知られざるQSU誕生のきっかけ
QSU(クイックスタートアップ)と言えば、複写機をスリープ状態から素早く復帰させるリコー独自の省エネ技術です。このQSU技術のおかげでリコーは、省エネ複写機の草分けである「imagio Neo350/450」を発売することができましたが、実はQSU誕生の背景にはきっかけがありました。
1996年9月、IEA*2主催の国際会議の招待を受け、ある社員がスウェーデンに出向きました。その会議は家電やオフィス機器のグローバル企業が多数集まる、電気機器の省エネをテーマにした会合でした。会議の話題の中でもとくに目を見張ったのは、欧州の金融や行政関係者などの大口ユーザーたちが「このレベルの省エネ性能を満たす複写機が開発されれば購入する」とスペックを提示したDSM(ディマンドサイドマネジメント)の動きです。
元商品企画部だった社員は、欧州のお客様の省エネに対するニーズは、作り手が考えているよりもずっと進んでいる、と危機感を大いに募らせました。
省エネモードの課題を有識者が指摘
スウェーデンの会議に出席した社員の報告を受け、省エネに対する認識を新たにしたリコーは、翌1997年、省エネに詳しい人材を集めた技術委員会を発足しました。
すると、同じ年の11月、欧州での待機電力への関心の高まりを受けて、今度はアメリカでEPA*3主催の省エネに関する国際会議が開かれました。会合でチューリッヒ工科大のアービシャー教授が「省エネモードは環境に良い技術だが、スリープ状態からの復帰が遅いために使われていない。これは非常にもったいないことだ」と指摘しました。
たしかに、当時の機器は、スリープ状態からの復帰が最も早い機種でも30秒かかり、コピースタートまでの待ち時間が長いことから、忙しいオフィスで省エネモードが使ってもらえないという実態がありました。会合に出席していたリコーの省エネ技術委員会のメンバーは、教授の指摘に至極納得し、「もっと使える省エネモードのために、革新的な技術を!」と、当時は不可能と考えられていたスリープからの立ち上げ10秒を目標に定め、技術開発を加速したのです。
それから約2年後、各国の大口ユーザーたちが求める省エネのスペックを一番のりで満たす「省エネ技術QSU」が誕生しました。これを搭載したモデル機は1999年11月のCOMDEX*4で、省エネ意識の高いお客様のニーズを満たす「未来の複写機」と称えられ、技術賞を受賞しました。
複写機部門初の省エネ大賞の最高賞を受賞した「imagio Neo350/450」
2001年発売の「imagio Neo350/450」は、従来機では30秒以上だった立ち上げ時間を10秒に短縮し、両面印刷スピードも大幅に短縮。米国での受賞に続いて、日本でも、複写機部門初の省エネ大賞の最高賞を受賞しました。
その後もリコーは、QSUを進化させ、今では高速機、カラー機でも10秒を下回る立ち上げ時間を達成しています。
「環境と使いやすさの両立」をテーマに、リコーはたゆまぬ歩みを進めています。