理化学研究所 数理創造プログラム(iTHEMS)との共同研究により、複数種の技術文献から実用化の兆しを察知するためのアルゴリズムを開発しました。
近年、世の中の技術トレンドを網羅的かつ定量的に把握するため、データを活用したリサーチ手法の開発が活発化しています。リコーは、過去にも理化学研究所との共同研究により、文献データから技術トレンドの変化点を可視化する独自のアルゴリズムを開発しています。
この独自のアルゴリズムでは、特許や論文で近年急増しているキーワードを特定し、新たな技術の兆しを発見することができますが、その兆しが研究の黎明期にある兆しなのか、実用化に近づいている兆しなのかを定量的に判断することは困難でした。
過去に開発したアルゴリズムを応用して、特許と論文に共通して出現するキーワードを多重解析するアルゴリズムを開発し、実用化の兆しを数値によって判定することができるようになりました。
本アルゴリズムは、大学や研究機関などのアカデミアサイドの研究が一段落し、企業などのビジネスサイドで事業化フェーズに移行しつつある技術を、「実用化の兆し」があるものとして捉え、発見します。その兆しを、「特許と論文に共通して出現するキーワードの座標計算」「座標の位置によるパターン分け」「特許・論文座標を結ぶリンクの長さの算出」の3つのステップで特定します。
特許と論文に共通して出現するキーワードごとに、過去に開発したアルゴリズムを適用し、それぞれの座標(時系列データ中のキーワードの増減パターン)を計算します。具体的には、キーワードごとに出現年ごとの累積頻度の折れ線グラフを作成し、そのグラフの面積とグラフの2乗関数の面積を変換した二つの座標を、SとAの面上にプロットします。過去に開発したアルゴリズムは、特許または論文のみのパターンを1つの座標で判別しましたが、本アルゴリズムでは特許と論文それぞれで座標計算を行うため、1つのキーワードにつき、2つの点がプロットされ、各キーワードはこれら2つの点を繋ぐ線分(リンク)で表されます。
アカデミアサイドの主なアウトプットである論文の増加が既に収束しており、ビジネスサイドの主なアウトプットである特許が近年急増しているようなパターンを判別することで、実用化の兆しを捉えます。
特許と論文に共通するキーワードの出現パターンを図にプロットすると、近年急増しているキーワードは図の左端に、収束しているキーワードは上端や右端に配置されます。つまり、特許での出現パターンが左端に、論文での出現パターンが上端または右端に配置されるキーワードを抽出することで、実用化の兆しを掴むことができます。
2.でプロットした特許の座標が左端、論文の座標が上端または右端であるパターンを簡易に判定するために、リンクの長さを利用します。
キーワードごとにリンクの長さを算出し、それが長いものから順に確認していくことで、実用化の兆しを示すキーワードを効率的に抽出することができます。
リコーでは、本技術を活用してデータドリブンなリサーチに取り組むことで、自社の研究開発におけるテーマ探索活動に対して網羅性とスピードを提供しています。今後も新たな研究テーマの探索と価値の高い知的財産の創出に貢献していきます。