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マルチ分光カメラ

リコーは、独自の構成により通常のFAカメラと同等のサイズで、被写体の2次元スペクトル情報や色度などの色情報をリアルタイムに取得できるマルチ分光カメラを開発しました。

マルチ分光カメラの特長

マルチ分光カメラは、被写体がもつ分光情報を取得することができるカメラです。一般的に分光情報を取得する方式としては、カラーフィルタを交換する方式や、プリズムを用いた方式が知られていますが、前者の方式ではフィルタ交換が必要なためリアルタイムでの撮影に支障が生じ、一方、後者の方式はカメラを小型化しにくいという課題がありました。

リコーのマルチ分光カメラは、複数の分光情報を一度に取得できる光学デバイスと、分光情報ごとに画像を生成する画像処理技術により、波長に対する光の強度分布(スペクトル)や色度をリアルタイムに算出して所望の分光情報を高精度に取得できます。また、従来のFA(ファクトリーオートメーション)用のカメラと同等のサイズで分光情報を取得することが可能です。これまで見分けにくかった被写体はもちろん、経時変化する対象物の状態検査や異物検出などに用いることができます。FAはもちろん、食品、医薬品、農業、セキュリティ分野など幅広い応用が可能です。

技術の概要

今回リコーが開発したマルチ分光カメラは、以下の3つの技術により構成されています。

  • 物体の複数の分光情報を抽出する「分光フィルタ」
  • 複数の分光情報をセンサ画素に振り分ける「マイクロレンズアレイ」
  • センサ画像から分光情報毎に画像を生成する「画像処理部」

これらから得られた分光情報より、スペクトルや色度の算出を行っています(図1参照)。

リコーのマルチ分光カメラでは、1つの物点から拡がった光が、異なる分光特性をもつフィルタを通過し、それぞれの光がセンサ上の異なる位置に像を作ります。これにより、2次元の分光画像を1ショットで取得することができます。リコーの光学技術および画像処理技術の融合が、複数の分光情報を、2次元で、かつ1ショットで取得することを可能にしたのです。

画像:マルチ分光カメラの構成
図1: マルチ分光カメラの構成

マルチ分光カメラの種類

マルチ分光カメラは、分光フィルタの特性に応じて、1) マルチスペクトルカメラ、2) 2次元色彩輝度計、3) マルチバンドカメラとして利用が可能となります。
1) マルチスペクトルカメラは、連続的な波長の分光フィルタを利用することにより、被写体が持つ連続的な分光情報(発光スペクトルや分光反射率など)を取得することが可能です。取得した分光情報から、色度を求めることができます。
2) 2次元色彩輝度計は、人間の眼と等しい感度の分光フィルタを利用することにより、被写体の正確な色情報の抽出が可能となります。通常のRGBのカラーカメラに対する2次元色彩輝度計の優位点としては、人間が見たままの通りの色を捉えることができる、色を国際規格で定められた「色度」で管理することができる、といった点が挙げられます。
3) マルチバンドカメラは、アプリケーションに合わせた特定波長の分光解析が可能なカメラです。予め特定のバンドを指定いただくことにより、カメラをカスタマイズすることができます。

以下に、各カメラの適用例をご紹介します。

マルチ分光カメラの適用例

マルチスペクトルカメラ・2次元色彩輝度計

利用シーン 被写体の色検査

色度を算出することにより、これまでのカラー写真撮影では色判別ができなかった検査に対し、高精度な色検査を行うことができます。

例えば、ディスプレイ面内の色検査にご利用頂けます。従来の点計測の方式では、複数回の測定・撮影が必要でした。これに対して、マルチスペクトルカメラ・2次元色彩輝度計を利用すれば1ショットでの評価が可能となります(図2A、図2B)。またマルチスペクトルカメラにおいては、計測したスペクトル分布(図2C)より、ディスプレイ発光源の発光特性を確認・管理することもできます。

また、色限度見本を利用した物体色検査にもご利用頂けます。これまで色限度見本を利用した出荷検査や受入検査は、色限度見本と評価サンプルの対応を何度も目で確認する必要がありました。マルチスペクトルカメラ・2次元色彩輝度計を利用すれば、色限度見本と評価サンプルの色関係が色度図で明らかになり、良品・不良品の判定が容易となります(図3A、図3B)。これにより、例えば成型品・塗装品の色検査が定量的に行えます(図4)。

画像:図2A

図2A

画像:xy色度図

図2B:xy色度図

画像:図2C
図2C

図2Aは、ディスプレイに6色のパッチを表示させ、マルチスペクトルカメラ・2次元色彩輝度計で撮影した画像です。□字の位置の色度・スペクトルを計測します。図2Aの□字の位置における色度は、図2Bのようにxy色度図上に表示されます。またマルチスペクトルカメラにおいては、図2Aの□字の位置におけるスペクトル分布は図2Cのように表示されます。

画像:図3A

図3A

画像:各色票の色度

図3B:各色票の色度

図3Aには、画面上側に物体色の色限度見本を3枚、画面下側に評価サンプルを2枚用意してあります。画面下側の右の評価サンプルがNG品の場合、図3Bのように色限度見本の色度をグレーのパッチに対して、NG品の色度を赤のパッチで表示します。

画像:被写体色検査での利用イメージ
図4: 被写体色検査での利用イメージ

マルチバンドカメラ

利用シーン 被写体の状態把握

これまでのカラー写真では判断できなかった被写体の状態(鮮度・純度・疾患重症度)を定量的に評価することができます。それぞれの被写体に応じた特定の分光画像を撮影することにより、微妙な色の違いなどの情報から農作物の甘さや、食料品の鮮度を定量評価できます(図5)。

本カメラの分光機能は、専用レンズ内に集約されているため、専用レンズを交換することで、1台のカメラで幅広いアプリケーション・用途に対応することができます。

画像:被写体の状態把握での利用イメージ
図5: 被写体の状態把握での利用イメージ

本技術の分類:分野別「マシンビジョン」