※所属・役職はすべて記事公開時点のものです。
2024年7月、リコーと東芝テックの合弁会社として誕生したエトリア株式会社。さらに2025年10月には沖電気工業(OKI)が参画し、開発・生産体制の強化とともに、グローバルでの競争力向上を加速させている。
リコーグループが掲げる「“はたらく”に歓びを」の実現に向け、変化し続けるワークプレイスでの価値創造を進めるエトリア。その歩みを支えてきたのは、企業の枠を越えて人と技術を結びつける取り組みだった。今回は発足から2年という節目に、統合の背景やこれまでの取り組み、そして技術と人の融合がもたらした変化について、プロジェクトに携わったメンバーたちに話を聞いた。
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エトリアは、リコーと東芝テックのオフィスプリンティング事業の開発・生産機能を統合して設立された会社だ。東芝テックで2社統合のプロジェクトマネジメントを担当し、現在はエトリアで、東芝ブランド事業を担当する事業企画グループのリーダーを務める八幡 伊佐雄氏は、その背景をこう振り返る。
「コロナ禍を経て働き方が変化し、ドキュメントビジネスの市場は縮小傾向にありました。東芝テック、リコーの両社にとって、こうした環境変化にどう対応していくかが大きな課題でした。
一方で、複合機は機械、化学、電気、ソフトウェアなど、さまざまな技術が結集した製品です。こうした技術力は日本が強みとする領域でもあります。統合には市場競争力を高めるだけでなく、各社が培ってきた知見や技術を生かしながら、世界に価値を届け続けたいという思いもありました」(八幡氏)
エトリア WSP事業部 事業戦略センター 経営戦略室 事業企画グループ
リーダー
八幡 伊佐雄氏
各社の開発手法や知見を掛け合わせることで、新たな発想の創出や製品開発につなげることも狙いの一つだった。さらに、エンジンや部品の共通化によるコスト最適化なども期待された効果だ。単独では難しい環境変化への対応や新たな価値創出を実現するために、エトリアは誕生した。
統合決定後は、開発や生産、品質保証、経理、総務など、12の分野でワーキンググループが立ち上がり、新会社設立に向けたルールづくりや環境整備が進められた。
一方で、組織統合に向けて欠かせなかったのが、社員同士の相互理解を深め、新しい組織への不安を和らげることだった。企業統合前は、法令やルールに基づき事業に関する情報交換には制限がある中、社員同士の交流や新会社への理解を深める活動が進められた。その取り組みの中心となったのが「エトリアエンゲージメントプロジェクト」だ。リコー出身で現在はエトリアの技術開発本部・技術企画グループに所属する原島朋美氏は、新会社発足の3カ月前に始動した同プロジェクトに参加した。
エンゲージメントプロジェクトでは、両社の社員が互いを知るための交流会や、ネックストラップの制作など、一体感を醸成するための施策を進めた。原島氏は、働く環境や文化の違いは感じたものの、「お互いをよく知り、一つの会社になろうという思いは共通していたので、価値観のすり合わせに難しさは感じなかった」と振り返る。
一方で、原島氏が強く感じていたのは、統合に対する社員たちの不安だった。
「社員の声で多かったのが、新会社設立という未経験の事態に直面した皆さんの『私たち、この先どうなるの?』という不安でした。どういう会社で働くことになるのか、イメージできないがゆえの不安を解消するため、情報共有のための社内ポータルサイトを開設し、新会社の姿が少しでも見えるよう、できる限り情報を開示していくよう努めました」(原島氏)
そして迎えた2024年7月1日。原島氏は当時を「一体感と高揚感に包まれていた」と振り返る。
「それまでは別の会社だったため、会社の垣根を越えて伝えられることにも制限がありました。エトリア設立の日は、『これで壁がなくなり、本当に一緒になれたんだ』という仲間意識を抱くことができて、とてもうれしかったです」(原島氏)
エトリア 技術開発本部 技術戦略室 技術企画グループ
原島 朋美氏
2025年10月1日には、LEDプリントヘッドをはじめとした独自技術を持つ沖電気工業(OKI)のプリンターおよび複合機の開発・生産事業が統合された。
OKIで複合機・プリンター開発に携わってきた平田勝氏は、現在エトリアでエンジンファームウェア開発チームのリーダーとして新製品開発に取り組んでいる。OKIの参画によって、エトリアはリコー、東芝テック、OKIの3社の技術や知見を結集する体制となった。一方で、それぞれの企業が長年培ってきた開発プロセスや仕事の進め方は異なる。技術や知見を融合するためには、そうした違いを乗り越える必要があった。
技術者という立場から、平田氏も3社の開発プロセスの違いを実感しているという。
「マイルストーンや各段階で必要な成果物があることは3社とも変わらないものの、エトリアの開発プロセスに従って新商品開発を進める中で、OKIとエトリアでは成果物についてレビューすべき要素が違うと実感しています。私はソフトウェア開発を担当していますが、ハードウェア開発部門からも、『エトリアのプロセスにはOKIにはない視点があり、学びや気づきが多い』という声が聞かれます」(平田氏)
エトリア CPS事業部 開発統括センター エンジンファームウェア開発室
第二グループ リーダー
平田 勝氏
開発プロセスの違いに戸惑う場面もある一方で、それぞれの強みや知見を取り入れることで、新たな価値創出につながる可能性も見えてきた。
こうした違いを乗り越えるため、平田氏らが大切にしているのが密なコミュニケーションだ。
「他の拠点にいる各分野のエンジニアの方々が、成果物で求められる要素について相談に乗ってくださるんです。最近は私自身、開発が佳境を迎えているエンジンファームウェアについて、ほぼ毎日リモートで打ち合わせをしています」(平田氏)
こうした日々の対話を通じて、3社の技術や知見の融合が進んでいる。平田氏は、OKIの強みであるLEDプリントヘッドのコスト合理化など、各社が単独で抱えていた課題についても、統合後の開発体制によって解決が進むことを期待している。
OKIを迎えた新生エトリアでは、3社の技術や知見を生かした製品・技術開発が具体的な成果として現れ始めている。その一例が、今年2月に海外でリリースされたOKIブランドのA4カラー複合機だ。
「OKIの複合機事業が縮小傾向にあった中で、エトリアからOKIブランドの新製品をリリースできたことには大きな意義があります。OKIの複合機を求めていたお客様のニーズを満たすことができたと感じています」(平田氏)
また、Auto-ID事業(物流業界の自動化を支えるバーコードプリンタ)も、統合によるシナジーが発揮されている事例のひとつだ。
「Auto-ID事業はエトリアで今後の展開が期待される事業のひとつです。事業や開発などに携わるメンバーの融合も進んでおり、充実感を持って取り組んでいます。統合により新たな商品や事業の創出が始まっており、期待が高まっています」(八幡氏)
エトリアではこのほかにも、生産合理化に向けた各ブランドのエンジン統合や、新製品開発プロジェクトが複数進行している。統合によって生まれた技術や知見の融合は、新たな製品や事業の創出へとつながり始めている。
統合プロジェクトは、事業や組織だけでなく、携わったメンバー自身にも変化をもたらした。キャリアのほとんどで製品開発に従事してきた八幡氏は、新会社設立のプロジェクトは自身にとって刺激的だったという。
「新しいことに挑戦したり、経営トップと関わりながら新会社設立に携われたことは、とても刺激的な経験でした。統合のワーキンググループでは元東芝テック以外の新しいメンバーともコミュニケーションをとりながら仕事を進めることに“はたらく歓び”を感じますね。周りのメンバーも、新会社になってから前向きに仕事に取り組んでいるように見えます。それに、住まいのある静岡に沼津や御殿場に事業所があり、ETRIAロゴの大きな看板を見ると、『あぁ、新しい会社を作ったんだなぁ』と嬉しくなりますね(笑)」(八幡氏)
社内公募でエンゲージメントプロジェクトに参加した原島氏も、「新しいことを知れたり、リコーにいたままでは関われなかった人と一緒に何かを作り上げることにワクワクした」と振り返る。
「プロジェクトで一緒になった元東芝テックのメンバーの言葉が、とても印象に残っているんです。私は慎重なタイプなのですが、『失敗しても致命傷にはならないから大丈夫。今はスピード感を持って前に進むことが大事だよ』と言ってくれたんです。今も、尻込みしそうな時は、その言葉に背中を押されています。新しい価値観に触れたことで、私自身、良い方向に変わることができましたね」(原島氏)
平田氏は、エトリアの主力事業であるプリンターの開発に携われることに、大きなやりがいを感じている。
「他の拠点のメンバーとも連携して課題を解決しながらスピード感を持って開発を進めることに、大きな歓びを感じます。統合前、私はOKIの複合機・プリンターはこのままではなくなってしまうのではないかという危機感を抱いていました。そうした矢先に統合し、開発の最前線に携われていることに非常に感謝しています。自分はプリンター開発がとても好きなんだと再認識しましたね(笑)。大変なこともありますが、みんなで一丸となって新製品を世の中に送り出す準備を進められていることがとても嬉しいです」(平田氏)
リコー、東芝テック、OKI。それぞれが培ってきた技術や文化を掛け合わせることで生まれたエトリアの価値創造は、単なる効率化や生産性向上の追求にとどまらない。異なる強みを持つ人々が互いに学び合いながら新たな価値を生み出していく。その積み重ねが、エトリアならではの強みになりつつある。
変化し続ける“はたらく”に寄り添い、顧客の課題に向き合いながら進化を続けるエトリア。その歩みはこれからも、技術と人の可能性を広げながら、未来に向けた新しい価値を届け続けていく。