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村上 和歌子

リコーグループの製品の分析や、分析のための観察技術を開発する材料分析部のテーマリーダーとして活躍している村上和歌子。2016年には「日本女性技術者フォーラム(JWFE)」が主催する「女性技術者に贈る奨励賞」の審査員特別賞を受賞するなど、さまざまな成果を上げてきた彼女は、2児の母でもあります。

仕事と家庭を両立させつつ、管理職もこなし、ワークライフ・マネジメントを実践している彼女は、リコーでどのような福利厚生を利用してきたのでしょうか。彼女の仕事を支えてきた会社の環境や制度について、お話をうかがいました。

部品を「使う側」から「分析する」側へ。苦労しながらも達成した大仕事

まず、現在の仕事内容について教えてください。
「材料分析」と呼ばれる、リコーグループが開発している材料や、製品に用いられている部材の分析をしています。仕事は大きく分けて2つあり、1つは「これを分析して欲しい」という依頼のもと実施する「依頼分析」。もう1つは分析を行うために必要な技術の開発です。私は依頼分析のテーマリーダーを担当しつつ、技術開発の業務も行なっています。
村上和歌子
材料分析の仕事に就く前は、どのような仕事をしていたのでしょうか?
2002年に新卒で入社してからは商品開発部に配属され、リコーの主力製品であるプリンターや複写機の作像部のプロセス開発に携わっていました。主な業務は感光体への書き込み露光制御や新規トナー補給制御の開発でした。入社7年目には、現在の部署に異動し、研究のテーマリーダーや、さまざまな研究を統括するグループリーダーなどを経て、現在に至ります。
これまでのキャリアのなかで、印象に残っている仕事はありますか?
材料分析の部署に異動したてのころに、電子写真の作像部に使われる「トナー」と呼ばれる粒子に関する観察技術を開発したことは、自分のなかでも頑張れたなと思っていますし、会社の役に立てたという自負があります。
具体的にはどのようなことを行なったのでしょうか?
トナーのサイズは5ミクロンほどと非常に小さいのですが、なかには10種類以上の材料が入っています。ただ、これらの材料がトナーのなかにどのように分布しているのか、また、製造過程でどのような現象が起き、材料が配置されていくのかに関してはわかっていないことが多くありました。

この部分を観察技術によって見えるようにすることで、トナー開発者が「設計思想どおりにものをつくれているか」を確認しながら開発を進めることができ、効率的でより良い「ものづくり」につながると考えました。

また、私は商品開発部の時代に、作像部の開発をするためにトナーを使っていたので、良いトナーができることで同僚たちの業務効率化や、製品の性能・品質向上につながることをはっきりイメージすることができました。 観察技術の開発には2年ほどかかりましたが、初めてトナーの中身を確認できたときは感動して、仕事って楽しいなと、あらためてやりがいを感じましたね。
トナーを使う側から、分析する側に立場が変わり、慣れないことも多かったのではないでしょうか?
そうですね。分析に関しては異動当時、まったくの素人だったので、トナーの観察技術の開発も試行錯誤を繰り返し、手探りで進めていきました。

そのなかで大きかったのが、トナーの設計者をはじめとする周囲の方々の協力でした。開発にかかった約2年間、皆さんの協力なしでは進められなかったと思っています。いろいろなことを学ばせてもらい、そのなかでアイデアもたくさん出ました。
周囲の協力はどのように得たのでしょうか?
社内の知人づてにトナーの設計者を紹介してもらい、協力を仰ぎました。ただ、むやみに「協力してください」とお願いするだけでは、相手の協力のモチベーションも出づらいですよね。

そこで「トナーの中身がこういうふうに見えたらもっと良くなると思いませんか? そのためには恐らくこのような技術開発が必要になると思うのですが、協力していただけますか?」と、メリットを感じてもらえるように呼びかけました。結果的に共感してもらえて、多くの人が忙しいなかでも協力をしてくれました。

能動的に仕事をつくり出す。受賞にもつながったワークスタイル

部署異動して間もない状況から、自分で課題を見つけ出したり、周囲へ呼びかけたりと、能動的に仕事をされてきたんですね。そういった仕事のスタイルを築いたきっかけはあるのでしょうか?
材料分析の部署に異動した際に、当時の上司に言われた言葉が大きいです。材料分析は研究部門にありますが、その上司が「研究は仕事を与えない。自分で仕事を探し、自分で輝かせていかないと仕事にはならない」とおっしゃっていて。

商品開発のときはさまざまな業務が割り振られ、それを受動的に遂行する場合が多かったので、仕事のスタイルが全然違うんだなと驚いた記憶があります。その言葉をきっかけに、自分で仕事をつくり出せるよう、勉強したり、商品開発部に困っていることはないかとヒアリングしたりするようになりました。
2016年には、JWFEが主催している「女性技術者に贈る奨励賞」の審査員特別賞も受賞されていますが、村上さんの「自分で仕事をつくり出す」姿勢が評価されたのでしょうか?
そうかもしれません。賞の目的は「既存の社会や職場での意識・風習を変革する成果を上げた若手女性技術者を表彰し、ロールモデルを提示する」でした。依頼されたことを実行する材料分析のなかで、観察技術などを自主的に提案し、開発するという仕事のスタイルを評価していただいたと聞きました。
村上さんは賞の受賞だけでなく、テーマリーダーやグループリーダーなど、管理職のポジションも歴任されていますよね。
はい。管理職になり、自分の仕事だけでなく、成果を出せる見込みがある研究や、やらなければいけない業務をメンバーに割り振ったり、メンバーの育成や組織体制を考えたりといったマネジメントの仕事もするようになりました。

ときには自分の研究を進められず、もどかしく思うこともありましたが、チーム全体の成果が自分の成果につながるという意識を持つと、業務にやりがいを感じるようになりました。

さまざまな制度を有効活用。働き方の多様化がポジティブな効果も生む

現在もテーマリーダーのポジションに就きつつ、自身の研究も行なっていることもあり、かなり忙しいかと思いますが、ワークライフ・マネジメントができているなと感じていますか?
しっかりできていると思います。リコーには、仕事とプライベートの両立を支援するための制度が整っていますし、当たり前に誰もが使えるものになっています。私自身も子どもが2人いますが、いろいろな制度を使うことで仕事と家庭の双方をマネジメントしながら仕事ができているかなと思います。
具体的にはどういった制度を利用されているのでしょうか?
「リモートワーク制度」や時間単位で年次有給休暇を取得できる「時間単位年休制度」などを活用しています。リモートワークによって時間の効率的な活用はもちろん、子どもと向き合う時間もよりつくれるようになりましたし、時間年休で特定の時間だけ休むことで、授業参観など学校の行事にも参加できます。

現在は、社員が始業・就業時刻を決定できる「エフェクティブ・ワーキング・タイム (EWT)」という勤務制度があり、コアタイムなしのフレックス勤務が可能です。なので、時間単位年休制度すら使わずに済む場合もあります。



ほかにも、「短時間勤務制度」などは個人的にも気に入っており、後輩におすすめしています。私は2人目の子どもが産まれたとき、夫が単身赴任になり、子どもたちの面倒を一人で見なければならなくなったんです。

一人だとキツいなと思っていたとき、上司からすすめられて利用し始めた制度ですが、通常は短く働き、日によっては長く働いてそのぶん給料も出るのですごく良い制度だなと思っています。当時、夫が単身赴任せざるを得ない状況でしたので、とても感謝されました。

現在、夫は単身赴任から戻ってきていますが、今度は私がリモートワークを活用して、家事・育児の時間を多く取れるようになったので、またまた夫に感謝されている、という感じです。
会社としても制度の使い方を積極的に周知しているのでしょうか?
会社から数ある制度をどのように使えるのかをまとめた冊子が配られたり、ウェブサイト上で見られたり、女性のキャリアサポートの研修の際に説明もされていますね。
リコーの取り組みである「能力と意欲のある女性を登用するための育成施策と活躍推進」
では、ご自身が制度を利用し始めたのも会社からの案内がきっかけで?
私の場合はそういったかたちではないのですが、現在の部署に異動した際に働いていた、女性の先輩がきっかけでした。すごく優秀でバリバリ働いていた彼女には、お子さんが1人いらっしゃいました。

こんなに働いている方でもお子さんを育てているんだと当時は驚きましたが、会社の制度をうまく使ってワークライフ・マネジメントが実現できていたんです。それを見て、私も活用しようと後押しされました。いまでは女性だけでなく、男性も育児などのためにさまざまな制度を利用しているので、制度を有効活用するムードが全社的にあると思います。
働き方の多様化が進んでいるんですね。
そうですね。さらには、働き方の多様化がポジティブな効果も生んでいます。たとえば、とある男性社員は家の都合で在宅勤務を主軸にした働き方を希望していたのですが、その人には、会社でしか動かせないシステムを使う業務もあったんです。そのため、リモートでも使えるようなシステムを自分で提案し、実践してくれました。

最近も、通勤に2時間ほどかかっていた女性社員が、第一子を出産したあとも、リモートワーク制度を活用していて、通勤時間を家事や育児にあてています。彼女もリモート環境にて、依頼分析を効率的にまわすためのシステムを開発してくれましたし、ほかの社員も、これまで対面で行なっていた分析装置の操作説明や、現地で一緒に作業や測定結果を見ながら行なっていた「立ち合い分析」をリモートで行えるよう整備して、新しい環境づくりを進めてくれています。

社員一人ひとりが選択した多様な働き方を尊重することが、新しい仕事を生み出すきっかけにもつながっていると思います。今後も多種多様な働き方は増えてくると思うので、そういった人たちが将来に希望を持って働ける環境を整えることも、ベテラン勢である私たちの役割でもあるのかなと思っています。

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