2023年4月
ダイナモアミューズメント様×ハシラス様×リコー 対談
世界中の社員が創業者のもとに集う一体感を、リアルを超える驚きと感動を、メタバース上に構築した創業者記念館で実現。
共創で追求するコロナ収束後のVR・メタバースの未来。
新型コロナウイルスにより、社会全体が大きく、急速な変化を強いられてから約3年。ようやく収束というタイミングを迎え、人々のライフスタイルが再び変化しようとしています。
こうした中、リコーはVRやメタバースの可能性を探っています。
ダイナモアミューズメント様、ハシラス様と共創し、リコーの創業者 市村清記念館をメタバース上に構築。世界中から社員が集まり驚きや感動を共有し、求心力を高めていくとともに、リアルを超える新しい空間、ワークプレイスとしての可能性を探求していきます。
3社共創から生まれた市村清記念館の詳細は、プレスリリースもご覧ください。
本社事業所にて
コロナをきっかけに“メタバース”がパワーワードに
様々な業界に広がる仮想空間への期待
株式会社リコー
RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE Tokyo
ビジネスデザイナー
千代直貴
千代:“リアル”にお会いするのは久しぶりですね。
小川様:はい。メタバースの本社事業所にはよく来ていますが、リアルな訪問は久しぶりなので「メタバースと同じだ、自動販売機のデザインまで一緒!」なんて思います。
千代改めて振り返ると、3社共創が始まったのはコロナ前でしたね。最初はRICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE Tokyoで用いるVRプレゼンテーションツールをリリースし、コロナを機に、完全バーチャルのメタバース構築に向けた今回のプロジェクトがスタートしました。
このプロジェクトの目的には、社会情勢に合わせた新しいビジネスの確立に加えて、リコー社内の課題解決があります。長引くコロナの影響により、リコー社内ではコミュニケーションの希薄化や帰属意識の低下が課題となり、今一度、求心力を高めるために創業者の記念館をメタバース上で構築したいと考えたんです。
山本:コミュニケーションや帰属意識の低下はお客様企業でも課題になっていて、「VRで改善できますか?」や「職場をメタバースにするメリットは?」など、漠然としたご相談が増えています。仮想空間への関心が高まっている現れだと思うのですが、ダイナモアミューズメントさん、ハシラスさんのビジネスにおいて、コロナを機に変わったことはありますか?
株式会社ダイナモアミューズメント
代表取締役社長
小川直樹様
小川様:コロナをきっかけにVRへの期待が高まったのは確かですが、僕らのビジネスは、遊園地やテーマパークなど人が集まる施設でVRアトラクションを提供するロケーションベースを中核としています。ですから、人が集まることが困難なコロナ禍では、手法を変えていく必要がありました。そこで着目したのがメタバースです。リアルに集まれないならメタバースに集まってもらおう、と。
今回の記念館でも活用しているハシラスさんの「めちゃバース」も、コロナ禍に開発されたものですよね?
安藤様:はい。「めちゃバース」は、コロナで生活様式が変わる中、複雑な手順を踏まずに手軽にバーチャル空間に参加できるツールとして開発したものです。ただ、事業領域を広げていく必要性については以前から感じていました。というのも、コロナ前、VRへの関心は停滞、下降している感覚がありました。VRへの過剰な期待が先行し、使ってはみたものの思ったより不便……と評価されたのだと思います。こうした状況下でコロナが勃発。現実社会の制約が大きくなったことを受け、相対的にVRの価値が向上しました。また、Facebook社が社名をMetaに変えた影響も大きく、メタバースへの関心が一気に高まっていったように思います。
小川様:“メタバース”がパワーワードとして、社会全体で認知されるようになったんですよね。その結果、具体的なイメージはまだわいていないけれど興味はある、何か取り入れてみたいという期待が、様々な分野で高まっていると思います。
千代:創業者の記念館をメタバース上につくることについて、最初はどのように思われましたか?
小川様:ハシラスさんも同じだと思いますが、僕らは全てのものにエンタメ要素が必要だと考えているので、エンタメ施設でも記念館でも、コロナ禍でもそうでなくても、我々が関わるからには驚きや感動がある空間にしたい、という気持ちは変わりません。記念館の理念をどう表現すれば伝わるのか、隣の人に伝えたり拡散したくなるのか。それを追求していく共創になるだろうと思いました。
千代:単にリアリティの再現に留まらず、社員が驚いたり感動できる空間に、という点は私たちもこだわったところです。
安藤様:3Dビューアに近いメタバースもありますが、今回のメタバースはゲーム的な要素が強く、ワクワク楽しい世界になっていますよね。このあたりは、人を楽しませたいという気持ちがDNAのように根付いている、僕らならではカラーが生きているところだと思います。
本社事業所のエントランスを丸ごとメタバースに再現
驚きや感動を引き出す演出のチカラ
千代:コロナ禍に失われた“出社する”“集まる”という感覚を再現したかったので、記念館単体ではなく、本社事業所のエントランス部分を丸ごとメタバース上に構築し、その奥に記念館があるという構成にしました。ただ、実際に構築されたメタバースを見るまで、エントランス部分の作り込みが、これほど没入感に影響してくるとは思っていなかったです。
小川様:アメリカ発の某テーマパークを思い浮かべると分かりやすいと思います。アトラクションに乗る前、列に並んでいる空間にも楽しい装飾が施されていて、だんだん気分が高まっていきますよね。この演出があるから、日常からアトラクションの世界へ自然と入り込んでいけるんです。記念館単体を演出するのと、エントランスからの導線も含めてトータルに演出するのとでは、ユーザーの感じ方が全然違ってきます。
リコージャパン株式会社
ICT事業本部
スマートコミュニケーション
企画センター
サイネージコンテンツ事業室
デジタルコンテンツ企画グループ
山本聖子
山本:これだけの没入感があるのは、導線も含めた演出があるからなのですね。私もメタバースに入った瞬間、「久しぶりに出社した」という感覚になり、記念館で創業者の歩みに触れたり、チャットボックスで他の社員と話すうちに、この世界観に入り込み、愛社精神が自然と高まっていくようでした。
RICOH BIL Tokyo METAVERSE
市村清記念館
本社事業所エントランスを丸ごとメタバース上に再現し、実際にはホールがある場所に架空の記念館を構築。本物そっくりのメタバースの事業所に“出社”し、創業者のもとに“集まる”感覚を演出しています。
実際の本社事業所
メタバースの本社事業所
市村清記念館の入口~館内
三愛会が保存する膨大な資料の中から、記念館で紹介するコンテンツを厳選。
映像や音声による演出を盛り込み、創業者の歩みを体感できる空間となっています。
記念館入口
リコーのこだわりで時計が指す時刻は「3時」に。リコーにとって「3」は創業の精神「三愛精神」を連想させる数字。さらに長針と短針が「L」の形を成すことから、こちらでも3+Loveで「三愛精神」を表現。
市村清の銅像
記念館の中央に配置した銅像は、本社事業所に実際にある銅像を精巧にスキャンして取り込んだもの。銅像に近づくと、市村清の講演「私の座右の銘」の肉声が流れる。
株式会社ハシラス
代表取締役社長
安藤晃弘様
安藤様:没入感にリアリティは不可欠なので、時計や銅像、さらに窓の外の風景も丁寧に作り込みました。皆さん「本物そのまま!」と感じられていると思いますが、リアリティを追求するために敢えて実物とは変えているところが結構あるんです。例えば、アバターの視野と人の視野は異なることを踏まえ、柱や手すりの比率は実物とは変えて、コンテンツにおける正しさを演出しています。
ミーティングスペース
窓の外には環七通りの景色が広がる。RICOH THETAで撮影した360°の画像を「めちゃバース」に組み込み、まるでそこに立っているかのような景色を演出している。
2階廊下
敢えて実物とは比率を変え、柱の幅は実際の1/2にすることで、アバターがスライドを見ながら自然に歩けるようにしている。
千代:先日、創立記念イベントで社員にこのメタバースを公開したところ大変好評でした。特に反響が大きかったのは、銅像から聞こえてくる創業者の肉声です。音声データが残ってること自体、ほとんど知られていなかったので、初めての肉声に感動したという声が多く寄せられてます。
URLをクリックするだけでメタバースに入れる「めちゃバース」の手軽さもあって、3時間の公開中に、世界中から約1000名ものアクセスがありました。
安藤様:アクセスの手軽さは不可欠だったと思います。せっかく興味をもっても、アクセスするのに手続きが必要、事前登録や専用アプリケーションが必要と言われると、その時点でもういいかなと、見たいという気持ちがしぼんでしまいます。その点、「めちゃバース」はクリックするだけ。「クリックしたらもう本社!」なので、見てみたいという好奇心を保ったまま、メタバースに飛び込んでもらえたのだと思います。
今年はメタバースも使って開催した創立記念イベント「Foundation Day 2023」の様子
山本:今後はこのメタバースをお客様企業へも紹介していく予定です。先にお話ししたとおり、メタバースに漠然とした興味を持っている企業は多く、どんなことができるのかというお問い合わせが、今、すごく多いんです。こうしたお客様企業に対して、自社のメタバースをサンプルとして見せられるのは大変助かります。
小川様:社外の方の場合、先にメタバースの事業所に“来社”し、その後リアルな事業所に来社するという、社員とは逆のパターンも出てきませんか?
山本:はい。メタバースが先、というケースが増えていくと思います。私たち社員は本社を知っているので、メタバースを見て「本物と同じだ!」と驚いたわけですが、反対に、本社を見て「メタバースと同じだ!」と驚いてもらう流れでも、面白いことができそうです。例えば、採用活動はどうでしょうか。メタバースで面接を行い、選考が進んだ段階で本物の本社事業所に来社してもらう、とか。
安藤様:採用活動、いいですね。ここがメタバースで見たあの本社なんだ!と、聖地巡りではないですが、映画ワンシーンを見に来たような感覚をもってもらえそうです。
コロナ収束で再び変化するライフスタイル
これからのVR、メタバースに求められることとは?
千代:ついにコロナ収束というタイミングを迎え、人々の生活様式が再び変わろうとしています。これからのビジネスの方向性としては、どんなことが考えられますか?
小川様:どんな状況でも、“伝えたくなる驚き”を、もっとも追求できる場所で僕らは勝負していきたいと思っています。では、その場所がどこかいうと、今の時点では、リアルな現場で行うロケーションベースのVRだと僕は思います。と言っても、コロナ前のアプローチそのまま、ということではありません。コロナを経てリアルに“会う”価値が人々の中で一段階高まっており、この感覚は今後も続いていくでしょう。ですから、ロケーションベースのコンテンツにおいては、リアルに集まるからこその驚きや感動を、今まで以上に極めていくことが求められていくと思います。
千代:確かにリアルに“会う”価値は、コロナを通じて改めて気付かされたことの一つです。一方、メタバースのようなバーチャル空間の利点としては、膨大なデータを収集できることが挙げられます。どんな人が入って来て、どんな行動をして、満足度はどうなのか。様々なデータを元に改善を重ねていけるプラットフォームが、今後は伸びていくと思っています。 メタバースの可能性について、安藤さんはどのようにとらえられていますか?
安藤様:メタバースはまだ過渡期であって、過渡期の間は、長期的な実利と短期的な実利の両方をにらんでいく必要があると思います。メタバースの真価は全ての人がバーチャルな世界の住人になってこそ発揮されます。FAXからメールへの移行のようなもので、大部分がメールに移行しても、一部の偉い人がFAXのままだったら、メールのメリットは半減しますよね。過渡期にも利益を生み出す領域は必ずあるので、長期的な実利に向けた技術開発を進めると同時に、今、実利を生む領域を見極め同時に取り組んでいくことが、事業拡大には必須だと考えています。
山本様皆さんのおっしゃる通り、リアルとリモート、それぞれの良さを誰もが認識しており、メタバースをはじめ技術革新も目覚ましい中で、リコージャパンとしては、企画力や提案力がさらに問われてくると思います。料理と同じように、様々な具材(商品・サービス)を取り揃えた上で、より良いものを選び組み合わせる。どんなレシピでどう調理するとお客様に一番喜んでいただけるのかを考える。こうしたトータルな企画力、提案力がリコージャパンの強みであり、他社との差別化につながると思います。
千代様いろいろなご意見、ありがとうございます。本日皆さんにお話しいただいた中に、次の共創のヒントがありそうですね。引き続き共創を進め、新しい価値を生み出していきましょう。本日はありがとうございました。
お客様情報
株式会社ダイナモアミューズメント様
テーマパークや遊園地、イベント、ライブなどにおいて、企画立案から制作、運用、展開まで一貫したサービスを提供。
VR/AR/XR技術を用い、驚きや感動のある空間・体験をトータルにプロデュースする。
詳しい情報は、こちらをご覧ください。
https://dynamoamusement.jp
株式会社ハシラス様
VRやAR、MRといった最新テクノロジーと、脳と五感を騙すテクニックを駆使し、圧倒的な臨場感による感動体験を創造。
XR(VR/AR/MR)コンテンツに加え、自社開発のメタバースソリューションも展開している。
詳しい情報は、こちらをご覧ください。
https://hashilus.co.jp