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超高圧対応パルスジェットヘッド

超高圧・高温下における高粘度流体制御を実現

背景

持続可能な社会の実現に向けて、大気汚染の一因である揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制や廃水・エネルギーの削減が、多くの産業分野において無視できない対応領域となっています。こうした中、化学反応や物質変換の効率を大幅に高められる高圧プロセスを活用した環境負荷低減技術が注目されています。しかし、このような技術を実現するにあたり、高圧場を精密に制御できる手段や、扱える流体の種類に制限があるという課題がありました。

解決したこと

リコーは、超高圧・高温下で使用できるパルスジェットヘッドを開発し、これまで難しかった超高圧下における流体制御を実現しました。
超高圧下においてもニードルが縮んでノズルを解放し、再度伸びてノズルを閉じるまでの時間(オープンタイム)を短く制御できるため、開圧速度のコントロールや、吐出の制御が可能です。さらに、デジタル制御により、駆動条件の設定やヘッドのヘルスモニタリング*にも対応しています。

また、超高圧に対応しているため、幅広い流体や材料状態を扱うことができ、従来では困難だった高粘度流体や超臨界流体の吐出も可能です。

これにより、溶剤を使用しない高粘度材料や低極性溶質の吐出を実現できます。

  • *
    ヘルスモニタリング:印刷品質を維持するために、ヘッドの状態をリアルタイムで監視すること

ヘッドが対応できる材料状態

ヘッド 最大圧力 最大温度 対応粘度
産業用インクジェットヘッド(MH5420) ~0.1MPa ~60°C ~12cP
GELART JETヘッド ~0.5MPa ~35°C ~30cP
超高圧対応パルスジェットヘッド ~40MPa ~250°C ~100,000cP

各吐出機構の対応温度・圧力範囲(出典:化学工学会第56回秋季大会講演要旨集PA215 (2025))

グリセリン吐出の動画

技術の特徴

発生力の大きいピエゾアクチュエーターとその押しつけ力に耐えうるセラミックのニードル・タブレットをメカ機構で組み上げることによって、高温高圧に耐えられる機構を実現しました。

また、以下の技術の搭載により高い材料対応力を実現しました。

アクチュエーターの熱的な独立

断熱性に優れるセラミックスペーサを吐出部と駆動部の間に設けることで、熱に弱いアクチュエーターを独立させ、200°Cを超える流体を扱える構成を実現しました。

ヘッド構成

吐出部は200度を超えていますが、セラミックスペーサによりピアゾアクチュエーターを含む駆動部は25度以下の低温に保たれています。

断熱シミュレーション(出典:化学工学会第56回秋季大会講演要旨集PA215 (2025))

ニードル形状による軸ずれ起因の流出防止技術

超高圧下でインクが流出しないようにし、また外部からの異物の混入を防ぐために密封する(封止)には、ニードルと弁座の接触面に大きな力が必要でしたが、ニードル形状を最適化することで、少ない力で封止できるようになりました。

球形のニードル先端によって、ニードルと弁座の接触面の圧力が高くなっています。

ニードルの接触力

高圧下での流体シミュレーション技術

構造解析によりニードルと弁座の接触力を改善し、流体解析により流れ場をシミュレーションすることによって、圧力損失などに問題がないことを確認しました。これにより、ヘッドの構成を最適化することが出来ました。

ニードルが縮んで流路が開いた際に流体がノズルから開放空間へ噴射する様子を示しています。

流速シミュレーション

材料対応力

従来の水や溶媒はもちろん、高圧ガスや溶融樹脂、さらには超臨界流体も吐出でき、幅広いプロセスに対応します。

高粘度溶融樹脂(トナー用ポリエステル)
噴射35MPa,150°C

超臨界CO2による分散染料噴射染色

リコーの想い

リコーは、長年培ってきたインクジェットヘッド技術と、材料技術を組み合わせることによって、高圧下においても多様な流体を制御することで、これまで実現できなかった高粘度液体の微小量塗布や、超臨界流体の制御といったプロセスを可能にします。

また、高圧流体のデジタル制御によって、ムリ・ムダ・ムラを排除することによるコストや環境汚染の低減、作業環境安全性の向上を図り、持続可能な社会の実現に貢献します。

本技術の分類

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