6月26日(木)、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された「国際ツーリズムトレードショー TOKYO 2025」にて、リコー社員3名がセミナーに登壇した。テーマは、「人事担当×実践社員が語る!企業でのワーケーション浸透のポイント ~見えてきた効果と課題とは~」。
「国際ツーリズムトレードショー TOKYO 2025」は、ウェルネスコンテンツから、インバウンド対策・人手不足対策・施設の高付加価値化といった観光課題を解決するソリューションを網羅する、観光の総合展示会。展示会の一環として行われたセミナーは、ウェルネスツーリズム、地方創生、観光DX、法人旅行、ワーケーションなど29のテーマで開催された。リコーのセミナーには、企業の経営・人事・総務の担当者、旅行会社、宿泊施設、自治体の方など、82名が来場した。
リコーのセミナーでは、まず、人事担当の鶴井直之氏から、リコーの働き方やワーケーションの位置付け、これまでの取り組みなどを説明した。鶴井氏は、リコー入社後、国内販売部門や事業戦略部門に従事した後、2017年に発足した全社の働き方変革プロジェクトに参画。現在は本社人事部門にて働き方変革推進を担当している。
リコーでは働き方変革の取り組みの中でリモートワークを推進し、その選択肢の1つとして2020年11月からワーケーションも実施可能にした。制度導入の狙いは、「社員の自律的な働き方とワークライフ・マネジメントの実現の促進」としている。そして鶴井氏は「リコーでは、エンゲージメント向上、イノベーションマインドの醸成、地域の社会課題解決への貢献、この3つを社員に対する期待効果としている」と語った。
続いて、ワーケーション実践社員2名から、自身が体験したワーケーションの事例を説明。1人目の渡邉日奈子氏は、リコー入社後、2年間リコージャパンにてソリューション営業を担当。その後、リコーが協賛している徳島県「神山まるごと高専」の学生を支援する部署に異動。「モノを作る力でコトを起こす」という教育理念を掲げて起業家の育成を目指す同校の学生が、企業との連携を通じて成長していけるようサポートしている。
渡邉氏からは、自身が参加した北海道富良野市と静岡県御殿場市での研修型ワーケーションの事例を紹介。富良野ワーケーションは、コロナ禍で同期と直接会う機会がほとんどなかった入社2年目社員向けに2021年度から4年間実施された。渡邉氏は2024年1月に同期5名と共に参加し、地域の方々との交流や高校でのキャリア教育授業講師、雪が積もる中での環境教育受講などを体験。その中での学びとして「異なる視点や価値観に触れることで多くの気づきが生まれ、信頼と安心感のある関係が築けた」と説明した。
雪が降り積もる中での富良野ワーケーションの様子
御殿場ワーケーションは、リコーの環境事業開発センターを訪問し、複写機のリサイクルや脱炭素・循環型社会に向けた実証実験の現場を実際に見て、リコーの環境経営への取り組みを体感することをメインプログラムとして企画された。幅広い年齢層の、様々な職種の社員10名が参加した。
リコーのSDGsや環境に対する取り組みの理解を深める御殿場ワーケーションの様子
渡邉氏は「実際に現場を訪れ、リコーの環境経営の取り組みを肌で感じることで、これまで以上にその意義や本気度が伝わってきて、自分ごととして環境課題に向き合う意識の変化が生まれた。そして何より、このワーケーションに参加して、リコーという会社がより一層好きになったというのが、今回の一番の収穫です」と語った。
ワーケーション実践社員の2人目は藤山遼太郎氏。藤山氏は、リコー入社後、デザイン部門で複合機や畜産IoTのUIUXデザインを担当。2021年にデジタル戦略部へ異動し、部門広報を担当。組織風土変革やリコーのDX加速に向けた戦略や取り組みを社内外へ伝えるための情報発信をしている。
藤山氏からは、和歌山県白浜町と北海道富良野市で経験した課題解決型ワーケーションの事例を紹介。スプラッシュトップ株式会社が主催した白浜町でのワーケーションは2023年6月に1泊2日で実施された。6社6名のメンバーが1軒の農家を訪問し、現場視察、収穫体験、課題ヒアリング等をした後、全員でのディスカッションを経て、課題解決に向けたプレゼンデーションを実施した。藤山氏は初めての白浜町訪問の前に、リコーグループの国内販売会社であるリコージャパンの和歌山支社の社員と情報交換を実施し、相互理解にも努めた。振り返ってみて、「自社だけでなく、ワーケーションという時間を、グループ会社や他社様と実施するのは日本社会にとっても大きな可能性があると感じた」と語った。
白浜町ワーケーションで地域のお客様への提案ディスカッションの様子
富良野市での課題解決型ワーケーションは、リコーが富良野市と共同で企画し、2024年10月に実施した。事前に富良野市が選定した地域事業者様3社(運送業、青果店、介護事業者)にリコー社員が3名ずつ訪問し、就業体験や課題ヒアリング、業務分析などを実施。このワーケーションでも、最終日にはチームごとに提案プレゼンテーションを行った。藤山氏は滞在中の工夫として「富良野に来ている意味を見出すために朝活を実施した。本業を止めない、でも本業だけにしないというのを狙いとして、早朝気球、早朝乗馬など、始業時間前に楽しめるアクティビティを体験した。朝活はぜひオススメしたい」と紹介した。そして課題解決型ワーケーションについては、「事業者様の挑戦、変革マインドが成功につながる一番のキーになる」と語った。
富良野ワーケーションでの青果店の方へのヒアリングの様子
実際のワーケーションの様子はこちらでもご覧いただけます。
最後のパートでは、再び、人事担当の鶴井氏から、リコー社員の現在の働き方を紹介。2025年1月の社内アンケート調査によると、出社頻度は週5日から週1日以下に至るまで様々ではあるが、「働く時間と場所を柔軟に選べるか?」という質問には「YES」と回答した社員が87%であった。ハイブリッドワークが定着した結果といえる。また同アンケートで「2024年に1回以上ワーケーションをした」という社員が、リモートワーク主体勤務社員のうち、23.1%いることも紹介された。
続いて、2021年度以降、人事部門主催のワーケーションに参加して1年以上経過した社員に対するアンケート結果が紹介された。「ワーケーション参加後の意識や行動の変化」については、エンゲージメント向上や地域課題解決への意識の高まりなどの点において、会社が社員に期待した効果に繋がっているといえる結果であった。「ワーケーション参加後の地域とのつながり」については、再訪した社員はまだ多くないものの、ワーケーション先で出会った方との継続的な交流や、その地域への関心の高まりという点においては肯定的な回答が多かった。
最後に3人それぞれの立場で、さらにワーケーションを浸透・促進させていくために見えてきた課題についてクロストーク。「ワーケーションが普通にやれるような文化の醸成」「会社として貢献し続けるため、その地域に再訪する仕組みづくり」などが挙げられた。そして、鶴井氏が「ワーケーションで企業が期待する効果を得るためには、ただやみくもにワーケーションを推奨していくのではなく、『リモートワークを行う環境』、『多様な働き方を支える制度』、これら2つが整っていることに加え、『社員が自律型人材である』という、この3つが揃うことで成り立つと考える。そのためには『まずやってみること』が重要で、それによって一人ひとりがイキイキと働ける会社に近づいていけるのではないかと思う」と締めくくった。
セミナー中はスマートフォンを通じたQ&Aに多くの質問が寄せられた。そしてセミナー終了後は、3名の講師のもとに名刺交換の列ができ、興味・関心の高さをうかがわせた。セミナー後の聴講者アンケートでは、満足度96.6%と非常に高い評価であった。「実践された方のお話や人事の方の考え方などを聞くことができ、大変有意義な時間となりました」「普段聞けないようなワーケーションの実像を知ることができました」といったコメントが寄せられた。
登壇者
(中央)株式会社リコー 人事総務部 統括室 働き方変革推進担当 鶴井 直之氏
(左)株式会社リコー 技術統括部 技術経営センター 技術統括室 藤山 遼太郎氏
(右)株式会社リコー 未来デザインセンター 神山まるごと共創室 渡邉 日奈子氏