トンネルモニタリングシステム

トンネルの状態を可視化して社会インフラを安全に

社会インフラの老朽化が進み、その維持や管理の重要性が高まり、点検が必要な対象は今後ますます増加すると言われています。
リコーは、社会インフラの一つである道路の安全を保つ要素の「路面」「トンネル」「斜面・のり面」の点検を独自の撮影システムとAIなどのデジタル技術を用いて自動化し、低コストで効率的な点検の提案を行なっています。

背景

日本国内には約1万本のトンネルがあり、老朽化に伴う安全管理が社会課題となっています。2014年に「道路トンネル定期点検要領」が国土交通省から出され、社会インフラであるトンネルの維持管理のために全国で点検が行なわれています。
トンネルの点検を実施する場合、従来の点検方法では交通規制をしたうえで高所作業車を利用し目視で確認を行なうため、作業が危険かつ手間がかかっていました。また、「走行型」専用車両での計測も始まっていますが、費用面などの課題があります。

こんな事を解決

リコーは、専用車両ではない一般車両で、通常の速度で走行するだけでトンネル内の状態を計測できる撮影システムを開発しています。また、点検現場での作業や調書作成などの業務プロセスの自動化も可能です。これらにより、効率的で安心・安全なトンネル点検の実現を目指します。

技術の特徴

1.被写界深度拡大ラインセンサーカメラとライン照明での撮影

被写界深度拡大ラインセンサーカメラとライン照明を複数台用いた撮影システムで、トンネル覆工面(トンネル内壁面)を撮影します。トンネル内を走行することで走行車線側の撮影を行ない、往復で走行すると全覆工面を撮影できます。高解像度かつ高品質で撮影可能なラインセンサー型計測システムを実現しました。

ラインセンサー型計測システムは、コンパクトなシステム構成のため、一般車両にも搭載が可能になります。さらに、計測システムだけを取り外して輸送することも可能です。

ラインセンサー型計測システムには、リコーの開発した被写界深度拡大ラインセンサーカメラを複数台利用します。被写界深度とは、撮影画像の焦点が合っているように見える被写体の距離の範囲のことを指します。被写界深度拡大カメラは、従来のカメラに比べ被写界深度が4倍から5倍になるため、薄暗いトンネル履工面の画像も、解像度と明るさを犠牲にせずに鮮明に撮影することができます。
また、ライン照明はプロジェクター照明をライン状になるようビーム整形を行なっています。ライン状に集光させることで、撮影箇所を最適に照らすことができます。
これらの技術により、交通規制をせずに走行撮影が可能となり、従来まで現場で行なわれていたトンネル覆工面のひびなどの変状部のスケッチ作業や変状部の撮影作業がなくなり、安全かつ点検工数を削減できます。

2.展開画像の自動作成

撮影された画像は、トンネル覆工面の形状に応じた画像処理を行なうことで、高精度な展開画像を自動で作成できます。ひび割れやねじのゆるみ(合いマーク)も確認できます。また人工知能(AI:Artificial Intelligence)を用いたひび割れ自動抽出機能により、ひび割れを抽出できます。

トンネル履工面の展開画像から0.3 ㎜のひびやねじの合いマークも確認可能

3.結果の可視化

展開画像上に変状情報を登録し、変状展開図、写真台帳、トンネル点検結果総括表などの点検調書を所定のフォーマットで自動作成できます。
過去の点検結果と比較することで、2回目以降の点検の工数が大幅に低減可能となります。

展開画像から変状をデータ化

リコーの想い

リコーは、今まで独自の光学技術やシステムで、道路舗装など幅広く社会インフラの維持管理に応用可能な技術を開発し、今回トンネルにその範囲を広げました。
今後は社会インフラをモニタリングするシステムを開発することにより、社会インフラの老朽化、人手不足などのさまざまな社会課題の解決に取り組んでまいります。

  • 注)
    本システムは、平成30年度、令和元年度と2年連続で神奈川県の「さがみロボット産業特区」の取り組みの一環である「公募型『ロボット実証実験支援事業』」に採択されています。
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