきます。2025年度の目標額、ならびに2023年度・2024年度における実績額は、以下のとおりです。

社会課題解決型事業の売上高目標と2023年度・2024年度実績
マテリアリティ 社会課題解決型事業 21次中経目標
(2025年度末)
実績
2023年度 2024年度
“はたらく”の変革 オフィスサービス
スマートビジョン など
10,170億円 9,260億円 10,060億円
地域・社会の発展 GEMBA*
自治体ソリューション
教育ソリューション など
320億円 200億円 280億円
脱炭素社会の実現
循環型社会の実現
環境配慮型複合機
商用印刷
シリコーントップライナーレスラベル
ラベルレスサーマル など
4,280億円 3,150億円 4,100億円
  • GEMBA:オフィス以外(店舗・倉庫など)を対象とした保守・サービス

収益力強化の考え方

働き方の変化に伴い、オフィスプリンティング(OP)市場の縮小が進行し、当該事業のアフター収益の下落が続いています。これらの変化は従来予想されたものであり、それを補うためにOP事業の徹底的な効率化やオフィスサービス(OS)などでの新たなストック収益の積み上げを進めています。OP市場における縮小傾向をカバーするべく、OSでの成長スピードを一層早め、収益力の強化を図っていきます。収益力強化のためのポイントは以下の4点です。

収益積み上げのための4つの強化ポイント

1オフィスプリンティングの収益基盤の維持・拡大

徹底的な効率化を進め、プリントボリューム下落の影響を吸収する施策を講じていきます。エトリアでのモノづくりを通じて競争力の高い製品を効率的・安定的に供給することで、マーケットシェアの拡大を図ります。また、代理店のロイヤリティ施策の強化や販売リソースの組み換えなども含め、複合機やプリンターのMIF(市場での稼働台数)マネジメントを強化します。開発・生産を担うリコーデジタルプロダクツと販売を担うリコーデジタルサービスの両カンパニーのさらなる連携により、ストック収益の維持・拡大を図ります。

2オフィスサービスの成長スピードをさらに加速

買収企業とのシナジーを徹底的に創出し、DocuWare、Axon Ivy、natif.ai、RICOH kintone plusなどの自社ソフトウエア商材を拡充し、開発・販売リソースを強化することで、ストック収益を拡大します。また、プロセスオートメーション、ワークプレイスエクスペリエンス、ITサービスの3つの注力領域において、ワークプレイスエクスペリエンスでマネージドサービス*の契約をいただいたお客様に対して自社ソフトウエアをはじめとしたクロスセルの提案を進め、成長スピードを加速させます。

  • マネージドサービス:業務の運用管理全般を一括して支援するアウトソーシングサービス

3各事業領域でストック収益の積み上げを強化

オフィスプリンティング、オフィスサービスに加え、画像・光学技術を活用した競争力のある製品を提供する商用・産業印刷事業など、さまざまな事業で創出されるストック収益の積み上げを強化します。

4デジタル技術の活用による生産性の向上

AIを含むデジタル技術を駆使して、業務の生産性を高めることで、社員が自らの働き方を変革し、世界で戦える競争力を実現します。

プリントボリュームは今後も下落傾向が続く

コロナ禍で大きく減少したプリントボリュームは、今後も下落傾向が続いていくと予想されます。

プリント出力量推移(イメージ)
プリント出力量推移のイメージ

ストック収益の積み上げを加速させる

オフィスプリンティングのストック収益減少を抑制し、オフィスサービスや商用印刷などのストック収益を積み上げることで、全体としての収益を伸ばし、収益構造の転換を図ります。

オフィスサービスや商用印刷などのストック収益の積み上げによる収益改善のイメージ

リソースの拡充と継続的な成長の実現

多様なリソース(資本)をもとに、強みである「顧客基盤」「顧客接点」「自社IP(ソフトウエアやハードウエア)」を掛け合わせることで、お客様に最適な課題解決を提供しています。また、より質の高いサービスを提供すべく、リソースの拡充も進めています。顧客価値を生み出すデジタル人材の育成のほか、自社IPに関しては、自社開発に加え、M&Aや業務提携を通じ強化しています。

デジタルサービスの提供に必要なリソースの拡充モデルイメージ。Point 1 デジタル人材の強化、Point 2 自社ソフトウエアの強化、Point 3 グローバル共通のサービス提供プラットフォームの進化、Point 4 デジタルサービスの会社を支えるエッジデバイス。

Point 1デジタル人材の強化

デジタル人材の育成・リスキリング、さらにはM&Aでグループに加わった新たな人材を通じて、お客様のニーズ理解、ソリューション設計・構築能力の強化を図っています。

Point 2自社ソフトウエアの強化

利益率の高い自社ソフトウェアの展開を拡大することで、オフィスサービス事業の収益性を高めます。自社開発に加え、M&Aや業務提携を通じて、ラインアップを強化します。

例:DocuWare、RICOH kintone plus、RICOH Spaces など

Point 3グローバル共通のサービス提供プラットフォームの進化

ストック収益の拡大でカギとなるのが、RICOH Smart Integration (RSI)を活用したエコシステムです。エッジデバイスやソフトウエア、サービスをRSIでつなぎ、お客様への提供価値をさらに進化させていきます。

また、各地域で生み出された価値をRSIを通じ、他の地域にも展開することでグループ全体のシナジー発揮を加速させます。

Point 4デジタルサービスの会社を支えるエッジデバイス

デジタルサービスの会社として成長するためには、アナログとデジタルの情報をシームレスにつなぐデバイスが不可欠です。2024年7月に始動したエトリア株式会社が、業界のリーダーとして、魅力的なデバイスを効率的に生み出していきます。

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