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高強度フルカラー造形が可能な3Dプリンター

審美性の高い高強度部材をオーダーメイドで製作

背景

人工歯やメガネフレームなどに代表されるオーダーメイド製品は、高品質であることが求められますが、その製作においては人の手作業に依存する工程が多く、手間(コスト)がかかるのが実情です。そのため3Dプリンターによるオーダーメイド品の作成が期待され、検討されてきています。しかしながら、これまでの3Dプリンティング技術では単色でしか作成できず、審美性(見た目の美しさ)の低さが問題となっていました。

解決したこと

オーダーメイド製品をフルカラー造形により高い審美性で製作できる方式として、紫外線硬化樹脂を使用するインクジェット式3Dプリンター(マテリアルジェッティング)が知られています。しかし、この方式の造形物は強度が低いため、用途がデザイン試作に限定されています。

リコーは、インク/プロセスを統合した独自技術により、マテリアルジェッティング方式の強度を改良し、そのフルカラー化を実現しました。この技術により、高強度、高精度、フルカラーをすべて両立した3Dプリンターが実現可能となります。

技術の特徴

1. フィラー(粒子)添加インクのフルカラー造形技術

技術概略は下図になります。インクはフィラー(充填剤となる粒子)を添加して強度を大幅に向上させつつ、吐出可能な物性を保持しています。フィラーが含有された高強度な白インク(ホワイト)と高透明インク(クリアインク)をメインに使用し、カラーインクは高濃度で少量配置することにより、強度とカラーを両立することができます。また、造形物はモノマー配合技術による最適化により、高い安全性が期待できます。

図1. 造形技術概略

2. 高い強度と審美性

人工歯でも適用可能なレベルの高強度な造形物が作成できます。また、色の異なる部材を一括で同時に造形することができるため、フルカラーによる高い審美性が表現できます。(図2)

図2. 造形物(義歯を一括造形)

カラーインクは小滴(少量)での印字を行うことで、高精度に描画することもできます。(図3)

図3. 印字の微細性(厚み1mmのクリア造形物内部にカラーインクで描画)

リコーの想い

リコーは、長年培ってきたインクジェットヘッド技術、インク・サプライ技術、プリンティングシステム技術の3つのキーテクノロジーを応用・発展させ、世の中の常識を変える“ものづくりデジタル変換”で、新しい価値の実現を目指しています。3Dプリンターの活用により、製造工程の短縮化を図ったり、複雑な工程を一挙に製造したりすることで、必要最小限の資源で、手間なく高品質な製品を作成することが期待されていますが、各方式でさまざまな制約があるのが現状です。本技術により、これまで作成が困難だった複雑で審美性の高い製品を、高い強度、耐久性で、効率よく作成することができるようになります。本技術が、脱炭素社会・循環型社会実現の一助となるべく開発を進めていきます。

本技術の分類:分野別「インクジェット」「省資源」