近年、商用印刷分野や企業内印刷分野では、印刷物の多品種・小ロット化により必要な時に必要な部数を、低コストで印刷できるオンデマンドプリンティングに対するニーズが拡大しています。商用印刷分野では、オフセット印刷と同様の幅広い種類の用紙対応力が求められており、特に表面に凹凸の加工を施した厚手の用紙は、その独特の質感から印刷物の表紙などに使用されることが多く、その対応が望まれていました。
リコーでは、凹凸紙への画像印刷を可能とする技術を開発し、利用できる紙種の範囲拡大を実現いたしました。
電子写真方式の印刷では、一般的にトナーを中間転写ベルトから紙に転写するに際に直流電界(DC)を利用していますが、表面に凹凸をもつ用紙では、紙の凹部と中間転写ベルトとの間に隙間ができてしまうためトナーが移動しづらくなり、その部分の画像が白く抜けてしまうという課題がありました。そこでリコーでは、交流電界(AC)を使う新たな技術を開発し、トナーが紙の凹部にも移動しやすい状態をつくることで、紙の凹部への転写を可能としました。
凹凸紙の凹部に転写されたトナーは、凹部に定着ベルトが追従できないことから定着不良が発生するという課題がありました。そこで、定着ベルトの弾性層を厚肉化し、用紙の凹凸に対して定着ベルトが追従できるようにしました(図2)。これによって、定着に必要な圧力および熱が用紙(トナー)に加わり、凹凸紙においても良好な定着性を確保することが可能になりました。特に弾性層の厚肉化にあたっては、温度追従性が悪くなることを防ぐため、熱応答性に優れたIH技術を搭載しています。
こうして、凹凸紙にも高画質で定着性の高い印刷が可能になりました。