デジタルサービスの会社への移行、社内カンパニー制度の導入など、リコーは大きな変革期を迎えています。それに伴い、社員一人ひとりがリコーグループの基本理念である「リコーウェイ」を指針とし、自分で考え、自分で動く「自律型人材」へ成長していくことが不可欠です。リコーでは、多様な研修、多角的な人事評価制度、充実したキャリア支援制度などを通して、社員一人ひとりの仕事自律・キャリア自律、変化に強い個人と組織や多様性を活かす企業風土の醸成を推し進めています。
社員の能力開発にあたっては、自己啓発を基本とし、一人ひとりが世の中に通用する専門性を身につけるための支援を行うこととし、以下のとおり、「リコーグループ育成方針」を定める。
全ての社員が持てる能力を最大限高めることのできる育成の機会を提供する。
自らリコーウェイを実践しながら、卓越した業績をあげ、模範となるリーダーを養成する。
グローバル市場で事業貢献することのできる経営幹部、及び、事業・技術のプロフェッショナルを育てる。
(リコーグループスタンダード リコーグループ人材マネジメント規定標準 第7条より引用 ※2023.11.01更新)
リコーグループでは、社員の自律的な学びの促進や、経営戦略に沿った人材を育成するために、下記2点をポイントにして人材育成体系を整えています。
マネージャーケイパビリティ向上や、グローバルエグゼクティプ選抜教育など外部教育機関とともにリコーリーダシップに沿ったオリジナルの研修プログラムを設定しています。 また、新任マネジャー/エキスパートには、着任と同時期に基本的な知識・スキルを取得するプログラムを提供することで、着任時より確実なケイパビリティ向上を図っています。
2022年に社員一人ひとりがデジタル人材を目指し自律的に学ぶ「リコーデジタルアカデミー」を開校しました。これは、リコーグループ全社員のデジタルスキルの底上げに加え、デジタルサービスの創出・加速に貢献する専門的な能⼒向上を目的とした、スキルアップにも対応したカリキュラムとなっています。リコーグループは21次中経(2023-2025年度)でデジタルサービス売上高比率目標を60%超に設定しています。2023年度のデジタルサービス売上高比率は48%で、2024年度は49%と上昇傾向にあります。この上昇に貢献しているのがデジタル人材です。リコーグループでは経済産業省と情報処理推進機構(IPA)が定める「デジタルスキル標準」を参考に、ビジネスアーキテクト、ソフトウェアエンジニア、データサイエンティスト、サイバーセキュリティの4つの領域で、21次中経のESG目標として重点育成人材の人数を設定しています。2025年度までの目標人数4,000人に対して、2024年度の実績は4,658人となり、前倒しで目標を達成しました。
リコーグループでは、経営指標として業績目標とESG(環境・社会・ガバナンス)目標の達成を同時に目指しています。これらの指標は、従業員の日々の活動・成果に結びついています。人事評価制度においては社員の成果や能力に応じた適切な処遇や人材配分を行い、社員個人の成長と組織成果の向上を図るため、目標管理型人事評価制度を導入しています。
全正社員は専門的な能力開発のために、半年の評価サイクルのなかで、期初に目標を設定し、日々の業務を通して目標を達成していき、期末に自身の成果を振り返り評価を受けるという一連のプロセスを踏みます。評価は各個人の業績目標だけでなく、社員の自律的な行動やチームでの業績貢献など会社が従業員に求める行動を含めて評価する仕組みとなっております。社員が目標を達成し成長できるよう、この評価プロセスのなかで上司は適宜部下へ仕事に対するフィードバックやアドバイスを行います。2024年度の目標管理制度の対象となる従業員はグローバルで89.7%でした。
また、社員一人ひとりがさらなる成長とより高い成果をだすことを促すために、日常的(頻回)なコミュニケーションによるフィードバックを推奨しています。
全社員の期末評価は、社員の成果と会社が社員に求める期待行動成果の二軸による相対評価で判定します。評価結果は賞与などの報酬に反映される仕組みとなっています。
更に、360度フィードバックをマネジメントポジションに就いている社員を対象に実施し、多面的に評価を行う取り組みも採用しています。
リコーでは社員の中長期的な育成を支える仕組みとして、以下の長期インセンティブ制度を提供しています。
リコーでは、社員のより豊かな老後の生活を支援することを目的に、確定給付型年金制度及び確定拠出型年金制度を活用した退職給付制度を整備しています。この制度は在職時の役割・成果に応じて付与ポイントが決定される仕組みとなっており、社員一人一人の貢献を公平に評価する成果主義を採用しています。
リコー持株会は、社員の財産形成の一助として、給与・賞与から控除した拠出金でリコーの株式を購入する制度です。加入は希望制であり、会社からの奨励金として拠出金の15%が支給されます。これにより、社員は長期的な資産形成を目指すことができます。
リコーグループでは、社員が自律的に自身のキャリアを考えることができるよう支援を進めています。
上司との日常の1on1、目標面談やフィードバック並びに、以下のようなキャリア支援施策を活用することで、社員は自律的にキャリアプランを形成し、会社の進む方向を理解した上で、自身の成長や会社への貢献を考え、自部署での更なる活躍やスキル向上、本人の要望と会社のニーズがマッチした場合には他部署への異動などを実現することで、社員のキャリア開発を支援します。
また、株式会社リコーでは、社員の自律的なキャリア形成支援の一環として、会社を退職し新たなキャリアを選択する社員を支援するために、一定の条件を満たす社員には、特別退職加算金の支給、希望者に対して再就職支援サービスを提供する制度があります。
リコーグループでは、社員の年齢別の課題に対応した研修と年齢に関わらず自らのキャリア課題に合ったプログラムを受けられるよう、課題・目的別のキャリアデザイン研修の2つのパターンで実施しています。また、社員がいつでもキャリアデザインの考え方を学ぶことが出来るよう、全社員が視聴可能なe-learningプログラムも配信しています。
社員が自律的にキャリア形成し、キャリアプラン実現のために努力する風土を醸成するために、株式会社リコーでは「社内公募」および「社内副業」という制度を導入しています。「社内公募」は人材を探している部門の募集に対し、社員が自らの意思で応募することにより異動を実現する制度です。「社内副業」は社員が勤務時間の一部を使い、社内のやってみたい仕事、テーマ、活動などへ本業と並行してチャレンジできる仕組みです。これらの制度によって、社員のチャレンジ意欲を後押しし、イキイキと活躍するための機会を提供しています。また、部門を超えた人材の流動化や貢献領域の拡大にも繋がるため、社員と会社の双方の成長にも寄与しています。
| 対象範囲 | 単位 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 総研修時間 | グループ計 (データカバー率100%) |
万時間 | - | 340.1 | 410.5 | 243.9 |
| 従業員1人当たりの平均研修時間 | グループ計 (データカバー率100%) |
時間 | 38.0 | 25.6 | 31.2 | 33.0 |
| 従業員1人当たりの平均研修日数*1 | グループ計 (データカバー率100%) |
日 | 5.1 | 3.4 | 4.2 | 4.4 |
| 従業員1人当たりの平均研修費用 | グループ計 (データカバー率100%) |
円 | 90,712 | 91,943 | 95,594 | 102,994 |
日本国内のリコーグループでは、新任のマネージャーやエキスパートに対し、マネジメントベーシック研修を実施し、着任後1か月以内に必要な知識とスキルの取得を促進しています。
継続した組織目標の達成に向け、任された組織の持てる力を最大限に発揮することを目指し、 実務力アップのために経理や企業情報の適切な開示、経営管理の基本やCSの基本的な知識を学び、 社員にとって心理的安全な職場環境とするために、人事労務管理研修を実施し、過重労働の未然防止に向けた日常管理や、メンタルヘルス教育を実施しスキル教育とあわせてより実践的な内容の教育を実施しています。 また、メンバーの自律的な成長を支援するために、マネジメントや1on1ミーティングの教育も実施することで、マネージャーとしての基本的な知識やスキル取得を確実なものとします。
マネジメントベーシックで基本的な知識・スキルを取得した後、マネージャー全員に対し、マネジメントカレッジにて、マネージャーの役割、面談スキル(1on1)、業績評価・評価フィードバックの面談の仕方、より強い組織を作り成果を創出するために、心理的安全性や個々人の強みを活かすマネジメントスキルを学ぶことで、部下との信頼関係を深め、部下の動機付けと成長支援をより促進することで、マネジメント変革と組織力の向上を目指しています。そして職場で実践することで生産性の高い職場実現につなげていきます。また社員エクスペリエンスを”はたらくに歓び”につなげるために、継続的にDEIの研修受講や啓発活動に参加しています。
2024年度は国内グループ会社従業員のうち8%に当たる約2200人がマネジメントカレッジに参加し、プログラムを終了しています。これらの取り組みの結果、2024年度の国内の360度フィードバックの他者評価結果において、部下へのエンパワーメントが1%、育成力が1%、基本姿勢が1.3%向上しています。また、エンゲージメント調査結果を見ても、「完全にエンゲージしている」と回答する率が前年比で1%上昇しています。マネージャーのスキル向上が、社員の満足度向上へと着実に結びついていることが伺えます。
デジタル技術とデータを活用して定型的かつ効率的に業務プロセスを改革できる「型」を定義し、型に基づき改革を実践する「プロセスDX」にリコーグループ全体で取り組んでいます。プロセスDXの実践で必要となるスキルを身に付けることができる、プロセスDX人材育成のプログラムを展開しています。
このプログラムは、4つのレベルで認定するよう設計しており、各レベルの認定者はスキルごとに可視化されています。2025年3月時点、国内リコーグループで基本レベルの教育が完了した従業員は約16,700人、プロセス変革に貢献した実績がある従業員は約2,700人です。
社員一人一人が自律的にこのプログラムを活用することで自身の業務の生産性向上だけでなく業務に対するモチベーション向上も図っています。
これまでにプロセスDXを実践した成果として約1,300,000時間/年(年間約720人分の労働時間に相当)を創出しており、成長領域へリソースをシフトしています。2022年度からは、社内でのプロセスDX実践の経験・ノウハウをベースにお客様の課題をお客様と共に解決するサービスを提供しており、これまでに多くの実績をあげてきました。2025年3月時点で国内従業員の56%(販売会社除く98%)に当たる約16,700人がこのプログラムに参加し、基本レベルの教育を完了しています。
厚生労働省の調査によると、新入社員のうち38.4%が3年以内に離職するというデータもあります。(2024年10月時点)リコーグループでは新入社員が自信を持って職務に従事し、リコーの企業理念である“リコーウェイ”を体現し、イキイキと活躍し定着できるよう、内定期間と入社後の両方でトレーニングを行っています。
内定期間にはe-learningを用いてビジネスパーソンとして身につけるべき「ビジネスマナー」および、仕事の進め方の基礎となる「ロジカルシンキング」を学習します。
入社後の新入社員研修では、「自律的に考え行動する姿勢」「自己理解」「コミュニケーション力」の醸成に重きをおき、より実践的なトレーニングを通じて、現場で活躍するためのスキルと自信を培います。2025年度においては、国内リコーグループの全新入社員523名に対して、新入社員研修を実施しました。(実施率:100%)
また、株式会社リコーにおいては、新入社員向けのフォロー研修を始めとし、入社3年までは年次ごとに想定される課題をテーマとした研修を実施することで、成長を支援しています。
これらの効果として入社3年時点の定着率は90%以上を維持しており、20歳台のエンゲージメントサーベイ結果は「完全にエンゲージメントしている」割合が36%と、全体平均の25%に対して高い水準となっています。
リコーグループでは自律型人材の育成に向けて社員の学びを支援する仕組みを構築しています。
たとえば、プロジェクトマネジメントの資格であるPMP®の受験に必要な学習時間として算入できる研修など、社員のビジネススキル向上やグローバル対応力強化を目的とした研修を年間通じて行っています。
また、株式会社リコーでは全正社員※を対象として、国内外の大学院、MBA、MOT等のビジネス資格取得を目的とした留学のために長期の休暇を取得できる「スキルアップ支援特別長期休暇制度」も運用しており、社員の学び直しを支援しています。
株式会社リコーでは、社員が自身のスキル、経歴、チャレンジしてみたい業務、趣味や関心などを人材データベースへ登録する仕組みを推し進めています。集めた社内人材データを一元的に可視化・分析することで、社内にどのような人材がいるのかを把握し、人事戦略へ活用していきます。具体的な活用方法として、社員のスキルや経歴を活かした社内ジョブオファー、個人の強みを一層伸ばすトレーニング支援、お互いのスキルや経歴をきっかけとした社員同士のコミュニケーション促進などを行っています。また、上述の社内公募・副業制度との連携により、社員が挑戦してみたい業務と社内ポストのマッチングにも活かされています。
株式会社リコーでは政府研究開発プロジェクトへの参画や大学などの研究機関と包括連携を結ぶことにより、産学連携活動を強化し自社の技術を社会へ還元するとともに研究成果を技術開発社員の学びへ生かす取り組みも実施しています。こうしたパートナーシップに基づく、共同研修プログラムの開発により、社員の学びが深められています。
たとえば、東京工業大学とはリコー次世代デジタルプリンティング技術共同研究講座を2019年より開始。
次世代デジタルプリンティング技術の核となる要素技術に特化した基礎研究を実施し、高速で高解像度の作像技術に繋げるインクジェット技術にフォーカスした研究活動を実施しています。
また株式会社リコーは官民連携にも積極的に取り組んでおり、希望する社員を定期的にグループ外の公的機関へ出向させています。社内にはない業務を経験し官庁の方々と交流することで、知見・見識の幅が大きく広がり、貴重なキャリアアップの機会となっています。
株式会社リコーでは、ジェンダーギャップの解消を目的とし、企業横断型の「クロスメンタリングプログラム」に2024年度より参画しています。本プログラムでは、異なる企業・業界のメンターとメンティーが交流し、女性管理職や経営幹部が企業の枠を超えて学び合うことで、ジェンダー平等の推進だけでなく、企業文化の変革や組織の活性化にも寄与しています。
リコーグループでは、毎年6月に「リコーグローバルSDGsアクション月間」を開催しています。2024年度は、DEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)の理解と実践をテーマに、グローバル全体で多様なプログラムを展開しました。
この期間中、社員一人ひとりが異なる文化的背景や価値観への理解を深めることを目的に、社内イベント、ワークショップ、社内事例紹介などを通じて、DEIに関する意識の醸成を図りました。これらの取り組みは、国や地域を超えて多様性を尊重する企業文化の構築に貢献しています。
詳細:
「リコーグローバルSDGsアクション2024」を実施
~社員一人ひとりのDEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)への理解・取り組みによりSDGsの達成と事業成長の加速を目指す~