独創的な挑戦 音の情報に取り残されている人が、どこにいても文字で情報を把握できる社会を実現したい リコーの音声認識技術を活用した聴覚障がい者向けサービス「Pekoe」。担当チームは、開発、販売、サポートのみならず、社内での活用促進にも注力しています。

2024年11月29日
  • “はたらく”に歓びを
  • DEI
聴覚障がい者向けのサービス「Pekoe」は、リコーの音声認識技術を活用したシステムを開発したメンバーが新規事業として立ち上げました

※所属・役職はすべて記事公開時点のものです。

この事業を始めたキッカケを教えてください。

岩田さん:以前、音声認識の会議システムを開発していたのですが、それを見てくれた社内の方が、手話通訳士などの手配をしていた経験から、「聴覚障がい者の方が会議で使ったら便利なのでは?」と提案いただいたのがきっかけです。社内で、聴覚障がいを持っている人と、その部署の人たちに試しに使ってもらったところ、「今までわからなかったことがわかるようになった」「議論に参加できるようになった」と意見をもらいました。そこから、社外でも同じように困っている人がいるのではと考え、自らリーダーとなって新規事業として立ち上げました。

木下さん:私も聴覚障がいがあるのですが、2019年にPekoeをトライアル使用した聴覚障がい者が紹介された社内の記事を見て、自分もこの事業に参画したいと思い、岩田さんにコンタクトを取りました。当時はまだコロナ前でしたが、オンライン会議が増えてきて、内容が理解できず困っていました。

岩田 佳子さん

株式会社リコー
新規事業開発部門
岩田 佳子さん

木下 健悟さん

株式会社リコー
新規事業開発部門
木下 健悟さん

「Pekoe」で成功したと感じた事例を教えてください。

木下さん:社内では、3年前から、創立記念日イベントやSDGsセミナーでのPekoeを利用しています。また社外では、ジャパンラグビーリーグワンでのリコーブラックラムズ東京の試合でPekoeを利用し、場内アナウンスの字幕配信を行いました。多くのメディアや実際に利用した方々のSNSなどに取り上げていただき、認知度が向上しました。私自身、聴覚障がいを持っている方が試合展開を理解できればいいという認識でいましたが、実際の文字起こしをみると、試合の進行以外にも必要な情報があることに気づかされました。
(詳しくは、下記リンク先のコラムをご覧ください。)
https://pekoe.ricoh/blog/3442

岩田さん:導入いただいたお客様から、「聴覚障がいを持つ社員が、技術的な議論にも積極的に参加できるようになり、新たな知識を習得することが可能になった」とお聞きしたことがあります。その結果、聴覚障がいを持つ方の業務範囲が拡大し、周囲の人たちも、本人がより多くの仕事をこなせることを理解し、支援することが広まったとコメントをもらいました。このように、聞こえないからとあきらめてしまうのではなく、技術の活用で今まで以上に活躍できるようになった事例を聞いたときに、成功したと感じます。

SDGsイベントの様子
SDGsイベントの様子

SDGsイベントの様子

この活動で嬉しかったこと、やりがいを感じたことなど教えてください。

木下さん:Pekoeを活用する前は、会議時間内に議論されたことは議事録などで共有されていましたが、それ以外の時間、例えば会議前後の雑談の内容はわかりませんでした。それがわかるようになり、一緒に働くメンバーが身近に感じることになったのが嬉しかったです。またPekoeは、正しく情報を伝えるためには「辞書」の準備や、会議での誤認識への修正が必要になるのですが、これまで社内イベントで活用する時は、「辞書」は私と同じ聴覚障がい者の社員が「やります!」と手を挙げてくれますし、誤認識の修正も多くの社員が協力してくれるので、とても嬉しかったです。イベント後のアンケート結果やSNSで発信してくれる多くの投稿を見ると、やってよかったと思えますし、次回へのやりがいにつながってきます。

岩田さん:社内外で、今までリアルタイムに議論に参加できなかった方が、自分の意見を積極的にチャットで発信できるようになり、新たな仕事に挑戦した、チーム全体の仕事の流れがスムーズになったという話を聞くことが本当にうれしく、やりがいを感じます。

Pekoeを活用したチームミーティングの様子
Pekoe画面

Pekoeを活用したチームミーティングとPekoe画面

この活動で苦労したこと、うまくいかなかったことなど、教えてください。

岩田さん:聴覚障がいをお持ちの当事者は困っているのに、上司や周囲が困っていないと勝手に判断し、トライアルすら実施してくれない会社がまだまだ多いことです。一方、当事者の方からは「自分のためだけにPekoeを入れてほしいとは言えない」と相談を受けることもあります。声を上げられない当事者の方の困りごとに耳を傾けて解決していけるようになりたいと思っています。

インタビューに応える岩田さんと木下さん

今後の活動や将来実現したいことを教えてください。

木下さん:音の情報に取り残されている人が、どんな場所にいても文字で情報を把握でき、参加できる社会を実現することです。ラグビー観戦時の文字配信のようなやり方が、スポーツに限らず、どのようなイベントでも実現できたらいいなと思っています。

岩田さん:私も同感です。さらに言えば、聞こえない人だけでなく、聞こえる人もいつかは年齢を重ねて難聴になるかもしれませんし、海外の人とうまく会話できないという事もあると思います。日本国内にいると、単一の言語で、聞こえる人たちだけが便利な世の中になっていますが、外に出るとそうではないという事も再認識し、あらゆる場面で、聞こえない人も外国人も、必要な情報を取得することができ、コミュニケーションが気軽に行えるような社会にしていきたいですね。

スマホの文字配信画面
ラグビー観戦時の場内アナウンスの文字配信

ラグビー観戦時の文字配信

  • #DEI #SDGs

聴覚障がい者向けコミュニケーションサービス
「Pekoe(ペコ)」

聴覚障がいをお持ちの方と一緒に働く皆様のコミュニケーションを促進する音声認識のサービス。2022年8月からテスト販売を開始。