人権とは全ての人に与えられた基本的権利であり、その奥行きは深く、裾野も限りなく広いものです。また、国際的に「人権」が大きな社会問題として注目され、企業活動における人権尊重への要請が高まっています。
リコーの人権尊重の原点は、創業の精神“三愛精神”の“人を愛し”にあり、グローバルに事業を展開するリコーグループでは、各国の法令を遵守することに加え、国際的規範(「国際人権章典」や「労働における基本原則および権利に関するILO宣言」 など)に準拠した人権尊重の実践に取り組んでいます。また、国連グローバルコンパクトの署名企業として、「国連グローバルコンパクトの10原則」を支持するなど、リコーグループの事業活動に関わる全ての人々の人権を尊重し、人権侵害リスクの回避と、企業価値の向上を推進しています。
リコーグループは国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、2021年4月に「リコーグループ人権方針」を定めました。本方針は、社内外の有識者の意見も踏まえて策定し、ESG委員会*にて審議した上で、リコーCEOが承認したリコーグループの人権尊重に対するコミットメントです。リコーグループはこれまでも、「リコーグループ企業行動規範」に則り人権尊重に取り組んで参りましたが、国際社会における人権課題の広範化を踏まえ、本方針に基づき国際規範に準拠した取り組みを強化していきます。
本方針は、人権侵害の防止を目的としたリコー内の人権に関わるすべての規定の上位に位置付けられ、すべてのグループ企業の全役員およびすべての従業員に適用されます。本方針は、日英以外の8言語にも翻訳の上、国内外の主要グループ企業に対して周知、教育を実施しており、すべてのサプライヤー及びビジネスパートナーにも、本方針の支持と実践を頂けるよう努めています。
「リコーグループ人権方針」(項目のみ)
*ESG委員会: 環境・社会・ガバナンス分野におけるリコーグループの中長期的な課題を経営レベルで継続的に議論、意思決定する目的を担う社内組織。取締役会から権限委譲されたCEOを委員長とし、一定の資格要件を満たす執行役員と監査役およびESG担当役員から構成される。
リコーグループの人権尊重の取り組みは、リコー人事担当執行役員およびESG担当執行役員の責任の下、人事、ESG担当部門を中心に推進しています。人権影響評価により特定された顕著な人権課題への軽減・是正措置の検討等、人権尊重に関する課題(*)は、推進部門からESG委員会に報告し議論されたうえで、取締役会で審議が必要な課題については、取締役会へ上申されます。
また、人権リスクは、重点経営リスクの1つに位置づけられており、リコーグループのリスクマネジメント体制の中でも管理されています。2021年には、リコーのすべてのビジネスユニット内に人権リスクマネジメント推進キーパーソンを設定し、ビジネス推進上の人権リスクを共有し、グループ本社部門と連携して管理・対応する体制を整えています。
(*)ESG委員会で議論された人権尊重に関する課題
開催時期 | 議題 | |
---|---|---|
2022年 | 3月 | 21年度実施の人権影響評価の結果報告 |
11月 | 懲戒処分における減給措置の人権上の課題提起 | |
2023年 | 11月 | 生産拠点における人権リスク状況の報告 |
2024年 | 2月 | 人権デュー・ディリジェンスを踏まえた今後の人権リスク低減策の報告 |
リコーグループは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」を踏まえて定めた人権尊重の推進フレームワークに基づき、リコーグループのビジネスに関わるバリューチェーン全体における全てのステークホルダー (全従業員、サプライヤー、ビジネスパートナー、先住民族を含む地域社会の人々、お客様)の人権尊重の実践に取り組んでいます。
リコーグループは、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを通じて、ステークホルダーの人権を守り、持続可能な企業活動を推進します。
事業活動やサプライチェーンを通じた 1. 人権への影響評価、2. 負の影響の防止・軽減、3. モニタリング、4. 情報開示を経営層の責任のもと、継続して取り組んでいきます。
リコーグループは、ビジネスを通じた人権への負の影響評価を通じて、リコーグループのビジネスに関わるすべてのステークホルダーにおける顕著な人権課題の特定を行っています。2013年には、有識者を招いてワークショップを実施し、リコーにおける人権リスク要素を抽出しました。抽出したリスク要素に対して地域性を考慮した具体的な懸念事項を特定し、2015年には抽出されたリスクとステークホルダーとの関連性を整理しました。2022年には、近年、複雑化する人権課題に対応するため、人権に関する主要な国際ルールやフレームワーク、日本の法務省が定義した「企業が配慮すべき主要な人権及び企業活動に関連する人権に関するリスク」を参考に、改めてリコーグループにおける代表的な人権リスクの特定と、ステークホルダーへの影響を整理しました。<表1>
表1 人権リスクの特定とステークホルダーの関連性
代表的な人権リスク | 想定される負の影響例 | 負の影響を受けるステークホルダー | |||
---|---|---|---|---|---|
従業員 | サプライヤー/ビジネスパートナー | 先住民族、地域社会の人々 | お客様 | ||
賃金および福利厚生 |
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✓ | ✓ | ||
強制労働 |
|
||||
過剰・不当な労働時間 |
|
||||
労働安全衛生 |
|
||||
結社の自由 |
|
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児童労働・若年労働 |
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✓ | ✓ | ✓ | |
差別・ハラスメント |
|
✓ | ✓ | ✓ | ✓ |
表現の自由 |
|
||||
救済へアクセスする権利 |
|
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テクノロジー・AIに関する人権問題 |
|
||||
公正なビジネス |
|
||||
サプライチェーン上の人権問題 |
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||||
地域社会・環境への影響 |
|
||||
消費者の安全と知る権利 |
|
✓ |
また、代表的な人権リスクの中から顕著な人権課題の特定を行いました。まずは労働者保護の観点からリコーグループで働く従業員における課題を特定し、外部有識者のアドバイスも交えながら、リコーとリコーグループ生産関連会社を対象に人権影響評価を実施しました。また、影響評価の結果は、CEOを含む経営層に報告され、協議を行った結果、7つの顕著な人権課題が特定されました。<表2>
ステークホルダーにおける顕著な人権課題については原則として3年毎にESG委員会での審議を経て、定期的な見直しを実施予定です。なお、人権影響評価については、リスク管理の重要性を考慮し毎年リコーグループ全体で実施予定です。その他のステークホルダーにおける人権影響評価も、評価方法の見直しや対象の拡大を順次進めいきます。
人権影響評価については、2022年よりリスク管理の重要性を考慮し毎年実施しています。
2022年に特定した顕著な人権課題については、2023年の影響評価の結果も考慮し、評価軸の定義や評価プロセスを見直しの上、 再評価しました。今後も継続的に人権影響評価を実施していきます。
2022年 | 2023年 | |
---|---|---|
評価実施時期 | 2022年1月~3月 | 2023年8~12月 |
評価対象 | ① 株式会社リコー(約300部門) ② 国内外リコーグループ生産関連拠点(19拠点) |
①株式会社リコー(約300部門) ②国内外リコーグループ生産関連拠点(21拠点) ③国内外リコーグループ非生産会社(58社) |
[2023年の影響評価で特定された顕著な人権課題]
7つ(強制労働、過剰・不当な労働時間、労働・安全衛生、差別・ハラスメント、テクノロジー・AIに関する人権問題、プライバシーの権利、サプライチェーン上の人権問題)
評価軸 | 評価軸の定義 | 評価プロセス |
---|---|---|
(*1) 深刻度 | 仮にリスクが顕在化した場合に引き起こされる人権侵害の深刻さ。以下の3つの軸で評価
|
外部情報* と外部有識者の意見を参考に、リコーの人権対応責任部門と経営層間で協議の上、評価を実施。 * 政府/NGO/業界団体が発行する企業向け人権対応のガイダンス、過去の企業の人権侵害事例など |
(*2) 発生可能性 | 人権への負の影響が生じる可能性。以下の3つの軸で評価
|
評価対象のセルフアセスメント形式のアンケートの回答結果、各人権課題毎の通報件数、重点経営リスクの緊急度を元に評価 |
<表2> 特定された顕著な人権課題と想定される加害者と被害者
顕著な人権課題 | 想定される加害者 | 想定される被害者 |
---|---|---|
強制労働 | 企業(雇用主)、従業員 | 事業所内で働くすべての労働者、取引先企業(構内請負企業など) |
過剰・不当な労働時間 | ||
労働・安全衛生 | ||
差別・ハラスメント | 企業(雇用主)、従業員 | 事業所内で働くすべての労働者、取引先企業(サプライヤー・ビジネスパートナー)、買収先企業/販売代理店、地域社会、お客様など |
テクノロジー・AIに関する人権問題 | ||
プライバシーの権利 | ||
サプライチェーン上の人権問題* | 企業(雇用主)、従業員 | 事業所内で働くすべての労働者、取引先企業(サプライヤー・ビジネスパートナー)、買収先企業/販売代理店、お客様など |
取引先企業(サプライヤー・ビジネスパートナー) | 取引先従業員、取引先と派遣/斡旋/請負契約などを結んだ労働者、地域社会、二次取引先企業など | |
買収先企業、販売代理店 | 買収先/販売代理店従業員、地域社会、お客様など |
* 深刻度が高い強制労働や児童労働、労働環境のリスク等
[今後の対応]
特定された顕著な人権課題については、リコーの人権対応責任部門が、負の影響の防止・軽減への取り組みを関連部門と協議の上、推進していきます。
リコーでは、M&Aなどの新規取引の際、投資委員会が定めた標準デュー・ディリジェンスプロセスに則り相手先企業のリスク評価を実施しています。
児童労働、強制労働など自社におけるデュー・ディリジェンスと同等の項目について、相手先企業の人権リスクを細かく評価し、問題が無いことを確認した上で、M&Aの最終判断を行います。買収後は、リコーグループ人権方針や関連の取り組みの理解と浸透を推進し、またグループ会社として、人権デュー・ディリジェンスを継続的に実施してまいります。
経済人コー円卓会議日本委員会 ステークホルダーエンゲージメントプログラムへの参加
事業活動による人権への負の影響について、ステークホルダーの視点から理解することが重要と考え、2023年には、経済人コー円卓会議日本委員会主催のステークホルダーエンゲージメントプログラムに参加しました。本プログラムでは、他企業、NPO/NGO、学識有識者等との対話を通じて、人権に配慮した事業活動の重要性について再認識するとともに、業界(製造業(電気・情報))の重要な人権課題の特定を行うことで、自社の事業活動と人権との関連性について理解を深めました。
最終報告「業界毎に重要な人権課題(第十二版)」
UNDP ビジネスと人権アカデミー
2023年、UNDP(国連開発計画)が主催するビジネスと人権アカデミーに参加し、 自社の事業が人権に及ぼす潜在的影響についての理解を深めるとともに、人権デュー・ディリジェンスを通じてこれらの影響を特定、予防、緩和、説明する方法についての実践的な知識を学びました。
個別ガイダンスセッションでは、自社の人権デュー・ディリジェンスの実践状況や課題などを共有し、海外のアドバイザリーファーム、UNDP、弁護士の有識者より、有効な人権影響評価の進め方、バリューチェーンにおける人権対応(サプライヤーとの協働、川下におけるデュー・ディリジェンス)等についてアドバイスをいただきました。 アドバイスを踏まえて人権リスクが高いと考えられる国を2023年の人権影響評価の対象に加えました。
リコーグループでは、特定された人権への負の影響度が高い人権課題について、負の影響の防止、軽減措置を講じて是正を行っています。
特に顕著な人権課題においては、 SAQにて負の影響の懸念がある当該拠点に詳細確認を行い、個別に改善を進めています。
2023年に特定した顕著な人権課題に対するこれまでの取り組み事例と、今後の改善強化事項は以下の通りです。<表3>
<表3>顕著な人権課題に対するこれまでの取り組み事例と、今後の改善強化事項
顕著な人権課題 | これまでの取り組み例 | 今後の改善強化事項 |
---|---|---|
強制労働 |
|
|
過剰・不当な労働時間 |
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労働・安全衛生 |
|
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差別・ハラスメント |
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テクノロジー・AIに関する人権問題 |
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プライバシーの権利 |
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サプライチェーン上の人権問題 |
重要サプライヤーに対して以下の取り組みを実施
|
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リコーグループ全体としての取り組みに加えて、特定の地域や拠点特有の人権課題についても詳細確認を行い、個別に改善を進めています。対応の事例としては以下の通りです。
強制労働
2020年には、中国の生産関連会社が自主的に受審した第三者監査(RBA Validated Assessment Program(VAP))にて、当該会社が契約した派遣会社の一部が、労働者に採用に関わる手数料の一部を負担させていた事実が明らかとなりました。そこで是正措置として、労働者が負担した費用の返金対応を実施、完了すると共に、未然防止策として、雇用に関する手数料の禁止を指示致しました。
差別・ハラスメント
タイの生産拠点では、作業上の安全配慮の観点から、立ち仕事に従事する女性労働者に対し雇用前に妊娠有無の確認をしていましたが、差別に繋がる可能性があるため、国際基準に則り2023年に廃止しました。
また、2024年、リコーグループにとっての15の代表的な人権リスクごとに、守るべき基準を定めた「リコーグループ人権尊重のためのガイド」をESG委員会の承認を経て国内外グループ企業に発行しました。本ガイドでは、上表の今後の改善強化事項に関する遵守基準についても取り扱っています。負の影響の防止・軽減の取り組みにおいては、顕著な人権課題への対応を優先しますが、今後は人権尊重ガイドをリコーグループ各社にグローバルに展開・周知し対応ポイントを実践することで、代表的な人権リスクの発生低減にも取り組みます。ガイドの遵守状況については人権影響評価を通じて、定期的に評価していきます。
リコーグループでの定期アセスメントの実施
年次のSAQなどを通じて定期的に負の影響に対する取り組み状況を確認します。
特に、生産拠点での人権リスクは重要度が高いと認識し継続的に監視を実施しています。
2019年にグローバルなサプライチェーンにおける企業の社会的責任を推進する企業同盟である「Responsible Business Alliance」(RBA)に加盟し、 2020年よりリコーグループの主要な生産関連会社に対してRBAのSAQを用いたリスクアセスメントを年次で実施しており、2023年は21の生産拠点を対象にリスクアセスメントを実施し、4拠点において負の影響を特定しました。
また、 2022年12月に国内生産拠点にて第三者機関による人権監査を実施しました。深刻なリスクはありませんでしたが、年齢差別に繋がる恐れのある採用プロセスなど指摘を受けた内容は、リコーグループ人権尊重のためのガイドにおいて年齢確認のプロセスや若年労働者雇用時の対応方針を明確化することで是正対応を進めます。
2023年10月にはタイの2つの生産拠点を訪問し、顕著な人権課題の改善の取り組み状況をモニタリングしました。例えば、「サプライチェーン上の人権課題」の1つとして特定していた現地構内従業員の休暇取得制度の不備については、構内従業員へのインタビューを実施することで構内事業者に対する是正要請の有効性を評価しました。このインタビューを通じて、改善要請に基づき適切な休暇の取得が行われていることが確認できました。また、万が一負の影響が発生した際にアクセス可能な申し立て窓口の周知を強化することの重要性も認識することができました。今後も、予見されるリスクについて継続的な改善活動とモニタリングを実施していきます。
継続的なRBA VAP監査の受審
RBAのSAQを実施した生産拠点のうち、主要生産拠点においては、2年ごとの第三者監査(RBA VAP)の継続受審を通じて、未然防止・軽減策、および是正措置の有効性を評価しています。2022年から2023年にかけて受審した5つの拠点全てでRBAによる認証を取得しました。その内、2拠点についてはGold認証を取得しています<表4>。監査を受審した拠点では、RBAの適合要件への不適合事項について改善計画を策定の上、改善に向けた取り組みを進めています。
第三者監査については他の主要生産拠点への展開も予定しており、今後も必要な拠点への現場監査を継続的に実施し、人権リスクへの対応措置の実効性についてモニタリングを行います。
<表4> RBA認証取得状況
事業所名 | 所在国 | 最新監査受審時期 | スコア(200点中) | 認証 | 認証期限 |
---|---|---|---|---|---|
リコーインダストリー 東北事業所 | 日本 | 2024年5月 | 184.5 | Silver | 2026年5月 |
Shanghai Ricoh Digital Equipment Co., Ltd. | 中国 | 2022年11月 | 177.4 | Silver | 2024年11月 |
Ricoh Manufacturing (Thailand) Ltd. | タイ | 2023年10月 | 193.2 | Gold | 2025年4月 |
ETRIA 御殿場事業所 | 日本 | 2024年9月 | 184.4 | Silver | 2026年9月 |
Ricoh Manufacturing (China) Ltd. | 中国 | 2022年12月 | 170.7 | Silver | 2024年12月 |
サプライヤーへのアセスメント実施
サプライチェーンでの人権リスクの把握のために、毎年購買金額の上位80%以上を占める重要サプライヤーを中心に対象地域を定めて人権リスクの評価を含むCSRアセスメントを継続的に実施しています。評価の結果ハイリスクとなったサプライヤーには現場監査を行い改善を要請していきます。
2020年からはRBAに準拠したCSRセルフアセスメントをグローバルで実施し、2023年には対象事業分野を全事業に拡大し、重要サプライヤーを292社に定め、セルフアセスメントチェックを実施しました。サプライチェーンにおける人権リスクを評価、特定し、改善目標を設定しています。
2023年、児童労働や強制労働防止のプロセスが十分ではない等、人権リスクが懸念されるサプライヤーに対しては、リコーから改善アドバイスを行うとともに定期的な進捗確認を実施するなど改善に向けて継続支援していきます。
今後は、CSRアセスメントの内容の見直しを行い、サプライヤーにおける人権リスクのモニタリングを強化していきます。
詳細は「サプライチェーンマネジメント」を参照ください。
リコーグループは、リコーグループ人権方針に則り、人権への負の影響に対処するための取り組みの進捗状況について、自社ウェブサイトや統合報告書などを通じて透明性をもって開示致します。
人権尊重は、企業活動で関わるあらゆるステークホルダーに対して適切な配慮を行うことが重要であり、それを遂行する従業員一人ひとりの正しい理解と高い意識がなければ成り立ちません。
リコーでは2012年度に、人権リスクの回避と企業価値の向上の観点から人権について学ぶ人権教育(e-learning「企業活動と人権」)を、国内関連会社役員社員を対象に実施しました。
2021年には、リコーの役員を対象に、外部有識者を招いてビジネスと人権の理解を目的とした勉強会を開催しました。また、リコーグループ人権方針の改訂に伴って、「ビジネスと人権」とリコーグループ人権方針の内容理解を目的とした人権教育を2021年から2022年にかけてe-learningやウェビナーなどにより国内外の75,000人以上の役員・従業員に実施しました。
2021年 人権教育の実施結果
1) 受講修了者数: 国内リコーグループ企業の全役員・従業員 約32,000人(受講率94%)
2) 受講後アンケート結果: 理解度確認にて「とてもよく理解できた」「理解できた」と回答 96%
2022年 人権教育の実施結果
1) 対象:海外リコーグループ企業 80社
2) 受講修了者数: 全役員・従業員 約45,000人(受講率96%)
今後も、継続的な教育・研修を通じて、従業員一人ひとりがビジネスにおける人権尊重の必要性を理解できるように取り組みを進めていきます。
リコーグループでは、リコーグループのステークホルダーが報復の恐れなく人権に関する懸念を通報できる通報制度と対応メカニズムを提供しています。リコーグループ企業行動規範にて誠実に通報を行ったこと、調査に協力したことを理由として不利益に取扱う行為をしないことを規定しています。人権侵害の申し立てがあった場合には、申し立てを速やかに調査し、人権への負の影響を是正する措置を講じます。
各通報制度の詳細
1991年11月 | 「人権啓発委員会」を発足させ、各事業所・人事総務部門に担当者を配置 |
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1994年10月 | 人権啓発ハンドブック「人を愛す」を発行し人権啓発教育を開始 |
1998年9月 | 人権相談受付窓口の設置 |
2002年4月 | 国連グローバル・コンパクトに署名 |
2003年11月 | 「リコーグループCSR憲章」「リコーグループ行動規範」で基本的人権の尊重を明記 |
2006年1月 | 「サプライヤー行動規範」により調達先に基本的人権の尊重を要請し、2009年よりセルフアセスメント制度を確立 |
2008年12月 | 国連「世界人権宣言60周年CEOステイトメント」に署名 |
2011年2月 | 国連「女性のエンパワーメント原則(WEPs)」に署名 |
2012年3月 | 紛争鉱物問題への対応方針を表明 |
2014年8月 | 「サプライヤー行動規範」を改訂し、調達先に紛争鉱物問題への対応を要請 |
2019年8月 | 不平等問題に取り組み、職場やサプライチェーンでのダイバーシティに取り組むイニシアチブ「Business for Inclusive Growth(B4IG)」に日本企業として初めて参加 |
2019年11月 | グローバルなサプライチェーンにおける企業の社会的責任を推進する企業同盟である「Responsible Business Alliance」(RBA)加盟 |
2021年4月 | 「リコーグループ人権方針」を策定 |
2023年4月 | 「リコーグループ サプライヤー・パートナー行動規範」の改定 |
取り組みにあたって参照・活用している主な国際的規範
- 国際人権章典(世界人権宣言)
- 国連「ビジネスと人権に関する指導原則」
- 労働における基本的原則および権利に関するILO宣言
- 国連グローバル・コンパクト10原則 Advancedレベル認定
- OECD多国籍企業行動指針
- 子どもの権利とビジネス原則
- 女性のエンパワーメント原則
- 社会的責任規格 ISO26000
人権リスクに対する緩和策としてこれまでに実施した主な活動は以下の通りです。
世界の紛争地域および高リスク地域における鉱物採掘や取引が、人権侵害や労働問題等の源になるのを防ぐために、2013年以降毎年サプライヤーと連携してサプライチェーンにおける責任ある鉱物資源調達の調査を実施し、また業界団体との連携も行いながら、デュー・ディリジェンス活動を継続しています。
リコーグループは地球市民の一員として、これからも関係するすべてのステークホルダーの人権尊重を意識しながら、確実に人権デュー・ディリジェンスを進めていきます。詳しくは紛争鉱物問題に対する取り組みをご参照ください。
*「紛争鉱物(Conflict Minerals)問題」とは、その採掘や取引が武装勢力や反政府組織の資金源となり紛争を助長している、あるいは人権侵害、労働問題、環境破壊等と密接に関連している問題を言います。2010年7月に米国で成立した「金融規制改革法」(ドッド・フランク法)では、コンゴ民主共和国および隣接国において産出される鉱物のうち、スズ、タンタル、タングステン、金、その他国務省が決定する鉱物を紛争鉱物とし、それらを使用する企業に対して情報開示を求めています。
リコーグループでは、英国現代奴隷法(The UK Modern Slavery Act 2015)およびオーストラリア現代奴隷法(The Modern Slavery Act 2018 (Cth),)に基づき、ステートメントを公表しています。
リコー南アフリカは、同国の黒人経済力強化政策(Broad-Based Black Economic Empowerment:B-BBEE)に遵法しているものとして、その証書を公表しています。
近年、生活賃金の支払いに関する企業への要請が高まっています。こうした潮流に応じて、リコーグループでは英国拠点における生活賃金の支給を開始し、今後も適切なアプローチを継続的にすすめていきます。具体的には以下3つの視点に基づいて取り組みます。
リコーグループでは人権侵害に係る社内標準の整備をすすめています。社内標準では「人権方針」や「リコーグループ企業行動規範」を逸脱した行為について厳しく対処する方針を設けるだけでなく 「人権侵害を未然に防ぐための教育」「人権侵害発生時の報告プロセス」「懲戒処分」などについて詳細に定めて運用しています。
参照標準
リコーグループ(国内)では、2020年6月に新たに施行された労働施策総合推進法(パワハラ防止法)に対応すべくグループ標準の対象範囲を拡大・改訂するとともに、企業に義務づけられた対策を遵守するよう徹底しました。
リコーグループでは、誰もが安心し、自分らしさを発揮できる職場環境の実現を目指し、LGBTQ+の人々に関する理解促進施策を展開しています。
様々な性のあり方、性的少数者について正しく理解することが、無理解からくる差別をなくし、誰もが気持ちよく働ける職場環境の実現には不可欠と考え、2018年10月にはリコーグループ企業行動規範を改定し「3.人権を踏まえた行動」の ”排除すべき差別” にLGBTQ+の人々への配慮として“性的指向や性自認” を明記しました。
また、日本国内の取組みとして、2019年はグループ従業員を対象としたセミナーやe-learning研修を実施し、e-learning研修は2020年3月末時点で89.3%の社員が受講を完了しました。
他にも人権・ハラスメント、LGBTQ+の人々に関する相談窓口の設置や、ジェンダーフリーのトイレや更衣室の整備を順次進めています。今後も、従業員の理解促進の取り組みを展開するよう計画しています。
当社グループ社員が、差別/ハラスメントの被害にあった場合、あるいは見かけた場合には、すぐに、また安心して通報・相談できるように、グローバル/国内グループ/個社毎と多様(上司や所属する会社への相談が難しい場合を想定して)な通報窓口を設けています。各制度とも、相談・通報したこと自体や、相談・通報を端緒とする調査に協力したこと自体を理由として、通報者や調査協力者に対して不利益な取扱いをすることを禁止しています。通報・相談された事案の事実確認や調査の進め方の立案は、各通報制度の主管区が、通報・相談者の了解を得たうえで、事案発生区の人事区と連携して行います。多様な通報制度を設けていることは、各種の教育実施時や、各社各組織における方針発表時等に、社員向けのPRを行っています。
リコーグループは、人権侵害やハラスメントが確認された場合には、「職場におけるパワハラ・セクハラ・マタハラ等を許さない」という雇用管理の方針のもと、明確化し被害者の安全と安心して職場復帰できることを最優先に考えるとともに、加害者(場合によっては加害者の上司も含む)に対する処罰や指導を適切に行います。 悪質な行為に対しては、各社が定める就業規則および人権侵害に係る社内標準に基づき懲戒処分を行います。 二度と同様の行為が起こらないように警告を行い、上司による管理・監督を強化します。 また、被害者、加害者双方のプライバシーに最大限の配慮をした上で、事件が発生した領域の経営層や管理職と事例を共有し、他組織でも同様の違反行為が発生しないよう経営チェックを行っています。
人権方針に基づき、グループ内従業員及びリコーのサプライチェーン上で働く労働者の一人ひとりの人権が尊重される職場環境の提供に努めます。
結社の自由と団体交渉権の尊重
各国の法律に従い、労働組合の結成・参加、団体交渉、平和的集会への参加の権利に加えて参加しない労働者の権利も尊重し、また、差別、脅迫、ハラスメント、報復、不利益な扱いを恐れることなく、労働条件および経営慣行に関する意見および懸念について、経営陣と率直に意思疎通を図り、共有できるものとします。
強制労働の防止
本人確認書類などは、雇用にあたって必要な範囲にて確認を行い、現地法令を遵守するために必要な場合を除き原本の保持はしません。また、会社が提供する施設(寮を含む)への出入りに不合理な制約を与えたり、就業期間以外、休憩時間における労働者の自由な移動を制限しません。