Skip to main content Skip to first level navigation
Breadcrumbs
Main content

サトーホールディングス株式会社様×リコー 対談

経営層と社員のコミュニケーションを担うナレッジマネジメントシステムに、リコーの自然言語処理AIを導入。
全員参画経営×AIの共創が生んだ新しい価値が叶える未来の働き方とは?

リコーのデジタルサービスと顧客のアイディアの融合によって価値を生む知的創造空間、RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE TOKYO(RICOH BIL TOKYO)。サトーホールディングス様の代表取締役 社長執行役員 グループCEO小沼宏行様のRICOH BIL TOKYO来場をきっかけに、サトーホールディングス様の「全員参画経営」の軸を担うシステムのDXが進みました。

両社の共創が実現したのは、社員と経営層のコミュニケーションツールであり、会社の成長に欠かせない「三行提報」業務の効率化。RICOH BIL TOKYOで引き出された課題やリコーのAIが叶える新しい働き方について、サトーホールディングス様 秘書部長の渡辺均様、秘書部提報グループ長の近東佑美様、AIモデルの開発を担当したリコージャパン デジタルサービス技術本部の高野隆一、サービス設計を手がけたリコー AIインテグレーションセンターの大場知悟の4人が語り合いました。

社員の声を経営に活かす「三行提報」
会社の永続的な成長を支える仕組みとは

大場:CEOの小沼様のRICOH BIL TOKYOご来場をきっかけに、サトーホールディングス様の「三行提報」の業務を効率化するプロジェクトがスタートしましたが、この「三行提報」はいつ、どのような目的で生まれたのでしょうか。

株式会社リコー デジタルサービスビジネスユニット
AIインテグレーションセンター
DXシステム開発室 室長
大場知悟

渡辺様:1976年に創業者の佐藤陽が始めた取り組みが、三行提報の原型です。当時、佐藤はハンドラベラーの売れ行きが好調で忙しい毎日を過ごしていました。会社の規模が大きくなるにつれて、社員ひとりひとりの考えや現場で起きていることが見えにくくなったという課題を感じ、課長以上の管理職にB5サイズの日報を書いてもらい、毎日読んでいたんです。

その後社員数も増え、日報をすべて読むのが難しくなったこともあり、社員に、経営者への提案や報告を3行で書いて出してもらうようになったのが、三行提報の始まりです。会社を永続的に成長させるため、社員の力を経営に活かせるよう、トップに直接、提案ができる手段として三行提報は確立されました。

サトーホールディングス株式会社
秘書部長
渡辺均様

渡辺様:1976年に創業者の佐藤陽が始めた取り組みが、三行提報の原型です。当時、佐藤はハンドラベラーの売れ行きが好調で忙しい毎日を過ごしていました。会社の規模が大きくなるにつれて、社員ひとりひとりの考えや現場で起きていることが見えにくくなったという課題を感じ、課長以上の管理職にB5サイズの日報を書いてもらい、毎日読んでいたんです。

その後社員数も増え、日報をすべて読むのが難しくなったこともあり、社員に、経営者への提案や報告を3行で書いて出してもらうようになったのが、三行提報の始まりです。会社を永続的に成長させるため、社員の力を経営に活かせるよう、トップに直接、提案ができる手段として三行提報は確立されました。

サトーホールディングス株式会社
秘書部長
渡辺均様

高野:週報や月報ではなく、毎日、提出するのはなぜなのでしょうか。

渡辺様:仕事に対して常に問題意識を持っていてほしいからです。毎日、書くものですから、社員たちは報告や提案する内容を常に探しています。そこで見つかる些細な気付きの中に、宝になるものや、会社の倒産につながる穴もあるかもしれません。問題意識を持つことで社員は成長しますし、文章をまとめる力も身に付きます。経営者側も三行提報から細かな情報が得られ、それらの提報が点と点となり結びついて面となり、イマジネーションが膨らみ、その積み重ねが、業務改善や、新しいビジネスにつながると思っています。

リコージャパン株式会社 デジタルサービス技術本部
DSPSソリューション事業部
第一ソリューションデリバリー部
高野隆一

毎日、2000件の三行提報を10人のチームで分類
業務効率化のAI活用を模索してきた

高野:小沼様がRICOH BIL TOKYOに来場された際、社内のコミュニケーション活性化について何かできることはないかと話されていたのが印象的でした。BIL TOKYOでの対話の中で、三行提報業務の改革にも取り組んでいるというお話があったんです。

渡辺様:社員から毎日提出される約2000件の三行提報をチェックして、優先的に社長に提出する約15通に絞る作業を、約10人のチームで行い、ひとりあたり1日平均1.5時間かけていました。実は、この業務を効率化できるAIを数年前から探していたんです。

具体的には、AIによってまずは2000件を1000件に絞るため、他社さんにご相談したり、提報専用のAIを作ろうとしたりしてきたのですが、非常に難しくて。「これは選ばなくていい」というものが入っていたり、反対に重要な提報が弾かれてしまったりして、閾値の設定などに非常に時間と労力がかかる上に、納得できるレベルに到達できませんでした。

そんな時、リコーさんの自然言語処理AIを三行提報のシステムに組み込むご提案をいただいたんです。AIの技術は日進月歩で、我々が三行提報業務のためにAIを探し始めた頃からも大きく進歩していますから、タイミングとしても非常にうまくマッチしたと思っていますね。

サマリー化した文章を理解する自然言語処理AI
人による選定と同レベルのスクリーニングを実現

高野:AIによる三行提報の分類を進めるにあたり、最初に、検証用に三行提報のデータをかなりの件数、お預かりしたんです。まず私のほうでその提報をすべて読み、全体的な傾向を掴みました。三行提報でまず行うべきスクリーニングは、①経営トップへの提出候補、②公開に配慮が必要な内容、③それ以外の3つの分類です。最初に私がこの分類作業を行い、結果に対してフィードバックをいただきました。

最初はまったく納得いただけるレベルではなかったのですが、近東様から、「この調子で調整していけば、今の選定基準に近づけられるのではないか」というコメントをいただけたんです。AIモデルを作り、近東様からのフィードバックをふまえてパラメーターを変更して、またモデルを作り……という形で進めていきました。全部で200モデルほど作り、三行提報チームの皆さんが実際に分類されていたレベルに近づけることができましたね。

近東様:分類していただいたものを私が見て、答え合わせをしていくイメージでしたね。私たちの選定結果と比べた時のヒット率をお戻ししながら、「この部分の精度が上がりますか?」という形で、フィードバックしていきました。

サトーホールディングス株式会社
秘書部 提報グループ
グループ長
近東佑美様

高野:難しいのは、AIというのは、自動的にもっとも高い精度で結果が出るようになっているんです。そこを調整しないと、拾いたい提報がこぼれてしまいます。分類ごとにあえて精度を下げるなどして、カバー率を上げていく調整がとても難しかったですね。

近東様:そうですね。この部分は絞り込みすぎず広めに拾ってほしい、という形でお願いしました。

大場:今回の開発で活用されている自然言語処理AIは、人間が日常的に使っている自然言語を処理する技術です。言語は、同じ意味でも違う言い回しをするため、人が読んで理解できても、機械が正しく意味をすくい上げるのが難しいんですね。自然言語処理AIは、そうした意味の分類が可能な技術です。

システムの設計をする際には、将来的な使いやすさも意識しました。2000件の三行提報を、その日の業務終了後に解析し、翌朝には皆さんがチェックできる今の形を前提として、今後、サトーホールディングス様が成長されて、提報が5000件や1万件になっても安心して使っていただける形に設計しています。

渡辺様:特に三行提報のように短くまとめられている文章は、省略している部分や行間が多いですから、意味を読み取るのが非常に難しかったと思います。今、我々の選定とAI解析のヒット率はほぼ同じです。何度も難しい課題をご提示してしまいましたが、迅速にクリアしながら、システムをここまで軌道に乗せてくださったことには、感謝しかないですね。

近東様:渡辺から、これまでいろいろなAIで試行錯誤してきた経緯を聞いていたので、実は最初は、本当にできるのか、半信半疑でした(笑)。実際に開発をスタートしたら、「これは行けるんじゃないか」と期待が膨らみましたし、期待以上の形にしていただけて、日々の業務でもとても助かっています。三行提報のスクリーニングにかける時間が半減して、その分、別の仕事ができますので、チームのメンバーも業務効率化につながったと言っています。

渡辺様:リコーさんのAIを、信頼できていることが大きいですね。安心感を持って選定を任せられます。今は2000件を半分に絞るところまでAIが担っていますが、将来的には最後までAIが選ぶというところまで、精度を上げていけるといいなと思っていますね。

情報の宝庫である三行提報
AI解析によって活用の幅を広げたい

大場:三行提報は、今後、どのように展開されていきたいと考えていらっしゃいますか?

渡辺様:今回の効率化は、現時点では我々三行提報チームしか恩恵を受けていません。これからは、三行提報を書く社員たちにも恩恵を受けてもらいたいですね。今、三行提報システムの検索機能を充実させていて、社員が、三行提報のデータベースから業務改善やアイディアにつながる情報を受け取れるようにしているんです。ただ、たとえば新しいプリンターについて調べるためにキーワードで検索をかけると、800件や1000件の結果が出てしまって、すべて読んで分析するのは非常に時間がかかるのでなかなかできるものではありません。

その検索結果をAIで整理できれば、三行提報から効率的に情報を受け取れます。たとえば開発担当者が、営業が書いた提報から商品に対する市場の反応を知って、次の開発に活かすことが可能です。

大場:今、トレンドの生成系AIも、さまざまな業務に活用可能です。たとえばAIが、新入社員や若手社員の方が三行提報を書く際の壁打ち相手になってアドバイスをしたり、業務に関する意見を出したりといった用途も可能です。サトーホールディングス様の知識を学んだAIのエージェントを活用して、三行提報のレベルや業務の精度を上げるというアプローチも可能です。ベテラン社員の知識を学習したエキスパート人材としてのAIの提供も、リコーが目指しているところです。

渡辺様:人への業務の偏りという課題は当社にもあります。技能継承や知識の蓄積もAIに担ってほしい部分ですね。

近東様:お話をうかがっていて、AI活用の可能性の幅を感じました。三行提報のスクリーニングだけではなく、いろいろなシーンでのAI活用に期待したいですね。

正解はお客様の声にしかない
これからも対話を通じて価値を生み出していく

大場:今後も、RICOH BIL TOKYOを共創の拠点として活用していきたいと思われますか?

渡辺様:そういった場所で、イノベーションが生まれるきっかけを得られたら良いですね。AIに関しても、私たちが想像できないような活用法に気付けたら嬉しいです。アイディアを生むことは、自社だけでは限界があると感じています。当社には強みもあれば弱みもありますので、弱みの部分は、共創できる企業様に助けていただきながら、そのシナジー効果でパワーアップしていきたいです。

近東様:今回のようなAI活用も、自社や自分たちの部署だけで行うのは非常に難しいと思います。高い専門性をお持ちの企業様と一緒に課題を解決するメリットは、今回、実体験として強く感じましたので、今後も共創に取り組んでいきたいですね。

高野:今、本当に求められているものや、正解というのは、社内ではなくお客様にしかないということを強く感じています。対話がなければ、一生懸命、自分たちだけで考えて作っても実際には価値をなさないということの繰り返しになると思います。お客様の課題、そして開発をどういう方向に進めるべきか、その正解はお客様の声にありますので、今後も対話をベースに開発を進めたいです。

大場:今、AIは期待を集めていますし、経営に活かせるツールのひとつですが、万能ではありません。お客様に役立てていただくためには、しっかりと課題を理解して、適切なツールを提供するのが重要だと思っています。引き続き、サトーホールディングス様との対話を重ねて、より良いAIソリューションをご提供できるよう努めていきたいです。本日は、ありがとうございました。

お客様情報

サトーホールディングス株式会社 様