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新たな技術の兆しを発見する可視化手法

文献から技術トレンドの変化点を数値化するアルゴリズム

理化学研究所 数理創造プログラム(iTHEMS)との共同研究により、既存の技術文献から新たな技術の兆し・変化点を察知するためのアルゴリズムと可視化方法を開発しました。

本技術は特許出願済みです。

背景

近年、世の中の技術トレンドを網羅的かつ定量的に把握するため、データを活用したリサーチ手法の開発が活発化しています。

データを使った技術トレンドの把握方法として、特許や論文などの技術文書に記載されているキーワードの分析が挙げられますが、時系列の変化パターンまでは考慮できておらず、新たな技術の兆し・変化点を定量的に捉えることは困難でした。

解決したこと

時系列データ中に出現するキーワードの増減パターンを数値で判別できるアルゴリズムとその可視化方法を開発し、特許や論文などの技術文書に記載されているキーワードから、技術開発における新たな兆し・変化点を抽出することができるようになりました。

技術の特徴

本技術は、3つのステップから構成されます。

1. 折れ線グラフの面積計算による急増度の判定

技術文献内に含まれるキーワードごとに、横軸に出現年、縦軸に累積頻度をとって折れ線グラフにし、それぞれの軸の値を0から1に正規化した上でグラフ内の面積(積分値)を計算することで、単純なキーワードの出現頻度ではなく、近年の増加具合を判定できます。例えば、右端の図のように面積が小さいほど、近年急激に伸びているキーワードであることが分かります。

2. 2乗関数の面積(2nd moment)によるパターン分け

同じ面積の値を持っていてもグラフのパターンが異なる可能性があるため、0から1に正規化されたグラフの2乗関数の面積(2nd moment)を計算することで、増加のパターンを区別することができます。

例えば、次の図上部の折れ線グラフはすべて面積が同じですが、それぞれ形状が異なっています。これらの形状を区別するために、2nd momentを求めることで、各グラフのパターンを判別することができます。

3. プロットによる可視化

横軸に1で求めた面積値(A1)、縦軸に2で求めた2nd momentを変換した値(Ã2)をとるマップの中で、眼の形のような範囲内に各キーワードをプロットすることができます。

マップの横軸は技術が出現したタイミングを表し、左に位置するキーワードは近年急激に増加したパターン、右に位置するものは過去に出現して、その後あまり増えていないパターンであることが分かります。

マップの縦軸は増加のパターンを示し、上に位置するキーワードはある時期に急激に増加して現在はあまり増加の無いパターン(Vertical Type:垂直型)、下に位置するキーワードは一度廃れた(増加が止まった)ものの、近年再度注目され始めているパターン(Horizontal Type:水平型)であることが分かります。

このようにマップ上に技術文献から抽出したキーワードをプロットすることで、新たな技術の兆し・変化点を示すキーワードを効率的に探索することができます。

本技術は国立研究開発法人理化学研究所 数理創造プログラム(iTHEMS)の青山秀明客員主管研究員と相馬亘客員研究員との共同研究の中で開発されました。なお、本技術は特許や論文などの技術文献だけでなく、多くの時系列データの分析に力を発揮します。

リコーの想い

リコーでは本技術を活用してデータドリブンなリサーチに取り組むことで、研究所におけるテーマ探索活動に対して網羅性とスピードを提供し、新たな研究テーマの探索と価値の高い知的財産の創出に貢献していきます。