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リコピー101:オフィスオートメーションのさきがけ

1950年代後半、「複写する」という代わりに「リコピーする」という言葉が産まれ、複写の代名詞として広く普及していきました。そのルーツは、1955年に発売になった「リコピー101」です。

「事務機のリコー」の幕開けを飾ったリコピー101とそれに続く一連の卓上型ジアゾ湿式複写機リコピーシリーズは、文字どおりオフィスオートメーション(OA)のさきがけとして事務作業の合理化に革命をもたらしました。

現存する最古のリコピー101の同型機

現存する最古のリコピー101の同型機 内部

現存する最古のリコピー101の同型機 (リコー沼津コミュニティホール蔵)

リコピー101は、理研光学工業株式会社(現、株式会社リコー)が、1955年(昭和30年)に発売した卓上型ジアゾ湿式複写機で、露光(焼付け)・現像一体型としては我が国初の製品です*。従来は、間に手作業が入る露光と現像のプロセスを同一機で連続して行えるようにすることで操作性が格段に向上しました。同時期にリコーが開発した湿式現像を可能とするジアゾ感光紙と現像液により、無水・無臭の露光・現像を実現しています。また、感光紙は従来のロール紙ではなく、カット紙タイプのものを使う構造で、使い勝手にも配慮がみられます。

*焼付け機と現像機が別々の卓上ジアゾ複写機は数年前に国産他社メーカーより発売されています。

利用シーン(モデルは当時のリコー社員)

利用シーン(モデルは当時のリコー社員)

当時の生産ライン(リコー 大森事業所)

当時の生産ライン(リコー 大森事業所)

当時、ジアゾ複写プロセスは、アンモニアガスを用いる方式が主流でした。露光機で焼付けをした後、現像にアンモニアガスを用いるので装置も大型になり、また排気設備のある部屋でなければ使えませんでした。このため、設計図面や建築図面の複写が主な用途で、一般オフィスに設置するのには無理がありました。また一方で、工業用には従来から(ジアゾ方式ではない)青写真焼付け機械がありましたが、これは露光後に現像液に浸け、さらに水洗いを必要としていました。そのため、リコーはジアゾ感光紙の湿式現像法の研究に力を注ぎ、この成果が、無臭、かつ水洗いも不要で、事務机の横で簡単な操作で使える複写機「リコピー101」の製品化につながりました。

リコピーは、露光・現像・紙送りなどに独創的な機構を持っています。現像装置の紙送りローラーに溝を付け、それにローラーより径の大きいリングを取り付けて、このリングで挟んで現像で湿った紙を引き出すため、ローラーに巻き付くことなく、しわやカールを発生することなく送ることがでるように工夫されています。1分間に5枚のコピースピードでした。

リコピー101の機構図

リコピー101の内部

リコピー101の機構

リコピー101発売後も、事務機としてさらに使い勝手を良くするため、絶え間の無い技術開発が続きました。例えば、スタートアップの高速化。当初、ジアゾ感光紙に適した光源波長は400nm前後の紫外線であるため水銀灯を使用していましたが、点灯後安定するまでに4~5分間を要していました。この欠点をカバーするため蛍光灯を採用し、消費電力の削減と長寿命化が実現しました(1960年)。さらに、高出力の蛍光灯を使用することにより待ち時間が短縮されました(1967年)。また、現像方式についても、感光紙を現像液に浸す方式から、湿式でありながらほぼ乾いた状態のコピーが得られるSD(Super Dry)現像液の開発に成功しています(1975年)。複写システムの自動化を狙った周辺機器の開発も積極的に進め、原稿および感光紙の自動給紙機構(オートフィーダー)、コピーの後処理装置のソーター、紙折機、パンチ、捺印機、綴じ機などを次々に商品化していきました(1967年~1980年)。常に使う人のことを考え、使いやすい事務機器の提供を目指す取り組みがすでに始まっていたのです。

これらのたゆまぬ技術開発により、事務文書や伝票の複写が手軽にできるようになり、煩雑な手書きの写し作業は過去のものとなりました。もちろん、転記ミスの心配もなく、「後で読み合わせの必要もありません」というのが当時の広告の中でも謳われています。こうしてオフィスオートメーションの時代が、幕を開けたのです。

1957年に発売されたリコピー303(A3判対応)/リコピー505(A2判対応)の 生産ライン

1957年に発売されたリコピー303(A3判対応)

1957年に発売されたリコピー303(A3判対応)/リコピー505(A2判対応)の広告

リコピー505(A2判対応)の生産ラインと広告

卓上ジアゾ式複写機リコピーは、その後の後継機種を含め100万台を超え、商品名の「リコピー」が複写を示す代名詞になるほど普及しました。