リコーグループは、技術開発の成果である知的財産を重要な経営資産のひとつと捉えています。事業戦略、技術戦略に基づく価値ある知的財産の創出を奨励すると共に、事業の保護と成長に貢献する知的財産の獲得と活用に取り組んでいます。
現在、リコーの日本特許公開件数は1,546件(2023年度)であり、特許保有権利数では、国内は13,000件以上、海外でも18,000件以上で、計32,124件(いずれも2024年3月末現在)となっています(表1参照)。
技術開発の成果である知的財産は、他社との競争優位性を図る重要な経営資産の一つです。そのためリコーでは、価値ある知的財産の創出を奨励するとともに、事業の保護と成長に貢献する知的財産の獲得と活用に取り組んでいます。国内外で実効性の高い特許獲得を継続して行っています(2024年3月末現在、図1参照)。
また、権利化後の保有特許については、将来の市場や事業を見極めることで不要な特許権を放棄し、保有権利の新陳代謝にも取り組んでいます。
日本公開特許件数 | 1,546件(2023年度) |
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日本保有特許件数 | 13,637件(2024年3月末現在) |
海外保有特許件数 | 18,487件(2024年3月末現在) |
表1:リコーの特許件数
リコーの知的財産活動は、1947年のカメラに関する特許出願から始まりました。1958年には初めて特許管理部門ができ、特許専任者第一号が生まれました。その後、事業拡大とともに知的財産部門の拡大と強化を図り、今に至っています。
現在、リコーの知的財産センターには、知的財産開発室、知的財産戦略室などの組織があり、特許出願・権利化、渉外・ライセンスなどを、それぞれ担当しています。事業部や研究開発部門の知的財産活動を担当する知財担当者は、発明が創造されたら早期に特許出願・権利化できるよう、研究・開発の現場に密着した知的財産活動を実践しています。
また、各市場に適した価値ある知的財産をタイムリーかつスピーディーに獲得するため、海外の主要な研究・開発拠点には、知的財産組織と人員を配置し、時差のない現場密着型の知的財産活動を実践できる体制を作り上げています。
発明者に対しては、長期的且つ継続的に、質の高い知的財産創造活動と特許取得を奨励するために、各種報奨制度を設けています。また、技術部門における知的財産スキルを向上するために、ベテランの知財担当者が講師を勤めるレベル別の知的財産教育を、技術者の経験年数に合わせて実施し、知的財産力全体の底上げを図っています。
知的財産活動を行う知財担当者には、新任の知財担当者向け集合教育制度、OJTによる教育制度など、さまざまな育成プログラムを用意し、個人の知的財産スキルの向上を図っています。また、海外特許事務所への短期駐在制度、長期の海外駐在制度を設けているだけでなく、海外の弁護士とダイレクトなコミュニケーションを取りながら出願・権利化業務を行う機会を設けることによって、グローバルな知的財産スキルの向上にも広く力を入れています。
知的財産センターでは、膨大な知的財産情報を、短時間で効率的に収集、整理、分析、加工し、知的財産以外の情報とも組み合わせてインテリジェンス化を行っています。これをもとに、知的財産戦略の立案や、事業部や経営層への提案を行うことで、知的財産価値の最大化を目指しています。
理化学研究所との共同研究で、2023年に時系列の文献データ中に出現するキーワードの増減パターンを数値で判別し、新たな技術トレンドの変化点を可視化する独自のアルゴリズムを開発しました。2024年にはこのアルゴリズムを応用し、特許と論文に共通して出現するキーワードを多重解析し、実用化の兆しを数値によって判定することが可能になりました。リコーでは本技術を活用してデータドリブンなリサーチに取り組むことで、研究開発におけるテーマ探索活動に対して網羅性とスピードを提供しています。今後も新たな研究テーマの探索と価値の高い知的財産の創出に貢献していきます。
リコーは、持続可能な社会の実現に向けた環境関連技術交流の国際的な枠組みである「WIPO GREEN」にパートナーとして参画しています。「WIPO GREEN」は国連の世界知的所有機関(WIPO:World Intellectual Property Organization)が運営するもので、データベースを通じて環境に関する技術を提供する側と技術を実施したい側をつなぎ、交流を推進する枠組みです。
リコーの保有する環境技術を広く社会に役立ててもらい、共創によるイノベーションの加速を図ることで、事業を通じた社会課題の解決に貢献していきます。
WIPO GREENデータベースでニーズの高い、排水処理に関連した技術の特許を登録しています。(2024年3月時点)
リコーグループでは、企業価値向上に貢献する知的財産の創出の奨励・促進を図るために、社内で知財表彰制度を設けています。近年は、デジタルサービスの会社への転換のグループ全社方針に則り、その方針の早期達成を目指し、知財面からも後押しするために、Digital Service Awardを新設しました。グループ全社方針に則って、最適な知財活動を実施するため、適時・適切な表彰制度の改訂も実施しています。
また、リコーグループ全体で受賞者を称える式典を毎年開催し、社長からの直接の表彰、並びに懇談の場を設けています。これにより、受賞者の栄誉を称えるとともに、知的財産活動に対するモチベーションアップを図っています。
1)Patent Master Award
登録特許を獲得するための秀でた発明創出力、卓越した知財技能、際立つ意欲を兼ね備えた、特許の達人を表彰するユニークな制度です。入社から一定年数における成果を表彰するスタートアップ賞をベースとして、シルバー・ゴールド・プラチナと成果に応じた賞を設けています。最高賞のプラチナ賞は毎年1~2名、プラチナ賞に準ずるゴールド賞は毎年5名前後の発明者が受賞しています。イノベーションを後押しする継続的な発明創出と登録特許取得の奨励・促進、かつ、知財重視風土の維持、向上を狙いとしています。
2)Star Patent Award/Galaxy Patent Award/Digital Service Award
事業の種となるコア発明創出や新たな顧客価値を支える、特に質の高い特許(Star Patent Award)、質の高い特許群・知財形成活動(Galaxy Patent Award)、デジタルサービス事業に貢献する技術を保護する発明創出又は特許群形成活動(Digital Service Award)を表彰する制度で、毎年それぞれ1~数件が受賞しています。これらは革新的な技術の社内表彰と、社内特許表彰のStar Patent Award・Galaxy Patent Award・Digital Service Award 、さらには社外発明表彰までが連続性を持つように制度設計されており、技術開発から知的財産の形成までをつなげることで事業化にイノベーションで貢献することを目指しています。これらの受賞案件がリコーグループのユニークなサービスや製品開発力を支えています。
リコーグループにおける発明は、社外の発明表彰においてさまざまな賞を受賞しています。以下、近年受賞した発明を紹介します。
受賞年度 | 表彰名 | 受賞発明(特許番号) |
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2023年 | 令和5年度関東地方発明表彰 発明奨励賞 | 紙折り機の増し折り装置(特許第6708812号) |
令和5年度関東地方発明表彰 発明奨励賞 | 360°バーチャルツアー(特許第7192923号) | |
2022年 | 令和4年度関東地方発明表彰 発明奨励賞 | デジタルカメラの意匠(意匠登録第1322701号) |
2021年 | 令和3年度関東地方発明表彰 発明奨励賞 | ハンディモバイルプリンタ(特許第6836388号) |
令和3年度関東地方発明表彰 発明奨励賞 | 画像形成装置における乾燥装置(特許第6720471号) | |
2020年 | 令和2年度関東地方発明表彰 発明奨励賞 | 道路性状測定装置、道路性状測定方法(特許第6551623号) |
令和2年度関東地方発明表彰 発明奨励賞 | 加工機における工具状態の診断装置(特許第6156566号) | |
2019年 | 令和元年度関東地方発明表彰 静岡県発明協会会長賞 | 汎用性に優れる低コスト高耐久感光体(特許第3734735号) |
令和元年度関東地方発明表彰 発明奨励賞 | 用紙折り装置および用紙折り方法(特許第6007742号) | |
令和元年度関東地方発明表彰 発明奨励賞 | 描いた絵を画像解析により動かす画像処理システム(特許第6341183号) | |
令和元年度関東地方発明表彰 発明奨励賞 | 1チップ型CMOSリニアイメージセンサ(特許第6225682号) | |
2018年 | 平成30年度関東地方発明表彰 特許庁長官賞 | 全天球型デジタルカメラの意匠(意匠登録第1480863号) |
2017年 | 平成29年度関東地方発明表彰 発明奨励賞 | 光束分割書き込み光学系(特許第4445234号) |
平成29年度東北地方発明表彰 文部科学大臣賞 | 用紙特性センサ及び高画質プリンタ(特許第5850390号) | |
2016年 | 平成28年度関東地方発明表彰 神奈川県発明協会会長賞 | 加減速・停止制御用ブラシレスDCモータ(特許第5742025号) |