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スマートグラス

視界がつながる、世界が拡がる、普段使いのウェアラブルデバイス

背景

メガネ型のウェアラブル端末であるスマートグラスは、パソコンやスマートフォンなどと連携し、現実の視界を見ながら、スマートグラスのディスプレイ上にデジタル情報を重ねて表示するもので、医療や建築、工場現場での作業指示や、一般ユーザーの歩行案内などの日常生活支援といった幅広い分野での活用が期待されています。しかし、これまでの両眼視タイプのスマートグラスの重量は一般的なメガネの3倍以上もするものがほとんどで、短時間の遠隔作業支援などが主な用途でした。オフィスや店舗、工場などでの一般的な業務や、個人利用での活用には、終日装用しても疲れない軽さと、多様な情報表示のための広い視野角を両立する技術が不可欠です。

解決したこと

長時間着用しても疲れにくく、デザインにも配慮した設計のスマートグラス技術を開発しました。
日常生活から業務用途まで、さまざまなシーンでの活用が期待できます。

  • 他者と視界を共有

    着用者の視界を映像として伝達し、実際の見え方を共有しながら指示を受けるなど、リッチなコミュニケーションを実現。

  • 現実と情報をリンク

    現実の風景に情報を重ねて表示。日常生活に役立つサポートや、拡張現実を用いたゲーム・サービスなどに応用可能。

  • 情報をスマートに

    周囲に知られることなく情報活用が可能。プレゼンや会話中の流れを止めずに必要な情報にアクセス。

技術の特徴

1. 広い画面、でも軽い

従来のスマートグラスのレンズ部分に採用されている導光板は、広い画面を得るために厚さを大きくしたり、ガラス素材を使ったり、複数枚を組み合わせたりしており、かなり重いものでした。
リコーのスマートグラスは、独自に開発したプラスチック導光板を採用しています。この導光板は、表面に複数の微細なミラー構造があり、ディスプレイの映像をそれぞれのミラーで反射して眼に届ける仕組みです。この仕組みにより、1枚の薄いプラスチック構造でありながら1m先に約30インチの画面が見える広い画面を実現しました。また、プラスチック微細構造を射出成形で作ることで、安価に量産できることも特徴です。

2. 快適な重量バランス

従来のスマートグラスは、導光板とディスプレイユニットが一体化しており、重量のほとんどがレンズ部分に集中しています。このため、鼻に大きな荷重がかかり、長時間着用できないことが問題でした。
リコーは、中継レンズを用いた特殊な光学系を開発し、ディスプレイユニットをこめかみに配置することを実現しました。中継レンズに通すことで、こめかみにあるディスプレイ映像がそのまま導光板付近に再現されます。ディスプレイユニットをこめかみに配置したことで、スマートグラスの前後の重量バランスが均一となり、鼻にかかる荷重を一般のメガネと同じ程度まで減少することができました。この技術により、長時間着用し続けても快適な着け心地を実現しました。

3. 見た目もスマート

メガネメーカーの協力を得ることで、シンプルで無駄のないフォルムにこだわりました。レンズやディスプレイユニットを極限まで小さく設計し、一般的なメガネに近いデザインを実現しました。

4. さまざまなアプリケーションに適応

リコーのスマートグラスは、スマートフォンやPCと接続することで眼の前に映像を表示します。既存のアプリをそのまま映すことはもちろん可能であり、新規にアプリを開発する際でも接続するデバイスのプラットフォームがそのまま活用できます。
また、9軸センサー(加速度、角速度、地磁気)を標準搭載しています。例えば、顔の動きに合わせて下を向いたときだけ映像を表示する、歩いている方角を検知して適切な道案内をするといったことができます。オプションでカメラや深度センサーを付けることで、AR(Augmented Reality、拡張現実)にも対応できます。

リコーの想い

リコーは、光を巧みに操る光学技術で、プロジェクターやカメラ等、多くの光学製品を世に送り出してきました。その光学技術を結集し、ディスプレイユニットから導光板までを最適化する光学設計により、スマートグラスの小型軽量化と広い表示画面の両立を実現しました。
また、プリンターやコピー機の心臓部とも言えるプラスチックレンズを生み出してきた高度な成型技術を活用し、高い精度が要求される薄型プラスチック導光板の微細成形に結実させました。
本技術により、いつでもどこでも必要な情報にアクセスすることが可能となります。リコーは、現実世界とデジタルとの融合で、お客様にとってより魅力あるデジタルサービスを提供するとともに、お客様のさまざまなワークプレイスと日常生活を変革するイノベーティブな製品・ソリューションの開発を今後も進めてまいります。

この技術は2020年8月5日国際学会SID Display Week 2020 Symposiumで発表します。

本技術の分類:分野別「センシング」