Skip to main content Skip to first level navigation
Breadcrumbs

Share

Main content

バイオマスプラスチック材料技術

枯渇資源である石油の消費を抑えるとともに、温暖化防止に寄与する材料として、リコーはバイオマスプラスチックに早くから注目し、技術蓄積と製品素材の実用化を行っています。

リコーでは低炭素/循環型社会でのものづくりを見据えた「代替材料の開発」の一環として、バイオマスプラスチックを利用した画像機器部品の開発に取り組んでいます。

リコーでは、2002年から画像機器向けバイオマスプラスチックの開発に着手し、2005年、業界に先駆けてデジタル複合機にバイオマス度(*1)50%の内装部品を採用しました。2008年には、バイオマス度を約70%まで向上させた部品を搭載しました。

その後も、部品の適用範囲拡大に向けて、画像機器の外装部品の素材に求められる高い難燃性、耐久性などを満たした高難燃バイオマスプラスチックの実用化に成功し、2013年8月、プロダクションプリンター RICOH Pro 8120S/8110S/8100Sの外装部品に採用しました。

(*1)部品に含まれるバイオマスプラスチックの割合

バイオマスプラスチックのメリットと課題

バイオマスプラスチックは再生可能な生物由来のバイオマス資源を利用したプラスチックです。現在、実用化段階に入っているものは、植物由来の材料によるものです。代表例は、植物に含まれるデンプンや糖、セルロースを原材料とした高分子材料で、デンプンを発酵させた乳酸を化学合成したポリ乳酸です。ポリ乳酸は、たとえ焼却しても排出されるCO2は原料となる植物が成長する際に光合成によって吸収したものであり、大気中のCO2を増加させません(カーボンニュートラル)。そのため、温暖化を促進させない環境負荷の少ない材料です(図1)。また、ポリスチレンなどと同等の剛性と強度を備えています。しかしながら、耐久材として利用するには耐熱性や耐衝撃性に課題があり、電気電子機器の部品に利用するには燃えにくさの指標である難燃性の確保も大きな課題です。さらには、部品に成形加工する際の量産性についても課題があります。

リコーでは、これらの課題をクリアし、将来の本格的採用を目指して、間伐材・廃木材などの非可食材料からポリ乳酸を耐久部品に適用させる材料技術、および経済性も両立する量産性の高い成形技術の開発にも取り組んでいます。


図1:バイオマスプラスチックの循環


ページトップへ

バイオマスプラスチック使用量拡大に向けた課題とリコーのアプローチ

1.複合機における適用範囲拡大の課題

複合器には1台あたり、重量比でおよそ20~30%のプラスチック部品を使用しています。そのプラスチック部品の用途は多岐にわたっており、内装カバーや給紙トレイなどの内装部品、カバーなどの外装部品、高耐熱性が要求される定着ユニットや高い寸法精度が求められる光学ユニットなどに使われる機能部品があり、それぞれ要求される特性が異なります(図2)。特に使用量が多い外装部品には高い難燃性(燃えにくさ)が求められています。リコーは、用途に応じたさまざまな課題をクリアし、適用範囲の拡大を目指しています。


図2:複合機に採用される樹脂の用途割合と用途ごとに求められる特性


2.バイオマス材の搭載拡大

リコーが画像機器の素材として採用しているポリ乳酸は、植物を原料とする結晶性ポリエステルで、耐熱性、耐衝撃性、量産性、難燃性が課題となっていました。
従来は、石油系プラスチックを一定量混合することでこれらの課題をクリアし、これまで、RICOH MP 6055/5055/4055/3555/2555RICOH SP 8400/8400M/8400a1/8400M a1RICOH IM 430FRICOH P 6030/6020/6010/6000等に搭載してきました。現在、リコーでは石油系プラスチックを混合させずに耐熱性と耐衝撃性を確保し、バイオマス度を向上させた新規バイオマスプラスチックの開発を進めています。

3.高難燃バイオマスプラスチックへの挑戦

画像機器の外装部品には、安全性の観点から高い難燃性(燃えにくさ)が求められます。国際安全規格では、画像機器などの大型機器の外装部品にはUL94規格(*2)の5VBレベルが要求されており、内装部品に対する要求レベルのV-2から、5VBまで難燃性を向上させることは、大きな技術課題でした。しかし、これを解決し、1台あたりの使用量が多い外装部品への適用が実現できれば、大幅な環境負荷削減効果が期待できます(図2)。

この難燃性についても、一定量の石油系プラスチックを混合する方法でクリアできますが、リコーは、再び材料メーカーと共同し、難燃性の向上、強度の確保に成功しました。
さらに成形しやすさも改良し、難燃性V-1を達成して、耐久性、耐熱性もクリアするプラスチックを完成させました。

(*2)難燃性規格UL94(Underwriters Laboratories Inc.の規格)。等級はHB、V-2、V-1、V-0、5VB、5VA。

画像機器部品への利用におけるリコーの目指す方向性

今後も、リコーが掲げる2030年の環境目標「新規資源使用率(*3)60%」の達成に向け、より大型の部品に適用するための剛性や成形性の向上や、機能部品に求められる特性である耐熱性や低吸水性の向上、耐久寸法精度(*4)の確保などに取り組み、使用量拡大のための技術開発を進めていきます(図6)。また、リサイクル性の向上にも取り組み、バイオマスプラスチックのライフサイクルでの環境貢献度をさらに高めていきます。

(*3)新規資源使用率:総投入資源量に対する新規資源使用量の割合
(*4)耐久寸法精度:5年以上の複数年使用する画像機器のプラスチック部品に適用するため、熱・吸水などにより寸法変動せずに、複数年後も確保する寸法精度



図3:バイオマスプラスチックの開発イメージ

本技術の分類:分野別「電子写真」「省資源」|製品別「環境」