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イベントレポート “出社させたい”から“出社したくなる”へ、人の創造性を引き出すリコーのワークプレイス改革 Gartner IT Symposium/Xpo™のセッションで、企業の競争力を高めるワークプレイスエクスペリエンスを提案

2025年11月26日
  • ワークプレイスエクスペリエンス

※所属・役職はすべて記事公開時点のものです。

2025年10月28日~30日、神奈川県横浜市で、経営層向けにITのトレンドやソリューションを発信する「Gartner IT Symposium/Xpo™ 2025」が開催された。10月29日には、株式会社リコー デジタルサービスビジネスユニット デジタルビジネスイノベーション本部/リコージャパン株式会社 ワークプレイスエクスペリエンス事業センタービジネスデベロップメントエキスパートの原田尚氏が、「"はたらく場"の質が働き方と組織の変革をもたらし、持続的成果を生む原動力に」のセッションに登壇。グローバルに戦う日本企業に欠かせない、人の創造性を引き出す"はたらく場"の質について、社内の成功事例やお客様事例も交えて講演した。

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出社を求める会社と、自分らしい働き方を望む社員

リコーグループのワークプレイスエクスペリエンス事業のエキスパートである原田氏は、まず「トータルエクスペリエンス(TX)」という考え方について紹介した。これは、Gartner®社が提唱する概念で、顧客に関する「ユーザーエクスペリエンス」や「カスタマーエクスペリエンス」、多様なタッチポイントにおける「マルチエクスペリエンス」に加えて、従業員の満足度に関わる「エンプロイーエクスペリエンス」の4つを総合的に高めていくというものだ。原田氏は、その中でも「エンプロイーエクスペリエンス」を高めることが、企業の持続的な成長につながる重要な要素であると説明した。

ワークプレイスの潮流は、コロナ禍を挟み大きく変化したという。リコーはコロナ禍前から「アクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)」という、仕事の内容に合わせて時間や場所を自律的に選択する働き方を採用してきたが、コロナ禍では多くの企業が在宅勤務にシフト。アフターコロナには出社とリモートを使い分けるハイブリッドワークが普及し、2023年頃からは、出社回帰(RTO=Return To Office)の流れが主流になっている。「チーム・ベースド・ワーキング(TBW)」という、チームやプロジェクト単位で働く場所を決めるスタイルも登場した。

「在宅勤務を経験した社員は、出社をルール化されると縛られているように感じてしまう。自分のワークライフバランスに応じて在宅勤務を含む働き方を選びたい社員側と、効率性やマネジメントの観点からRTOを進めたい経営側の間にギャップも生まれています」と原田氏。一方で、コミュニケーション面のメリットから出社を希望する若手社員や中途入社社員も増えているという。また、少子高齢化における人材獲得や、従業員のエンゲージメント向上という経営課題を抱える企業も多い。こうした環境の中で、経営者はオフィス環境のあり方に頭を悩ませていると原田氏は指摘する。

ワークプレイスにおける経営者と従業員の期待のギャップを示すチャート。左側には『経営者の期待』(RTO推進、満足度向上による人材確保、コスト効率化)、右側には『従業員の期待』(働く場所の柔軟な選択、快適なインフラ、ストレスの少ない職場環境)を対比。下部には“社員の61%が創造性を重視しているが、会社がそれを支援していると感じるのは45%”というデータが示されている。

事例1:AIと空間設計が生み出す、新しいワークプレイスエクスペリエンス

こうした課題を解決するのが、リコーが提唱する「ワークプレイスエクスペリエンス」だ。これは、社員が最適な環境で自己成長しながら創造性を発揮することで、企業の力や収益性を高めるという考え方である。「社内のコミュニケーションやコラボレーションを活性化させて社員の創造性を引き出すには、オフィスのファシリティ整備だけでなく、AIをはじめとしたテクノロジーの活用が不可欠です」と原田氏は語った。

リコーグループは、2024年度に220社のオフィス移転およびリニューアルを支援。印象的なディスプレイでブランドを訴求するエントランス、目的に応じて働き方を選べるワークプレイス、ハイブリッドワークに対応した会議室、アイデア創出やリフレッシュを促すコミュニケーションスペースなどを提供している。ファシリティを中心とした空間デザインとデジタルサービスを融合させることが、ワークプレイスエクスペリエンス向上の鍵だという。

続いて原田氏は、リコーのワークプレイスエクスペリエンス事業を支える「7つのコアスタイル」を紹介した上で、オフィスづくりの実例を紹介した。そのひとつが、ワークショップの成果を最大化するスペース「Project Cabin」である。

大型ディスプレイが3面の壁に埋め込まれた空間に、AIツールや天井のシーリングマイクなどのAV機器を導入。話者の特定やリアルタイムの文字起こしが可能で、AIが、ポイントの付箋化、課題領域のカテゴライズ、解決策の提案などの機能で、ワークショップを支援する。これまでワークショップに3時間を要していた議題について、Project Cabinを使って30分で精度の高い成果を導き出せたという。

「Project Cabinは、共創を生むリコーの施設『BUSINESS INNOVATION LOUNGE TOKYO(RICOH BIL TOKYO)』に設置されています。RICOH BIL TOKYOでその魅力を体感して、導入いただいたお客様もいます。AI活用というと業務プロセス効率化のイメージが強いですが、AIはこのように人間の創造性を引き出してくれます」と原田氏は語った。

リコーの共創拠点『BUSINESS INNOVATION LOUNGE TOKYO』内に設置されたProject Cabinの概要図。AIツール『Dify』と『Miro』を連携し、音声認識・自動要約・仮想ファシリテーションなどを通じて、会議やワークショップを創造的な議論の場へと変える仕組みを示している

事例2:AI×IoTによるワークプレイス分析でコミュニケーションを活性化

次に原田氏は、「RICOH Spaces」を活用したオフィスインフラ整備の事例を紹介した。RICOH Spacesは、会議室などのスペース予約や受付管理に加え、IoTセンサーとの連携により人の滞在状況を可視化・管理できるサービスである。グローバルで広く展開されており、日本でも2025年7月にリリースされた。導入企業では、IoTセンサーから得られたデータを活用し、ファシリティ投資の効果測定や最適なワークプレイスプランの策定、さらに適切なソーシャルディスタンスの確保による社員の安心感の醸成などが進み、高い成果を上げている。

リコー本社でも、RICOH Spacesを活用したワークプレイス分析が進められている。会議時間や参加人数などのデータを分析し、社員のニーズに合った会議室を整備した結果、稼働率と会議の効率性が向上。また、RICOH Spacesによってメンバーの出社状況や座席の可視化が可能になり、特に若手社員の間でコミュニケーションの活性化を実感する声が増えているという。

「デジタルの力でオフィスを改善することで、エンプロイーエクスペリエンスの向上や、ウェルビーイングな働き方の実現につながった事例です」と原田氏は語った。

RICOH Spacesのグローバル導入実績を紹介する図。世界中で991棟・3,484階・96,726席・7,960室のオフィスに導入されており、VodafoneやeasyJet、dpdなど中堅・大手企業が利用している。複数拠点を持つ企業のオフィス運用を支援するソリューションであることを示している。

AIを駆使するのも企業を支えるのも人。競争力強化につながるワークプレイス改革を

「人的資本経営という考え方において、ワークプレイス整備の段階が非常に重要」と原田氏は言う。最適なワークプレイス作りを、人事制度やルール作りなどの人事施策に紐づかせることで、組織の文化醸成やエンゲージメント向上につながり、社員が、社会に貢献できる企業を支えていく存在になっていくという。

「AIや各種デジタルツールが次々に登場しますが、それらを司るのは社員。だからこそ人材へのアプローチがもっとも重要」と原田氏は強調する。「AIをハンドリングできる優秀な人材は働く環境をよくチェックしています。会社が自分の創造性向上をどうサポートしてくれるか、非常に敏感に感知する。人材獲得の観点からも、人材が自分のスタイルで快適に仕事をして、成果を出せる環境を作ることが重要です」。

原田氏は最後に参加者に、「目を閉じて、社員やパートナー企業の方々の顔を思い浮かべてほしい」と呼びかけた。「嬉しそうに働いている顔が浮かんだ方の環境は、とても良い状態です。みんながハイタッチして絶好調!という方は、自分だけポジティブになっている可能性があるので、要注意です(笑)。社員の真剣な顔や、申し訳なさそうな顔が浮かんだという方は、社員の活性化に改善の余地があるため、ぜひワークプレイス変革に取り組んでいただきたいです」と話した。

「人的資本経営を強化したいという人事の方も、仕組みづくりやマネジメント方法に意識が向きがちです。そうではなく、社員一人ひとりの顔を思い浮かべながら、彼らがいきいきと働き、成長していけるよう支援することが、企業の力を高めるうえで最も重要です」と原田氏。社員の活性化や優秀な人材の確保において、最も効果的なアプローチがワークプレイス改革だという。

「企業の競争力を生み出すのは“人”です。社員が誇りを持って働き、自らの可能性を広げられる環境を整えることこそ、持続的な成長を支える鍵だと私は信じています」と結んだ。

  • 出典:Gartner®, Total Experience Increases Customer and Employee Engagement, Michelle Declue, 31 October 2024 GARTNER is a registered trademark and service mark of Gartner, Inc. and/or its affiliates in the U.S. and internationally and is used herein with permission. All rights reserved.

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