未来を拓く戦略を描き
挑戦を価値創造につなげる
入佐 孝宏
CSO(Chief Strategy Officer)
2026年度にリコーは経営体制を刷新し、CxO体制のもとでCSOという新たな役割を設けました。CSOの役割は、変化の激しい事業環境において、全社における事業ポートフォリオや経営資源配分の観点から全体最適での意思決定を支え、リコーの持続的成長を実現するとともに、企業価値向上につなげることです。
現在のリコーの最優先課題は「稼ぐ力」の向上です。中経’26では事業と地域の双方が責任を持つマトリックス経営へ移行し、ワークプレイスにおけるグローバル随一のインテグレーターを目指します。重要なのは、それぞれの事業や地域の視点を踏まえながらも、将来の成長性と資本効率を見極め、グループ全体として最適な事業ポートフォリオを構築していくことです。
企業価値は足元の業績だけで決まるものではありません。ステークホルダーの皆様からは、将来にわたり価値を創出し続けられる企業かという点でも注目されています。だからこそ、足元で稼ぐ力を高めながら、未来への成長につながる種をまき、育てていく。そして、その種が新たな技術や事業として次の成長を生み出す。この循環をつくることこそがCSOとして果たすべき最も重要な使命だと考えています。
リコーが目指しているのは、単なるデジタルサービスの提供ではありません。その原点は、1977年に提唱したオフィス・オートメーション(OA)、すなわち「機械にできることは機械に任せ、人はより創造的な仕事をするべき」という考え方にあります。
AIやデジタル技術の進化が「はたらく」の在り方そのものを大きく変えようとしている中、単純作業を減らし、人ならではの創造的な仕事を増やすことがリコーの使命だと考えています。そのために、AIやドキュメント技術を活用し、お客様の暗黙知やノウハウなどの情報資産を価値へと変換する支援を行っています。熟練者の経験継承の難しさや人手不足といった課題を抱える多くのお客様に対し、課題解決を共に考え実現するパートナーとして、伴走していきたいと考えています。
また、未来への投資も重要です。インクジェット技術を活用したペロブスカイト太陽電池など、新たな成長が期待される分野にも取り組んでいます。2030年、そしてその先の社会を見据えながら、成長の種をまき、育てていく。その挑戦を支えることが、持続的な企業価値向上につながります。
将来の成長性と資本収益性の2軸で事業ポートフォリオを不断に見直し、経営資源の最適配分を進めることが、私たちの戦略の根幹です。
私は、中経'26の成功の定義として、ROE10%達成だけでは不十分だと考えています。資本コストを上回る収益性の実現は企業として重要な責務です。しかし、真に目指したいのは、リコーが「未来を拓く会社だ」とお客様や市場から期待される存在になることです。
その実現のカギを握り、ワクワクできる未来を創るのは、社員一人ひとりです。私は入社以来、リコーには、やりたいことに挑戦できる文化・風土があると感じてきました。長年にわたるAIへの投資や環境経営への取り組みも、その挑戦の積み重ねによって実現してきたものです。
社員が自ら考え、挑戦し、新たな価値を生み出す。その自律性こそがリコーの競争力の源泉であり、社員の挑戦を後押しする環境を整えることが経営の役割です。新たなアイデアが生まれ、失敗から学び、次の価値創造につながる。そうした循環を積み重ねることで、リコーがこれまでプリンティングで培ってきた強みを基盤に、テクノロジーを活用して「はたらく」に変革をもたらす企業へと進化できると確信しています。私はCSOとして、足元の稼ぐ力を高めながら、未来を見据えた意思決定にも責任を持ち、リコーの持続的な成長と企業価値向上を実現していきます。