インクジェット技術は、持続可能な社会の実現に向けて、アナログなものづくり工程をデジタル化することによる環境負荷や材料ロスの削減が期待されています。さまざまなものづくりの現場でインクジェット技術を活用するには、幅広い特性のインクを印刷、塗布できるインクジェットヘッドが必要です。
これまでのインクジェットヘッド技術とは全く異なる、高粘度・大きな固形物を含むインクを遠くまで吐出できる「GELART JET(ジェラートジェット)ヘッド」を開発しました。自動車ボディのような凹凸面・湾曲面に対する車両塗装や、壁面・道路などの立体・大面積へのデジタル塗装、さらにはインクジェットによる二次電池の製造などを高い生産性で実施することが可能となります。これにより、塗装・生産工程で発生していたマスキング作業や材料ロスの削減、省エネを実現できます。
GELART JETヘッドの使用例
以下のような技術の搭載により、これまで実現できなかった大面積、凹凸面や湾曲面への塗布や厚塗りなど、さまざまな用途で活用可能なインクジェットヘッドを実現しました。
ピエゾの変位を拡大する機構を搭載することにより、高粘度のインクを大液滴で吐出することが可能となり、高い生産性での印刷・塗布を実現しました。
ニードル先端のバルブの材質や形状を最適化することにより、大径粒子を含むインクの封止が可能となりました。
接着剤を使わずに金属材料を高精度に接合する技術を搭載することにより、ヘッドの耐圧性を向上させインクを遠くまでかつ高精度に吐出することが可能となりました。
GELART JETヘッド構造と吐出メカニズム
インクに常時圧力をかけ、ピエゾの動きでニードル先端のバルブの開閉を高速に制御し、インクを吐出する。
GELART JETヘッド外観
GELART JETヘッド狙いの特性 | [参考]リコー既存ヘッド代表値 RICOH MH5422/5442 |
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方式 | 積層ピエゾ(d33)バルブ方式 | 積層ピエゾ(d33)プッシュモード方式 |
最大駆動 周波数 |
約2kHz以下 | 50kHz(2階調),30kHz(4階調) |
液圧 | 約0.5MPa | 微負圧 |
ノズル数 | 8千鳥配置(4×2列) | 1280千鳥配置(320×4列) |
ノズルピッチ | 約5mm | 約0.1693mm |
外形寸法 | 約123(W)×22(D)×172(H) | 約89(W)×24.5(D)×66(H) |
粘度 | <数100mPa・s(cP) | 10~12mPa・s(cP) |
液滴量 | <数100nl(数100,000pl) | <21pl |
対応粒子径 | <100µm | ― |
飛翔距離 | <100mm(曲面対応) | <3mm(平面のみ) |
リコーは、長年培ってきたインクジェットヘッド技術、インク・サプライ技術、プリンティングシステム技術の3つのキーテクノロジーを応用・発展させ、世の中の常識を変える“ものづくりデジタル変換”で、新しい価値の実現を目指しています。次世代インクジェットヘッド「GELART JETヘッド」による新たなジェッティングシステム技術は、従来のインクジェット技術のスケールの限界を超え、さまざまな材料を印刷、塗布することで、環境汚染低減、無駄の削減、省エネ、生活の質の向上など、持続可能な社会の実現に貢献します。