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環境への取り組みは、企業にとって「守り」の活動から、成長を生み出す「攻め」の戦略へと変わりつつある。リコーグループが目指すのは、資源を循環させながら、循環するたびに新たな価値を生み出すサーキュラーエコノミーの実現だ。その中核となる取り組みが、「LC(Linear
to
Circular)変換」である。目指すのは、単に製品を回収して再利用するのではなく、循環によって経済価値や社会価値を高め続ける「進化する循環」。環境と利益の同軸化を追求しながら、将来は誰もが「新品か再生品か」を意識せずに製品を選ぶ社会の実現を目指している。
その挑戦を推進する、エトリア株式会社
BSP本部 LC統括センター
所長の石山晴徳氏に、LC変換が目指す未来と、その実現に向けた取り組みについて聞いた。
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リコーグループは、積極的に資源循環に取り組んできた。代表例が、使用済み製品や部品を回収・再生し、再び市場へ届ける再生ビジネスであり、その歴史は30年以上にもわたる。しかし、あえて「LC(Linear to Circular)変換」を掲げるのは、これまでの再生ビジネスを根本から見つめなおし、資源循環を一段と加速させていきたいためだ。
LC変換は、製品を製造し、使用後に廃棄する一方通行型の「リニアエコノミー」から、資源を循環利用する「サーキュラーエコノミー」へと転換するリコーグループの戦略だ。製品の設計や生産、回収・再生など、モノづくりやビジネスの仕組みそのものを見直すことで、地球環境への貢献と事業成長、顧客価値向上の両立につなげていく挑戦である。
では、なぜ今、こうした変革が必要なのか。LC変換を推進する石山氏はこう話す。
「気候変動や資源枯渇といった環境問題への対応に加え、世界的にサーキュラーエコノミーに関する法規制が広がるなか、その重要性はますます高まっています。消費者の行動や価値観も変化しています。大量生産・大量消費の時代から、コストや性能だけでなく、企業が社会課題にどう向き合っているか、その取り組みも含めて製品を選ぶ時代へと移りつつあります。環境問題への対応は、企業が競争力を高めていくうえでも欠かせないものになっています。」
石山氏はもう一つの背景として、モノづくりを取り巻く事業環境の変化を挙げる。
「AI需要の高まりや地政学的な要因によって、部品価格の高騰や在庫のひっ迫といった課題が生じています。こうした環境下でも製品やサービスを安定してお客様に届けていくためには、限られた資源を有効に活用しながら価値を生み出していくことが重要です。その意味でも、サーキュラーエコノミーは事業を支える大切な基盤になると考えています。」
LC変換が目指すのは、単に資源を循環させることではない。循環するたびに価値が高まり、お客様にも社会にも新たな価値を提供し続ける「進化する循環」の実現だ。リコーの従来の再生ビジネスは、回収した製品を同じ仕様、同じ状態に戻して再び市場へ届ける取り組みだった。そのため、お客様は再生機を新造機との比較の中で評価してきた。
「再生機は価格面での魅力がある一方で、『品質が劣るのではないか』『最新機能が使えないのではないか』といったイメージを持たれることもありました。また、製品そのものも、資源を循環させながら長期的に使い続けることを前提に設計されていたわけではありませんでした」と石山氏は話す。
LC変換では、こうした従来の「戻す循環」から「進化する循環」への転換を目指している。企画・設計から調達、生産、利用、回収・再生まで、製品ライフサイクル全体を見直し、循環するたびに価値が高まる仕組みをつくるためだ。
「単に製品を回収して同じ状態に戻すのではなく、循環によって経済価値や社会価値を創出し続ける。お客様が循環型製品を選ぶことで、より良い製品やサービスを享受できる世界。それがLC変換が描く未来です」
エトリア株式会社 BSP本部 LC統括センター 所長
石山 晴徳氏
では、「進化する循環」をどのように実現していくのか。その中核となるモノづくりコンセプトが「Circular New」だ。
Circular Newは、
を柱としている。
資源の循環や製品の長期利用を前提に製品を設計するとともに、消費地の近くで生産できる循環型の生産体制を整える。さらに、製品のライフサイクル全体を通じたデータ活用を進めることで、より効率的な循環型モノづくりを目指している。
LC変換は、設計や生産、販売、システムなど多くの部門が関わる取り組みだ。さらに、複合機の開発・生産を担うエトリアとの連携も欠かせない。従来のプロセスを見直し、新たな仕組みを構築するためには、部門や会社の枠を越えた協力が必要だった。
そうした変革を進めるうえで、石山氏が重視したのが丁寧なコミュニケーションだ。
「各部門に、LC変換が目指す姿を丁寧に説明し、その姿から逆算して必要なプロセスをひとつずつ見直していくという調整を重ねてきました。対話で大切にしているのは、必ず現場を見て、各部門の意見を取り入れて一緒に変えていくこと。現場に行って初めて得られる気付きも多いです。LC変換は新しい取り組みだからこそ、机上で決めた方法を一方的に指示するのではなく、現場と話し合いながら変えていくことで、より強固なシステムにできると思っています」
既存のプロセスや仕組みを見直し、リコーやエトリアを含む多くの関係者と変革を進めていくことは容易ではない。それでも石山氏は、その先に大きな可能性があると考えている。
「環境や社会の大きな変化に対応しながら成長するため、企業として変わっていく責任があります。同時に、こうした変化はリコーにとってチャンスでもある。循環型モノづくりを、守りの環境活動ではなく競争軸ととらえ、『攻めの成長戦略』として取り組んでいく。私自身、そこに大きなやりがいを感じています」
LC変換を通じて石山氏が10年後に実現したいのは、誰もが新品か再生品かを意識することなく、より良い製品を当たり前に選んでいる社会だ。環境負荷を減らすために性能や利便性を我慢するのではなく、循環型製品そのものの価値を高め、お客様に選ばれる。そんな未来を目指している。
「製品、部品、材料、データが循環するエコシステムを構築し、新しい資源の投入をできるだけ抑えながら、経済成長と環境価値を両立させる。その実現に向けて、リコーは、循環型モノづくりのリーダーとして、業界を主導していきたいです」
石山氏はこれまでリコーグループで、さまざまな変革に携わってきた。そんなキャリアの中でも、数多くのプロセスを変え、新たな価値創出に挑むLC変換は、最もチャレンジングな取り組みの一つだという。
「LC変換を推進する今の仕事が、新しい価値やプロセスを生み出し、それが社会の変革にもつながっていく。そんな可能性に大きなやりがいを感じています。社内外の多くの仲間たちと一緒に変革に挑戦できていることが、私自身の『はたらく歓び』ですね」
日々の対話や変革の積み重ねが、未来の「あたりまえ」をつくっていく。誰もが新品か再生品かを意識することなく、より良い製品を選ぶことが、結果として環境への貢献につながる。リコーのLC変換は、そんな未来の実現に挑んでいる。
未来の「あたりまえ」をつくるため、社内外の仲間とともにLC変換を推進する石山氏