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事業等のリスク

出典:2024年度有価証券報告書「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」より
(提出日 2025年6月20日)

事業の状況、業績の状況等に関する事項のうち、株主・投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は、以下のとおりです。

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響があると経営者が認識しているリスクを以下で取り上げていますが、すべてのリスクを網羅している訳ではありません。当社グループの事業は、現時点で未知のリスク・重要と⾒なされていない他のリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。なお、事業等のリスクは、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

(1) リコーグループの経営上重要なリスク

重点経営戦略リスク

①デジタルサービスの会社としての収益構造の移⾏

緊急度 影響度 リスクマネジメントレベル
5 3 C
リスクの説明

デジタルサービスの会社として成長するため収益構造変革に取り組んでいるが、印刷量の減少加速をオフィスサービス事業などの成長でカバーしきれないことによる収益性の向上が実現できず、中期の財務目標(営業利益/ROE)の達成に遅れが生じることで企業価値の低迷につながるリスクがある。

リスクの対策

PBR低迷の要因は収益性の低さにあるという分析結果を基に、収益構造の転換に向けて、企業価値向上プロジェクトで以下のテーマに取り組んでいる。

  • デジタルサービスの会社に適した本社機能への変革
  • 事業の「選択と集中」の加速
  • オフィスプリンティング事業の構造変革
  • オフィスサービス事業の利益成長の加速

これらを実現するための人材ポートフォリオの最適化や新たなリソースを獲得するためのM&A人材の育成強化も進めている。

②デジタル技術の活用とデータ利活用の促進

緊急度 影響度 リスクマネジメントレベル
実践型デジタル⼈材 5 2 B
データコンテンツ利活用推進と基盤強化 4 3 B
オペレーショナルエクセレンスの実現 4 3 B
リスクの説明

デジタル技術(AIなど)とデータを活用するデジタル戦略の推進加速に向け、本社機能と各ビジネスユニットが一体となり、実践型デジタル人材の育成、事業におけるデータ利活用の推進、オペレーショナルエクセレンスの実現を継続して行わなければ、リコーグループの業績、成長に影響を及ぼすリスクがある。

リスクの対策

グローバルでの競争激化の中でレジリエンスを高めていくために、デジタル戦略の推進加速が重要であり、例えば以下のような施策の強化に努めている。

  • 人材ポートフォリオマネジメント強化による、実践型デジタル人材へのスキルアップの推進
  • データ利活用促進に向けた、データガバナンスルールの策定と推進
  • オペレーショナルエクセレンスの実現に向けた、基幹システム刷新のプロジェクトマネジメントおよび内製化の強化、生産性向上に向けたプロセスDX*1の実践範囲の拡大
  • *1
    プロセスDX:デジタル技術を活用し仕事やプロセスのリデザインをすること

③デジタルサービスの会社としてのR&Dプロセスの確立

緊急度 影響度 リスクマネジメントレベル
4 3 C
リスクの説明

デジタルサービスの会社として、マーケットイン型/オープンイノベーション型のR&Dプロセスにシフトできないことにより、技術投資における投資利益率の向上を実現できないリスクがある。また、AI応用などでのELSI*2対応力不足による企業信頼失墜・事業機会損失発生のリスクもある。

  • *2
    ELSI(Ethical, Legal and Social Issues):倫理的・法的・社会的課題
リスクの対策

R&D投資の注力領域への集中と、投資配分のガバナンス強化を進め、マーケットイン型/オープンイノベーション型のR&Dプロセスへの移行を進める。また、技術倫理についての推進体制のもと、倫理啓発活動に加え、価値創出プロセスにおける技術倫理活動など、さらなる強化を図る。

④情報セキュリティ対応強化

緊急度 影響度 リスクマネジメントレベル
NIST SP800-171準拠対応 5 3 C
セキュリティ対応 4 2 C
リスクの説明

デジタルサービスの会社への変革に向け、さまざまなデジタルサービスの活用・提供、自社業務のデジタル化の実践などを行っている。その上で、情報セキュリティを確保する体制・運用を重視し取り組んでいるが、以下のようなリスクがある。

  • NIST SP800-171 未準拠リスク
    サイバー攻撃の増加・高度化により、情報保護強化の高い水準を求められる状況にあり、米国政府はNIST SP800-171、日本政府は防衛産業サイバーセキュリティ基準(NIST SP800-171同等)を策定。それらの基準が民間企業との取引にも適用され始めている。未準拠の場合、情報保護に対する事業影響(企業ブランド価値の棄損やビジネス機会の喪失など)が発生する可能性がある。
  • プロダクトセキュリティリスク
    製品/サービスのセキュリティ対策不備と、その不備によりお客様環境などへの攻撃の踏み台として悪用されるなどのインシデントが発生する可能性がある。
    また、インシデント発生の脅威からお客様や企業を守るため、各国がセキュリティに関する法規制を強化しているが、法規制の変化に追従できないことによる制裁⾦の支払いや社会的信用の低下による事業影響が発生する可能性がある。
  • コーポレートセキュリティリスク
    巧妙化・複雑化するサイバー攻撃による、リコーグループ各社の業務システムの停止/誤作動や、データの改ざん/漏洩/破壊などの業務影響の発生により事業活動停止のリスクが想定される。
  • ファクトリーセキュリティリスク
    生産⼯程でのデジタル技術の利活用が進むことにより、サイバーセキュリティリスクも懸念され、生産の一部がセキュリティインシデントにより停止するといったリスクが想定される。
  • 個人情報保護など、データプライバシーリスク
    各国でデータプライバシーおよび個人情報保護に関する法律(改正個人情報保護法やGDPR*3など)が施行され、自国外の事象にまで適用(域外適用)されている。グローバルで個人情報/個人データを取り扱うにあたり各国の法律に抵触した場合、制裁⾦の支払いや社会的信用の低下による事業影響が発生する可能性がある。
  • セキュリティガバナンスリスク
    セキュリティガバナンスとは、情報資産を適切に管理・保護し、セキュリティリスクを軽減するための組織的な取り組みであり、経営主体の取り組み不備により不正アクセス、システム停止などのリスクが想定される。また、セキュリティガバナンスは自社のみにとどまらず、サプライチェーン企業(委託先など)を巻き込んだセキュリティ体制構築への取り組み不備、それに対する攻撃によりサプライチェーンが途絶えたり、滞ることに起因した、自社製品/サービスの供給の停止、顧客情報などの流出により事業影響が発生する可能性がある。
  • *3
    GDPR(General Data Protection Regulation):欧州の個人情報保護に関する規制
リスクの対策

各国、国策レベルで対策が求められてきている中、変化し続ける情報セキュリティ情勢を常に把握した上で、グローバルに活動拠点のあるリコーグループにとって適切な対策を検討・推進していくことを、最重要課題の1つと位置づけている。

  • NIST SP800-171 未準拠リスク
    世界中のお客様に対してセキュアな「製品・サービス」を提供するため、国際基準のセキュリティニーズに対応する。ワークフローをデジタル化してお客様へ付加価値を提供するなど、お客様の情報資産を守ることを目的とした「事業環境」の整備やモノづくりに取り組む。
    NIST SP800-171への準拠の考え方は、単にNIST SP800-171の要件に対応することだけではなく、お客様の情報資産を守ることを取り組みの目的の本質とする。お客様の事業環境において、お客様が守りたいと考える情報資産を取り扱う可能性がある「製品・サービス」をサイバー攻撃から守るという目的と、「製品・サービス」をお客様に提供するまでのバリューチェーンにおいて、取り扱う情報資産を守るという目的の2つがある。
    リコーグループではデジタルサービスを提供する事業者として、お客様の情報資産を第一に配慮したセキュリティ活動を行い、NIST SP800-171への準拠を目指す。
  • プロダクトセキュリティリスク
    セキュリティに関わる品質マネジメントを一層強化するとともに、発売済みの製品/提供中のサービスに対しても脆弱性の確認を行い、脆弱性が発見された場合に適切に対応する。そのために、セキュリティ問題の専用窓口の設置、製品の脆弱性対応ガイドラインの整備、各国法規制の変化への対応などの活動を実施する。
  • コーポレートセキュリティリスク
    セキュリティ情報サイトからの情報をもとに脅威を分析し、さらに保有するITシステムを常時監視することで、外部からの不正侵入、内部からの不正利用をいち早く検知し、インシデントの早期対応を行う。
  • ファクトリーセキュリティリスク
    リコーグループ各社の生産⼯場において、経済産業省の⼯場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドラインなどに基づき、各生産⼯場に関わるセキュリティリスクを適時評価し、継続的に対策検討・実施する。
  • 個人情報保護など、データプライバシーリスク
    個人情報取扱規程の改定や個人情報の取扱状況の調査・是正など、整備が進む各国の法律を踏まえた対応方針の策定と対策の実施を進める。
  • セキュリティガバナンスリスク
    経済産業省のサイバーセキュリティ経営ガイドラインなどの活用により、サイバー攻撃における経営視点での対応を成熟化させるとともに、サプライチェーンにおけるセキュリティリスクを低減する。

⑤人材の確保・育成・管理

緊急度 影響度 リスクマネジメントレベル
4 2 C
リスクの説明

デジタルサービスの会社への事業変革を成し遂げ、中長期的に成長を続けることは、人材に大きく依存している。特に将来の経営人材の育成を継続して行わなければ、リコーグループの業績、成長に悪影響を及ぼすリスクがある。

リスクの対策

前年度から次世代リーダー候補の定義を見直し、役職や年代、ジェンダーなどの切り口から課題を可視化できる形に改善し、その上で中長期的なリーダーシップパイプライン構築のための選抜研修・アセスメント・若手リーダーの育成などを包括的に進めている。
また、管理職研修も当年度一新し、自律を促す環境をつくるために必要な管理職の意識変革のための研修を国内リコーグループ各社*4の管理職に実施した。

  • *4
    リコージャパンは同様の研修を自社で展開しているため対象外

⑥ESG/SDGsの深化

緊急度 影響度 リスクマネジメントレベル
人権 5 2 C
環境保全 4 2 C
ESG情報開示 4 2 C
リスクの説明

ESG/SDGsへの対応は、リコーグループの事業活動に対して中長期的影響を及ぼすリスクであり、特に人権、脱炭素、厳格化が進む環境規制・規格への対応を重要なリスクと捉え、活動している。加えて従来、任意であったESG関連の情報開⽰がグローバルに義務化されつつあり法定開⽰化が進んでいる。
これらの対応を競合に遅れることなく進めなければ商談機会の損失など、ビジネスへの悪影響にとどまらず、社会的信用の失墜、ブランド価値の毀損など、会社に甚大な損害を与える可能性がある。

リスクの対策

以下の対応を強化している。

  • 人権対応として、RBA*5ベースのESGリスクアセスメントを全生産拠点に展開および重要サプライヤーのESGマネジメントを強化するとともに、人権デュー・ディリジェンスのプロセスを構築し活動することで、人権リスクの低減を進めている。
  • 環境保全対策として、中長期の脱炭素ロードマップと年間再エネ導入戦略を策定し脱炭素活動を展開、画像製品におけるさまざまな規制/規格の基準案に対する対応の検討を推進、また土壌地下水汚染に対する計画立案と確実な実施を進めている。
  • ESG情報開⽰規制に対しては、ISSB*6やCSRD*7などの国際開⽰基準にて求められている第三者保証に耐えうるESGデータ収集プロセスの整備を進めている。
  • *5
    RBA(Responsible Business Alliance):グローバルサプライチェーンにおける企業の社会的責任を果たすことを目的としたグローバルな企業同盟
  • *6
    ISSB(International Sustainability Standards Board):企業に対するサステナビリティ情報の開⽰基準を策定する国際機関
  • *7
    CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive):EU域内の大企業や上場企業に対するサステナビリティ情報開⽰規制

⑦地政学リスクへの適切な対応

緊急度 影響度 リスクマネジメントレベル
4 4 C
リスクの説明
  • グローバルで事業活動を行っており、各国・各地域における政治的・軍事的・社会的な緊張の高まりは事業に大きな影響を及ぼす。
  • 各国の法規制強化、国家間の牽制などの地政学リスクにより、ビジネス機会を損失するリスクなどが考えられる。
リスクの対策

予防・対応プロセスを強化している。各国の法規制情報収集の強化、重要部品別に複数仕入先の選定など、今後も円滑な事業活動を行うため、経営にて審議し、迅速かつ適切な対応に取り組む。また、米国新政権の政策や多様なリスクの連鎖が国際情勢に及ぼす影響について、短期的な視点とともに、中長期的な視点も含め、対応体制を整備している。

重点経営オペレーショナルリスク

①製品の⻑期供給遅れ・停⽌

緊急度 影響度 リスクマネジメントレベル
地震・噴⽕・台⾵ 3 2 B
リスクの説明

大規模地震、津波、洪水、サプライヤーの供給停止および地政学リスクによる不測の事態により、以下のような事象が発生し、ビジネス機会を損失するリスクが考えられる。

  • 部品供給の遅延や停止
  • 製品⼯場の製造の遅延や停止
  • 輸送機関の遅延や停止
  • 販売会社への供給遅延や停止
リスクの対策

リスク発生時を想定した以下の予防・対応プロセスを強化している。

  • 有事を想定した在庫の確保
  • 重要部品別に複数仕入先の選定または代替品の選定
  • 購買、生産などの領域ごとのアラートレベルの設定と運用
  • リモートワークなどの新しい働き方を想定したBCP訓練

加えて、机上訓練のみならず一定の実践を常態的に行っている。従来時間を要していた仕入先の状況確認を、ツールの導入で短縮した。今後も有効性の確認と改善を継続的に行う。

②国内外の大規模な災害/事件事故

緊急度 影響度 リスクマネジメントレベル
国内:地震・噴火 1 3 C
国内:風水雪害 5 1 C
国外:大規模な自然災害/事件事故 3 1 C
リスクの説明

国内外で発生する大規模な自然災害・事件・事故において、人的/物的被害が生じ、経営に著しい影響を及ぼすリスクを想定している。

リスクの対策

当該リスク対応において、以下のような対策を行っている。

国内

  • 災害発生時に適切な対応が図れる仕組みの構築および継続的な見直しを行っている。
  • 災害による被害の発生を防ぎ、万が一災害が生じた場合の被害を最小限におさえるために、国内のリコーグループ合同での災害対策訓練や事業所単位での防災訓練(夜間避難訓練を含む)、建屋の耐震対応や有事に使用する設備の点検・維持など災害に強い職場づくりに取り組んでいる。
  • 水害リスク対応として、大規模な水害発生時の復旧行動計画を策定し、計画に基づいた机上訓練や実地訓練を行っている。また、比較的高いリスクが想定される拠点に対する水害対策⼯事の実施、ならびに水害リスク情報の可視化ツールの運用を開始するなど、リコーグループ全拠点で水害対策の施策を展開するとともに、従業員の対応力向上を図っている。
  • 噴⽕リスク対応として、リコーグループ国内⽕山噴⽕(富士山を含む)ガイドラインを策定している。

国外

  • 海外の関連会社を対象とした危機対応標準を制定し、自然災害・事件・事故が発生した場合の、対応基本方針を定めるとともに、各組織の役割および責任を明確にしている。
  • 海外関連会社の重大な自然災害リスクを把握し、第三者の情報と差異があった場合は必要な対応を指⽰、危機発生時の報告ルートを確認、BCP構築・運用に課題がある会社の支援を実施するなど、海外関連会社の危機対応力を強化している。

③役員・従業員に関わるコンプライアンスリスク

緊急度 影響度 リスクマネジメントレベル
5 1 C
リスクの説明

コンプライアンス問題(法令違反、ハラスメント、社内ルールやリコーグループ企業行動規範に反する行動)が発生し、適切な対応がされなかった場合、社会的問題に拡大するリスクなどが考えられる。

リスクの対策

国内・国外

  • コンプライアンス遵守(心理的安全性が確保された組織⾵土の醸成や人権・ハラスメント問題を含む)のための教育を実施している。
  • コンプライアンス違反に関する相談窓口を設置している。
  • コンプライアンス違反の事例を共有し、適切な対処を学ぶ機会を設けている。
  • コンプライアンス違反を発見した際の相談・通報の啓発を行っている。

国内

  • マネジャー向けのコンプライアンス遵守・労務管理教育を実施している。
  • 労働関連法規改訂内容と対処の共有をしている。

④グループガバナンスに関するリスク

緊急度 影響度 リスクマネジメントレベル
5 1 C
リスクの説明

社内外の環境変化が激しい時代において、健全な成長を維持するためにグループガバナンスの強化が非常に重要であるが、本社のガバナンスが適切に機能していない場合、以下のようなリスクが生じる可能性がある。

  • 社内外の環境変化に伴う世論の動向や法規制の制改訂に対し、方針策定や対応が迅速かつ柔軟に行われない場合、倫理的な問題やコンプライアンス違反が発生するリスクがある。
  • リコーグループ各社のガバナンスの整備・運用状況、業務プロセスに対する本社の管理監督が不十分な場合、不正や不祥事が生じ、ブランドイメージや信頼性の低下、ひいては持続的な成長や企業価値の向上に対するリスクが高まる。
リスクの対策
  • 組織体制の検討時には、グループガバナンスのリスクを極小化するために、リスクに対して柔軟かつ迅速に対応できるよう、ガバナンス面の考慮をより強化する。
  • リコーグループ各社が全社方針のもとで自律的にガバナンスを整備・運用できるよう、本社および主管管理部門が連携し、各社固有の特徴やリスクマネジメントの成熟度に応じた適切な指導および管理監督を行う。特に、合弁会社であるエトリア株式会社については、参画企業の文化との融合とグループガバナンスのバランスを保ちながら、成長をさらに促進するための環境を整えていく。

(2) 事業領域固有の重要なリスク

①オフィスプリンティング市場における環境変化

緊急度 影響度 リスクマネジメントレベル
4 2 C
リスクの説明

オフィス向け複合機やプリンター市場において、リモートワークの増加やペーパーレス化に伴いプリント出力が減少し、業績に影響を与える可能性がある。

リスクの対策

既存のオフィスプリンティング事業の顧客基盤の維持・拡大に取り組み、社内プロセスはSCMの徹底効率化やオペレーショナルエクセレンスにより、さらなる収益性の向上を図っている。あわせてオフィスサービス事業においては、プロセスオートメーションとワークプレイスエクスペリエンスを中心に着実に成長を実現しており、オフィスサービス事業のストック収益の拡大を加速させることでオフィスプリンティング領域のリスクヘッジを進めている。
また、複合機を含むエッジデバイスの供給体制については、他社との協業を進めて最適な生産・開発体制を構築することで競争力のある製品を提供し、利益率の向上によるリスクヘッジを行っている。

②デジタルサービスの成長に向けたリソース確保

緊急度 影響度 リスクマネジメントレベル
4 2 C
リスクの説明

デジタルサービスの成長に向けてはコンサルティング・インテグレーションができるデジタル人材の確保が必要要件の1つとなっている。慢性的な人手不足を背景にしたIoTやAIを活用した業務改革の潮流はより一層強まっており、デジタル人材を確保する動きがより高まっているため十分に確保できない可能性がある。

リスクの対策

優秀なデジタル人材の流出防止および獲得のために、プロフェッショナル人事制度の構築などの人事制度改革を進めている。また、人的資本戦略を策定し、グループ全体の社員のスキルの底上げに加え、デジタルアカデミーやスキルアッププログラムの策定・実施を通じて、プロセスDXの実践人材やデジタルエキスパート人材の育成に努めている。

③商用印刷事業の成長リスク

緊急度 影響度 リスクマネジメントレベル
4 2 C
リスクの説明

リモートワークやペーパーレスの拡大により企業内の大量印刷需要の減少やプリント出力量の集約・統合により、商用印刷事業領域における企業内印刷事業の業績が下振れするリスクがある。

リスクの対策

企業内印刷事業での業績下振れリスクを低減するために、未開拓の欧米代理店や新興国の開拓を進めるとともに、事業ポートフォリオマネジメントの実施により今後も市場成長が見込まれる商用印刷事業の高付加価値領域やインクジェット技術・製品へのリソース投入を強化し、事業構造変革を進めている。

④サーマル市場の成長鈍化、収益性の低下

緊急度 影響度 リスクマネジメントレベル
3 2 C
リスクの説明

サーマル市場は世界的な人口増加に伴う消費財の増加により堅調に成長しているものの、コモディティ化が進行している。グローバルに事業を展開しているが、各地域の景気回復が遅れて成長が鈍化し、収益性悪化や過剰在庫・設備稼働率悪化となる可能性がある。

リスクの対策

市場動向のモニタリング体制を強化し、需要予測の精緻化と日常管理体制の強化を進めている。各地域の景気動向による需要の増減がある中で、グローバルの販売網・生産インフラを活用し、最適な地域での生産・供給オペレーションを実施することで業績変動リスクの最小化に努めている。
また、包装資材に直接印字するスマートパッケージング事業を拡大することにより社会課題の解決に貢献すると同時に収益の安定化を図っている。

(3) その他各機能領域のリスク

①のれん、固定資産の減損

緊急度 影響度 リスクマネジメントレベル
2 3 B
リスクの説明

企業買収の際に生じたのれん、事業用のさまざまな有形固定資産および無形資産を計上している。これらの資産については、今後の事業計画との乖離や市場の変化などによって、期待されるキャッシュ・フローが生み出せない場合、経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性がある。

リスクの対策

資産の取得に際して、投資⾦額および内容に応じた所定の手続きを実施し、投資対効果の検討などさまざまな点を考慮し実行の是非を決定している。また、外部への投資案件は、GMCの諮問委員会である投資委員会にて、財務・戦略・リスク視点での妥当性を審議し、GMCへ見解を上申している。決裁された投資案件に関して、同委員会が進捗モニタリングを定期的に行うことによりリスクへの対策を講じていく仕組みを構築している。

②繰延税金資産

緊急度 影響度 リスクマネジメントレベル
2 3 C
リスクの説明

税効果会計を適用し、将来減算一時差異および繰越欠損⾦などに対して繰延税⾦資産を計上している。繰延税⾦資産は、事業計画を基礎とした将来の課税所得に対して回収可能性を検討している。将来の課税所得の見積りが、現在の課税所得の見積りよりも低下した場合、繰延税⾦資産の回収可能額が減少し、繰延税⾦資産を減額することになり、経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性がある。

リスクの対策

繰延税⾦資産の評価にあたり、繰延税⾦負債の実現予定時期、将来の課税所得の見積りおよび税務戦略を考慮している。将来の課税所得の見積りに関しては事業計画を基礎として、各ビジネスユニットが業績の進捗をモニタリングし、計画の達成を阻む要因があれば、自律的かつ迅速に対応できる体制を構築している。

③知的財産権の保護

緊急度 影響度 リスクマネジメントレベル
2 1 B
リスクの説明

知的財産権を重要な経営資源と捉え、現在および将来の自社事業とそれを支える技術などの保護、差別化とその拡大のために、特許権、意匠権、商標権などの知的財産権を獲得しているが、競合他社が同等の技術などを開発して独自性が低下するリスクや、各国特許庁の審査で狙いどおりの権利獲得ができず十分な保護が得られないリスクがある。また、リコーグループが第三者の知的財産権を侵害するとして、第三者から販売の差し止めや損害賠償⾦の支払いなどを求める警告を受けるリスクや、訴訟を提起されるリスクがある。さらに、新規事業立上げで、他社との協業、共同研究や共同開発が活性化していることに伴い、知的財産権に関する契約が増えているが、当該契約でトラブルなどが発生すると、自社事業に悪影響を与えるリスクが大きくなる。

リスクの対策

特許などの出願前に先行技術調査を徹底するとともに、各国の知的財産に係る法律、審査基準やプロセスを把握し、知的財産権獲得の精度向上に努めている。また、自社製品・サービスを市場に提供する前に、第三者の知的財産権の調査と、自社製品・サービスと第三者の知的財産権との対比検討を徹底している。第三者の知的財産権を侵害するリスクがある場合、外部の弁護士や弁理士による鑑定、必要であれば設計変更、ライセンス交渉やライセンス取得を行い、第三者との係争リスクを低減している。
「知的財産権の保護」を業績に影響を及ぼすリスクとして重要視し、過去に発生した、知的財産権に関する契約トラブル事例を形式知化し、トラブルの予防とリスク低減をしている。

④製品品質・製造物責任

緊急度 影響度 リスクマネジメントレベル
2 2 B
リスクの説明

製造・販売する製品に、以下のような事象が発生することで、お客様の信頼や社会的信用を失墜させ、企業ブランドや製品ブランドが毀損され事業継続が困難になるリスクが考えられる。

  • 重大な安全性問題(人損・焼損)
  • 安全・環境法規制問題
  • 品質問題の長期化
リスクの対策

「製品品質・製造物責任」に対する予防・対応プロセスを強化している。

  • 機器の信頼性・安全性の向上に向け、故障・事故が生じるメカニズムの分析精度を高め、問題の再発・未然防止策を開発過程に反映し、リスク低減につなげている。
  • 万が一、問題が発生した際に市場対応が迅速かつ確実に行われるために、体制を整備している。
  • 各国における安全・環境法に準拠した製品をお客様に提供するため、現地と密に連携をとり適切な標準・ガイドの制定、定期的な見直しを実施している。

⑤公的な規制への対応(輸出入管理)

緊急度 影響度 リスクマネジメントレベル
5 3 B
リスクの説明

事業活動を行う中で、以下のような要因により会社に甚大な損害を与えるリスクがある。

  • 輸出入関連法違反に対する輸出停止措置などの行政制裁による生産・販売への影響、社会的信用の失墜による取引の機会損失、罰⾦や刑事罰
  • 国際的有事などの外的要因に起因する各国輸出規制法違反による罰⾦や刑事罰
リスクの対策
  • 代表取締役社長執行役員をトップとし、専任組織である輸出入管理統括部門によるグループ輸出入管理委員会体制によるガバナンスの強化を行っている。
  • リコーグループ役員および社員への定期的な教育、事業部門およびリコーグループへの輸出入管理に特化した内部定期監査、関連部署への法令改定情報の迅速な周知を行っている。
  • 専任部隊による輸出前の該非判定・顧客審査含む必要審査の実施による法令の厳格な遵守などを行っている。

⑥公的な規制への対応(独占禁止法/競争法)

緊急度 影響度 リスクマネジメントレベル
5 2 B
リスクの説明

事業活動を行う中で、独占禁止法および競争法の違反が発生した場合、課徴⾦納付命令などの行政当局による処分や刑事罰、官公庁との取引停止、社会的信用の失墜によるビジネスへの悪影響など、会社に甚大な損害を与えるリスクがある。

リスクの対策

独占禁止法および各国競争法の遵守徹底のため、各地域の法務部門が主導し、各国競争法の遵守、教育活動および発生時対応の強化に努めている。

⑦公的な規制への対応(環境)

緊急度 影響度 リスクマネジメントレベル
5 2 B
リスクの説明

事業活動を行う中で、各種環境関連法の違反が発生した場合、行政処分などによる生産への影響、課徴⾦の負担、刑事罰、社会的信用の失墜やブランド価値の毀損によるビジネスへの悪影響など、会社に甚大な損害を与えるリスクがある。

リスクの対策

環境マネジメントシステムを構築し、定期的なアセスメントによる環境関連法の遵守徹底とともに、規制変化などのタイムリーな把握・対応を行っている。また、M&Aにおいても環境デュー・ディリジェンスを適切に実施しリスクの未然防止に努めている。
収集した環境パフォーマンスデータを積極的に開⽰するとともに、主要データに関しては第三者検証を受けるなど、透明性・信頼性の確保に努めている。

⑧為替レートの変動

緊急度 影響度 リスクマネジメントレベル
4 3 C
リスクの説明

生産活動および販売活動の相当部分を日本以外の米国、欧州などその他地域で行っており、事業活動において以下のような為替レートの変動による影響を受ける。

  • 海外⼦会社の現地通貨建ての業績が各事業年度の平均レートを用いて円換算されていることによる、連結損益計算書および連結包括利益計算書への為替レート変動
  • 現地通貨建ての資産・負債が各決算日現在の為替レートを用いて円換算され連結財政状態計算書に計上されることによる、資産・負債額への為替レート変動
リスクの対策
  • 為替変動に関して、米ドル、ユーロおよび円などの主要通貨の短期的な変動の影響を最小限に抑えるため、⾦融機関などと為替予約などのヘッジ取引を実施している。また、ヘッジ取引を行うことのできる会社または組織は限定されており、それらは財務ルールとして徹底されている。
  • リコーグループ全体として決済におけるネッティングを最大限に行うことにより、為替リスクを最小化している。
  • 海外⼦会社の資産・負債の通貨マッチングを実施している。

⑨確定給付制度債務

緊急度 影響度 リスクマネジメントレベル
2 2 B
リスクの説明

確定給付制度債務および年⾦制度の資産に関し、一定の会計方針に基づいてこれらの給付費用を負担し、政府の規制に従って資⾦を拠出している。
現時点では、直ちに多額の資⾦は不要であるが、株式や債券市場などの予測し得ない市況変動により制度資産の収益性が低下すれば、追加的な資⾦拠出と費用負担が必要になるリスクがある。

リスクの対策

政府の規制や人材戦略・人事制度を踏まえ、適宜制度の見直しを検討・実施している。

緊急度、影響度、リスクマネジメントレベルの詳細については、リスクマネジメント「重点経営リスク」の決定プロセスを参照ください。

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