株式会社リコー(社長執行役員:近藤史朗)、株式会社アグリバイオインダストリ(代表取締役CEO 吉田美樹)、北海道大学大学院工学研究科の田島健次准教授の三者は、バクテリアが合成するセルロース(バクテリアセルロース)から作製した紙に直接電極を形成し、その紙に含ませた色素を電気的に発色させる表示デバイスの発色試験に成功しました。従来のディスプレイのように、ガラスやプラスチックのような支持基板を必要とせず、紙そのものを発消色させることができます。このため、デバイスの部材や製造工程が少なく、低コストにできるとともに、森林資源を使用することなく、バクテリアによる低エネルギーな製造プロセスを用いるため、環境にやさしい将来技術として注目されます。
セルロースは自然界に最も豊富に存在する高分子であり、バクテリアによって合成されるバクテリアセルロースは、植物由来の繊維に比べて千分の1という極めて細い繊維の微細なネットワーク構造を有しており、高い保水性・機械的強度(破れにくい)・生分解性(自然に返りやすい)等さまざまなユニークな特徴を有しています。本共同研究の三者は、容易に入手できる非食用の原料を用いることによって、これまでより安価にバクテリアセルロースを合成することに成功しました。さらに、微細な構造を保ったまま表示デバイスとして機能させるために最適な空隙(くうげき)率と均一な厚さを有するバクテリアセルロースの紙の作製手法を突き止めました。その上で、電圧をかけることにより消色状態から発色状態へと可逆的に変化するエレクトロクロミック色素を溶かした電解液をバクテリアセルロースの紙に浸透させ、その両面に電極を形成して、紙の表示デバイスを実現しました。
この表示デバイスの実用化にはまだ年月を要しますが、実験室レベルでは発色試験に成功し、「紙の」電子ペーパーへの実現可能性が実証できました。
三者は本研究成果を7月3日に北海道大学で開催されるセルロース学会第16回年次大会で発表いたします。