※所属・役職はすべて記事公開時点のものです。
ダレン・メナブニー氏は、日本で働くなかで外見や行動、考え方といった他者との違いを強く感じること、また、違うことで目立つと感じることがある。北アイルランドで生まれ、トロントで育った彼は、東京でMBAを取得した後、11年前にリコーに入社した。現在、メナブニー氏は従業員エンゲージメントのグローバルリーダーとして豊かな経験を活かしている。
「トロントはおそらく世界で最も多様性のある都市の一つです。人口の50%以上がカナダ国外の出身です」と、彼は語った。「私がそこで育った時、友人も結婚を通じた親族も、同僚も、世界中のどこから来た人たちでも普通に感じました。それが当たり前だったんです。」
「日本に来たとき、やや一様な社会だと感じましたが、多文化社会での生活を通じて自身が見てきたことや経験してきたこと、多様性のもたらすメリットを共有したいと思うようになりました。」と彼は語る。
リコーにおいて、多様性、公平性、包括性(DEI)を推進する役割は主にグローバルDEIカウンシルが担っている。このカウンシルは、4か月間の準備を経て2023年3月に正式に設立されたもので、代表取締役 社長執行役員・CEO大山 晃、コーポレート執行役員兼CHRO 人事総務部部長長久良子、リコー・ラテンアメリカの人事部門VPローナ・ヘルナンデスを含む12名のメンバーで構成されている。また、地域カウンシルのメンバーや個別プロジェクトに応じて加わるメンバーによって補完されている。
メナブニー氏はカウンシルのメンバーも務めており、DEIが長年にわたりリコーの重要な理念の1つであることを踏まえつつ、世界中の80,000人の従業員のニーズに最も効果的に応えるためには、グローバル規模のパネルを設置することが必要だと説明する。
「グローバルDEIカウンシルの主な役割は、DEIに関する全体的な優先事項と戦略を策定することです。これには、グローバル全体での基本的な方針や地域ごとの優先事項も含まれます」とメナブニー氏は語る。
カウンシルが最初に行った決定の一つは、以前の「グローバルダイバーシティ&インクルージョンカウンシル」という名称に「エクイティ(公平性)」を組み込んだ新しい名称に変更することだった。それに合わせて、グローバルDEIカウンシルでは意図的に、CEOをはじめとするあらゆる階層のメンバーを集めるだけでなく、例えばマーケティングや営業といった部門の従業員も加えることで、機能面での多様性を確保した。
三つ目の優先事項は、独立して活動するものの、進捗状況をカウンシルに報告する責任を持つグローバルワーキンググループを設立することである。最近では、1年間のプロジェクトとして公平性を推進するワーキンググループがあったほか、来年3月の国際女性デーに向けた新たなプロジェクトが始まったところだ。
「これらのワーキンググループには大きな熱意が見られます。参加者からのフィードバックで最も多い肯定的なコメントは、『意見が聞き入れられている』、『自分が受け入れられていると感じる』というもので、これは非常に重要なことです」とメナブニー氏は語る。
その結果として、良い波及効果が生まれていると語るのは、アトランタを拠点に27年間リコーで働き、現在はリコーUSAで人事部門のVPを務めるマイケル・ジョーンズ氏である。
「従業員が会社のことを『従業員を尊重し、大切にしている』と感じると、期待以上の成果を出そうとしたり、会社のために進んで努力しようとする意欲が高まります。」と彼は語る。
「従業員の意欲向上の効果は、主に社内外の顧客サービスやエンゲージメントの場面で顕著に現れます。」
リコーの包括性への取り組みは、グローバルDEIカウンシルのメンバーでもあるジョーンズ氏に誇りと自信を与えている。
「多様性に富むメンバーが、それぞれの視点でイノベーションを共有し、建設的なフィードバックを提供する意欲を持ち、また力を得ています。」と彼は語る。
「このことが会社にとって、卓越性を追求する強力な文化、士気の向上、そしてもちろん誰もが成長できる素晴らしい職場環境につながっています。特に印象深いのは、リコーとそのチームメンバーが創業の理念—『人を愛し 国を愛し 勤めを愛す』—を実現する中で達成した行動や成果について、外部から予期しない称賛を受けたときです。従業員はリコーのDEIイニシアチブに対して強い誇りを感じています。」
「DEIに真剣に取り組み、女性リーダーの育成と昇進において、上級管理職クラスでの女性の活躍が着実に進んでいる会社で働けることを誇りに思います。」
と語るのは、欧州のグローバルDEIカウンシル議長であり、EMEA地域でディレクターを務めるソフィー・コックス氏である。
「LGBTQ+やニューロダイバーシティ、更年期支援など、関心の広がりを反映した新しいプログラムが次々に始まっています。」
「私は、これがステークホルダー(顧客、パートナー、サプライヤー)に対して、より良いブランドイメージを形成する助けとなっていると考えています。」と彼女は語る。
「社会に対して積極的に貢献し、変革を共に推進することが大切です。」と彼女は付け加える。コックス氏は、リコーの2回目の面接でリコーヨーロッパのCEOニコラ・ダウニング氏と出会い、感銘を受けたことを振り返る。
「女性の経営層に会えることは珍しく、とても刺激的でした。そのミーティングを終えたとき、リコーという会社に非常に感銘を受けただけでなく、自分のキャリアや成長の道筋にも前向きな気持ちになりました。彼女が成功し、素晴らしいロールモデルであったからです。」
そして、彼女はそれが他の従業員にも反映されていると感じている。
「従業員は、従業員ケアおよびウェルビーイングの取り組みが本物であるか、あるいは表面的なものかを感じ取ることができます。」と彼女は語る。
「本物であれば、それが従業員のモチベーションやコミットメント、会社への忠誠心を生み出します。人々はより幸せを感じ、会社の方向性や目標に積極的に関与し、最高のパフォーマンスを発揮できます。これは、個人と会社双方のパフォーマンスにとってwin-winの状況です。」
現在、コックス氏は国際女性デー、プライド月間、黒人歴史月間、国際障害者デーに関連するウェビナーやイベントの制作や運営に携わっている。また、ブログや動画でのコミュニケーション支援を手掛けるほか、顧客やパートナーとのディスカッション、新しい人事ポリシーの提案にも取り組んでいる。さらに、「Mission Include」(複数企業によるグローバルメンタリングプログラム)では、メンターとしても活動している。
「グローバルDEIカウンシルの取り組みや、それに関連するプログラムやプロジェクトに参加した人々から、驚くほど多くのポジティブな反応が寄せられています。」と彼女は付け加える。
「オフィスの廊下で私に『職場で自分らしくいられるようになった』、『自分が認められ、支えられていると感じ、仕事により充実感を持っている』と話してくれました。大きな一歩だと感じています。」
メナブニー氏も、年に一度、会社全体で実施される「グローバル従業員調査」を通じたフィードバックが、カウンシルの方向性にとって重要だと同意している。
「DEIに関する従業員の声を反映させるため、具体的な質問を調査に盛り込みました。例えば『職場で平等な機会があると感じるか』や『自分らしくいられると感じるか』といった内容です。その結果をカウンシルの業務の一環として深掘りして分析したところ、従業員がDEIをどう見ているかについて、95%が肯定的な回答を示しました。
残りの5%の声は、さらに多くの施策を求めるものであり、DEIへの反対意見ではありませんでした。」
メナブニー氏は、自身の経験を活かし、多様なスタッフのニーズに適したリコーのDEI施策を構築することに注力している。
「人生で初めて、自分が多数派ではない状況で生活したことが、他者への共感力を高めるきっかけになったと思います。他の人が理解を深められるよう支援する必要性を感じました。」と彼は語る。
「ここ日本では、例えば異なる背景を持つ人々をもっと包摂的に受け入れる方法について考えることかもしれません。そのメリットを実際に見てきましたし、それを日本だけでなく、グローバルなリコー全体に広げて、より効果的なチーム作りを世界中で実現したいと考えています。」