人工的に作られた斜面である「のり面(道路土工構造物)」は、道路を構成する主要構造物であり施設量が膨大です。近年では、他の道路施設と同様に風化や老朽化が進行し、安全管理が社会課題となっています。このような背景から、平成29年に「道路土工構造物点検要領」が国土交通省から出され、社会インフラであるのり面の維持管理への関心が高まっています。
のり面の点検を実施する場合、土木技術者が斜面に登り、近接目視で確認を行ないますが、登山などの危険があるうえ、のり面の数や面積が膨大なため、多くの人手と手間がかかっていました。
リコーは、車両で走行するだけでのり面の状態を詳細に撮影および計測できる撮影システム(Slope Copier)を開発しています。また、撮影データの解析や調書作成などの業務プロセス自動化も目指しています。これらにより、点検品質を維持しつつ、より多くののり面検査を行ない、撮影データと解析結果を元に、危険度が高いと判断された部分のみ土木技術者の目視点検を行なうなど、効率的かつ効果的な斜面・のり面点検の実現に貢献します。
複数のラインセンサーカメラとLiDAR(3次元計測システム)を搭載した測定システムで、高さや幅が広いのり面でも一度に高画質な画像を撮影します。
複数のラインセンサーカメラにより、のり面の全景画像を延長無制限で作成することが可能です。また画像を拡大することで、ひび割れなどの目に見える変状を抽出することができます。
LiDARで、画像と同時にのり面の3次元形状を記録することで、平面画像からだけでは分からない断面の形状も記録が可能です。
浮きやはらみ出しなど、のり面の崩壊につながる可能性のある予兆をつかむことができます。
人工知能(AI:Artificial Intelligence)によって自動的に亀裂やはく離、ひび割れなどの変状を抽出することで、劣化状況の全体感をつかむことができます。必要な場所は高画質で近景の出力が可能で、様子を詳細に確認できます。さらに、撮影回数を重ねることで変状の経時変化を取得することもできるようになり、効果的な点検計画の立案にも貢献します。
リコーは、今まで独自の光学技術やシステムで、道路舗装、トンネルなど幅広く社会インフラの維持管理に応用可能な技術を開発し、今回その範囲を斜面・のり面に広げました。
今後は社会インフラをモニタリングするシステムを開発することにより、社会インフラの老朽化、人手不足などのさまざまな社会課題の解決に取り組んでまいります。