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Project Story 03:バイオ3Dプリンター
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高木 大輔Daisuke Takagi
リコー未来技術研究所

リコー✕バイオ。社内に新しい“波”をおこす。

リコーは現在、長年のプリンター開発で培ってきたプリンティング技術の可能性を広げることによる新たな価値創造に力を注いでいる。中でも社内外の注目を集めているのが、バイオ3Dプリンターの研究開発だ。「さまざまな細胞への分化が可能なiPS細胞(人工多能性幹細胞)の発見により、病気や怪我によって失われた組織機能を回復させる再生医療や、遺伝子情報に基づいた医療を提供するテーラーメード医療の実現へ向けた取り組みが世界的に加速しています。このような背景を受け、複数の細胞を任意にプリントできるバイオ3Dプリンターへの期待は非常に高く、その中でも、細胞に触れることなくプリント可能なインクジェット方式を用いたバイオプリンターは有力な技術候補なのです」。そう話すのは開発テーマの提案者である高木だ。現在はバイオファブリケーショングループのリーダーとして、バイオ3Dプリンターの研究開発を強力に推進する。「2012年に、参加した印刷学会の特別講演会で、インクジェット技術のヒト組織体への応用可能性についてのお話を伺い、とりわけ細胞のパターニングにとても有効な技術であることを知り、面白いと思いました」。つまり、インクジェット技術による複数細胞の配置と、周辺環境の影響を受けることで機能が発現する細胞とを組合せることで、新しいアプリケーションが生まれる可能性があることに思い至り、「会社へのテーマ提案を決断しました」という。そこから高木の行動は早かった。学会終了後、早速講演者である大学の准教授にコンタクトをとり、ひと月後には研究室を訪問した。その時の訪問メンバーとして高木が選んだのは、3Dプリンターの全社技術戦略活動で知り合った総合経営企画室、インクジェット事業部、そして研究開発本部の企画の3名の人間だ。「当時、私はリコーグループの生産会社、リコーインダストリー(神奈川県厚木市)で主にデジタル印刷機の開発、設計を担当するエンジニアでした。しかも私が提案したのはリコーがこれまで経験したことのないバイオメディカル領域のテーマ。まともなやり方では、提案が会社に通らないことは容易に想像がつきました」。そこで高木は、発言力や説得力の点で周囲への影響力が大きい部署を最初から巻き込むことで、より大きな実現可能性を追求した。大きな可能性を秘めたバイオメディカルの分野で事業を立ち上げたい、という強い思いから高木は業務の隙間の時間に積極的に行動し、バイオ事業の“波”を起こそうとしたのである。

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業界の常識を覆し、イノベーションへの道筋をつくる。

大学への訪問から半年後、条件付きながらも高木は研究開発本部にてバイオ3Dプリンターをの研究開発に着手することができるようになる。産学連携共同研究についても会社から正式な承認が下りた。
「やっとスタート地点に立ったというだけで、本当の勝負はそこからでした」。そもそも高木は化学の出身。バイオ3Dプリンターというテーマは、自分ひとりでは歯が立たない。プロジェクトを遂行するためには、物理やバイオテクノロジーの分野に精通した技術者とチームを組まなければならなかった。高木は「納得のいく陣容が整うまで1年以上かかりました」と当時を振り返る。しかもインクジェット技術を応用した細胞の配置については、20年前から解決できない技術課題があった。それは印刷インク(バイオインク)に混ぜた細胞を安定して吐出することができないというものだった。原因は、顔料の100倍といわれる細胞のサイズ。細胞をインク中で分散させたとしても、1分程度で沈降してしまうほど大きすぎたのだ。そこで高木たちは、インクジェット技術の社内有識者へのヒアリングを重ねると同時に、インクジェットの駆動方式に関する技術を再検討。一から細胞用インクジェットヘッドの試作に着手した。「細胞にダメージを与えないように優しく、かつ沈降しないよう攪拌し続ける仕組みを採用しました。このブレークスルーにより、細胞の分散濃度が均一に保たれたバイオインクを、30分以上安定的に吐出できるヘッドを生み出すことに成功しました」。高木たちは従来のインクジェット技術では対応できないとされていた業界の常識を覆し、イノベーションへの道筋を作った。まさに世界初の試みである。「なぜリコーがバイオ事業に着手するのか」と最初は冷ややかだった周囲の反応が変わり始めたのもこの頃だった。

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新しいテーラーメード医療実現を目指して。

「世界初の技術といっても、デバイスがひとつ形になっただけです。これで一気にバイオ3Dプリンターが完成するわけではありません。当面は、技術の切り出しによる早期事業化と、継続した研究開発が両立できる環境をつくりあげ、景気の波にも左右されない足腰の強い組織に育てていきたいと思います」。2014年、リコーは研究開発本部としてバイオ分野に注力することを決定し、バイオメディカルグループを発足(現在は「バイオメディカル室」)。2年後には、神奈川県が設立したオープンイノベーションの拠点『ライフイノベーションセンター』(神奈川県川崎市)に拠点を移し、研究開発を本格化させている。「新たに開発した細胞用インクジェットヘッドの応用として、現在複数のアプリケーションテーマが立ち上っています。そして、それらは学会や企業からも反響を受け、事業化に向けて着実に進展しています」。また、3次元組織体を構築する細胞積層プロセスといった研究テーマの一部は、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)から助成を受けるなど国家プロジェクトに指定されている。「会社にとって未知の分野での、研究開発の成功。さらに事業化が実現すれば、ひとつのロールモデルになれるのではないでしょうか」と高木は目を輝かせる。バイオ3Dプリンターの実用化の先に、高木たちはどんな未来を思い描いているのか。「再生医療の他にも病気の原因解明、新しい薬の開発、薬や化粧品の安全性・毒性の評価などへの展開も考えています。バイオプリンターにより従来よりも精密な組織を評価することができるので、たとえば、患者さんの細胞を使ったヒト組織体を作製することで、抗がん剤等の薬効、そして副作用の事前スクリーニングが可能となり、世界中のがん患者さんは自分にあった、つまり効き目に優れ、副作用の少ない抗がん剤を選べるようになると信じています」。さらに、延長線上には、世界各国が頭を悩ませる医薬品費削減という重要課題がある。高木たちはその解決まで見据えているのだ。「私の夢は、一人ひとりに合った治療を提供するテーラーメード医療の実現に、リコーのバイオ技術で貢献することです。人体機能を有する細胞の集合体を作成し、遺伝子検査と併用することで薬剤や治療法の有効性を精密に判別するシステムを構築して、医薬品業界に起きているテーラーメード医療へのパラダイムシフトの流れに割り入りたいと考えています」。正直、何年先の話になるのかわからない。それでも高木は“オフィスと言えばリコー”から、“バイオと言えばリコー”と呼ばれる日が来ることを信じている。

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