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2025年01月

ウェビナー「リコーがGENIACに採択された理由とその先にある働き方の未来」

リコーの生成AIへの取り組みと技術を徹底解説

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最新AI技術を活用したDX実現のための価値共創拠点 RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE TOKYO(以下、RICOH BIL TOKYO)では、2024年12月17日、生成AIビジネスとリコーの取り組み全般についてのウェビナー「リコーがGENIACに採択された理由とその先にある働き方の未来」を開催しました。

本イベントでは、生成AIビジネスによって起こり始めた社会の変化について、その変化を支えるためにリコーが開発したマルチモーダルLLMが、経済産業省の国内生成AI開発力強化プロジェクト「GENIAC」に採択された理由と技術的観点、リコー社内のAI活用事例とAIエージェントが活躍する未来まで等々、6名の登壇者を迎え2時間にわたり幅広くお話させていただきました。

第一部:GENIACに採択されたリコーの活動の全貌

リコー AIインテグレーションセンター 所長 兼デジタル技術開発センター 所長 梅津 良昭

第一部では、リコー AIインテグレーションセンター 所長 兼デジタル技術開発センター 所長の梅津より、生成AIにおこる変化とリコーの取り組み、ソリューションの全体像をご紹介しました。

リコーは、AIエージェントが日常的に利用され、多くの人により創造的なはたらき方が浸透していく世界観を描いており、その実現のため以下のような技術開発を進めています。

  • ● 現在、OpenAIやGoogleのGeminiなどの生成AIサービスが企業でも使われ始めている。しかし、独自データの追加学習ができなかったり、機密情報を出せないといった課題があるため、自由にカスタマイズができるオープンソースのLLMを活用することが世界的に広がってきている。

  • ● リコーはそのオープンな仕組みを利用してGPT-4と同等レベルの高性能な日本語LLM(700億パラメータ)を開発し、2024年9月に発表した。この技術で企業内のデータを学習し、GPT-4と同等レベルのプライベートLLMを構築、提供している。

  • ● 企業内の情報を取り入れることのできる安全なプライベートLLMを作るにも、適切な学習データが必要になる。日本企業にはナレッジが集約されてはいるものの、学習データには不向きな、複雑な図表を含んだドキュメントが多く存在している。リコーは種類の異なるデータを処理できるマルチモーダルLLMの中でも「ドキュメントの文脈を理解したデータ化」を可能にする技術に取り組んでいる。この技術が日本企業の課題解決に寄与するということで、GENIACに採択された。

  • ● これらの基盤技術をもとにして、業務で活用できるAIソリューションの提供が始まっている。マニュアルなどの業務文書活用であればRAG(Retrieval Augmented Generation、大規模言語モデルであるLLMを利用する検索拡張生成技術)を使った「デジタルバディ」など。

  • ● 誰もが自分のためのAIエージェントを作ることを可能にする「市民開発」を促進するため、ノーコードツールのDifyの提供を開始している。

  • ● AIエージェントが一般化すると、その使い分けという課題が生まれる。その解決策として、司令塔の役割をする「マルチAIエージェント」活用のフレームワークも提供している。

  • ● 業務で作られたプロンプトは、ログがフィードバックされてLLMの学習に戻され、企業の知となるAIが進化していく。

得意分野を活かしたマルチモーダルLLM

梅津の講演の後は、GENIACに採択されたマルチモーダルLLMの技術開発に取り組む技術者と共にパネルディスカッションを実施し、少し込み入った技術を解説しました。

GENIACに採択されたプロジェクトを担当するリコー デジタル戦略部 木下 彰(中央左)、同 金箱 裕介(中央右)

  • ● 図表や画像含んだドキュメントをナレッジ化してプライベートLLMに取り込み、自然言語での会話を介した利用を可能にするには、通常のLLMを含む様々なモデルを統合した「マルチモーダルLLM」を利用する。

  • ● ドキュメント画像とテキストをそれぞれベクトル化(画像はVision Encoderを通してベクトル化)し、LLMに入力。出力する際もベクトルとして出力してテキスト化する、という工程でプライベートLLMに図表を含む画像をテキストと同時に取り込む。

  • ● リコーがこれまで培ってきたOCRや画像処理技術を取り入れ、世界中で同じような技術を競い合って開発している人々とともに新しい価値を生み出していく。

第二部:流行し始めたAIエージェントの実演と活用例

第二部では、第一部で説明した基盤技術の先に見据える、AIエージェントを実際に活用したはたらき方についてご紹介しました。その一例として、営業マンの補佐、商談支援をするAIエージェントについて、デジタル戦略部 デジタル技術開発センター 営業DX開発室 能勢がご紹介しました。

デジタル戦略部 デジタル技術開発センター 営業DX開発室 能勢 将樹

  • ● AIエージェントとは、目的のタスクの遂行を自律的にサポートしてくれる次世代のAIのことであり、今後の大きな普及が予測されている。

  • ● リコーも開発しているAIエージェントは、音声認識・大規模言語モデルなどのAI技術を軸に、ヒト型のアバター(バーチャルヒューマン)と音声で対話できるインターフェースを備え、自然な会話の内容を理解し、指示されたタスクを実行する。

  • ● 売上・利益の向上に貢献することを目的に、セールステックの一環として、商談中のセールスマンを支援する独自のAIエージェントを開発している。

  • ● セールスマンとお客様の商談の場にAIエージェントが同席し、お客様の課題に応える幅広い商品の提案から議事録や提案書の作成まで、AIエージェントが商談全体を支援するデモンストレーションを実施。

リコーグループ生成AI実践事例の紹介

参加者から要望の多かったリコー社内の実践事例について、リコー AIインテグレーションセンター 副所長の児玉より紹介しました。
リコーのAIサービス提供のスタンスは「使える・使いこなせるAI」。まずは我々が社内で実践し、ユースケースを創出しながら人材育成を行っていく。その結果お客様にも寄り添えるようになる、という考え方のもと実践しています。今回は3つの実践事例をご紹介しました。

リコー AIインテグレーションセンター 副所長 児玉 哲

リコーの実践事例その1:保守業務

  • ● コピー機の保守業務においてAIを活用。

  • ● サービスマンが保守作業中にスマホアプリに問い合わせすると、AIがデータベースで検索し、スマホに回答を送信するという仕組み。

  • ● この取り組みの結果、自己解決率は21%向上、サポート部門への入電件数は74%削減。

  • ● 社内の独自用語を学習させたプライベートLLMの検証も行った。

リコーの実践事例その2:経理業務

  • ● 全社員に生成AIを体験してもらうため、経理業務についてもAIの使用を開始した。開始4ヶ月で、2114時間の効率化。

  • ● 「質問に対するアドバイス」というボタンを付け、質問者が入力する内容に対してもAIがアドバイスできるようにした。入力内容(プロンプト)がどれだけ大切かが体験できるようになっている。

  • ● 経理業務は、最終的に解決できないと困ることになる。有人のチャット問い合わせがフローの最後に存在するが、そのやり取りもデータとして活用している。

リコーの実践事例その3:営業活用

  • ● 営業の現場では「レコメンド型AI」と「提案相談AI」を活用。

  • ● レコメンド型AIはお客様へのヒアリング内容に基づいて、提案書/チラシDB・インターネット情報・データ基盤から、お客様ごとにおすすめ商品を3つの視点でレコメンドするもの。レコメンドした理由とともに提示される。

  • ● 提案相談AIは、お客様からお聞きしたお困りごとを先輩や上司に相談する感じでAIに質問すると、内容に応じた解をAIが提案してくれる。

まとめ

ウェビナー後のアンケートでは、「具体的なデモンストレーションがあり参考になった」「実際に売上に繋がるAI活用について相談したい」「成果だけではなく課題感ももっと聞いてみたい」などの声が寄せられ、改めてAIに対する関心の高さが浮き彫りとなりました。

引き続き、「AI導入の相談先としてのリコー」「社会課題解決に向けて共創できるリコー」の認知を高めるため、RICOH BIL TOKYOからセミナーやイベントなどの情報発信を行っていきます。