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イベントレポート AI共生時代へ。成果を生むプロセス起点のDXとは? ガートナー アプリケーション・イノベーション&ビジネス・ソリューション サミットで、実践に基づくリコーのAXを提案

2026年7月17日
  • AI
  • DX

※所属・役職はすべて記事公開時点のものです。

2026年6月17~18日、東京・恵比寿で開催された「ガートナー アプリケーション・イノベーション&ビジネス・ソリューション サミット 2026」。株式会社リコー DX本部 本部長の浅香孝司氏は、「AI時代の大企業変革をどう回すか?~リコーが直面したAXの壁と突破のアプローチ~」をテーマに講演した。

DXや生成AIを導入しても期待した成果につながらない。浅香氏は、その要因はAIそのものではなく、AIを前提としていない業務プロセスにあると指摘。そんなAI活用に課題を抱える参加者に向けて、AIの効果を最大化するプロセス起点のAX(AIファーストを前提とした業務プロセス変革)について、リコーの社内実践事例を交えて紹介した。

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DX・AI導入の成果創出に、リコーはどう向き合ってきたのか

1977年よりオフィスオートメーションを提唱してきたリコーグループは、2020年に「デジタルサービスの会社」への変革を宣言。「“はたらく”に歓びを」の実現に向けて、DXやAI活用を進めている。

講演の冒頭で浅香氏は、日本企業のDX・AI導入を取り巻く現状に触れた。ガートナーの調査では、日本の企業は、世界の企業と比べて重要なデジタル施策においてCEOが期待する成果を出せていないとの見解を発表している。また、生産性向上を目的とした生成AI導入でも、期待水準以上の成果を実現できる企業は限定的だという。

※ 出典:Gartner®, Press Release, 2026年4月23日

リコーは早くからDXやAXの前提となるプロセス整備の重要性に着目したBPM活動を実践し「プロセスDX」として体系化。その出発点は、オフィスワークのストレスを生む「3M(面倒・マンネリ・ミスできない)」をデジタルの力で取り除くという考え方だ。近年は、現場でのデジタル活用を支援する「プロセスDX CoE(Center of Excellence)」の設立や、ビジネスアナリストやシチズンデベロッパーの育成といった取り組みで、現場実践型のプロセスDXが定着してきている手ごたえを得ている。

「3M」やプロセスDXについて詳しくはこちら

AI ReadyプロセスでRoAIを最大化

しかし、現場主導の業務変革には落とし穴もあると浅香氏。「話題のAIを各現場がバラバラに投入すると、前後プロセスへの負担のしわ寄せやAIコスト増加といった弊害が発生する」と指摘した。「場当たり的なAI導入ではなく、プロセスを最適化した上で適所適材なAIを導入する『エンドツーエンドのプロセス最適化+AI導入』がRoAI(Return on AI:AI投資利益率)を最大化します」と話した。

場当たり的なAI導入では前後プロセスへのしわ寄せやコスト増が発生するのに対し、プロセスを最適化したうえでAIを導入する『エンドツーエンドのプロセス最適化+AI導入』でRoAIを最大化できることを示す図

では、RoAI最大化には、具体的にどのような方法が有効なのか。浅香氏はリコーが社内実践で高い効果をあげている方法として、①AI Readyプロセス、②人とAIの協働設計、③適所適材なAI投入という3つのアプローチを紹介した。

CIOが抱える3つの悩み(AIの効果が出ない・AIに任せられない・コストが気になる)に対する解決アプローチとして、AI Readyプロセス、人×AI協働設計、適所適材なAI投入の3つを示す図

AI Readyプロセス

「AIを導入しても成果につながらない」。こうした課題を解決するために重要なのがAIを前提に業務プロセスを設計する「AI Readyプロセス」だ。

たとえば、リコーの購買部門のP2P(購買から支払い)業務では、AI活用を前提にしたプロセス標準化と自動化範囲を拡大したエンドツーエンドのプロセスオーケストレーションを実現。その上で、膨大なトランザクションを要するSOR(System of Record)周辺にデータ処理で効果を発揮するAIの導入でRoAIを最大化。業務時間短縮の効果をあげているだけでなく、業務担当者の負荷や3Mを削減している。この標準化されたプロセスにAIを的確に組み込むことが、システム運用においてメリットの多い、クリーンコア活用にもつながるという。

購買から支払いまでのP2P業務のBefore/After比較。業務担当者が各システムに個別アクセスしていた非効率な状態から、BOATによるエンドツーエンドのオーケストレーションで標準化し、SOR周辺の膨大なトランザクションをAIで処理する仕組みを示す図

リコー社内のプロセスオーケストレーションに活用されているのが、業務プロセス改善プラットフォーム「Axon Ivy」だ。Axon Ivyは、BOAT(ビジネスオーケストレーション&オートメーションテクノロジー)ツールに位置付けられ、すでに世界750社以上の企業で採用。日本の企業に向けても今後リリース予定だ。

人とAIの協働設計/適所適材なAI投入

重いデータ処理はAIに委ねられるものの、実際の業務には、総合的な判断に基づく正確性や可監査性が求められる。「実際に、AIの信頼性やガバナンス面に不安を抱えている企業も多い」と浅香氏は指摘する。そうした課題も解決しながらAIの効果を最大化するのが、業務プロセスの循環に人を最終責任者として組み込む「Human-in-the-loop」というアプローチ。つまり、人とAIの協働体制を築く方法だ。

プロセスDXをバージョンアップするAX進化モデル。AIアシスト(AX1)、AIオーケストレーション(AX2)、AIトランスフォーメーション(AX3)の3段階を示す図

浅香氏は、人×AIの協働設計の事例として、ラグビーチーム「リコーブラックラムズ東京」の請求書処理の高度化を紹介した。同チームでは、請求書の収集や勘定科目の判断に多くの手間がかかっていた。そこで、請求書を一元管理するアプリを開発し、AI-OCRとAIエージェントを活用。例えば、「Black Rams Tokyo'47 CLEAN UP Black」という商品名からAIエージェントが「キャップ」と判断し、購買システムに入力すべき勘定科目を適切に選択する。人の作業は最終確認に集約され、担当者の負荷軽減と処理時間の短縮につながったという。

またAIには、さまざまなタイプや得意とする処理がある。「それらの特徴を正しくとらえ、人とAIが協働するプロセスの適切な箇所に最適なAIを活用することで、RoAIが最大化します。可視化しにくいAIコストの問題も、適所適材かつ説明可能な業務プロセスにAIを使うことで解決できます」と浅香氏は続けた。

社内実践の成果をお客様の価値創出につなげていく

リコーでは、業務プロセスの可視化や最適化の工程にもAIを活用している。対話からプロセスを生成する「プロセスモデリングAI」や、プロセスDXを支援する「プロセス最適化コンサルAI」によって、ビジネスアナリストの業務を大幅に効率化。また、Axon Ivyの開発支援機能「Smart Core」や、プロセスにAIエージェントを直接組み込める「Smart Workflow」を活用し、プロセス設計から実装までのスピード向上を図っている。「ビジネスアナリストを育ててきたからこそ、その能力をAIによりさらに拡張し、生産性を向上させたい。AI Readyなプロセスをつくり、実装までのスピードを速くすることで効果が生まれるタイミングを前倒しすることができます」と浅香氏は語った。

リコー社内で効果があがっているこれらの方法のベースには、着実に積み重ねてきたプロセスDXがある。浅香氏は「プロセス最適化によるAI Readyな土台があることで初めてRoAI最大化が実現できる」と強調した。

最後に浅香氏は、「日本企業の業務プロセスは、きめ細やかで複雑ですが、それを丁寧に扱ってきたことが日本の強みでもあります」と語る。業務プロセスを整備し、人とAIが協働する働き方へ進化させることが、AI共生時代の競争力につながるという。「業務プロセスを整備することで、AI共生時代の働き方をバージョンアップしていく。その先に、『“はたらく”に歓びを』があります」。浅香氏はそう締めくくり、プロセス起点でDXを進めることの重要性を改めて示した。

リコーはこれからも、「クライアントゼロ」としてのチャレンジを重ね、社内実践の成果を顧客の価値創出へとつなげていく。

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