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製品・取り組み

360°画像から広がる無限の可能性。リコーのデジタルサービス「RICOH360」が目指す世界とは?

目次

お客様のワークプレイスをデジタルのチカラで変え、生産性向上や効率化を図り、はたらく人の創造力を高めることを支援するリコー。はたらくに寄り添うリコーが提供するデジタルサービスのひとつが、今回紹介するハードウエアとデータを活用した空間コミュニケーションサービス「RICOH360」だ。

RICOH360の特徴や世界にもたらす価値、そしてRICOH360によって実現したい未来について、プロジェクトを主導するSmart Vision事業センター・Sales&Promotion室の稲葉章朗室長と、360°カメラ「RICOH THETA」を担当するSmart Vision事業センターの藤木仁副所長に話を聞いた。

世界初*の360°カメラと独自のデータ技術の連携で新たな価値を提供

*:コンシューマー製品において、水平方向や半天球だけでなく、撮影者を取り巻く空間全てをワンショットでキャプチャーできる点において(2013年10月時点。当社調べ)

RICOH360とは、360°の画像データを活用した空間コミュニケーションを提供するプラットフォーム。サービスの中心は、全天球イメージをとらえる世界初のカメラ「RICOH THETA」だ。THETAで撮影した360°の画像・動画データとアプリケーションの連携によって、ビジネスの効率化や、一般消費者への付加価値の提供を実現している。物件や宿泊施設を360°画像を使ってユーザーに提案したり、施工現場を確認・管理したりと、さまざまな業界で活用が進んでいる。

2013年にRICOH THETA販売開始、2014年にデータサービス第一弾である「THETA360.biz」開始と、元々ハードウェア事業とデータサービス事業を進めてきていたが、グローバルでの360需要の高まり受け、約2年前よりハードウェアとデータサービス事業を統合したRICOH360ブランドを打ち出した。

リコーが360°データを活用したビジネスを始めた背景を、Smart Vision事業センター・Sales&Promotion室の稲葉室長はこう語る。

Smart Vision事業センター・Sales&Promotion室 稲葉章朗室長

「RICOH THETAのビジネス活用が進む中で、リコー独自の画像処理などのデータ関連技術と組み合わせることでよりユーザーにとって使い易い付加価値を提供するため、RICOH360ブランドを立ち上げました。強みであるハードウェアとクラウド・ソフトウェアを組み合わせたSaaS+Boxのビジネスモデルでグローバルに通用する事業を作らなければならないという課題意識や、ニューノーマルに応じた企業のビジネスのあり方をサポートする目的も、背景にありました」(稲葉室長)

ビジネスでの使いやすさを追求した最新モデル「THETA X」

RICOH360プロジェクトが始まる前、リコーは、THETAというハードウエアとデータサービス、そしてワークスタイル改革やビジネスを支援するアプリケーションをそれぞれ提供していた。これを連動させたビジネスモデルが、「RICOH SaaS + a Box」構想だ。

「360°の空間画像で物件の魅力を伝えたり、効率化を実現したりといったニーズに応えるためには、デバイスやアプリケーションを別々に提供するだけでは不十分。ユーザー起点(UX)で自社サービスを見直して本当にお客様にとって使い易いモノにする事が最重要であり、リコーの高い技術力を生かしたデバイス、アプリケーション、データサービスを連携させることで、世界に新しい価値を提供していくべきだと考えました」(稲葉室長)

RICOH THETAは、一度のシャッターで、撮影者を取り囲む360度の空間すべての画像・動画を撮影できるカメラ。もともとは一般ユーザーが旅行やレジャーなどで活用する用途としてリリースされたが、発売後、ビジネスシーンでも活用が進んだ。

「RICOH THETA X」は、使いやすさと高い再現性を追求した最新モデルだ。その主な特徴を、Smart Vision事業センターの藤木仁副所長はこう語る。

Smart Vision事業センター 藤木仁副所長

「THETA Xが目指したのは、ビジネスでの高い利便性です。これまでのモデルはスマートフォンとつなぐ必要があり、スマホとTHETAを持って撮影すると両手がふさがってしまうため、ビジネスシーンで使いにくいという課題がありました。THETA Xは液晶画面を搭載していて、設定・撮影から画像確認・データ保存までが1台で完結しますし、スマホと似た操作性で感覚的に使えます。11k(6,000万画素)に高めた静止画や本体での動的つなぎ処理で後処理の必要の無い動画撮影などの付加機能で、より簡便でリアルな360°画像や映像を撮影できるのが特徴です」。

THETA X

リコー独自の光学技術と、用途に合わせた最適なモジュールを実現する技術が生んだTHETA。さらに最新モデルのTHETA Xは、液晶での操作や使い勝手を追求するため過去機種の資産をほぼ引き継がず、新たな開発が大部分であったと藤木副所長は語る。

THETAを実現した光学技術に加えて、最適なクラウドを構築するエンジニアリングメンバー、世界から集めた画像データのAI解析など、リコーの英知を集結して生まれたRICOH360。「さまざまな部門での研究結果や技術力が活用されています。リコー全社で今、横断的な連携でビジネスを実現する流れができつつあります」と稲葉室長は言う。

不動産、建設業のビジネスを活性化させる360°データソリューション

RICOH360の具体的なソリューションのひとつが、360°コンテンツを制作・公開できるサービス「THETA 360.biz」だ。撮影した360°画像をアップロードするとAIが明るさを補正し、空間画像を作成。不動産の購入や旅行を検討しているユーザーが、物件や旅行先のホテルをリアルな画像で内見できるため、不動産会社や旅行会社、中古自動車販売会社などで活用が進んでいる。

左が撮影画像、右がAIによる明るさ補正後の画像

グローバル展開を想定して展開されたのが、クラウドサービス「RICOH360 Tours」だ。THETAとアプリを使い高画質なプロモーション動画「360°パノラマツアー」を制作、オンラインに公開できる。部屋にCGで家具を配置して生活環境をイメージできる「AIステージング」や、間取り図の自動作成など、役立つ機能を備えている。

「AIステージング」で、バーチャルな家具をAIが自動配置

「360°パノラマツアー」からは間取り図も作成できる

「THETA 360.biz、RICOH360 Toursともに、お客様から非常に高い評価を得ています。解約率1%未満という数字が示すとおり、ほとんどのお客様に、導入後も継続して使っていただいています。オンライン商談が一般化したコロナ禍では特に利用が増え、アメリカでの導入実績が前年比400%という数字も。あまりの反響の大きさに、リコー全社がざわついたほどです(笑)」(稲葉室長)

また、建設業界の生産性向上に寄与するクラウドサービスが、「RICOH360 Projects」だ。建設業界の業務は、毎日、作業員が現場を巡回したり、図面通りに工事が進行しているか人が目視で確認したりと、人手に頼る部分が多い。今後の労働人口の減少や、2024年4月に始まる時間外労働の上限規制適用に備えた生産性の向上が、業界全体の課題だ。

RICOH360 Projectsは、現場で撮影した360°画像を使って作業を効率化するツールだ。遠隔地からの現場の閲覧や、AIによる進捗状況の解析、指摘事項などの書き込みなどの機能で、現場への訪問回数や労働時間の削減が実現できる。導入した大手建設会社では生産性向上の成果に加えて、THETAやアプリケーションの使いやすさが評価されている。

「忙しい建設現場の社員の方々にとって、簡単に使えることが重要。今後も現場の方の声を聞き、建設業界での本格的な普及を目指していきます」(稲葉室長)。

「RICOH360 Projects」での建設現場の共有画面イメージ

RICOH360には人々のアイデアを活性化させる力がある

各所でワークスタイルの改革やサービスの質向上に寄与するRICOH360。360°画像の認知が広がる中で、他業界で生まれるアイデアから未来が拓けると、藤木副所長は語る。

「我々の想像がつかない用途まで可能性が広がるのが、360°ビジネスの真の価値です。ロボットやドローンにTHETAをつけるところから、ザトウクジラに取り付けその生態調査に利用されたりと、様々な業界で生まれるアイデアに驚きます。JAXAとの共同プロジェクトで、THETAは宇宙にも行っているんです。国際宇宙ステーション(ISS)で撮影された360°写真も公開しています。THETAは、いろいろな人のアイデアを活性化させる力があると日々、実感していますね」(藤木副所長)

「RICOH360プラットフォームは、それ自体に色がついていないのが魅力」と稲葉室長も言う。「さまざまなビジネスに携わる方が、360°画像を起点に、災害現場の復旧や医療分野での活用など、各々の分野での使い方を想起してくださるんです。無限の可能性を持つ事業だからこそ、これからも、プラットフォーマーとして幅広いシーンでの使いやすさを追求していきたいですね」(稲葉室長)。

また、360°画像の普及により、世界に新しい視点を提供できるのではないかと藤木副所長は考える。「今、物事の一部分が切り取られることが多くて、それが社会の分断や混乱を生むこともあると思います。それに対してTHETAは、自分を取り囲む360°、すべて見せてくれる。切り取らない良さというのもあると私は思っているんです。たとえば、ISSからTHETAが撮影した360°画像を見ると、地球のほうは明るいですが、反対側は真っ暗です。世界には明るい面があれば違う面がある。この事業を通して、切り取らないことで生まれる気付きを社会に与えられるのでは、と思うようになりましたね」。

RICOH360をプラットフォームとして定着させたい

RICOH360は、SNSを通じたユーザーとの交流など、リコー社内でも新しい取り組みを行う事業だ。「RICOH360は周りを巻き込む力があるプロジェクト。今後も、360°画像を起点にしたデータビジネスの拡大を目標にチャレンジをしていきたい」と藤木副所長は言う。

RICOH360の立ち上げから携わっている稲葉室長は、これまで歩んできたキャリアもふまえて、リコーがデータビジネスに取り組む意義を語ってくれた。

「立ち上げた頃は、社会的にもデータビジネスやSaaSビジネスは今ほど重視されていませんでした。シェアリングエコノミーとしての価値の追求や、海外での展開を見据えた開発など、難しい局面も外部の知見を借りながら乗り越えてきたので、個人的にも、データビジネスが重視される今の状況は嬉しいですね。ゴールが見えにくいビジネスも形にすることで、会社も私たちも成長を続けられる。社内外のアイデアも活性化する今、改めてリコーがデータビジネスに取り組む意義を実感しています」。

THETAというハードウエアやアプリケーションの普及に加え、今後の課題は、「RICOH360をプラットフォームとして定着させること」と稲葉室長。「データソリューションは今やリコーのビジネス軸のひとつ。今後も、360°画像を起点とした世界のデータビジネスの活性化を目指していきたいですね」。

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