論文等はPDFファイルです。
ご覧になるには、AcrobatReaderが必要です。
最新のAdobeReaderは下記ボタンを選択して入手できます。
近年、設置性・利便性の観点から超至近投写プロジェクターの開発が求められている。しかしながら、このようなプロジェクターは拡大倍率及びスクリーンへの光線入射角が大きいため、解像度の向上、ディストーションの低減が困難である。そこで、小型、高画質、超至近投写を達成するために、自由曲面ミラーを採用した投影光学系を開発した。本光学系における、投射距離の光学系サイズ、画質との関係を明らかにする。更に、折り返しミラーを配した光学系小型化を説明する。この光学系を2011年11月発売の超至近投写プロジェクター「IPSiO PJ WX4130」に適用し、世界最小・最軽量を実現した。
電子書籍端末を筆頭として反射型ディスプレイを搭載した電子ペーパーが商品化されている。しかしながら現在の電子ペーパーは、そのほとんどが白黒表示であり、明るく鮮やかな色表示を実現する実用レベルのカラー化技術は確立されていない。我々は、透明状態からイエロー、マゼンタ、シアンを各々可逆的に発色する3種類の有機エレクトロクロミック化合物を順次積層した反射型フルカラーディスプレイ(mECD)を開発した。mECDの特徴は、カラー印刷と同様に減法混色方式で色表示することである。試作したmECDの白反射率(555nm)は70%であり、これは従来の反射型カラーディスプレイの中で最も明るい。また、mECDの標準色チャートに対する色再現範囲は27%であり、従来の反射型カラーディスプレイよりも大幅に向上した。さらに、薄膜トランジスタ(TFT)バックプレーンと組み合わせることで、明るく鮮やかで高精細なフルカラー表示を実現した。
近年、プロダクションプリンティング市場では、電子写真方式のカラーPOD(Print on Demand)プリンタの進出が拡大している。その中で、電子写真方式に使用される感光体においては、高耐久性や高信頼性が求められている。このような要求に対し、我々はカラーPODプリンタ向けに新規に高耐久感光体を開発した。本稿では、この新規開発した高耐久感光体に採用した以下の技術、フィラー含有型架橋表面保護層による耐摩耗性の向上技術、新規電荷輸送モノマーによる化学的耐久性の向上技術、高移動度ドナーによるレスポンス性の向上技術、について紹介する。
リコーの中高速カラー機においては、感光体ユニット(PCU:PhotoConductor Unit)の高耐久化を目的として、作像部にステアリン酸亜鉛を主成分とする潤滑剤を採用してきた。今回、この潤滑剤に新規成分を加え機能分離型とすることで、PCUの耐久性及び信頼性を大幅に向上させた。また、本技術を2010年11月発売のimagio MP C5001以降の機種に順次搭載し、市場で従来の課題となっていた異常画像に対して、非常に大きな効果が得られていることを確認した。本論文では、上記の新規潤滑剤を主としたPCU高耐久・高信頼化技術について報告する。
フルカラー複合機 imagio MP C5002/C4002/C3302/C2802シリーズの定着方式はリコー独自の省エネ定着技術であるカラーQSU技術を更に進化させ、超低熱容量の部材を低コストなハロゲンヒータによって直接加熱するDirect Heating定着方式を採用し、省エネ基準であるTEC値(Typical Electricity Consumption)の低減とスリープ復帰時間の短縮に成功し、省エネルギー性能とユーザーの使い易さを両立させた。
また、ニップ形状の最適化により封筒や薄紙に対する用紙対応力向上も実現した。
主な特徴は以下の通りである。
1) TEC値 : 2.34kWh(従来機比45%ダウン)
2) スリープ復帰時間 : 9.1sec以下(従来機比59%ダウン)
3) 用紙対応(坪量範囲) : 52~300g/m2
文書をスキャンして保存する際に、文字認識(OCR)処理を行って透明テキストを貼り付けることでテキスト検索が可能となるテキスト付きPDFが普及している。このテキスト付きPDFの生成をMFP上で実装するために画像処理の高速化が望まれていた。そこで処理速度のボトルネックとなっていた処理を中心に、ソースコードの最適化と、Intelプロセッサ用のSIMD型命令であるSSEを利用した並列化処理によって高速化を行った。その結果、二値画像での処理時間を従来の51.1%まで縮めることができた。
低価格カラープリンタ/MFPにおいては、より高速な印字を低コストで実現することが課題である。最終印字画像作成のためには多くの画像処理を行う必要があるため、高速化実現に対して従来は高速なCPUを使用する必要があり、低コスト化に対するハードルとなっている。特に昨今の機器においては高画質化のため1200dpiでの描画が必要とされ、処理データ量の増大に拍車をかけており、低価格機での高速処理にはブレークスルーが必要である。
本検討では、最終印字画像の描画処理の一部をハードウェア化すること、またハードウェア化に当たってソフトウェア処理部を含む描画処理全体の並列化を考慮することで、低コストで高速な描画処理を実現した。
当社は、2020年までに2007年度比で25%の新規投入資源量削減を掲げている。このとき事務機の構成の大なる部分は鋼板であることから、市中に流通する鉄スクラップを原料とする100%リサイクル材であり、かつ製造時のCO2発生量が最も少ない電炉鋼板に着目し、事務機への適用性を検討した。その結果、事務機用に実用可能な電炉鋼板を材料メーカーと協力して開発することができた。
リコーはレーザープリンタにおいて、小型化・静音設計・消費電力低減を掲げている。その達成手段としてファンレス化があるが、ファンを無くすことによる機内温度上昇を、自然対流による排気の最適化で抑制することが必要となる。その課題の解決策として、稼動時、待機時の機内熱解析シミュレーションを使い、及び気流・水蒸気の流れを制御した。その結果、リコーレーザープリンタ初のファンレス化を実現できた。
GELJETプリンタは、他社に類を見ない高粘度・高浸透ビスカスインクでの高速印字と正逆回転インク供給ポンプを用いたメンテナンスインクの低減に特徴がある。IPSiO SGシリーズの開発に当たり、極限までのマシンサイズ小型化、低コスト化実現を目指して、アクチュエータを大幅に削減した、インク供給駆動切替システムを開発した。
GELJETインクは、その特徴である高発色画像特性、高粘度、高浸透特性を継承しながら、IPSiO GX eシリーズではさまざまな環境下で対応できるよう信頼性を向上させてきた。SGシリーズでは、製造プロセスにおける環境負荷を低減するために、インクの構成成分、及び製造プロセスを見直した。その結果、ビーズミル分散方式の顔料インク処方を確立した。さらに、GX eシリーズ以上の吐出信頼性を確保し、メンテナンス時に消費するインク量を大幅に削減した。
PZT型インクジェットヘッドにおいて、低コスト化と小型化が可能な薄膜PZT型の開発を行っている。インクジェット(IJP)工法、ゾルゲル液を用いたCSD(Chemical Solution Deposition)及び積層下部電極を用いた表面エネルギー制御を組み合わせて、膜厚2μmの均一なPZT薄膜を形成することにより、材料の利用効率の向上と工程数を低減させ、製造コスト及び環境負荷を大幅に低減する工法を開発した。得られたPZT薄膜の電気特性は、比誘電率1700、誘電損失5%、残留分極10μC/cm2及び抗電界23kV/cmと従来法によるPZT薄膜と同等の電気特性を達成した。
電子写真方式のプリンターや複写機では、紙上のトナー画像を熱と圧力で定着させる定着過程で紙がカールすることが知られている。カールは印刷品質の低下につながるため、製品の開発段階で予測し対策を行うことが望ましい。そのためには発生メカニズムを明らかにし、予測手法を得ることが必要である。本研究では、紙表裏の加熱温度差で発生するカールのメカニズムを明らかにするため、平坦なプレートで紙を加熱する実験装置を用いてカールを再現し、紙表面近傍の絶対湿度を計測した。その結果、紙の厚さ方向に水分が移動し低温側の含水率が高まり、加熱後の縮みが高温側より大きくなるため低温側に向かってカールすることが分かった。さらに、毛管内の水分移動と蒸発を考慮した水分移動解析により、加熱時の紙の厚さ方向の含水率分布を計算し、実験で求めた含水率と紙の縮みの関係からバイメタルモデルを用いてカール量の予測を行った。そして、実験と比較し傾向が良く一致することを確認した。
一般に粘着ラベルは剥離紙を用いたものが常識となっている。しかし近年の環境経営の動きの中で、廃棄物の削減、炭酸ガス発生量の削減が望まれており、剥離紙を用いない感熱ラベルとして、シリコーントップライナーレスラベル(= SLL)を開発するに至った。開発にあたりこれまでの感熱ラベルと同様な使い勝手にするというSLLの技術課題を達成するために、搬送性品質やプリンタ印字品質に関して新たな技術を獲得し、リコー独自のSLLを開発したので報告する。
二重積分型AD変換器を搭載した低電力半導体デジタル温度センサーを開発した。私たちは、従来半導体集積回路に外付けされていた二重積分型AD変換器の積分容量を集積化することにより小型化されたデジタル温度センサーを実現した。本稿では、最適設計により消費電力を類似製品に比べ1/5(115uW)に抑え、またCMOS容量のCV特性を利用しAD変換誤差を33%低減することにより、測定精度を±2℃以下に抑えた高精度デジタル温度センサーを実現したことを報告する。
半導体チップのテスト工程やボンディング工程において、アセンブリ応力により層間絶縁膜にクラックが生じ深刻な問題になることがある。本研究では、クラックの発生原因となる応力を解析するため、ボンディングパッド下に応力とクラックを同時評価するコンボセンサを作製し、ボンディング工程におけるクラック発生のタイミングとその応力変化を明らかにした。また、2次元応力分布と接合表面の観察より、応力集中はUS(Ultrasonic)接合の初期段階に形成される合金の塊によって生じることがわかった。
近年の外観検査では、識別が極めて困難で曖昧な不良種の増加や、人によるバラツキで品質を保証する事が難しくなってきており、検査の自動化・効率化が余儀なくされてきている。外観検査の自動化では、極めて高いレベルの検査性能が必要であるが、試行錯誤によるワーク識別では時間が掛かり品質も悪く、また、ベテラン検査員の判断基準が感覚的な場合、数値化が困難となり検査性能を向上するにも限界があった。
そこで検出性能の向上する目的で、GA・GPによって欠陥候補となる領域抽出を行う機能と、MT法によって良否判別を行う機能を組み合わせた構成による検査ツールの開発を目指した。
生産準備プロセスに品質工学の様々な手法を開発し展開することで、プロセス改善活動を実施してきた。開発、展開した手法は「機能性評価」「最適化」「4M変動評価」「4M変更評価」の4種に大別されるが、今回は「最適化」の事例について報告を行なう。
屈曲部にトナーを搬送するコイルバネは、基本性能にバラツキが大きく、稼動寿命が要求を満足せずに製品への搭載が困難な状況にあった。そこで加工条件の設定に品質工学のパラメータ設計の概念を展開した「最適化」の手法を用いて改善を図ることとした。出力にコイルバネが機能を失うまでの経過時間を取り、望大で解析した。ただしそのままでは実験に多大な期間を要する為、加速条件として屈曲の度合いを調整した。制御因子に加工条件を7因子設定し、3因子のノイズを設定し、直交表実験を行った。実験の結果、最適条件では4db以上の改善効果が期待でき、良好な再現性も認められたため、量産工程に反映した。結果としてバラツキは改善し、稼動寿命も1.4倍となり製品への搭載が可能となった。
2012年12月25日発行
発行 | 株式会社リコー 研究開発本部 〒224-0035 神奈川県横浜市都筑区新栄町16-1 TEL. 045-593-3411(代) |
---|---|
発行責任者 | 野中 照元 |
編集委員長 | 金崎 克己 |
事務局 | 進藤 由貴 |