株式会社リコー(社長執行役員:大山 晃)は、日本語の文書や図表を高精度に理解し、高速・省リソースで動作するマルチモーダル大規模言語モデル(LMM)「リコーLMM_35B-A3B」を開発しました。本モデルは、アリババクラウドが開発・提供するMoE(Mixture of Experts)*1構造を採用した「Qwen3.6-35B-A3B」をベースに、リコー独自の強化学習*2およびカリキュラム学習*3技術を活用して、日本語でのリーズニング性能*4を高めたものです。
本モデルは、総パラメータ数約350億のうち、推論時に約30億パラメータのみを選択的に稼働させるMoE構造を採用しています。これにより、同規模のDense型*5モデルと比べて推論時の計算量を抑え、高速・省リソースな処理を可能にしています。
図表を含む日本語ドキュメントのリーズニング性能を評価するリコー独自のベンチマークツール「JDocQA Reasoning Benchmark」*6による評価の結果、ベースモデルを上回り、商用クラウドAIモデル「GPT-5.6 Sol」と同等水準の性能を確認しました。
あわせて、NVIDIAのBlackwell世代以降のGPUで効率的に動作するよう量子化*7したリコーLMM_35B-A3BモデルのNVFP4版を開発し、超小型デスクサイドAI用サーバー「NVIDIA DGX Spark」1台で実用レベルの生成AI処理を実現しました。
本モデルは11月から順次「RICOH オンプレLLMスターターキット」に搭載し、リコージャパン株式会社から提供予定です。2026年6月に発表した高精度志向のDense型モデル「リコーLMM_27B」、より軽量な「リコーLMM_9B」に、速度と省リソース性に優れた本モデルを加えることで、求められる精度や処理速度、利用可能な計算資源など、お客様の業務要件や導入環境に応じて最適なモデルを選択できるラインアップを拡充します。
生成AIの企業活用が本格化するなか、製造業、金融・保険、公共分野などでは、請求書、経営資料、設計図書、報告書、約款、申請書類など、図表を含む多様な社内ドキュメントを生成AIで活用したいニーズが高まっています。一方で、セキュリティやガバナンスの観点から、クラウドAIの利用が難しく、オンプレミス環境で安全に利用できる高性能なLMMへの期待が高まっています。
また、生成AIの高性能化に伴い、推論に必要なGPUリソースや電力、応答時間が導入・運用上の課題となっています。特に、大量文書を一括で処理する業務や、多数の同時アクセスが発生する環境では、精度に加えて、限られた計算資源で高速に処理できることが重要になります。
こうした課題に対し、必要な部分のみを選択的に稼働させることで計算量を抑えるMoE構造は、高い性能と処理効率を両立する手法として注目されています。リコーは今回、初めてMoE構造を採用したモデルをベースとし、独自の追加学習を通じて、日本企業の業務で実用的に活用できるモデルを開発しました。
本モデルは、総パラメータ数約350億のうち、推論時に約30億パラメータのみを稼働させるMoE構造を採用しています。MoE構造では、モデル内部の処理を複数の「専門家」に分担させ、入力に応じて必要な専門家だけを選んで動かします(模式図)。これにより、同規模のDense型モデルと比べて1トークンあたりの計算量を抑え、高速な処理を実現します。最大256Kトークンの長文コンテキストに対応しており、長大なドキュメントを一度に読み込み、推論することが可能です。画像に加えて動画入力にも対応し、外部ツールを呼び出すツール利用(Tool use)機能も備えています。
Dense型モデルとMoE型モデルの推論時に稼働するパラメータの違い(模式図)
リコー独自の強化学習およびカリキュラム学習技術をMoE向けに発展させ、図表を含む企業ドキュメントの読解性能をベースモデル「Qwen3.6-35B-A3B」から向上させました。
リコー独自ベンチマーク「JDocQA-Reasoning Benchmark v2.0」において、本モデルはベースモデルの0.816から0.841に向上しました。これは、推論時に稼働するパラメータが約9分の1でありながら、同じQwen3.6系列のDense型モデル「Qwen3.6-27B」(0.841)と同等の水準です。また、商用クラウドAIモデル「GPT-5.6 Sol」(0.821)と同等以上の性能を確認し、同規模のMoE型オープンモデル「gemma-4-26B-A4B-it」(0.784)を上回りました。
加えて、ELYZA-tasks-100やJapanese MT-Benchによる日本語LLM性能評価では、ベースモデルと同水準を維持しており、図表読解能力の向上と汎用的な日本語性能の両立を実現しています。
本モデルは、文書の読解や回答生成に加え、業務システムやツールを活用しながらタスクを自律的に実行するAIエージェント用途にも対応しています。日本語AIエージェント評価ベンチマーク「j-tau-bench」(SB Intuitions公開)の通信事業者カスタマーサービス(telecom)シナリオにおいて、業務ポリシーに従ってツールを利用しながらユーザーと対話し、依頼されたタスクを正しく遂行できた割合(正答率)が、ベースモデルの62.4%から77.7%へと15.3ポイント向上しました。これにより、社内文書の読解・活用だけでなく、問い合わせ対応や各種業務手続きの自動化を支援します。
リーズニング型モデルでは、同じ内容を繰り返して出力し続ける「ループ回答」が実運用上の課題となることがあります。リコーは、過度に長い出力を抑制する報酬設計を強化学習に取り入れることで、回答の品質を維持しながら不要な繰り返しを抑制しました。これにより、応答時間の安定性を高めています。
NVIDIA Blackwell世代以降のGPU向けに量子化した「リコーLMM_35B-A3B」のNVFP4量子化版を開発しました。小型AIサーバー「NVIDIA DGX Spark」1台で動作し、量子化後もベースモデルの量子化版を上回るリーズニング性能を確認するとともに、BF16版と比べて1問あたりの応答時間を約3分の1(MTP併用時は約4分の1)に短縮しています。
リコーは、2026年6月に発表した高精度志向のDense型モデル「リコーLMM_27B」、軽量モデル「リコーLMM_9B」に、今回開発した速度・省リソース性に優れたMoE型モデルを加えることで、お客様の業務要件や導入環境に応じて最適なモデルを選択できるラインアップを拡充します。
本モデルは11月から順次「RICOH オンプレLLMスターターキット」に搭載し、リコージャパン株式会社から提供予定です。リコーは、オンプレミス環境で安全に活用できるLMMの拡充を通じて、日本企業のドキュメント利活用と業務革新を支援してまいります。
リコーは、1980年代にAI開発を開始し、2015年からは画像認識技術を活かした深層学習AIの開発を進め、外観検査や振動モニタリングなど、製造分野への適用を行ってきました。2021年からは自然言語処理技術を活用し、オフィス内の文書やコールセンターに寄せられた顧客の声(VOC)などを分析することで、業務効率化や顧客対応を支援する「仕事のAI」の提供を開始しました。
2022年からは大規模言語モデル(LLM)の研究・開発にもいち早く着手し、2023年3月にはリコー独自のLLMを発表。企業内に蓄積された文書・画像・業務データに内在する暗黙知をAIによって可視化し、業務成果へとつなげるAI開発を推進しています。独自のドキュメント理解技術とLLM/LMMを組み合わせることで、テキストや図表を高精度に解析し、実務で活用可能な知識として展開します。さらに、オンプレミス対応やセキュリティを重視した提供により、安心して利用できる環境を提供しています。
また、リコーはAIを自社業務において積極的に活用し、その知見をサービスに反映しています。社員自らがAIエージェントを構築・活用し、業務の高度化を実践していることが強みです。こうした実践知と、顧客の現場に入り込み業務を深く理解してきた実装力を掛け合わせることで、AIを構想にとどめることなく、継続的に価値を創出・提供していきます。
リコーグループは、世界約200の国・地域で、AIをはじめとする先進テクノロジーと、長年培ってきたプリンティング領域の強みを基盤に、ワークプレイスにおける業務変革を支援するサービス・ソリューションを提供しています。また、商用・産業印刷事業や、インクジェット技術を応用した新たなソリューションの展開を通じて、お客様の価値創出を支えています(2026年3月期グループ連結売上高2兆6,083億円)。
“はたらく”に歓びを 創業以来90年にわたり、お客様の“はたらく”に寄り添ってきた私たちは、これからもリーディングカンパニーとして、“はたらく”の未来を想像し、ワークプレイスの変革を通じて、人ならではの創造力の発揮を支え、さらには持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
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